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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第90話

同日、11:00―――



~ルバーチェ商会~



「クッ……一体どうなっている……ルバーチェめ……何をしようとしてるんだ!?」

ルバーチェ商会の建物の中の玄関で周囲を見回していたダドリーは表情を歪めて叫んだ。するとその時ロイド達が入って来た。

「お、お前達……!?」

「やっぱり中にいたのはダドリーさんでしたか………」

「おいおい。一体どうなってんだよ?」

「ええい、首を突っ込むなと言ったばかりだろうが!?お前達は薬物捜査の方に専念していれば―――」

ロイド達に尋ねられたダドリーはロイド達を睨んで怒鳴ったが

「お言葉ですが、そんな事を言ってる場合でしょうか?」

「………やっぱり中に誰もいないみたいですね?」

「くっ…………」

エリィとティオの言葉を聞いて唸った後話し始めた。

「……先程から大声で呼んでいるが誰一人として出て来る気配がない。かといって争った形跡があるわけでもない……一体どうなっているかこちらが聞きたいくらいだ……ッ!」

「確か一課は、ルバーチェの動向を監視していたはずですよね?マフィア達がいつ消えたのか把握できていないんですか?」

「…………………………昨晩、警察本部に犯行予告が届けられた。クロスベル空港に爆発物を仕掛けるという予告だ。」

そしてロイドに尋ねられたダドリーは考え込んだ後説明をした。

「ば、爆発物!?」

「そ、そんな事が……!?」

ダドリーの説明を聞いたロイド達は驚いて声をあげた。

「急遽、一課の人間が集められ、空港での警戒に当たる事となった。………上からの指示でルバーチェを監視していた人員をそちらに回すという形でな。」

「あ……」

「それで監視が引き上げた後に、消えちまったってわけか…………」

「………怪しいですね。その爆発物の予告はどこまで本当なんでしょうか?」

「さてな……クッ、上の連中もいったい何を考えている………!どこまで警察の誇りを踏みにじるつもりだ…………!?」

ティオに尋ねられたダドリーは答えた後怒りの表情に変えた。

「ダドリー捜査官…………」

「………………………………―――いずれにしてもこのままでは何が起きているのか把握することすら困難です。ここは建物内部を一通り調べてみませんか?」

「おい………!?」

「フフ、思い切った事を考えたわね。」

そしてロイドの提案を聞いたダドリーは声をあげてロイドを睨み、ルファディエルは微笑んだ。



「警察とルバーチェの微妙な関係はもちろん自分もわかっています。捜査令状がない状態で家捜ししたらどんな反撃材料を相手に与えるか……そのリスクも承知しています。」

「ロイド……」

「クッ……だったら何故、そんな無謀な事を言い出す!?」

「”それどころではない状況”になっている可能性が高いからです。―――昨日から今朝にかけて明らかになった事をお伝えします。」

ロイド達は蒼い錠剤が、6年前に壊滅した狂気の教団が作りだした薬物である可能性が出てきたこと……そして薬を使用していた人間達が一斉に姿を消したことを説明した。

「し、信じられん…………その教団の話は聞いた事があるがてっきり壊滅したものかと…………いや、しかし………」

ロイド達の話を聞いたダドリーは信じられない表情をした後考え込み

「………ちなみに私の推理だとルバーチェが消えた理由、爆弾予告で一課(あなたたち)を動かしたのも全て”教団”の残党の仕業だと思うわよ?」

「なんだとっ!?……………い、いや確かに貴様のその推理なら納得できる部分がいくつもあるな…………”教団”は各国の一部の有力者達の援助を受けていたという話もあったからな………もし、その繋がっていた有力者がルバーチェと関わり合いのある議員なら……!」

ルファディエルの推理を聞いて驚いた後すぐに推理を始め、表情を歪めた。

「事は人命に関わる話です。もしかしたら失踪者達の情報がここに残されているかもしれません。ダドリーさんが納得できないのならせめて俺達の……いや―――俺の独断専行でこのまま見逃してくれませんか?」

