魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第3章:再会、繋がる絆
第51話「未知の次元へ」
前書き
描写されてないですが、設定では椿達は優輝より強いです。
だから、前回あっさりと織崎を気絶させれました。不意打ちなのもありますが。
ちなみに王牙は描写するまでもない状態です。
そこら辺のナンパ男みたいに女性陣に絡んではあしらわれてるだけですから。
=優輝side=
「...未探索エリア?」
「ああ。そろそろそこへ入る。」
クリム・オスクリタを逃してから二日目。
一度皆を集めてからクロノはそう言った。
「次元世界は皆も分かってると思うが、管理局でも把握しきれていない。」
「...だからこそ、“管理外世界”と呼ばれる世界がある。」
「その通りだ。」
クロノや補足した奏の言うとおり、管理局はいくつも連なる世界の全てを知っている訳ではない。
地球が“管理外世界”と呼ばれるように、管理しきれていないのだ。
だから、“未探索”と呼べる次元の域が存在し、その先は管理局も知らないらしい。
「長丁場になると分かっていたため、物資は十分にある。本局にも、そのエリアに進入する許可を得ている。...だから、危険だと判断すればすぐに本局に応援を求められる。...尤も、要請するために撤退できればだがな。」
「...だけど、未知となる領域だから、覚悟しておけと...?」
「そうだ。...僕自身、そんな経験は初めてだからな。何が起きても対処できるよう、用心と覚悟をしておいてくれ。」
まぁ、誰だって“未知”は恐れるものだし、クロノの言うとおり気を付けないとな。
「結局、クリム・オスクリタはどんどん転移で逃げて行ったからねー。」
〈おそらく、残り三つのジュエルシードの下へと向かっているのでしょう。〉
アリシアの言葉にシュラインが答える。
...そう、一昨日シュラインが言った通り、クリム・オスクリタは何度もロストロギア“メタスタス”を使って転移を繰り返していた。だからこんな所まで来たのだ。
「伝えておきたかったのはそれだけだ。何かあればすぐ連絡する。またしばらく自由にしていてくれ。」
クロノがそう言い、話は終わる。
「...そういえば、残り三つがある世界って、まだ人っているの?」
〈そればかりは分かりません。なにせ、数百年経っていますから...。〉
皆が解散し、ふと呟いた司さんの言葉にシュラインがそう答える。
ちなみに織崎の魅了を受けている女性陣は皆出て行った。
リニスさんとプレシアさんもデバイスとかの点検をするらしく、同じく出て行った。
...そういや、織崎にさらに敵視されるようになってたな...?
「...僕の予想としては、まだいると思う。」
「クロノもそう思ったのか?」
クロノの言葉に僕はそう言う。
僕も誰かが生き残っていると思っていた所だ。
「希望的観測だけどな。...ジュエルシードがその世界にある事を奴は知っていた。それはおそらく、メタスタスであの世界に流れ着いた時に知ったのだろう。...でないと、普通は知る事ができないからな。」
「管理外どころか、未探索の世界だからな。僕もそう思う。」
本来シュラインぐらいしか知らない事実だからな。
「そうだとして、もし人が生き残っていないなら奴は既にジュエルシードを持ちだしているはずだ。その三つは願いを歪める事もないのだからな。」
「そうじゃないという事は、そこに誰かが生き残っていて、ジュエルシードを護っているから...って所か?」
「その通りだ。」
どうやら僕とほぼ同じ考えだったようだ。
「だけど、ジュエルシードを扱えるのって私の一族だけなんでしょ?」
〈おそらくは知らないのだと思います。かつて25個あったときは、暗黙の了解でしたから。...それに、天巫女の一族でなくとも、内包されてる魔力を扱う事はできます。〉
司さんの疑問にシュラインが答える。
...もう一つ最悪な想定もあるけどな。奴も天巫女の一族の可能性っていう。
...まぁ、天“巫女”だから結局正しくは扱えないだろうけど。
「...この際、ジュエルシード関連は置いておこう。問題は、奴をどうやって捕まえるかだ...。」
「確か、バインドで拘束した状態から逃げたんだよね?」
クロノ曰く、バインドで完全に拘束し、逃げられない状態だったらしい。
「ああ。あの時のように奇襲に成功しても、すぐに逃げられるだろう。」
「方法としては、不意を突いた一撃で気絶させるか、そのメタスタスをどうにかするか...。」
だけど、前者は奇襲を前提とした作戦だ。
奇襲じゃなければ、不意を突いても魔力を流し込むだけで逃げられるメタスタスがあるので、余程速い一撃じゃなければいけない。
ましてや、何気に長年管理局から逃げ続けている犯罪者だ。一筋縄でいく訳がない。
だからと言って、奇襲のチャンスを待つほど悠長な事はできない。
いつ、奴がジュエルシードを使うか分からない今、早く行動を起こさなければならない。
「....どちらも厳しいな。メタスタスをどうにかしようにも、やはりロストロギアだ。不意を突いて撃ち落とす以外の方法は困難を極める。」
「相変わらず凄い推察だな...。確かに、その通りだ。」
問題は奴本人の実力が未知数なところだ。
弱いのであれば、メタスタス発動までに僕や椿、もしくはフェイト辺りでメタスタスを撃ち落とせるが...今まで管理局の手を逃れてきた奴が弱いとは思えない。
そんな奴が、警戒していつでも逃げられるようにしていたら...。
....ん?“警戒”して....?
