英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第72話(インターミッション終了)
~ウルスラ病院~
「まったくもう、ロイドってばゼンゼンわかってないんだから。………キオクだってべつになくってもヘイキなのに………どうしてみんなそんなに気にするのかなー?」
一方ヨアヒムの部屋を出て、さらに病院を出たキーアは敷地内で頬を膨らませて呟いた後、首を傾げ
「あれれ………ここ、どこだろう?」
自分が敷地内を歩いている事に気付いて周囲を見回して首を傾げていた。
「???んー………キーア、まいごになっちゃった?あ………」
首を傾げて呟いたキーアは池の傍の手すりにいるある人物を見つけて声をあげた。
「………ふふ、いい風………お父さん………今日はいつ来るのかなぁ。」
ある人物―――シズクは肌に感じる風を感じた後、嬉しそうな表情で独り言を呟いていた。
「ねーねー!」
するとその時キーアがシズクに声をかけて、シズクに近づいた。
「あなたは………」
「ねー、なにが見えるの!?ひょっとしておサカナでも泳いでる!?」
「ふふっ。わたしには見えないけどちゃんと泳いでると思うよ?ときどきパシャって跳ねる音がするから………」
「あ、ほんとだ!いっぱいいるみたい!うーん、キーアもツリってしてみたいなー。」
シズクの話を聞いたキーアは池の手すりに近づいて、池を見つめて嬉しそうな表情をした。
「ふふっ………キーアちゃんていうんだ?わたしはシズク。シズク・マクレインっていうの。」
「シズク、シズク……うん、いい名前だね!」
「ふふっ、ありがとう。キーアちゃんも素敵な名前だと思うよ。ここにはお見舞いに来たの?」
「あ、ううん。キーアのキオクをみてもらいにきたんだけど………」
「きおく………?」
キーアの話を聞いたシズクは不思議そうな表情をした。
「あのメガネのセンセイがロイドたちと離れろとかいうからキーア、にげてきちゃった。ふふん。せんりゃくてきてったいってやつ?」
「逃げて来ちゃったって………(あれ、ロイドたちってもしかして………)」
「ねえねえ、シズク。なんでさっきからずっと目をつぶってるのー?」
「あ、うん………わたし、目が見えなくてそれで入院してるから………」
「ふーん、そうなんだ。キーアもキオクがないしおあいこかもしれないねー。」
「あ……記憶………そっか、そうなんだ………なんにも覚えてないの?お父さんとか、お母さんとか。」
キーアの話を聞いたシズクは悲しそうな雰囲気を纏って尋ねた。
「………うん、そーみたい。でも、ロイドたちがいるからゼンゼンさみしくないよ!」
「ふふ、そっか………わたしもお母さんはいなくなっちゃったけど………お父さんがいるし、病院のみんなも優しいから寂しくはないかな………?」
その後キーアとシズクは仲良く会話を始めた。2人の会話は弾み、時間がどんどんと過ぎて行き、いつの間にか夕方になっていて、2人が会話しているとキーアを探していたロイドとティオがキーアを見つけた。
「いた………!」
「やっと見つけました………」
キーアの姿を確認したロイドは明るい表情をし、ティオは安堵の溜息を吐いた。
「それでね、それでね!ツァイトっていう犬がとってもおーきいんだよ!なんかえらそーだけど、もふもふってしててねー。背中をかいてやるときもちよさそーにしてるの。」
「ふふっ、そうなんだ。大きな犬さん……ふわふわなんだろうなぁ。」
「シズクもたまにマチに来るんだよねー?その時にいっしょにツァイトとあそぼーよ!?」
「あはは………うん。お父さんに頼んでみようかな?あ、エステルさんたちも頼んだら付き合ってくれるかも………」
「あ、エステルってゆーげきしのおねえちゃん?シズクもしってるんだ?」
「ふふ、たまに街に出た時、買物とかに付き合ってくれるの。お父さん、いつも忙しいから………」
ロイドたちがキーアの姿を確認するとキーアとシズクが仲良く会話していた。
「はは………シズクちゃんと一緒だったか。」
「………ずいぶんと盛り上がっていますね。」