「……………………………………」

そしてロイドの提案を聞き、呆けた表情でロイドを見つめた。



「おいおい、自分一人で責任を被ろうとしてんじゃねえよ。」

「当然、私達も付き合うわ。支援課が取り潰されたとしても見過ごせる状況じゃないもの。」

「フフ、元々私は貴方達を育てる為に警察官になる事を承諾してあげたようなものだからね。貴方達が警察から追い出されるくらいなら、私も一緒に追い出されるわ。」

「ええ、一連托生です。」

「みんな…………」

ランディ達の心強い言葉を聞いたロイドは振り向いてランディ達を見つめ

「……フン……血は争えないものだな。ルファディエルに育てられたのだから策を弄するような者になっていると思っていたが……………その強引さ……ヤツにそっくりじゃないか。」

一方ダドリーは鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべてロイドを見つめた。

「え………」

ダドリーの言葉にロイドが驚いて振り向いたその時、ダドリーは眼鏡をかけ直した。

「―――違法捜査による証拠物件は法的な証拠能力を認められない。連中がどんな証拠を残していても見て見ぬフリをする必要があるぞ?」

「それは………構いません。今、必要なのはこのクロスベル市において何が起こりつつあるのか……それを見極める事ですから。」

「フン、一丁前の口を利く………だが、それがわかっているならとやかく言うつもりはない。せいぜい足手まといにならないよう付いて来るがいい。」

ロイドの答えを聞いたダドリーは鼻を鳴らした後、口元に笑みを浮かべて意外な事を言い

「え……」

「あら………」

「その……見逃してくれるだけでは?」

ダドリーの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは意外そうな表情をしているルファディエルと共に尋ねた。

「この状況、お前達のようなヒヨッ子どもに任せきりにした挙句、罠や策を弄するルファディエル(そいつ)をこの状況で放置出来るとでも思うか?今からお前達には私の指揮下に入ってもらう。全ての責任は私が持つ………反論は許さん!」

「ダドリーさん………」

「やれやれ……ホント素直じゃないっつーか。」

「やはり照れ隠しの一種ではないかと……」

ダドリーの答えを聞いたロイドは口元に笑みを浮かべ、ランディは苦笑し、ティオは静かに呟き

「ええい、うるさい!―――まずは建物内を一通り捜索してゆく………異常があればすぐに報告しろ。」

ランディとティオの言葉を聞いたダドリーはロイド達に背中を向けて怒鳴った後ロイド達に指示をし

「はい……!」

指示をされたロイドは力強く頷いた。その後ダドリーと共にルバーチェ商会の建物内を調べたロイド達は時折現れる魔獣や機械兵器を倒し、そして会長であるマルコーニの隠し部屋へと続く通路の仕掛けを解き、マルコーニ会長の部屋の前に現れた強敵の機械兵器も倒し、部屋の中に入った。



「豪奢な部屋ね……さすがにハルトマン議長の部屋ほどではないけれど………」

マルコーニの部屋を見たエリィは呟き

「まあ、あれと比べたらなぁ。って……!」

ロイドは苦笑しながら答えた後ある事に気付き

「あ……」

焦った様子でダドリーに視線を向け

「お嬢……迂闊だろ。」

「貴女にしては珍しいミスね。」

ランディは呆れ、ルファディエルは溜息を吐いた。

「フン……何を今更焦っている?”黒の競売会(シュバルツオークション)”についての経緯などとっくに聞いている。一課としては長年狙っていた獲物を横取りされた気分だがな。」

一方焦った様子のロイド達に視線を向けられたダドリーは不敵な笑みを浮かべて言った。

「はは……そ、それはともく、やはりここが会長室みたいですね。どうやらルバーチェ商会の中は一通り調べつくしたようですが………」

「ああ………結局マフィアは一人も残っていなかったし、失踪者もここにはいないようだ。何か手がかりがあるとしたらこの部屋以外にはありえん………時間が惜しい―――全員で手分けをして調べるぞ。」

「はい!」

「さぞ色々なものが見つかりそうですね……」

そしてロイド達は手分けして部屋を調べ始め、鍵がかかった宝箱に気付いたロイドは周辺を捜して鍵を見つけ、その鍵を使って宝箱の鍵を開けて、宝箱を開けた。

(よし………開いたか。幾つかファイルがあるけど……どれどれ………あった!やはりマフィアが薬物を……そして”グノーシス”……例の教団が造った薬物か……いったいどういう関係が………あれ、宝箱の隅に何か……これは、警察の………)