「...むしろ、“逃げる”と言う選択肢を選ばせないようにすれば...?」
「....なに?」
「敢えてジュエルシードを使わせ、“別に逃げる必要がない”と思わせ、その時にメタスタスを撃ち落とせば...!」
逃げる選択肢を失くせば、後は手段を奪えばいい。
....だが、これは...。
「バカな事を言うな!みすみすジュエルシードを使うのを....皆が危険に晒されるのを見逃せというのか!?」
「...そこが、問題だよな...。一個、二個程度なら何とかなるだろう。だけど、おそらく奴は全て使うつもりだ。そうなれば、捕まえるどころの話じゃなくなる...。」
結局、振り出しに戻った。
「....いや、一つだけ手がある...?」
「えっ?」
ふと、一つの事に思い当たり、司さんを見る。
「...司さんが、天巫女として残り三つのジュエルシードを使って、対抗すれば...。」
「み、三つで対抗できるの...?」
〈可能です。あの歪んだジュエルシードの出力より、正当な使い方をした方が強力ですから。対抗は可能です。...ですが。〉
「対抗止まり...か。いや、三つで7倍の数に対抗できるって...。」
そう考えると、天巫女って凄まじいな。
...って、待てよ?三つで...なら...。
「四つだとどうなんだ?」
〈.....抑え込む事は可能です。もちろん、その後の封印などは他の者任せになります。〉
「うーん...。」
まぁ、封印するだけなら何とかなるか...?
〈ちなみに、それはどれだけ低く見積もっても...です。しっかり使えば、三つだけで事足ります。〉
「マジでか...。凄まじいな...。」
改めてロストロギアの凄まじさを垣間見た気がする...。
「だが、危険な事には変わりない。司が例え天巫女の一族だとしても、上手く行くとは...。」
「...いえ、やってみます..いえ、やらせてください!」
「司?」
突然そう主張した司さんに、僕もクロノも少しばかり驚く。
「(私がやらないと、皆の危険が増す...。それだったら、私だけが...!)」
...なんだろうか、嫌な予感がまた...。
「...上手く行けば、こちらとしてもありがたい。...だが、危険だというのを忘れないでくれ。」
「...大丈夫、分かってるよ。」
クロノも少し訝しんでいるが、僕がさっき言った展開になった場合はそうするしかないので、とりあえず了承した。
「だが、最善手はジュエルシードを使わせる前に完全に捕縛する事だ。」
「そうだな。まぁ、あいつの目的はジュエルシード全てだ。早々ロストロギアで逃げる事もないと思うよ。」
目的の物が目の前にあってみすみす逃げる事はしないだろう。
...まぁ、用心に越した事はないが。
「...とりあえず、今のを参考にこれからの作戦を組み立てる。...少し集中したいから一人にしてくれないか?」
「了解。...あまり根を詰め過ぎるなよ?」
「分かってる。慣れもあるが、それぐらいは身を弁えてるさ。」
まぁ、クロノはきっちりしてるからそこは大丈夫だろう。
無理はするだろうから油断できないが。
「そう言う事だし、出ておこうか。」
「うん、そうだね。」
あれ?そう言えば椿と葵もいたはずだけど...。
「...なにやってるの?」
「相変わらず魔法関連は理解しにくい事があるから、聞き流しながら御札調整?」
「重要な所は聞いちゃってたけどねー。」
そう言いながら、大量の御札を仕舞う。
「どうせ後の会議で分かるでしょ。さぁ、出ておきましょ。」
ちょっとぶっきらぼうに椿はそう言って、先に出て行く。
「(...機嫌損ねたかな?)」
もしかして放置してたから?
