たった一つの笑顔
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第六章
「三日経てば忘れる」
「そう言うわね」
「まあそれでもね」
「いいのね」
「別にね」
それこそというのだ。
「もうわかっててだから」
「お家に入れたのね」
「酷い娘だけれど」
それでもというのだ。
「あの娘がいるから」
「元気なのね」
「じゃあ真礼ちゃんも会うわよね」
「その為に来たからね」
「それじゃあね」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
二人で沙織の家まで来た、コンクリート建築のマンションと言っていいアパートの二階である。真礼もよく来ている部屋だ。
その部屋に入るとだ、急に。
奥から黒地に白や黄色が入った短い毛の猫が来た、身体は小さめだが動きはかなり速い。そしてその猫がだ。
玄関に向かって来る、だが。
沙織はその扉を素早く閉めてだ、こう真礼に言った。
「油断するとね」
「脱走するのね」
「そうなの、そうするから」
「閉めるのはなのね」
「素早くよ」
「そのことも大変ね」
「それでね」
沙織はその猫を見つつ真礼に話した。
「この娘がミミよ」
「沙織の新しい家族ね」
「妹よ」
にこりとして言うのだった。
「悪い娘よ」
「そうなのね」
「そう、本当に気をつけてね」
「引っ掻いてくるから」
「あと顔も攻撃したりしてきたから」
「それ物凄く危ないでしょ」
「だからそうしてきた時は怒ってたの」
玄関で靴を脱ぎつつだ、沙織はこうも話した。
「それでしなくなったら」
「それは何よりね」
「ただ、夜寝てたら上に乗しかかってきたりお布団の中に出入りしたり」
「大変ね」
「そうしたことしてくるから」
だからだというのだ。
「本当に大変よ」
「困った娘なのね」
「言った通りね、だから真礼ちゃんも気をつけてね」
ここでもこう言うのだった、真礼も靴を脱いで部屋の中に上がっている。二人でまずはキッチンに向かう。
「足を引っ掻いたり両方の前足で掴んだりもしてくるから」
「本当に悪い娘ね」
「こんな悪い娘はね」
そうそうと言うのだった。
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