とんでもない役立たず
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第三章
店で揚げものを作りつつだ、その二人のバイト張公平と李黄蝉にぼやいて言った。
「全く、うちのは」
「奥さんそんなこと言ってですか」
「店長さんに家事をさせないんですね」
「そうなんだよ」
こう言うのだった、公平は一八〇はあり長方形の顔に眼鏡をかけている、筋肉質で逞しい身体を持っている。
黄蝉は小柄ではっきりとした目で黒のショートヘアである、唇は奇麗なピンクで頬は白い。シャツから胸が目立っている。
「これがね」
「どうしてですかね」
公平は店長の言葉に首を傾げさせた。
「奥さんも店長さんが家事をしてくれた方が」
「助かるよね」
「はい、店長さん真面目でいい人で」
それにというのだ。
「お料理なんか得意で」
「自信あるよ」
「家事もですね」
「出来るよ」
こう言うのだった。
「お掃除も洗濯もね」
「そうですよね」
「ううん、そうですね」
黄蝉は食器を洗いつつだ、自分達の店長に話した。
「まあ奥さんがそう言われるのなら」
「それも強くだね」
「それならです」
「仕方ないかな」
「はい」
こう登龍に言うのだった。
「もうそれで」
「納得して」
「奥さんの言う通りにしましょう」
「うん、かなり強く言うしね」
それならとだ、登龍も言う。
「僕もそうしてるよ」
「はい、そういうことで」
「お店に専念ですね」
「そうすることにしたよ、ただ」
首を傾げさせてだ、登龍はまた言った。
「どうしてあそこまで強く言うのかな」
「まあそれは」
ここで言ったのは黄蝉だった。
「奥さんにもお考えがあってのことでしょうから」
「だからだね」
「それでいいじゃないですか」
「そうだね、これ以上考えてもね」
「仕方ないですから」
「じゃあ僕も考えない様にするよ」
「このことは」
「女房が回復するのを待つよ」
「まあお薬を買って帰る位は」
「そのことは忘れないよ」
この辺り登龍は出来ていた、そして実際に紅玉の為に風邪薬も買って帰ったりしていた。紅玉もこのことは素直に感謝して喜んだ。
そうして薬を買ったかいもあってかだ、紅玉はすぐに回復した。そして溜まっていた家事をすぐに済ませて店にも復帰した。
登龍はその紅玉にだ、こう言った。
「まだ復帰しなくてもいいのに」
「いいのよ、全快したから」
「だからなんだ」
「そう、じゃあ今日からね」
「お店もなんだ」
「頑張るわ」
こう言って実際にだ、紅玉は店の仕事もはじめた。彼女は店の雑用や食器洗いといった家でもやる様な仕事を全てしていた。
そうした仕事をしている彼女にだ、黄蝉が彼女を手伝いつつ囁いてきた。
「あの」
「何?」
「はい、店長さんから聞きましたけれど」
この前置きから聞くのだった。
「家事は全部」
「そう、旦那にはね」
紅玉も答える。
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