ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第54話世界の核心まで!!
世界樹の中に入れば、そこは根に隠れたガーディアンの管轄。オレの隣にいるのはオレと同じ二人の影妖精の親友。
三年以上前に現実の世界で出会い、かつて仮想の世界で喪ったと思っていた男ーーーミストこと霧島弾。
かつて本当にお互いを知らない偽りの世界が死の世界と化した時、確かに絆を結んだ《黒の剣士》ーーーキリトこと桐ヶ谷和人。
オレはこの二人の親友と並び、背中を五人の仲間に任せーーーワラワラと虫のように湧いてきた白き神兵集団を滅ぼしに行く。
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
まずはキリトの剣が前の敵を真っ二つに斬り、オレが一体を右脇腹から左肩に向けて斬り上げる。そしてその胴の部分を掴み、後ろから斬りかかりにくる敵に投げつけノックバックさせ、弾が槍で貫く。
「フンッ!!」
さらに四方八方から剣で突きにかかる敵を《ドラゴンビート・巨人の信念》の能力の一つ、チャクラムのような投剣で一斉に斬り落とす。《ドラゴンビート・巨人の信念》が手元に戻ってくる前に襲ってきた二体の敵の一体を弾が槍の切っ先で斬り落とし、オレが頭を掴んで握り潰す。
「数が多いとは聞いたけど、ちょっと多すぎないか・・・?」
戻ってきた《ドラゴンビート・巨人の信念》を回収して後ろにいるキリトの発言を聞き流す。一回下見してきた立場から見ても、確かに多すぎだな。49人のフルレイドでも数時間で全滅しちまうんじゃないかってくらいの出現率だ。
そうこうしてる間に目の前に視界を覆い隠さんばかりの大量の敵が集まってくる。
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
それでもオレ達は止まる訳にはいかない。オレ達は雄叫びをあげ、目の前の敵を滅多斬りにしたり、焼き鳥の如く串刺しにしたりでどうにか道を空けようとするがーーー次々と湧いてきて正直キリがない。
そんな中、隊列を組み次々と剣で斬りかかってくる敵に反応が遅れた。それによって減少したオレ達のHPを後ろでサポートに回ってくれている仲間が回復魔法や防御力上昇の魔法でオレ達を回復・強化してくれた。
その時、数体のターゲットが翼達に向いた。恐らく外のモンスターとは違うアルゴリズムを与えられているんだ。これじゃあ前衛と後衛に分ける意味がない。今すぐ助けに行きたい。でもーーー
「ライリュウ!こっちに集中しろ!今は目の前の敵を蹴散らすんだ!!」
「《リトルギガント》はもう一撃で死ぬほど弱くないんだ・・・信じろ!!」
「・・・おう!!」
キリトと弾の声かけで目が覚めた。そうだ、あいつらは強くなってるんだ。この妖精の世界で武器を振るって、現実世界でオレと未来を待つっていう辛い戦いを続けていたんだ。この程度でくたばるような奴らじゃない。そう信じてオレはーーー敵を切り刻む。
「!?レコンの奴、何やってんだ!?」
弾の声を聞いて、その視線の先を見たらーーーレコンが指先から風魔法の刃で敵を撃破していた。それも後衛にいるリーファ達から離れた場所で、一人で。そして左手に握っていた飛行が苦手なプレイヤーが使う補助コントローラーを投げ捨て、魔法の呪文を詠唱する。その詠唱は今まで聞いた中で最も長い呪文だった。ALOを始めてそこまで経ってないっていうのも理由の一つだけど、詠唱した単語がこんなーーー太陽みたいな輝きと大きさになるまでの大魔法は古参でも中々御目にかかれないだろう。そしてその太陽が弾けーーー詠唱者もろとも敵を滅ぼした。
「自爆魔法・・・相当なデスペナルティのはずだ」
デスペナルティーーーゲームオーバーになったら、アイテムやステータスをランダムで失うというALOの要素。プレイヤースキル重視のALOではかなり痛いはずだ。そんな諸刃の剣をオレ達のためにーーー
「レコン!!まだ意識あるか!?」
オレは自爆魔法の中心部から落ちていく緑色のリメインライトに叫ぶ。レコン、お前はーーー
「お前、大した根性の持ち主だったぜ!!ナマクラって言ったのは取り消すぜ!!後は任せろ!!!」
勇敢な戦士だったぜ。
オレとキリトと弾はレコンの魔法で開いた穴に向けて飛び上がる。群がる敵を掻き分けて、もう少しの所でーーー大量の敵の塊にぶつかってしまった。
「グッ!ガァッ・・・!!」
「ゴフッ・・・!!」
「グアァッ・・・!!」
それだけでは終わらず、上から数体の敵に剣で腹や足を貫かれる。敵が離れた瞬間、レコンの開いた道が閉ざされていくのが見えた。後ろで亜利沙がウンディーネの得意技、強力な回復魔法でレッドゾーンまで減っていたオレ達のHPを全回復する。
こうなったら後でバテるのを覚悟して《オーバーロード》でーーー
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
突破しようと考えていたら、大勢の雄叫びが聞こえた。
緑色の羽ーーー否、翅。白い鎧の肩から垂らす緑色の布。《リトルギガント》のリーダーの翼やキリトの妹のリーファと同じ種族の精鋭ーーーシルフ部隊。
時同じくして、数体の獣が飛び回ってくる。
頭から足、尻尾にかけて装甲された鳥ーーー否、飛竜。それを乗りこなす猫の耳と尻尾が生えているケットシー族の領主、アリシャ・ルーの保持するーーー竜騎士隊。
