話しているうちに

「彼氏いないわ」
「そうか、よかった」
　ここでようやく胸を撫で下ろした大輝だった、それが顔にも出ていた。
「本当に」
「ええ、それとね」　
　さらに言う留美だった。
「お姉ちゃんの趣味や好みだけれど」
「ああ、そっちはどうなんだ？」
「まず着ている服はね」
「お姉さんって感じだな」
　服についてはだ、大輝はすぐにこう言った。
「まさに」
「そのことも知ってるのね」
「見た感じだよ、そうだよな」
「まあね、今時のね」
「女子大生って感じで」
「ふわりとした上品な感じで」
　姉のその服装についてもだ、彼は話した。
「いい感じよね」
「ああ、そんな服だよな」
「そのことも知ってるのね」
「俺も見てるからな」
　留美の姉である想い人のことをというのだ。
「これでもな」
「私が調べてること以外にも」
「俺は調べてないけれどな」
　それでもというのだ。
「見てな」
「よく見てるじゃない、とにかくね」
「あの人のファッションはそんな感じでか」
「そう、それで好みはね」
　その服のことも話すのだった、そしてだった。
　二人でだ、さらにだった。
　彼女のことを話していった、それは一度や二度ではなく。
　とかく常にだ、二人は話していった。そして次第にだった。
　大輝は留美にだ、こう言いはじめた。
「どうしたらあの人に告白出来て」
「受け入れてもらえるか」
「それだけれどな」
「あんたの目的ね」
「そうだよ、あんな奇麗な人にな」
　憧れをだ、目に見せて言うのだった。
「告白出来てな」
「そしてよね」
「受け入れてもらえるか」
　それを言うのだった。
「それが問題だけれどな」
「そうよね、けれどね」
「告白することもな」　
　かなり真面目にかつ思い詰めた顔でだ、彼は言った。
「どうするかだよな」
「まあね、ただ告白してもね」
「それだけじゃな」
「要は、お姉ちゃんだけのことじゃなくて」
　それこそと言うのだった。
「誰に対してもよ」
「告白する時はか」
「時と場所が大事よ」　
　まさにというのだ。
「それこそね」
「そうだよな、じゃあどうするか」
「そうね、時間は夕暮れ時とか」
　留美もだ、かなり真剣に考える顔で大輝に言った。
「ロマン溢れるね」
「そうした時にか」
「そう、告白の時よ」
　まさにその時だというのだ。
「それとね」
「それと？」
「場所よ、ロマンある場所じゃないと」
「駄目か」
「ただ廊下で告白してもムードある？」
　留美はダイレクトに大輝に尋ねた。
「それはね」
「いや、それはな」
「そうでしょ、廊下で言ってもでしょ」
「愛想がないな」
「例えば砂浜とか。並木道とか」
　具体的な例えをだ、留美は話した。
「あとイルミネーションとか」
「クリスマスの夜とかか」
「そうした場所でよ」
　そこに行ってというのだ。
「行ってね」
「それでか」
「そう行ってね」　
　そしてと言うのだった。