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東方現創録

作者:茅島裕
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博麗神社編
  第二話 飛翔りんご

 
前書き
テスト中の静か〜な時間に物語を考えるとひらめきの多い、どうもうp主妹紅です。

いやはや、そんなことよりも言うことがあるだろうと、そんな声が聞こえてきますね〜。
すみません! ひたすらサボってました。小説を書く、という作業をすることが無くなっていました。
進級した方や、進学した方、就職した方。沢山いますが、私は進学した方の中に含まれていまして、まぁなんだかんだ忙しくて書けませんでした。

まぁ、忙しい理由の例として。艦○れのイベント、ラノベ読み、唐突にはまるF○te、故に近くの中古屋から原作買ってきてやる始末、主にこいつらのせいです。

はい、ただのサボりです。

とまぁ、ここまでテスト中に考えたことですが、いやぁ...ぐうの音も出ませんね。

これを機に、これからまた書いていこうと思いますので、前から読んでくれていた方はもちろん、この回を読んで気に入ってくれた方、何卒宜しくお願いいたします。


本編、どぞ。 

 
「つまり、余計なことしないでじっとしていれば大丈夫」

「動くな、と」

「少なくともあなたが何たる人物かわかるまではね」

今言われた通り、余計なことをしてはいけない、とはどういう意味か。一つにまとめて言うのならば、この世界...... 幻想郷(げんそうきょう)のルールみたいなものである。
簡単に説明すると、幻想郷は忘れられた物や人物が集まる世界であり、所謂妖怪だとか妖精だとかもいる世界なのだと。
これだけ聞いたらただのファンタジーでメルヘンな世界だが、何故にじっとしていなければいけないか。先ほど例に挙げた、妖怪や妖精だ。こいつらには凶暴な、危害を加えてくる輩がいる、怪我をするではすまないらしい。もちろん、全部が全部危害を加えてくるわけではない...... らしい。せめての救いであると考えよう。

ここまで説明して、今オレのお相手をしてくれている霊夢はどうなのかという疑問だが。これも本人が一緒に説明してくれた。
ずばり霊夢は人間である、妖怪でも妖精でもない。じゃあこの子も危ないのではないか、という質問だが、どうやらこの世界には能力と呼ばれる力があるみたいなのだ。
故に、オレが何たる人物か、というのはオレの能力は何たるかも指しているというわけだ。

話によると霊夢はその妖怪を退治する仕事をしていると本人から聞いたのだが、それもまたこの子が大丈夫な理由に繋がるのだろう。

「少なくとも、私が面倒見ていてあげるし、心配しなくて大丈夫よ」

「見てくれオレよりも幼いようだが......」

「今のところはあなたより強いはずだけど、不満?」

「いや... お、お願いします」

能力やら何やらももっと詳しく聞きたいところだが、一番気になるのは、この世は忘れられた人物が集まるということだ。彼女はもちろん、オレも忘れられたということになる。何から忘れられたかなんて知ったことではない、それこそオレは記憶をも忘れ去られたのだ。
況してや、この幻想郷では有名所と言われるらしい博麗(はくれい)神社で巫女を勤める彼女ですらオレの存在を知らないのだ。
オレはここの住人ではないのかもしれないとさえ考えてしまう。

一度思考を停止し、まだ食べ終えていないりんごを囓る。
それを見た霊夢が、

「りんごねぇ... あなたが食べてるの見てたら私も食べたくなったわ」

などとりんごの入った籠を手に、居間を後にした。
消えていった先から、りんごの皮を剥く音、そして切る音が聞こえ。奥が台所であることを察した。

台所から姿を現した霊夢は、りんごの乗った皿を手に、苦笑いをする。

「どうせまだ食べるでしょう? 少し多めに切っておいたわ」

皿を炬燵の上に置くと、和風のこの空間には似合わない洋風なフォークを使い、りんごを口に含む霊夢。

「ん? 使う? 普段使わないからこれ一個しかないけど、はい」

特に何も考えずにりんごを食べる霊夢を見ていただけなのだが、フォークを使いたいのと勘違いされ、フォークを押し付けられた。
押し付けられたなんて表現をしたら迷惑みたいだが、別に迷惑ではない。

