英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第58話
同日、11:00―――
~ルバーチェ商会~
「クッ……一体どうなっている……ルバーチェめ……何をしようとしてるんだ!?」
ルバーチェ商会の建物の中の玄関で周囲を見回していたダドリーは表情を歪めて叫んだ。するとその時ロイド達が入って来た。
「お、お前達……!?」
「やっぱり中にいたのはダドリーさんでしたか………」
「おいおい。一体どうなってんだよ?」
「ええい、首を突っ込むなと言ったばかりだろうが!?お前達は薬物捜査の方に専念していれば―――」
ロイド達に尋ねられたダドリーはロイド達を睨んで怒鳴ったが
「お言葉ですが、そんな事を言ってる場合でしょうか?」
「そうね。それにルバーチェの失踪は薬物捜査が関わっている可能性も十分に考えられるわよ。」
「………やっぱり中に誰もいないみたいですね?」
「くっ…………」
エリィ達の正論を聞くと唸った後話し始めた。
「……先程から大声で呼んでいるが誰一人として出て来る気配がない。かといって争った形跡があるわけでもない……一体どうなっているかこちらが聞きたいくらいだ……ッ!」
「確か一課は、ルバーチェの動向を監視していたはずですよね?マフィア達がいつ消えたのか把握できていないんですか?」
「…………………………昨晩、警察本部に犯行予告が届けられた。クロスベル空港に爆発物を仕掛けるという予告だ。」
ロイドに尋ねられたダドリーは考え込んだ後説明をした。
「ば、爆発物!?」
「そ、そんな事が……!?」
「………………」
ダドリーの説明を聞いたロイド達は驚いている中レンは冷静な様子で考え込んでいた。
「急遽、一課の人間が集められ、空港での警戒に当たる事となった。………上からの指示でルバーチェを監視していた人員をそちらに回すという形でな。」
「あ……」
「それで監視が引き上げた後に、消えちまったってわけか…………」
「………怪しいですね。その爆発物の予告はどこまで本当なんでしょうか?」
「さてな……クッ、上の連中もいったい何を考えている………!どこまで警察の誇りを踏みにじるつもりだ…………!?」
ティオに尋ねられたダドリーは答えた後怒りの表情で拳を握りしめた。
「ダドリー捜査官…………」
「………………………………―――いずれにしてもこのままでは何が起きているのか把握することすら困難です。ここは建物内部を一通り調べてみませんか?」
「おい………!?」
「うふふ、さすがロイドお兄さん♪今まで以上に思い切った事を考えたわね♪」
そしてロイドの提案を聞いたダドリーは声をあげてロイドを睨み、レンは微笑んだ。
「警察とルバーチェの微妙な関係はもちろん自分もわかっています。捜査令状がない状態で家捜ししたらどんな反撃材料を相手に与えるか……そのリスクも承知しています。」
「ロイド……」
「クッ……だったら何故、そんな無謀な事を言い出す!?」
「”それどころではない状況”になっている可能性が高いからです。―――昨日から今朝にかけて明らかになった事をお伝えします。」
ロイド達は蒼い錠剤が、6年前に壊滅した狂気の教団が作りだした薬物である可能性が出てきたこと……そして薬を使用していた人間達が一斉に姿を消したことを説明した。
「し、信じられん…………その教団の話は聞いた事があるがてっきり壊滅したものかと…………いや、しかし………」
ロイド達の話を聞いたダドリーは信じられない表情をした後考え込み
「ちなみにこれは推測だけど、ルバーチェが消えた理由と爆弾予告で捜査一課を動かしたのも全て”教団”の残党の仕業だと思うわよ?」
「なんだとっ!?……………い、いや確かに貴様のその推理なら納得できる部分があるな。”教団”は各国の一部の有力者達の援助を受けていたという話もあったからな………もし、その繋がっていた有力者がルバーチェと関わり合いのある議員なら……!」
レンの推理を聞いて驚いた後すぐに推理を始め、表情を歪めた。
「事は人命に関わる話です。もしかしたら失踪者達の情報がここに残されているかもしれません。ダドリーさんが納得できないのならせめて俺達の……いや―――俺の独断専行でこのまま見逃してくれませんか?」
「……………………………………」
更にロイドの提案を聞いたダドリーは呆けた表情でロイドを見つめた。
「おいおい、自分一人で責任を被ろうとしてんじゃねえよ。」
「当然、私達も付き合うわ。支援課が取り潰されたとしても見過ごせる状況じゃないもの。」
「ま、今回の件はレンも見逃すことなんてできないから、多少のリスクくらいは一緒に背負ってあげるわ。」
「ええ、一連托生です。」
「みんな…………」
仲間達の心強い言葉を聞いたロイドは振り向いて仲間達を見つめ
