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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第63話

~ウルスラ病院~



「そう…………そんな事情で病院に。まさかヨアヒム先生が………」

事情を聞いたセシルは頷いた後考え込み

「…………まだ、彼が怪しいと確実に決まった訳じゃないけどね。彼はまだ研究棟に?」

ロイドは疲れた表情で答えた後、真剣な表情で尋ねた。

「それはわからないけれど……他の教授の方々は研究棟に取り残されているかもしれないわ。黒服の人達が連れ出したのは研修医の人達ばかりだったから。」

「そうか…………」

セシルの答えを聞いたロイドは重々しく頷き

「ところで、さっきの魔獣達はいったい何だったんスか?不気味っつーか……得体のしれない感じだったけど。」

「……そうですね。まるで何かのバランスが欠けてしまってるような……」

「やはりマフィア達が連れ込んできたんでしょうか?」

ランディの疑問を聞いたティオは不安そうな表情で考え込み、エリィは真剣な表情でセシルに訊ねた。



「わからないけれど……研究棟からいきなり現れたの。それでそのまま取り囲まれてしまって………」

「どうやら研究棟とやらに何かが隠されているらしいな。時間が惜しい―――早速、向かうとするぞ。」

セシルの答えを聞いた銀は呟いた後ロイド達を促し

「ああ………!って、その前に…………どうしてアーシアさんがこちらに?確かアーシアさんは今は遊撃士としてリベールで活動していると聞いていますけど………」

「ハアッ!?そのお姉さんも遊撃士なのか!?」

「道理で強い訳ですね………」

「そうね………(法剣にボウガン……もしかしてこの人は………)」

アーシアを見つめて訊ねたロイドの口から出た情報を聞いたランディとティオは驚き、エリィはアーシアが先程使った武器を思い出してある仮説をたてた。

「――――”暁のアーシア”。リベールに常駐している正遊撃士の中でも実力、問題解決能力共にトップクラスの相当な使い手だ。確かランクはAだったな?」

「ご丁寧な説明どうも。クロスベルに貴方がいる事は知っていたけど、まさかこんな形で貴方と再会する事になるとは予想外よ………」

銀に問いかけられたアーシアは静かな表情で答えた後疲れた表情で溜息を吐き

「フッ、それはこちらの台詞だ。リベール常駐の数少ないA級正遊撃士が一体何のためにこのタイミングでクロスベルに現れたのやら。」

銀は静かな笑みを浮かべてアーシアを見つめていた。



「A級正遊撃士だぁ………!?」

「アリオスさんやレンさんと同じ大陸で20数名しかいない凄腕の遊撃士ですか………」

「フフ、このタイミングで凄腕の正遊撃士がクロスベルに来てくれるなんてありがたいわね。そう言えば……さっきロイドはアーシアさんの事を違う名前で呼んでいたけど……」

「うっ………そ、それは……」

一方銀の情報を聞いたランディとティオは驚き、アーシアの存在を心強く思ったエリィは微笑んだ後ある事を思い出し、エリィの疑問を聞いたロイドは唸った後言葉を濁した。

「――――銀、”取引”をしない?」

「レ、レンちゃん!?一体何を……」

「ほう……?一体どんな取引だ?」

するとその時レンが銀に提案をし、レンの突然の提案にエリィが戸惑っている中銀は興味ありげな様子で訊ねた。



「今ここで聞くアーシアお姉さんの正体や情報について誰にも漏らさない事よ。――――勿論”黒月(ヘイユエ)”にもね。」

「アーシアさんの”正体”………?」

「………”口止め料”か。幾ら支払う?」

レンの話にティオが不思議そうな表情をしている中レンの提案の内容を察した銀は静かな表情で問いかけた。

「1億ミラでどうかしら?」

「い、1億ミラ!?」

「オイオイオイ……!そんなとんでもない金額の”口止め料”を支払うくらい、このお姉さんの正体はそんなにヤバいのか……?」

「う、う~ん……私の場合は”一部の人達”に知られたら色々な意味で不味い事になる可能性があるだけよ。」

レンが莫大な金額を支払ってまでアーシアの正体を黙らせる事にロイドは驚き、信じられない表情をしたランディは疲れた表情でアーシアを見つめ、見つめられたアーシアは苦笑した。