宝箱の中身を調べていたロイドはファイルの他に傷ついた警察徽章を見つけた。

(………え……………)

見つけた警察徽章を見たロイドは呆けた表情をした。その後ロイドはエリィ達にファイルや警察徽章の存在を知らせ、ファイルの中身を調べた。



「―――失踪した市民達は全てリストに記載されていた。これでマフィアが薬物を広めた裏付けは取れたわけだ。そして例の教団が造ったという”グノーシス”とやらか………」

ファイルの中身を読み終えたダドリーは机に置いたファイルを睨みつけ

「………………………」

ティオは黙り込んでいた。

「一体どうしてマフィアがそんなものを………入荷リストによると何者かの提供を受けているのは間違いなさそうだけど……やはりその人物が教団関係者なのかしら……?」

「―――間違いないだろう。書類によると、数年前から付き合いのある人物みたいだな。軍用犬に薬物を投与して簡単にコントロールする技術なんかも提供していたらしい。」

「なるほど、軍用犬を訓練するのは猟兵団でもかなりの手間がかかる。あれだけ大量に使ってたのはちょいと違和感があったんだが…………」

「――となると、マフィア達や失踪した市民達が消えたのも操られ、どこかに向かった可能性が高くなってきたわね……」

エリィの疑問にロイドは答え、ランディとルファディエルがそれぞれ説明を補足した。

「全てはその教団関係者が協力していたというわけか。しかし一体、何者だ……?やり取りの頻度から見てクロスベルの人間であるのは間違いないようだが……」

そしてダドリーが考え込んでいたその時

「……………その教団関係者だけど………あくまで私の推理だけど心当たりはあるわ。」

ルファディエルが静かな表情で呟いた。

「なんだとっ!?」

「へっ!?」

「ええっ!?」

「マジっすか!?」

「………一体誰なんでしょうか?」

ルファディエルの言葉を聞いたダドリーはロイド達と共に驚き、ティオは真剣な表情で尋ねた。

「―――ウルスラ医科大学の准教授………ヨアヒム・ギュンターよ。」

「なっ………ヨアヒム先生が!?」

「………何か根拠はあるのか?」

ルファディエルの答えを聞いたロイドは驚き、ダドリーは真剣な表情で尋ねた。

「ええ。一つはあの医師から”悪魔”の気配が感じたわ。鉱員のガンツや”グノーシス”を服用したと思われるマフィア達から感じた”悪魔”の気配と同じように……」

「で、でもそれならヨアヒム先生も服用していただけの可能性も……」

ルファディエルの話を聞いたエリィは真剣な表情で言ったが

「……ロイドがセティ達を創っている解毒薬の話をした時、怒りの感情を感じたといってもただの服用者と信じるかしら?」

「ええっ!?」

「…………それだけでは根拠として不十分だ。他に何か決定的な根拠はないのか?」

ルファディエルの答えを聞いて驚き、ダドリーは尋ねた。

「その前に一つ確認しておきたい事があるわ。市長暗殺未遂事件の時に逮捕したアーネストはその後どうなったのかしら?」

「え……どうしてそこでアーネストさんの話が………?」

ルファディエルのダドリーへの質問を聞いたエリィは呆け

「………セルゲイさんから聞かされて知っていると思うが奴は完全に錯乱していた。そこで仕方なく、アーネストが以前から相談していたというカウンセラーをウルスラ病院から呼び寄せて、そのカウンセラーのお蔭でようやく、まともに事情聴衆ができるように……――――――!!」

