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ついている

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第三章

「嫌になってきたから、ちょっとやってみるわ」
「ええ、さもないとね」
「また何が起こるかわからないから」
「お財布落とすとかね」
「犬のうんこ踏むとかね」
「どっちも嫌よ」
 そうした不幸もというのだ。
「だか何とかするわ」
「頑張ってね、そこは」
「それで今の状況を脱却してね」
「そうしてね」
「そうするわ」
 実際にとだ、美桜はクラスメイト達に答えた。そしてどうにかしようと考えていたが。
 この日もだ、やはりあった。その不幸が。
 食堂でだ、 うどんを注文して空いている席にまで向かっているとだ。不意にすれ違った男にぶつかった。
 それで運んでいたうどん、プラスチックの上に置いた若布うどんが揺れてしまってだ。その中にあったつゆがだ。
 跳ねて制服にかかってしまった、ぶつかった男は謝ったが。
「また」
 ついていないことがあったと苦い顔になった、そしてうどんを食べたが。
 唐辛子も出なかった、かけようとしたそれも。この日はこうしたことがあった。
 それで放課後部活に出た後本気で神社に行ってお守りを買おうかと思っているとだ、その彼女にだった。
 横からだ、若い男の声がしてきた。
「そこの女の子」
「?」
「そう、貴女です」
「私?」
「はい、そうです」
 声の方に振り向いた美桜にだ、声は答えた。
「貴女ですよ」
「あれっ、貴方は」
 その若い男は僧侶だった、頭は奇麗に剃っていて面長である。顔は整っていて僧衣も端整に着ている。
 その僧侶がだ、こう名乗った。
「御成喬之、法名を天空といいます」
「天空さんですか」
「はい」
「そうですか」
「八条寺で修行中です」
「住職さんですか?」
「いえ、住職様の弟子の一人です」
 それなるというのだ。
「拙僧は」
「そういえばお若いみたいですね」
「大学を出て二年になります」
「ではまだ」
「はい、修行中なのです」
 そうだとだ、天空は美桜に話す。
「若輩者です」
「そうなのですね」
「それでなのですが」
 天空からだ、また美桜に言って来た。
「どうもお顔が優れていませんが」
「はい、実は」
 ここでだ、美桜は自分の事情を話した。すると。
 天空は考える顔になってだ、こう美桜に言った。
「それは確かにです」
「嫌な状況ですね」
「誰もそう思います」
「それでお祓いかお守りをと考えていたのですが」
「そうですね、それもいいですが」
「それでもですか」
「ここはです」
 こう言うのだった、美桜に。 
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