「………―――よかろう。現在クロスベルで起こっているルバーチェ並びに”教団”関連の騒動が治まって2週間以内に指定の支払い方法で”口止め料”を支払ってもらう。」

「―――了解。という訳だから一つ”貸し”にしておくわね、アーシアお―――いえ、ルフィナお姉さん♪」

「その為にわざわざ銀に口止め料を支払ったのね………まあ、いいわ。せっかくレンちゃんがそこまでしてくれたのだから、大人しく一つ”借り”にしておくわ。」

銀の答えを聞いたレンにウインクされたアーシアは呆れた表情で溜息を吐いた後気を取り直した。

「ちょ、ちょっと待って、レンちゃん。”銀への支払い方法を知っている”という事はまさか……以前”銀を雇った事がある”の!?」

その時ある事に気づいたエリィは驚きの表情でレンに訊ね

「確かに今の二人のやり取りを見ればそう見えますね……」

「口止め料の詳しい支払い方法のやり取りもしなかったから、そうとしか思えないよなぁ?」

エリィの疑問を聞いたティオはジト目でレンを見つめ、ランディは呆れた表情でレンを見つめた。



「……ええ。その娘は以前”結社”からその娘やエステル達のお母さん―――レナさんを守る為に私達に隠れて”西風の旅団”どころか”銀”まで雇っていたのよ………」

「ええっ!?」

「と言う事はレンさんと銀さんは面識があったのですか………」

「つーか、”西風の旅団”の連中に加えて”銀”まで一個人の護衛にするとか戦力過剰過ぎんだろ……」

「クク、実際私達が剣を交えた連中の練度を考えると”戦力過剰”という言葉も頷ける話だ。」

疲れた表情で答えたアーシアの話を聞いたエリィは驚き、ティオとランディは呆れた表情でレンを見つめ、ランディの言葉に銀は不敵な笑みを浮かべて答えた。

「うふふ、”念には念を”という諺があるでしょう?」

「ハア………―――改めて自己紹介をするわね。”アーシア・アーク”は仮の名前で私の”本当の名前”はルフィナ。ルフィナ・アルジェントよ。」

悪びれもなく答えたレンの様子に呆れた表情で溜息を吐いたアーシア―――ルフィナは気を取り直して自己紹介をした。



「”アルジェント”………―――!まさか……貴女はリースさんのお姉さんなんですか!?」

「へ……………」

「あら、あの娘を知っているの?」

信じられない表情でルフィナを見つめるエリィの口から出た意外な人物の名前にロイドは呆け、ルフィナは目を丸くしてエリィを見つめた。

「は、はい……アルテリアに留学していた頃に知り合って、その時から懇意にしてもらっています。」

「そうだったのか………まさかエリィがリースさんと知り合いだったなんて……ハハ、凄い偶然だな。」

エリィの話を聞いたロイドは目を丸くした後苦笑した。



「え………どうしてロイドがリースさんの事を……」

「うふふ、リースお姉さんは以前話した”影の国”で知り合った人だからロイドお兄さんやレン達も知っているのよ♪」

「そ、そうだったの………」

ロイドがある人物を知っている理由をレンが説明するとエリィは目を丸くした。

「よくわからんがロイド達はそのお姉さんと知り合いのようだが、何でそのお姉さんは本名を隠さなくちゃならないんだ?」

「――――フッ、まさかかの”千の腕”がお前だったとはな。」

そしてランディが不思議そうな表情で自身の疑問を口にしたその時銀は静かな笑みを浮かべてルフィナを見つめた。



「”千の腕”………?」

「”千の腕”――――教会の中でもトップクラスに入る使い手だ。5年前に事故で死亡したと聞いていたが………生きていたとはな。」

ティオの疑問に銀は静かな表情で答え

「”教会の使い手”の”教会”ってのはまさか七耀教会か?」

「……ええ。詳しい事は言えないけど七耀教会には”裏”に属する組織があるの。そしてその組織は任務上荒事もあるから、それなりの使い手が所属しているのよ。」

「七耀教会にそんな組織が………その、5年前に亡くなったと言う話は一体………」

「リースさんの話によると任務中の事故で死亡したとの事だけど……もしかして偽名を名乗っているのはその任務中に起こった事故の関係ですか?」

ランディの疑問に答えたルフィナの話を聞いたティオは真剣な表情でルフィナを見つめ、ティオの疑問に答えたエリィは不安そうな表情で訊ねた。



「フフ、それに関しては申し訳ないけど黙秘させてもらうわ。色々と複雑な事情があるし。」

「……その、どうしてルフィナさんはこちらに?」

「フフッ、それは私が説明をさせてもらうわ。」

ロイドの疑問を聞いたセシルは微笑みながら答えた。

「セシル姉。もしかしてあ……いや、フレンさんと関係しているのか?」

セシルの答えを聞いたロイドはセシルにある事を訊ねようとしたが銀が自分達と共にいる事に気づくとすぐに言い直して訊ねた。



「あら、ようやくロイドもレンちゃんから”あの人”の事を聞いたのかしら?」

「……ああ。最初に聞いた時は本当に驚いたよ……セシル姉も酷いよ……ずっと黙っていたなんて……」

「フフ、ごめんね。それで話を戻すけど、ルフィナさんとは3年前から”あの人”の手紙を月に一度届けてくれるようになった事が切っ掛けで友人同士になってね。ギルドからの情報や新聞でクロスベルの今の状況を知って、クロスベルの遊撃士協会を手伝うついでに私の無事を確認する為にこうしてわざわざ顔を見せにくれたの。」

「まあ、正確に言えばどこかの誰かさんが絶対に近日中に”動き”があるから、それを未然に防ごうとする人達を手伝ってくれって頼まれたから、急いで休暇を取ってこちらを訪れたのよ。その”どこかの誰かさん”の勘も実際当たって、それに助けられた事は何度もあるし。」

疲れた表情で溜息を吐いたロイドに苦笑しながら答えたセシルはルフィナが一緒にいる理由を説明し、セシルの説明を補足したルフィナは苦笑していた。

「その”どこかの誰かさん”ってもしかして……」

「……間違いないでしょうね。」

「ハハ、まさにドンピシャな状況だからスゲェな。」

「うふふ、ルフィナお姉さんがこのタイミングでクロスベルに現れるのはさすがのレンも予想できなかったわ♪」

ルフィナの口から出た人物がガイ・バニングスである事を察したエリィは目を丸くし、ティオは静かな表情で呟き、苦笑しているランディの言葉に頷いたレンは笑顔を浮かべてルフィナを見つめた。



「さすがに一人でこの病院内にいるマフィア達を制圧して病院を解放するのは厳しくて機を窺っていたのだけど……貴方達が来てくれて助かったわ。今から私も病院の探索並びに解放を手伝わさせてもらってもいいかしら?」

「ええ、よろこんで。」

「フフ、よろしくお願いします。」

こうしてルフィナを加えたロイド達は研究棟に向かった―――――


 
 

 
後書き
と言う訳でまさかのこのタイミングでルフィナ(アーシア)がパーティインですwwなお、ルフィナはここからラスボス戦終了までパーティインした状態です! 
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