2人の様子を見ていたロイドとティオは微笑ましそうに見ていた。するとその時
「フ………子供は馴染むのが早いな。」
「ア、アリオスさん………!?」
アリオスが2人に近づき、アリオスに気付いたロイドは驚いた。
「フ………記念祭の時はルファディエル達に世話になったな。あの時の協力、スコットが感謝していたとルファディエル達に伝えておいてくれ。」
「スコットさんがルファディエルさん達に………ですか?」
アリオスの話を聞いたティオは意外そうな表情で尋ねた。
「ああ。古戦場に入り込んでしまった観光客の捜索に同じ依頼を受けたスコットがずいぶんと世話になったらしい。なんせ彼女達は空から捜索できるからな。広い場所ゆえ、捜索は難航するかと思われたが彼女達が空から捜索しながら連絡を取り合っていたおかげで、観光客達を想定していた時間よりも早く保護できた上……手強い魔獣に囲まれた観光客も彼女達が助け、魔獣達も全て倒したらしい。」
「さ、さすがルファ姉ですね………」
「………まあ、あの時はメヒーシャさんとラグタスが一緒に行動していましたからね。ただでさえ一人でも十分強いルファディエルさんにあの2人が加われば、まさに敵なしですよ。」
アリオスの説明を聞いたロイドは苦笑し、ティオは静かな笑みを浮かべた。
「フフ………ところで――――あの娘が例の………?」
「ああ、ミシェルさんたちから話を聞いたんですね。ええ………キーアっていいます。」
「そうか……………………」
ロイドの話を聞いたアリオスは返事をした後、じっとキーアを見つめていた。
「えっと………キーアがどうかしましたか?」
「まさか見覚えが………!?」
アリオスの様子を見たロイドは尋ね、ティオは驚きの表情で尋ねt。
「いや………不思議な娘だと思ってな。娘は―――シズクは行儀が良くて人当たりはいいがどうも遠慮しがちな所がある。それで、同年代の子供ともあまり馴染まなかったんだが………」
「ああ、なるほど。………なんだかすごく楽しそうにしていますね。」
そしてアリオスの話を聞いたロイドは納得した後、微笑ましそうにキーアとシズクを見つめていた。
「そうだな………………あの娘にどのような背景があるかはわからない。だが、関わったからには最後まで責任を持つ事だ。そして………大事に慈しんでやるといい。」
「あ……はい、そのつもりです。」
「……お父さん?」
「ああっ………ロイドとティオ!?」
ロイドたちがアリオスと会話をしているとシズクとキーアがロイド達に気付いて驚いた。
「気付かれちゃったか………」
「………ふむ。」
そしてロイド達はアリオスと共に2人に近づいた。
「お父さん、お帰りなさい。お仕事、大変だった?」
「いや………今回はそうでもなかったな。ただいま、シズク。」
シズクに尋ねられたアリオスは静かな笑みを浮かべてシズクを見つめた。
「このひと、シズクのおとうさん?すっごく背が高いねー。それになんかつよそー!」
「えへへ………そう?ロイドさんたちも………こんにちは、おひさしぶりです。」
キーアの言葉を聞いたシズクは嬉しそうな表情をした後、ロイド達がいる方向に向けて挨拶をした。
「ああ、お久しぶり。」
「キーアと仲良くしてくれたみたいですね?」
「あ、いえ、わたしの方こそ仲良くしてもらっちゃって。」
ティオの言葉を聞いたシズクは恐縮した様子で答え
「……ところでロイド。キーア、ぜったいにここに泊まらないんだからね!?」
キーアはロイドを睨んで言った。
「ああ、それはもうわかったよ。あ、でも………ここに泊まればシズクちゃんと一緒にいられるかもしれないぞ?仲良くなったみたいじゃないか。」
「ホントー!?あ、でも………やっぱりロイドたちと離れるのは………」
「もう、ロイドさん……イジワル言っちゃ駄目です。キーアちゃん、困ってますよ。」
「はは、そうだな。ゴメン、キーア。今日はそろそろ帰ろうか。」
シズクに言われたロイドは苦笑した後、キーアに視線を向けて言った。
「えー、でもシズクともうちょっと話したいなー。」
「………また、遊びに来るといいです。シズクさんが街に来た時に遊びに来てもらうのもいいですし。」