「かやちゃん、優ちゃんに構ってもらえなかったからって拗ねてるー。」
「なっ...!?す、拗ねてないわよ!べ、別に寂しくなんて...!」
「誰も寂しい?って聞いてないよ?あたしはちょっと寂しかったけど。」
「っ~~~!!」
...あー、やっぱり、放置してたのが悪かったか...。
後で、なにか埋め合わせを...。
「まぁ、放っておいて悪かったよ。放置されるのは精神的にきついもんな。」
「むぅ...ま、まぁ、いいわよ。分かってくれたなら。」
椿はそっぽを向きながらも、許してくれた。
「あー...君達...?」
「っと、すまんクロノ!ほら、行くぞ椿!」
「あ、ゆ、優輝!?」
未だに部屋に留まっていたせいで、耐えかねたクロノが声を掛ける。
慌てて僕は椿の手を握ってその部屋から退散した。
もちろん、葵や司さんもついてきている。
「っ~~~!(ゆ、優輝の手、手が...!)」
「(うわぁ...かやちゃん、尻尾振れまくってるし、花も...。)」
...なんか椿の手に熱がこもった気がして後ろを振り向くと、顔を赤くした椿と、なぜか出現しまくる花が...。
何か嬉しい事でもあったのか?
「椿?」
「え?っ、きゃっ!?」
「あ、しまっ!?」
立ち止まって聞こうとしたら、いきなりすぎたのか椿は体勢を崩してしまう。
そのまま、僕にぶつかる形で転んでしまう。
「....あ、えと..。」
「っ...!ぅ、ぁ....っ~~!」
僕を押し倒す形になった椿は、みるみる顔を赤くする。
「ご、ごめんなさい...!」
「あ、ああ。いきなり止まった僕も悪かったよ。」
すぐさま僕の上から退いて謝ってくるので、普通に許す。
まぁ、怪我もないし別にいいからね。
「....優輝君ってもしかして...。」
「うん。多分、天然の女誑しだよ。」
「なんか言ったか?」
司さんと葵が何か言っていた気がするけど、聞き逃してしまった。
「っ......!」
...椿は椿でさっきの気にしてか顔赤いし。(なぜか花も出てくる。)
〈...マスターは昔からこうですよね...。〉
「おい、リヒト。それどういうことだ。」
なんか納得のいかない会話が繰り広げられてる気がする...。
「シッ!」
「はぁっ!」
トレーニングルームにて、リヒトと椿の短刀がぶつかり合う。
さっき放置していた事に対するお詫びの一つだ。
他にも、僕の手料理を振る舞ってくれとか頼まれている。
ちなみに、司さんはあの後リニスさんやプレシアさんのいる方へ向かった。
「はっ!」
「っと!」
連続の突きを、僕はリヒトで受け流す。
けど、受け流す事は予測されているため、受け流されても隙がない。
それどころか...。
「甘いわ!」
「なっ!?」
反撃を逆に受け流され、懐に入り込まれる。
そのまま放たれる掌底を、何とか身を捻らす事で回避する。
「まだよ!」
「くっ...!」
だけど、回避した所に足を薙ぎ払われ、思わず後退してしまう。
...ここまで来れば、もう詰みだ。
「終わりよ。」
「っ!!」
―――ヒュガガガガ!!