ダドリーは答えていたが話の途中で何かに気付いたのか目を見開き

「……そういう事か!考えてみりゃあ、アーネストの野郎にも”グノーシス”を服用した疑いがあるからな………」

「しかも薬学で権威を持っている人ですから………”グノーシス”を創るのに最適な場所を持っている人ですね。」

「それによく考えてみたら、一介の医師が噂で”教団”や”グノーシス”の事を知っているなんておかしいわ………!あの事件は関係者内で極秘とされていたんだから………」

「ダドリーさん!そのカウンセラーの方はまさか……!」

ランディやティオ、エリィもそれぞれ驚きや納得した表情で自分達の推理を口にし、ロイドは真剣な表情でダドリーに尋ね

「……ヨアヒム・ギュンターだ………」

尋ねられたダドリーは重々しい様子を纏って答えた。

「「「「……………………」」」」

「………やっぱりそうだったのね。」

ダドリーの答えでロイド達が沈黙している中、ルファディエルは静かに呟いた。

「チッ、そうなるとあの蒼い錠剤を渡したのはミスだったかもしれんな………」

「ルファ姉!どうして言ってくれなかったんだ!?事前に言って貰えれば……!」

そして黙り込んだ後ランディは舌打ちをし、ロイドはルファディエルを睨んで言ったが

「その方がヨアヒムから情報を引き出せると思ったからよ。変に疑って接するより何も知らない状態で普通に接した方が何か情報を話してくれると思ったのよ。――――”教団”や”グノーシス”の噂を知っていたように。それに今更3錠程度渡した所で、量産している者がヨアヒムだとしたら大した事ではないわ。それに全部は渡していないでしょう?」

「あ…………」

「………確かにこれ程巧妙に自分の存在を隠しているのですから、疑うような接し方で接しても何も話してくれなかったかもしれませんね………」

「”肉を切らせて骨を切る”に似たやり方ですか………確かにそのお蔭でヨアヒム先生が”グノーシス”や”教団”の噂を知っている事がわかりましたものね……」

「………しかももし、”グノーシス”を服用して異常にカンが冴えていたら、内心疑っている俺達の雰囲気も悟って何も話さなかったかもしれねぇしな………」

ルファディエルの説明を聞いてある事に気付いて黙り込み、エリィとティオ、ランディは納得した様子で呟いた。

「さらに付け加えて言えば、キーアを見た時の反応も気になるわね。」

「なっ!?」

「キーアちゃんも関係しているんですか!?」

そしてルファディエルのさらなる話を聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情で尋ね

「ええ。彼女を見た時、ヨアヒムからとてつもない邪悪な気配を感じたわ。その証拠に遠回しにだけどキーアを何度か自分の手元に置こうとしていたでしょう?」

「!!」

「キーアの入院を勧めた件ですか……」

「そういえば昨日俺達と会った時に真っ先に聞いてきたのはキー坊の事だったな………」

「もし、キーアちゃんが”教団”の事件に関係している子なら……その可能性は高いですね……」

ルファディエルの答えを聞いたロイドは目を見開き、ティオとランディは真剣な表情で呟き、エリィは考え込んでいた。



「犯人と思わしきヤツの事はわかったが………どう炙り出すかが問題か。」

「そうね………人手が圧倒的に足りないわ。消えたマフィアへの対処と失踪者の捜索に加えて、空港の爆破予告もあるし……上層部の圧力がなかったら何とかなったんでしょうけど……」

そして考え込んでいるランディの言葉にエリィは頷いてランディと共に考え込み

「クッ………まさか警察局長までもが完全に取り込まれていたとはな。そうでなければ全警察を挙げた対策本部を設立できたものを…………恥を知るがいい……!警察のツラ汚しが……!」

ダドリーは悔しそうな表情で言った。

「ダドリーさん……」

ダドリーの様子を見て驚いたロイドは考え込み

「―――提案があります。遊撃士協会に協力を要請しませんか?」

意外な提案をした。

「あ……」

「おお……!その手があるじゃねえか!」

「ば、馬鹿な事を言うな!そんな事をしたら、警察内部の恥をギルドに暴露することにもなるし、それに今のクロスベル支部にはメンフィル帝国に貴族としての爵位を貰っているあの”ブレイサーロード”と”黄金の百合”もいるのだぞ!?ギルドどころかメンフィル帝国にも警察内部の恥を暴露することにも―――」

ロイドの提案にエリィ達が表情を明るくしている中、ダドリーは怒りの表情で反対したが

「仕方ないでしょう……警察全体のツケなんですから。見てみぬフリをしていた俺達全員の責任です。恥くらい、甘んじて受けるべきではありませんか?」

「ぐっ……………」

ロイドの話を聞いて苦々しい表情をした。

「確かに、こうしている内に失踪者たちがどんな目に遭っているかわかりませんし……」

「消えたマフィアどもが何をしでかすかもわからねぇよな。」

「それにヨアヒムは現段階ではあくまで容疑者の候補に挙がっている程度………決定的な証拠がないから、逮捕して失踪者達の行方を聞く事も不可能ね。」

「もう、体面を気にしている場合ではないと思います。」

「………………………………

ティオ達の話を聞いたダドリーはしばらくの間考え込み

「フン……セルゲイさんもとんだ部下どもと厄介な女を集めたものだ。いいだろう―――ギルドとの交渉はお前達に任せた。私は私で、上層部の目を盗んで動ける人間を一課から確保しよう。場合によっては二課からの協力も得られるかもしれない。」