「ありがとう。使わせてもらう」

フォークを使い、りんごを口に含み、手でもいいのだがという言葉をりんごと一緒に飲み込み、口には出さなかった。

瞬間、目線が高くなり、時の流れが遅くなった気がした。と当時に頭の天辺から足のつま先まで激痛が走り、目線が戻り出そうとまた時の流れが遅くなったように視覚する。
二度目の激痛がダイレクトに腰へぶつかったあと、目の前で口をポカンと開けている霊夢が目についた。

「な、なぁ霊夢」

「は、はい?」

「オレ、今どうなったよ」

「飛んだ、文字通り」

「なるほど」

ポンっと拳を作った手を平の手に乗せたあと、炬燵に足を突っ込み、テーブルに置いてあった二つの湯呑みのうち、オレの近くに置いてあった湯呑みを手に取り、ホッと。

「ホッじゃないわよ! なにさらっとなかったことにしてんの!?」

「それで霊夢、能力について聞きたいのだが」

「いや流石に今のはなかったことにできないからね!?」

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

「あんたも十分ガキよ、そして私も今あなたを嫌いになったわ。そんなことより、なんで飛んだのよ」

さぁ? とばかりに両手を挙げて首を振る。

「考えたくないけど、りんご食べると空飛ぶ能力とかそんなんじゃないわよね...?」

ないとは言い切れない。何しろオレは自分の能力が何かも分からなければ、あるかどうかも定かじゃない。
ふむ、でもそうなると...
湯呑みを炬燵の上に置き、指を顎の下に持って行き、ちらりとりんごを見た。

「多分、考えてることは一緒のはずよ」

「なら外に行こう、またあの激痛を味わうほどの勇気はない」

全く... これで二回目だぞ。
二回目...?







■■■





「それじゃ、試しにこれ」

ひょいっとこちらに投げて渡してくるりんごを受け取り、一口囓る。
しかしなにも起こらない。

「何も起こらんぞ〜」

居間へ繋がる縁側に座りお茶を啜る霊夢とは少し遠い場所にいる為、声を大きめに発言する。
同じよう声をあげる霊夢は、

「飛んだとき何考えてた〜?」

「りんごうめぇ」

「脈なしね」

そう言われても困る。オレだって飛びたくて飛んだんじゃないしな。
それじゃあ、と言って居間に入っていく霊夢。
その間に一応身体を解す為に準備体操をしておく。念には念を入れよう。
何処で覚えたかも知らない体操を、無いはずの記憶の引き出しから引き出して順に身体を動かすも、何かとそれが楽しくて夢中になって体操をする。

と、そうこうしている間に霊夢が戻ってきて、

「じゃあこれ」

そう言ってオレに近づき、居間で飛んだ時に食べた物を持ってきた。それこそ、同じようにフォークで刺し、同じ皿に乗せてだ。

「そのまま持ってきただけなんだけどね。さっきの状況を再現してみてよ」

まぁつまりは霊夢が言ったままであり、同じことをする為である。
霊夢から皿を受け取り、その場に胡座をかいて座る。

「フォークもさっき使ったままよ。なんならもっと再現する為に一度私が口つけてやろうかしら」

などと冗談を添える霊夢を無視してフォークを使ってりんごを食べる。と...
若干、ほんの若干でなお一瞬だ。胡座をかいて座っていた足に重力の重みを感じなくなり、岩畳に圧される感覚が消えた。
だが、居間での出来事とは程遠く、先ほども言ったよう重力を感じない程度でしかない。成功でもあるが失敗と言えよう。

「どう? って言っても、浮いてなかったし聞くまでもないのだけれど」

「浮いたと言えば嘘になるが、効果がなかったと言っても嘘になる」

「つまり何が言いたいの」

「重力を無効化した、とでも言っておこう」

うーん、と唸りながら顎に手を当て何やら深く考えている霊夢は、オレの手からフォークを奪い取り、"舐めた"。
もう一度言う、舐めた。

「な、何をやってるんだ? 『舐めてるだけよ』なんて言わないでくれよな?」

「わかあお? ほんああけあいえひょ(バカなの? そんなわけないでしょ)」

「舐めながら言うな」

ちゅぽんっとフォークを口から離すと、無駄に唾液のついたフォークでりんごを刺し、オレの口の中に突っ込んだ。

急な出来事で、はぐっ!? などと変な声をあげるオレを無視し、りんごを食わせる霊夢。一体何を考え...て......