「んー、そっか。」
「フフ………その時はどうかよろしく頼む。―――シズク、抱き上げるぞ。」
「あ、うん………!」
キーアに静かな笑みを向けたアリオスはシズクを抱き上げた。
「アリオスさんは今日はこちらの方に?」
「ああ、一泊するつもりだ。―――キーア。今後もシズクと仲良くしてくれ。」
「うんっ!シズク、またねー!」
「うん………!キーアちゃんもまたね!」
そしてシズクを抱き上げたアリオスは去って行った。
「さてと………俺達もそろそろ帰るか。」
「そうですね………いつの間にか夕方ですし。」
「そーいえば………わぁ、お空がマッカだねー!キーア、お腹が空いちゃった!今日のバンゴハンはなにかなー?」
「はは………ほんと、キーアは元気だな。それじゃ、セシル姉に挨拶して帰りのバスに乗ろうか。」
「うんっ!」
その後セシルに挨拶したロイド達はバスに乗ってクロスベル市に戻って行った。
~夜・ルバーチェ商会~
「まったく、何たる失態だッ!たかが警察ごときに手打ちを申し入れる羽目になるとは………!挙句の果てには軍用犬は全体の8割も殺され、構成員達の4割は使い物にならなくなった!警察如きに………それも新人だらけの部署ごときにそこまでの被害を出すとは………!ええい………お前達が不甲斐ないせいでッ!」
マルコーニはガルシアとガルシアの傍に控えるマフィア達を睨んで怒鳴り
「………言葉もありません。」
怒鳴られたガルシアは重々しい様子を纏わせて頭を下げた。
「で、ですが例の人形と女神像は会長が御自ら手に入れて………」
「そ、それにやったのは奴等ではなくあの”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”なので、相手が悪すぎたかと………」
一方マフィア達は言い訳をしたが
「なにぃ………?」
マルコーニはマフィア達を睨んだ。
「………黙ってろ。いずれにせよ侵入者を許し、相手の力量を推し量れなかったのは俺達の責任だ。」
「は、はい………」
そしてガルシアの制止の言葉を聞いたマフィア達は頭を垂れた。
「フン………あれ以来、ハルトマン議長もこちらとの連絡を避けておるし………”黒月”と”ラギール商会”どもの攻勢も本格化しそうだというではないか!ええい………このままでは………ッ!」
「会長、ご安心を。いまだクロスベルにおける我々の優位は揺るぎありません。ここで連中の攻勢を何とか凌げば議長も………」
忌々しそうな表情をしているマルコーニをガルシアは諌めようとしたが
「ええい、凌げる保証がどこにあるというのだ!?いまだ”銀”とやらの首一つ取る事ができない上、大勢で襲い掛かったにも関わらず小娘3人にいたぶられたお前達が!?」
「それは………」
マルコーニに怒鳴られ、言葉を無くした。
「クッ、議長の支援もしばらくはアテにできん………ええい、どうすれば………」
そしてマルコーニは少しの間考え込み、ある事を思いついた。
「こうなったら手段は選ばん………決めた―――奥の手を使うとしよう。」
「奥の手………!?」
「ま、まさか………」
「会長、それは……!」
口元に笑みを浮かべて呟いたマルコーニの言葉を聞いたマフィア達やガルシアは驚いてマルコーニを見つめ
「クク……何を驚いている?こういう時のための保険を使うというだけの話だ。」
見つめられたマルコーニは勝ち誇った笑みを浮かべて答えた。
「で、ですが………あれはリスクが高すぎます!警察はともかく、ギルドに嗅ぎ付けられる危険も……!」
一方ガルシアは血相を変えて忠告したが
「クク、その前にとっとと”黒月”と”ラギール商会”を叩き潰せばよい。前に用意した流通網もせっかくだから試すとしよう。クロスベルの裏社会の覇権――――断じて余所者などに渡すものか!」
マルコーニは一蹴し、勝ち誇った笑みを浮かべて叫んだ。
この事が後に自らの首を締める事になるとは気付かず、”ルバーチェ商会”は行動を始めた………………
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