「すまない。遅くなった」
「ゴメンネ~♪装備を揃えるのに時間がかかっちゃってさ~♪」
「サクヤさん!アリシャさん!」
シルフ部隊と竜騎士隊を指揮するシルフ&ケットシー同盟、両種族の領主ーーーサクヤとアリシャ・ルー。
「ヘヘッ、心強い味方がたくさんいるじゃねえか・・・」
【きゅるぅぅぅ!!】
「ん?」
何か耳元で聞き覚えのある声が聞こえたような気がする。そっと声の聞こえた場所に目線を向けーーー水色の羽毛に視界が染められる。
「・・・ピナ!?」
かつてSAOで出会った少女が飼い慣らしていた愛獣ーーー否、相棒。ピナによく似た、というかピナそのものが目の前にいた。もしかしてとキリトと周りをよく見たらーーー嬉しいと思えた。
青い服を着た、ダガーを持つツインテールのネコミミの少女。
赤いつなぎの上にショルダーアーマーや鉄製の胸当てを着た、メイスを振り回すピンク色の髪のそばかすの女。
赤い着物を着た、刀で敵を断ち切る野武士面の侍。
そう、あの世界を生き抜いた仲間達ーーー
「シリカ!リズさん!クライン!」
「お久しぶりです!ライリュウさん!キリトさん!」
「ライリュウのお兄ちゃんに全部聞いたわ!《リトルギガント》が生きてるって事!それに・・・アスナとミラの事!」
「戦友の一大事に酒飲んでも味なんてしねぇからな!全部終わったらオフ会だぜ!キリト!ライリュウ!」
そうか、龍星がみんなに頼んでくれてたのか。たまにはまともな事するじゃねえか、クソ兄貴。こんなに心強い仲間がいてくれたら、安心して戦える!
『竜 (くん)!!弾!!』
『ッ!!』
オレと弾を呼ぶ声が聞こえて、そこへ視線を向けた。そこにはーーー長刀で、チャクラムで、弓から持ち変えた二本のクナイで敵を斬りながら飛んでくる翼達がいた。
一ヶ所に集まったオレ達《リトルギガント》はーーー背中合わせで周囲の敵に武器を向ける。
「オレさ、目標があるんだ!」
オレは弾、翼、かんな、亜利沙に声をかける。これから最終局面に入る。その前に言わなくちゃーーー
「未来を助けて・・・《リトルギガント》を完全復活させるぞ!!」
『おう!!』
オレが掲げた目標をーーー誓いを胸に、目の前の敵を薙ぎ倒す!!
小さな巨人が、桐ヶ谷兄妹が、剣の世界の戦友達が、シルフ部隊と竜騎士隊が次々と敵を撃破していった先には、この世界樹のドームの天井にはーーー空中都市に繋がる扉が。
「竜くん、これ持っていって!!」
突然亜利沙に何かを渡された。それはーーータップしてもウィンドウが出ない謎の《カードキー》。ALOのアイテムじゃない事は分かる。だとすると、これは未来かアスナさんがオレ達に託したーーーメッセージ。
オレはそれを落ちないように左腕のガントレットに挟み込んだ。
「弾!!キリト!!行くぞ!!世界の核心まで!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
オレは弾とキリトを呼び、三人で空中都市に繋がる扉に向かって飛び上がる。
途中で100体近くの敵が道を阻むが、そんなの関係ない。お前らにオレ達三人のスプリガンを止められない。止められて堪るか。オレ達は数える事さえ面倒な数々の敵を蹴散らしながらーーー
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』
空中都市に繋がる扉に辿り着いた。
後はこの扉が開くだけーーーここで問題発生。
「クソッ・・・どうなってるんだ?」
扉が開かない。石で出来ている丸い形の、十字型の溝が入った大きな扉。グランド・クエストをクリアにはこの扉を潜らなければいけない。なのに、肝心の扉が開かない。ヤケクソでこの十字型の溝に剣をねじ込むが、全く変わらない。
「ユイ!」
「はい!パパ!」
キリトはコートの胸ポケットに入っていたユイちゃんに扉を解析させる。それでユイちゃんの解析結果はーーー
「みなさん。この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません。システム管理者権限による物です!」
「どういうことだ・・・?」
「管理者、権限・・・?」
オレはユイちゃんが何を言いたいのか分かった。つまり、グランド・クエストなんてーーー
「つまりこの扉は、プレイヤーには絶対に開けられないという事です!」
『なっ・・・!?』
初めから存在しない、嘘っぱちイベントだったって事になる。
周りを見たら、さっきまでオレ達が戦ってたNPCガーディアンが出現していた。どうすればいいんだよ、この状況ーーーそうだ!
「ユイちゃん!このカードキーを使ってくれ!」
「何だそれ?」
「お前らを投げ飛ばした時に亜利沙が拾ったらしい!もし管理者の物だとしたら、ユイちゃんなら権限が一部使えるかもしれない!ユイちゃん!!」
「はい!」
オレが差し出したカードキーに、ユイちゃんが手を付け目を瞑った。その瞬間、カードキーに電子のような光のラインが走り、それをユイちゃんが取り込む。
「コードを転写します!」
SAOにおけるGMに近い存在だったユイちゃんが、今このALOで手に入れた権限を行使しーーーさっきまでピクリともしなかった扉を開いた。
「転送されます!パパ!おいちゃん!ミストさん!手を!」
オレとキリトと弾はユイちゃんに手を差し伸べ、身体中を包む光の中で意識を手放した。
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