英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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外伝~闇夜の襲撃~
~深夜・黒月貿易公司~
「―――ルバーチェの裏ルートが復活している?」
ロイド達が明日に向けて休み始めたその頃、ツァオは構成員の一人――ラウから報告を受けていた。
「………はい。ここ1週間で、我々が潰した3つのルートが立て直されました。こちらも妨害しようとしたのですが思っていた以上に抵抗が激しく………」
「ふむ……妙ですね。この状況で、失ったルートをわざわざ取り戻すだけの余力が彼らにあるとは思えませんが………あちらの営業本部長殿がわざわざ動いたのですか?」
「いえ………それが。”キリングベア”の姿はなく、配下の構成員だけだったそうです。それも軍用犬は連れておらず、数名程度の少人数だったようで………」
「ふむ、ますます奇妙ですね。構成員一人一人の戦闘力ならば我々”黒月”の方が上のはず………例のラインフォルト社製の重機関銃を持ち出したのですか?」
ラウの報告を聞いていたツァオは意外そうな表情をした後、目を細めてラウを見つめて尋ねた。
「ええ、確かにその武装も持ち出してきたようですが………それ以上に、戦闘能力そのものが大幅に向上しているとの報告です。」
「なるほど………現在、マルコーニ会長は議長閣下のお怒りを静めようと躍起になっているようです。どこぞの猟兵団を新たに雇った様子もありませんし、大規模な戦闘訓練の報告もない………ふむ、なかなか興味深いですね。」
「………我々の知らない切り札を持っていたという事でしょうか?」
「ええ、間違いないでしょう。しかも私の見立てでは………尋常な切り札ではなさそうです。それこそ”銀”殿のような状況を一気にひっくり返せるほどの”鬼札”かもしれませんね。」
「くっ、一体どんな手を………」
不敵な笑みを浮かべて語るツァオの推測を聞いたラウが唇を噛みしめたその時、激しい銃撃音が聞こえ、さらに部屋が揺れた!
「い、今のは………!?」
「噂をすれば影、ですか。」
その事に気付いたラウは驚き、ツァオは目を細めて部屋の扉を見つめた。すると扉が開き、構成員が慌てた様子で入って来た。
「た、大変です!ルバーチェと思われる黒ずくめの一団による襲撃です!その数、およそ10!”キリングベア”の姿はありません!」
「たかが10名ごとき、返り討ちにしてしまえ!警察は心配するな!正当防衛でなんとでもなる!」
構成員の報告を聞いたラウは指示をしたが
「そ、それが………襲撃者の戦闘力は尋常じゃなく、重機関銃を片手で軽々と振り回して………」
構成員は慌てた様子で説明をしていた。するとその時再び部屋が揺れ、新たな構成員が慌てた様子で部屋に入って来た。
「1階が突破されました!こちらに迫ってくるのは時間の問題かと思われます!」
「くっ………”銀”殿がいれば………!」
新たに入って来た構成員の報告を聞いたラウは唇をかみしめていたが
「………フフ、やれやれ。どうやら頭脳派を気取っている訳にも行かないようですね。」
ツァオは眼鏡をかけ直して余裕の笑みを浮かべて呟いた。
「ツァオ様、まさか―――」
ツァオの言葉を聞いたラウは驚きの表情でツァオを見つめたその時、ツァオは片腕をコキリと鳴らし
「―――出ますよ、ラウ。この程度で”銀”殿に頼っては”黒月”の名折れ………東方人街を支配する我らの力、存分に見せつけてやりましょう。」
不敵な笑みを浮かべてラウを見つめた後、行動を開始した。
~同時刻・ラギール商会~
”黒月貿易公司”が襲撃を受けていたその頃、ラギール商会の店舗も襲撃を受けていた。
「………まさか今の状況で直接攻めて来るなんて………予想外です……”競売会”の件でしばらくは動けないと思っていたのに……………」
襲撃によって時折揺れている部屋の中、部下の”闇夜の眷属”から襲撃の報告を聞いたチキは驚きの表情で考え込み
「私の力は必要かしら、チキ。いつも泊めてもらっているお礼に私も手伝うわよ?」
同じ部屋の中にいるカーリアンは好戦的な笑みを浮かべて尋ね
「カーリアン様に力を貸して頂くほど、私達は弱くありませんよ………ご主人様から貸して頂いたメンフィル兵の方達もいるのですから………」
尋ねられたチキは苦笑しながら答えた。
「あ~、そういえばそうね。それにしても何でリウイはメンフィル兵達を”闇夜の眷属”の”店員”として貴女の指揮下に置いて働かせているのかしら?」
「………クロスベルの裏社会を”私達”―――”ラギール商会”が掌握する事によって、マフィア達による犯罪を無くそうとしているとお聞きしました………」
「……なるほど。”ルバーチェ”と”黒月”………両方ともそれぞれの国派の議員によって、犯罪を起こしても表沙汰にされないものね。もしかしてイリーナ様がリウイに何か言ったのかしら?」
チキの話を聞いたカーリアンは考え込んだ後尋ね
「はい………”今の故郷”や”家族”に自分ができるのはそれぐらいしかないとおっしゃって、ご主人様に頼んで私に来た話なのです………私としても………オーブメント技術品をはじめとした……さまざまな異世界の商品を手に入れられる絶好の機会の上………兵まで貸して頂けるというとてもありがたいお話でしたし………何より………ご主人様の頼みを私が断るなんて………ありえません………」
「フフ、確かにそうね。……それにしても貴女といい、あのエリザベッタって娘といい、”ラギール商会”の連中はみんな、貴女達みたいに強いのかしら?」
チキの説明を聞いて微笑んだ後、口元に笑みを浮かべてチキを見つめ
「カーリアン様にそこまで評価していただくなんて、光栄です………」
見つめられたチキは微笑んだ。するとその時、新たな闇夜の眷属が慌てた様子で部屋に入って来た。
「チキ様!1階の守りの兵達が圧され始めています!エリザベッタ様の活躍でなんとか持ちこたえてはいるのですが、敵の数が多く、2階に侵入を許してしまう恐れが出てきています!至急救援をお願いします!」
「えっ………!?」
「へえ………20人とはいえ、まさかメンフィル兵達を………”闇夜の眷属”達を圧すなんてね。………どうやら私の力が本当に必要みたいね、チキ?」
闇夜の眷属の報告を聞いたチキは驚き、カーリアンは興味深そうな表情になった後、口元に笑みを浮かべてチキを見つめ
「………申し訳ありませんが、よろしくお願いします………――――私も出陣ますので、早急に敵を”排除”しましょう………!」
見つめられたチキはカーリアンに会釈をした後、全身に闘気を纏って真剣な表情で呟き
「フフ、貴女と一緒に戦うなんて久しぶりね♪それじゃ、いっちょやりますか♪」
チキの言葉を聞いたカーリアンは双剣を構えて不敵な笑みを浮かべて言った。
こうしてそれぞれ突然の襲撃に驚いた”黒月”と”ラギール商会”は襲撃に本格的な対処を始めた。そして翌日…………
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