「……フン……血は争えないものだな。その強引さ……ヤツにそっくりじゃないか。」
ダドリーは鼻を鳴らした後不敵な笑みを浮かべてロイドを見つめた。
「え………」
ダドリーの言葉にロイドが驚いて振り向いたその時、ダドリーは眼鏡をかけ直した。
「―――違法捜査による証拠物件は法的な証拠能力を認められない。連中がどんな証拠を残していても見て見ぬフリをする必要があるぞ?」
「それは………構いません。今、必要なのはこのクロスベル市において何が起こりつつあるのか……それを見極める事ですから。」
「フン、一丁前の口を利く………だが、それがわかっているならとやかく言うつもりはない。せいぜい足手まといにならないよう付いて来るがいい。」
ロイドの答えを聞いたダドリーは鼻を鳴らした後、口元に笑みを浮かべて驚愕の言葉を口にした。
「え……」
「あら………」
「その……見逃してくれるだけでは?」
ダドリーの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは意外そうな表情をしているレンと共に尋ねた。
「この状況、お前達のようなヒヨッ子どもに任せきりにできると思うか?今からお前達には私の指揮下に入ってもらう。全ての責任は私が持つ………反論は許さん!」
「ダドリーさん………」
「やれやれ……ホント素直じゃないっつーか。」
「やはり照れ隠しの一種ではないかと……」
「クスクス、これが俗に言う”ツンデレ”ね♪」
ダドリーの答えを聞いたロイドは口元に笑みを浮かべ、ランディは苦笑し、ティオは静かな表情で呟き、レンはからかいの表情でダドリーを見つめ
「ええい、うるさい!―――まずは建物内を一通り捜索してゆく………異常があればすぐに報告しろ。」
ランディ達の言葉を聞いたダドリーはロイド達に背中を向けて怒鳴った後ロイド達に指示をし
「はい……!」
指示をされたロイドは力強く頷いた。その後ダドリーと共にルバーチェ商会の建物内を調べたロイド達は時折現れる魔獣や機械兵器を倒し、そしてマルコーニ会長の隠し部屋へと続く通路の仕掛けを解いて仕掛けによって現れた階段を下りて隠し部屋へと向かった。
「!ひょっとしてそこがマルコーニ会長の部屋……?」
隠し通路を進んでいたロイドは扉を見つけると声を上げた。
「無駄に豪華そうだし、それっぽいかもしれねぇな。」
「……とにかく中に入るぞ。いい加減、連中が消えた手掛かりを見つけなくては―――」
ロイドの推測にランディが同意し、ダドリーがロイド達を促したその時
「PPPPPP………未登録ノ侵入者ヲ感知………待機もーどヲ解除シマス……」
目の前の何もない空間から機械の音声が聞こえてきた!
「!?」
「うふふ、お約束の展開ね♪」
「みんな、下がってください!」
そしてティオが警告したその時何もない空間から突然ロイド達が今まで戦った機械兵器とは比べ物にならないくらいの強さを持つと思われる機械兵器が現れた。
「なああっ!?」
「こ、これって……!?」
「カラクリどもの親玉ってわけかよ!?」
「迎撃もーどニ移行……対象者6名……武装ヲ確認シマシタ……『むすたんぐ』ヲ展開……コレヨリ迎撃行動ニ入リマス……」
ロイド達が機械兵器の登場に驚いていると機械兵器は新たな機械兵器を呼び出した。
「遠隔操作の攻撃ユニット……!」
「お前達、気合を入れろ!総力をもってこのデカブツを撃破する!」
「はいっ!」
そしてロイド達は機械兵器達との戦闘を開始した!
「―――――」
戦闘開始時大型の機械兵器は小型のミサイルを放つクラフト―――スミホムラをロイド達に放ち
「散開しろ!」
それを見たダドリーの警告を合図にロイド達は散開して襲い掛かるミサイルを回避した。
「分析を開始します………弱点属性は水!その他の属性も耐性はありません!ダブルドライブ開始………」
「A(アンチ)ディフェクター発動……解析完了っと。小型の機械兵器は大型の機械兵器を回復するからなるべく早く片づけるようにして!」
敵の攻撃を回避したティオとレンはそれぞれクラフトで敵達を解析してロイド達に助言した後それぞれ次の攻撃の準備をした。
「チャージ完了!シュートッ!!」
「フン、邪魔だ!!」
エリィは銃にエネルギーを収束して解き放つクラフト―――フォースバレットで、ダドリーはショットガンで敵達を攻撃してダメージを与えると共に怯ませ
「うぉぉぉぉ……ゼロ・ブレイク!!」
「オォォォォ……ライオットバスター!!」
その隙に大型の機械兵器に近づいたロイドとランディは強烈な一撃を叩き込んで追撃した。
「「―――――」」
するとその時小型の機械兵器達は大型の機械兵器を回復させる為に大型の機械兵器へと移動し始めたが
「うふふ、回復なんてさせないわよ。二の型・改――――疾風追連!!」