静かな笑みを浮かべた後、真剣な表情で言った。



「ダドリーさん……感謝します。聞き入れてくださって。」

「フン……勘違いするな。現状ではそうする以外、選択肢がないというだけだ。それよりも―――バニングス。そのバッジの事はいいのか?」

「あ………」

ダドリーに言われたロイドは声をあげて手に持っている警察徽章を見つめた。

「傷ついた警察徽章………」

「本当にお前の兄貴のバッジなのか……?」

「ああ、多分そうだと思う。ティオとルファ姉も見覚えがあるんじゃないか……?」

エリィとランディの言葉に頷いたロイドはティオとルファディエルに尋ね

「はい……多分、例のロッジ制圧の時に付いた傷だと思います………勲章だって言ってました。」

「私もそのバッジを見て事情を少しだけ聞いた事あるわ。昔ある大事件―――この場合例の”教団”事件でしょうね。その時、敵からの凶刃をそのバッジが自分を守ったから、お守り代わりにしていると言っていたわ。」

尋ねられた2人はそれぞれ答えた。

「フン、なるほどな………道理でうるさく言っても新品と交換しなかったわけだ。」

2人の話を聞いたダドリーは納得した様子で呟き

「ダドリーさんは……兄貴と同僚だったんですよね?兄貴が捜査一課に移ってから。」

ダドリーの言葉を聞いたロイドは尋ねた。

「まあな………正直、一課の水にはまったく合わない男だった。強引かつ無鉄砲、独断専行ばかり目立って………私とは特にソリが合わずに、事件を巡って衝突ばかりしていたし、挙句の果てには当時警察官ではなかったルファディエルを二課の事件を手伝わせて、その件でさらに衝突していたからな。だが――――優秀な捜査官だったのは一課の誰もが認めていたし、ルファディエルの捜査官としての実力も悔しいが認めていた。もちろん私も含めてな。」

「ダドリーさん……」

「あら。貴方達に嫌われている身としては驚きね。」

ダドリーの言葉を聞いたロイドは驚き、ルファディエルは微笑んでいた。

「……ヤツが殉職した時、私達一課の人間の喪失感は予想以上のものだった。ソリは合わなかったが………どこかヤツの破天荒な行動力に期待していた所もあったんだろう。必死になって犯人を捜し、さらには本来警察官ではなかったルファディエルにまで知恵を貸して貰って捜査を続けたが結局、手掛かりは見つからず………―――すまない。お前には辛い想いをさせたな。」

ダドリーは過去を語った後、目を伏せて言った。

「よ、よしてくださいよ。単独捜査をしていた兄貴にも問題はあったみたいだし……そんな風に兄貴の死を受け止めてくれていただけで俺としては十分です。」

「そうか………―――しかしここに来て改めて容疑者が浮上したわけだ。もちろん当時からも、その可能性は疑われていたが………これでやっとお前も兄の無念を晴らすことが―――」

「いえ……今は兄貴のことはいいんです。それよりも、解決しなくてはいけない問題が山ほどある……それを片付けてから考えます。」

「ロイドさん………」

「フフ……ちゃんと私情を抑え込んでいるわね。」

「本当にもう………生真面目なんだから。」

「ま、それがコイツのコイツたる由縁だろ。」

ロイドの答えを聞いたティオとルファディエル、エリィは微笑み、ランディは笑顔で言った。

「フッ―――わかった。それでは今はお互い、やるべき事をやるとしよう。あの癪にさわるくらい破天荒で前向きだった男に負けないためにもな。」

「はい……!」

そしてダドリーの言葉にロイドは力強く頷いた。その後ロイド達はダドリーと別れて、遊撃士協会に向かった……………
 
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