一瞬でいくつもの矢が放たれ、微妙に速さが違うそれらは、僕に到達する時には寸分の狂いもなく同時だった。
そのため、全てを受け流す事もできず、僕は壁に磔状態になり、手も足もでなくなる。
実戦であれば、すかさず追撃を受けるため、これで僕の負けだ。
「...やっぱり腕を上げた?」
「霊力も完全に回復して、ちょっと力不足を感じたのよ。...それに、もっと優輝の役に立ちたいから...。」
「まだまだ子供には負けられないよー。」
椿と葵も、緋雪が死んでからさらに腕を上げたらしく、二人共一対一でも僕に勝てるようになっていた。
「しっかし、すぐに追い抜かれたなぁ...。」
緋雪の死から立ち直ってしばらくの頃は、二人同時に相手してても拮抗できていたのに、今では一対一でも負ける事があるようになっていた。
「優ちゃんがこのまま大人になっただけでも、あたし達は勝てなくなると思うけどね。」
「優輝に勝てるのは、まだ優輝が子供の体だからよ。」
種族によるスペック差もあるだろうけど、やはりそこなんだな...。
僕もムートの時の経験を思い出してはいるけど、如何せん前々世とは体格が違う。
だから、いくつかの齟齬が生じ、二人に負けてしまう。
「それと、本来は式姫の強さには上限があるのに、優輝の式姫になってからはそれが感じられないのもあるわね。」
「あたしもデバイスになった...と言うよりも、優ちゃんと一緒にいるようになってからは同じだね。だから、その分あたし達も成長しているの。」
あー...そりゃ、勝てないかな...。
ただでさえ戦闘に関しては僕並なのに、さらに成長するからな。
「...ま、心強いのには変わりないよ。」
「と、当然よ。私は優輝の式姫なんだから。」
顔を赤くしてそっぽを向きながらそう言う椿。花が出てる所から嬉しいのだろう。
そんな椿に、葵と共に和んでいると、クロノから通信が入る。
『これからの方針を決める。一度会議室に集まってくれ。』
「...決まったみたいだな。」
「っ、ええ。行きましょうか。」
ちょうど特訓もキリがいいし、そのまま会議室に向かった。
「さて、作戦についてだが...。まず大前提として、僕達の目的は次元犯罪者クリム・オスクリタの捕縛だ。ロストロギアはその過程で障害になるものと分かっていて欲しい。」
再び皆が集まり、クロノの話を聞く。
「捕縛の作戦は至ってシンプルだ。奴が逃亡する前に行動不能にする。...それだけだ。」
「でも、それが難しいんじゃ?」
なのはが率直にそう言う。一部の人も同じ考えのようだ。
「まぁ、飽くまでこれは“捕縛の作戦”だ。ロストロギアの存在からすれば、当然そんなのは容易じゃない。」
「じゃあ、どうやってそれを成し遂げるの?」
今度はフェイトが聞く。
「やはり一番上手く行ってほしいのは奇襲をかけてロストロギアを使われる前に行動不能にする事だ。もちろん、そうするために全力を尽くすが...。」
「...失敗した時の対策...だな?」
この会議の中心はそれだ。
さっき、クロノはそれについて考えていたのだから。
「ああ。...奴の目的はジュエルシード全て。おそらく、行動に出たら逃げる可能性は低くなるだろう。目的の物が目の前にあるからな。」
「...つまり、ジュエルシードを囮にするのか?」
織崎が推測してそんな事を言う。
「そんな危険な事、本来ならしたくないが...当たらずとも遠からず...だ。」
「...おいクロノ、もしかして...。」
なんとなく、さっきクロノとしていた会話を思い出す。
「...もし、ジュエルシードを使われた場合の作戦の要は、司だ。」
「っ...!」
クロノは僕と司さんを一瞥してから、皆にそう告げた。
「司が天巫女としてその世界にあるジュエルシード三つを使い、奴に対抗する。」
「なっ....!?」
「ふざけんじゃねぇ!!なに司を態々危険に晒してやがる!!」
織崎と王牙が驚愕し、クロノにそう怒鳴る。
まぁ、気持ちは分かる。囮とそんなに変わらない事をさせてるからな。
「...飽くまで最悪の事態になれば...だ。僕だってそんな事は実際になってもしたくない。...だが、彼女自身がその時の覚悟を決めているんだ。...なら、信頼するべきだろう。」
「っ...くそ...!」
....実際は、他に打つ手がないのだろう。だから、こんな危険な作戦を...。
「さっき言った通り、これは最悪の事態での作戦だ。ジュエルシードの危険性を考えると、奴に“逃げ”の選択肢を取らせた方がマシだ。」
「でも、使われた場合は私が...。」
「...不本意ながら...な。」
最悪を想定して対策を立てておくのは良い事だが、その内容が織崎たちには納得できないのだろう。
「ジュエルシードを制御できる可能性が高いのは、司だけだ。だから、どうしてもジュエルシードを使われた場合は司を中心として動く必要がある。...分かっていてくれ。」
「僕らは精々サポート...って事か?」
「そう言う事だ。」
変質していないジュエルシードを制御するのは、確かに容易だろう。
そして、その力で他のジュエルシードを抑え、僕らはサポートに徹する。
なんともまぁ、他力本願みたいで歯がゆいなぁ...。
「そんな面倒な事なぞせずに、さっさと追いついて捕まえりゃいいだろうが!」
納得のいかない王牙が吠える。
「なら、君はどうやって奴を捕まえる?奴は僕達管理局を警戒している。その上で気づかれず、魔力を使う隙も与えずに昏倒させれるのか?」
「はっ!俺なら楽勝だ!」
...いや、毎回あっさり負けたりするお前が言っても説得力皆無だぞ?