双剣に武器を変更したレンが電光石火の速さで小型の機械兵器達を真っ二つに斬り捨てて撃破し
「爪竜連牙斬!!」
「せいっ、ハアッ!!」
「フンッ!!」
「隙あり!シュート!!」
「そこだっ!!」
続けて舞を舞うかのように次々と大型の機械兵器に攻撃を叩き込み、ロイドとランディは敵の側面からそれぞれ攻撃を加え、エリィとダドリーはそれぞれ後方から銃撃で追撃した。
「―――――」
レン達に包囲されて攻撃された敵は片方の腕に持っている刀らしき武器で溜め込み動作を行った後強烈な一撃を放った。
「!粋護陣!!」
「「グッ!?」」
敵が放ったクラフト―――ホシナガレは瞬時に闘気の防壁で防いだレンを除いた二人にダメージを与えると共にふっ飛ばし
「―――――」
「………っ!」
「チッ……!」
後方にいるエリィとダドリーにはクラフト―――スミホムラを放ち、敵の反撃に気づいた二人はそれぞれ回避行動に専念した。
「それっ!アラウンドノア!!グランシュトローム!!」
「!?」
そしてエニグマとアークス、二つのオーブメントの駆動を終えたティオは高火力かつ敵の弱点属性のアーツを放ち、それらを受けた敵はダメージを受けると共に怯んだ。
「――――八葉滅華。ヤァァァァァ……ッ!止めっ!!」
敵が怯んだ瞬間レンは敵を双剣で乱れ斬った後最後の一撃を叩き込むと共に敵の背後へと駆け抜け
「ハァァァァ……だあぁっ!!」
「おぉぉぉ………バースト・タックル!!」
「これでも喰らいなっ!!」
レンの攻撃を合図にダドリーはクラフト―――ビクトリーチャージ、ロイドはクラフト―――バースト・タックル、ランディはクラフト―――デスストームとそれぞれの突撃技で追撃した。
「お願い、ティオちゃん!」
「お任せください!」
その時エリィとティオは互いの視線を交わして頷いた後同時に詠唱をし
「「コールドゲヘナ!!」」
「!?」
絶対零度の光線を天井へと放って、敵の頭上から降り注がせ、エリィとティオが放った協力技―――コールドゲヘナを受けた敵はダメージを受けると共に機体の一部や足元が凍結して身動きが取れなくなった。
「行くぞっ!炎よ、俺と共に燃え盛れ!うぉぉぉぉぉ……っ!!」
身動きが取れなくなった敵を見て好機と判断したロイドは全身に闘志の炎を纏って息もつかせぬ連続攻撃を敵に叩き込み
「貴様ら……絶対に許さんぞっ!!」
ダドリーもロイドに続けてSクラフトを放つ為に身に纏っているスーツを投げ捨ててネクタイを緩めて拳に自身の闘気を収束し、ロイドが最後の一撃を放つと共に敵の頭上から拳を叩き込んだ!
「インフェルノドライブ!!」
「ジャスティスハンマー!!」
「――――!!??」
二人のSクラフトによって大ダメージを受けると共に怯んだ敵は破壊される一歩手前の状態になった。
「小嬢、一気に決めるぞ!」
「うふふ、了解したわ♪」
そして止めを刺す為にランディとレンは互いの視線を交わして頷いた後敵を斜め挟み撃ちにしてランディはスタンハルバードを振るって竜の姿をした炎の衝撃波を、レンは双剣を鞘に収めて両手に付けている籠手から鳳凰の姿をした炎の闘気エネルギーを放った後ランディはスタンハルバードに炎の竜を纏わせ、レンは全身に”鳳凰”のオーラを纏って斜め十字に突撃して自分達が放った衝撃波や闘気エネルギーが敵に命中した瞬間間髪入れずに敵の背後を駆け抜けた。
「「龍凰――――絶炎衝!!」」
二人が敵の背後へと駆け抜け終えると敵を中心に炎の大爆発が起こると共に敵の周囲は凄まじい炎に包みこまれた!
「―――――――!!!!???」
炎竜と鳳凰による炎で敵陣を焼き尽くすランディとレンの協力技――――龍凰絶炎衝によるダメージに耐えきれなくなった敵は消滅した!
「はあはあ………とんでもない相手だったな………」
「ああ……なんで今のを”黒月”にぶつけなかったのか不思議なくらいだぜ……」
「少なくても”結社”の”執行者”達が連れていた人形兵器達よりは確実に上だったわね……」
敵の撃破を確認した瞬間安堵と今までの探索や戦闘による疲労が来たロイドは仲間達と共に地面に膝をついてランディやレンと共に疲れた表情で溜息を吐いた。
「まあ……恐らく制御が難しかったからではないかと……専門の技術者がいなければ暴走する危険もありますし……」
「もし市街地に放たれていたら大変だったでしょうね……」
「ああ、まったくだ……」
ジト目のティオに続くように疲れた表情で呟いたエリィの推測に頷いたダドリーは立ち上がり、ロイド達も続くように立ち上がった。
「よし……最後の障害も突破した。部屋の中を調べるぞ……!」
「はい………!」
そしてロイド達は部屋の中に入った――――――
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