「なるほど」

「うわぁぁぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁあ!!」

霊夢がどんどん小さく見える。それも物理的に、自分が遠くへ行っているからである。地面を走っているとかではなく、言ってしまえば空気を蹴って空高く舞い上がってる最中だ。
これだけの勢いを、天井のある場所で行ったらそりゃ痛いに決まっている。じゃなくて、今はそんなこと考えている場合ではない。あわよくば...いや運が悪ければ、雲をも超えてしまう。

降りろ、降りろ!

無我夢中でそう願うと。重力が反転した。
いや違う、本当ならこれが正しい。地面に向かって落ちるのは正しいことなのだから反転したのではなく戻ったのだ。
だが...

「これ、死ぬよな」

冷静さをかけないところがオレの良いところだが、冷静過ぎてもダメだ。というかさっきまで焦っていただろう。

先ほどのように願ってできるものなら、地面に落ちる直前に浮けとでも願えばいいのか。

徐々に霊夢が見えてくる。不幸中の幸い、横に流れることもなく、真っ直ぐ飛んで真っ直ぐ落ちてくれたみたいだ。

浮いてくれ。

そう願うと、まるで背中についていたパラシュートが開いたかのようにゆっくりと落ちるようになる。
光景を一部始終見ていた霊夢が、オレのことを見て目を丸くする。

「凄いわねあんた」

「お陰様で」

「いや、よく制御できたわねってことよ」

「思った通りにできただけなのだが」

「それが凄いことなのよ。それもあの短い間で」

ふわっと地面に足をつけて息を吐くと、霊夢が何やら思いついたように言った。

「それね、私の能力なのよ」

「と、言いますと?」

「空を飛ぶ程度の能力」

「つまりオレは霊夢と同じ能力を持っているということか?」

「今のところはそうとしか言えないんだけど。引っかかる点があるのよ」

あなたもわかるでしょう? と問いかける霊夢に、一緒に空を旅したフォークを見せつける。

「こいつだよな」

「そう、正確には、私が口をつけたフォーク。私の"唾液"が付いているというのが一番かしら」

「吸収した、ということか?」

「そう言うことになるんだけど... 私だけじゃまだ確定は出来ないわね。それこそ、なんでそうなるのかも不思議で仕方ないわ」

そう言い残して地面に置きっぱなしの皿を手に家へ戻って行った。そんな霊夢の後ろ姿を見ながら、オレは考える。

まだ定かではないが、今回は対象の能力を持った人物の唾液を摂取し、その能力がこちらに感染る。即ちコピーであると考えられる。
唾液だけじゃなく、何か対象の能力を持った人物の何か... 言ってしまえば血液や体液だとか、そう言うものを摂取し、能力をコピーできるのかもしれない。

霊夢風に言うのなら。

『能力をコピーする程度の能力』

と言ったところか。

気は進まないが、今後見つけた能力者から唾液でも貰って試してみようか?

先ほどコピーした飛ぶ能力を使い、居間に行こうとするも、飛ぶことは愚か、重力を消すことすらできなくなっていた。  
 

 
後書き
コピーする時間があるのか... はたまた、摂取する量で制限時間が変わるのか。よくよく考えてみれば、効果の強さも違う。

残りに残った霊夢の唾液では重力を消す程度。溜まりに溜まった霊夢の唾液では難なく空を飛んで、制御もできた。

なるほど...


などと自己解釈しながら家に戻って行くのだった。 
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