「帝の言った事を実現するには、まずアースラの転移装置を使わずに...そして奴に勘付かれずに次元転移をする必要がある。...この時点で相当難しいのが分かるだろう?」
まず、単独で次元転移ができる人物の時点で、人数が少し限られる。
おまけに、“気づかれない”事が条件に入ると、誰もできないだろう。
「もし逃げられなかったとしても、その際にジュエルシードが発動したらどうするんだ?たった一つでさえ次元世界を崩壊させる危険性があるんだ。」
「あれ?それは司がジュエルシードを使った時も同じじゃないの?」
アリシアがそんな疑問を持ち、クロノに質問する。
「日本の慣用句というものに、“目には目を、歯には歯を”というものがある。...少なくとも、僕ら人が対抗するよりはマシだ。」
〈また、マスターならば三つで他のジュエルシードを抑える事が可能です。〉
クロノとシュラインの回答に、アリシアは一応納得したらしい。
「...とにかく!先程言った作戦が、今の所最善手になる。それを心に留めておいてくれ。...勝負は天巫女一族の故郷に辿り着き、奴が現れた時だ。」
そう言って、クロノは解散を言い渡す。
....着くまで時間があるんだな...。
「(シュラインで天巫女一族の故郷は分かるとしても、奴より先に着けるのか?)」
後手に回っている今、奴より後に着いた場合はすぐさま逃げられるかジュエルシードを使われるかの二択のはずだ。
それを、クロノが見落としているとは思えないが...。
「...なぁ、クロノ。奴より早く辿り着けるのか?」
「...計算上は可能だ。幸い、僕らがまだ追いかけている事に奴は気づいていないらしくてな。休みでもしているのか、シュライン曰く世界を移動していないそうだ。」
聞けば、既に僕らは追い抜いているらしい。
...いつの間に天巫女一族の故郷を探知したんだ...?
「ホント、今回はシュラインのおかげで色々助かっている。世界の位置についても、シュラインが見つけて報告してくれたからこそ分かるようになったんだ。」
「そうなのか....。疑問が解けたよ。それじゃ、体を休めておくよ。」
そう言って、僕は部屋を出る。
「...いよいよね。」
「優ちゃんの両親のためにも、必ず捕まえなきゃだね!」
与えられている個室に向かう途中、椿と葵がそう言う。
「....ああ。」
嫌な予感が拭えない。
確かに今回の事件は僕にとっても途轍もなく重要だ。
だけど、それ以上に...。
「(...それも含めて、しっかりと備えておかねば...。)」
ありとあらゆる事態に対応できるように、今は体を休めよう。
そう思って、個室へとさっさと向かう。
「....焦らないで。」
「っ...そうだな...。」
足早になっていた僕を椿が引き留めてくれる。
...助かった。どこか焦っていたらしい。
「...貴方が焦るという事は、よからぬ事が起きるのかもしれない。...だけど、私達がいる事も忘れないで。...いいわね?」
「...もちろんだ。もう、間違えたくはない。」
緋雪の二の舞にはしたくない。
そう強く思い、志をしっかりと固めておく。
「もしもの時は、しっかり頼らせてもらうぞ。」
「ええ。任せなさい。」
二人は僕より強い。だから、いざという時は頼らせてもらう。
そう思いつつ、僕らは個室へと向かっていった。
―――翌日、いよいよ目的の世界へと辿り着いた...。
後書き
色々とオリ設定を盛り込んでいく回。
第3章は結構長引く予定です。
一応、流れとしては司が要となる章です。
ちなみに、優輝は“天巫女”については、ムートの時に見た文献と、かつてあったキャラクターステータスで見た知識しかありません。
ただ、文献で知っているため、天巫女の力を漠然とだけど知っている感じです。
...だからどうしたって話ですが。(第2章でムートの欠片が思わせぶりなセリフを言っていたので、一応補足です。)
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