英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第60話
その後港湾区に向かったロイド達水バス乗り場で、水上バスを待っていた。
~港湾区~
「ん~………?こっちでいいのかねェ。」
ロイド達が水上バスを待っている一人の軽そうな青年が近づいてきた。
(観光客………?)
(ええ、いかにもそんな感じの人みたいね………)
青年はロイド達に気付いた後、ロイド達に近づいて尋ねた。
「よー、彼氏たち。ちょいと訪ねたいんだけど構わないか?」
「ええ、いいですよ。観光客の方みたいですけど道に迷いましたか?」
「ああ、この街ちょっと広すぎるんだよな~。そんでさ、ミシェラムって場所に行きたいんだが、こっちでいいのか?」
「ああ、こっちでいいですよ。俺達も丁度、ミシェラムに行く水上バスを待っているところなんで。」
「お、ビンゴだったか。そんじゃあオレも並ばせてもらうかねぇ~。おっと、名乗り忘れたな。オレの名前はレクター。レクター・アランドールだ。エレボニアの帝都からさっき鉄道で着いたばかりだぜ。」
ロイドの話を聞いた青年―――レクターは口元に笑みを浮かべた後、名乗った。
「エレボニアの帝都……」
「帝国の方だったんですか………」
「へえ、それにしちゃあなかなかイカしか格好してんな。サングラスなんざかけてもろにバカンス仕様じゃねえか。」
「エレボニアの方達は総じて、固い性格の方達が多いと聞いたのですが……フフ、例外もいるようですね。」
レクターの説明を聞いたロイドとエリィは驚き、ランディとセティは興味ありげな表情でレクターを見つめた。
「おう、クロスベルっていやぁ、最近リゾートでも有名だからな!郷に入れば郷に従え。これでも気合い入れて来たんだぜ~?」
「気合いを入れる方向が間違っている気もしますが……やっぱりテーマパーク目当てでいらっしゃったんですか?」
「テーマパーク?………なんだそりゃ。そんな面白いモンがミシェラムにあんのか?」
ティオの話を聞いたレクターは首を傾げた後尋ねた。
「ええ、まあ………俺も行った事ないですけど。」
「元々、保養地でしたけれど最近ではそちらの方が有名ですね。」
「へ~、なるほどねぇ。まあ今回は、ただの代理として出席しに来ただけだからな。もうちょい色々と調べてから来りゃあよかったかもなァ。」
エリィの説明を聞いたレクターは残念そうな表情で溜息を吐いた。
「代理として出席……?」
レクターの言葉にロイドが首を傾げたその時、水上バスの汽笛が聞こえて来た。
「お、来たみたいだなァ。」
少しの間時間がたつと、水上バスが港に到着し、乗客が降りた後、港で待っている客達は乗船し始めた。
「うむ、なかなかイカス船ではないか。早速、オレ様は甲板席の最前列をゲットさせてもらおう。そんじゃ、お先になー♪」
そしてレクターは水上バスに乗船した。
「何だかランディをさにチャランポランにしたような人だったわね……」
「確かにそれは言えてるね~。」
「どういう意味だっつーの。俺はあそこまで遊び人って感じじゃねえだろ?」
レクターが去った後溜息を吐いて呟いたエリィと、エリィに同意したシャマーラにランディは突っ込み
「……十分、遊び人風かと思いますけど。」
「ティオさんの言う通りですね。隙あらばカジノに行こうとする人ですし……」
ティオとエリナは呆れた表情でランディを見つて言った。
「まあ、同じ遊び人でもぜんぜん違うタイプかもな。ランディみたいに夜遊びとナンパが趣味っていうより妙にフリーダムな感じと言うか。」
「おお、わかってんじゃねーか。俺と同じくらいの歳みてぇだが一人で何しに来てんだろうな。」
そしてロイドの言葉にランディが頷いたその時
「あら―――奇遇ね。」
女性の声が聞こえた後、黒髪の女性がロイド達に近づいてきた。
「あなたは………」
「おおっ……!?キリカさんじゃないッスか!」
女性―――『偽ブランド業者の摘発』の支援要請の際、逃亡した犯人の逮捕を手伝った東方から来た女性、キリカを見たロイドとランディは驚いた。
「フフ、一昨日はどうも。ここにいるという事はあなた達もミシェラムへ?」
「ええ……キリカさんもですか?」
「仕事半分、観光半分ね。それより……今の派手な格好をした子は?あなた達のお友達かしら?」
「いえ……先程知り合ったばかりです。何でもエレボニアの帝都から観光に来たみたいですけど。」
「帝都から……ふふ、成る程ね。」
「???」
「ひょっとしてお知り合いですか?」
一人納得しているキリカを見たロイドは首を傾げ、ティオは尋ねた。
「いえ、ユニークそうなオーラをまとっていたから職業柄気になっただけよ。それではお先に……あなた達も早く乗りなさい。」
ティオの疑問に答えたキリカは水上バスに乗船した。
「いや~………相変わらずクールで素敵だぜ。」
「仕事半分って言ってたけど……やっぱりテーマパークが目当てかな?」
「芸能関係の仕事ならその可能性が高そうね……」
水上バスに乗船したキリカを見送ったランディは嬉しそうな表情をし、ロイドの疑問にエリィが頷いたその時
「うふふ……どうやらちゃんと有効に活用しているみたいね♪」
レンが銀髪のツインテールの少女と真紅のドレスを身に着け、腰までなびかせる金髪の女性と共にロイド達に近づいてきた。
「レン……!」
「レ、レンちゃん……!」
自分達に近づいてきたレン達を見たロイドとエリィは驚いた。
「うふふ……ご機嫌よう♪レンのプレゼントは気に入ったかしら?」
「あ、ああ……それよりレンはミシェラムに何しに行くんだい?見た所知り合いの人達と行くみたいだけど……」
口元に笑みを浮かべたレンの言葉に戸惑いながら頷いたロイドは銀髪の少女や金髪の女性に視線を向けた。
「あら……懐かしい顔ね。」
「おお、ティオじゃん。久しぶり。それにウィルの子供達も。」
一方金髪の女性と銀髪の少女はティオに視線を向けて言った。
「へ……?」
「ティオすけ達の知り合いか?」
女性達の様子を見たロイドは首を傾げ、ランディはティオやセティ達に尋ねた。
「―――はい。”影の国”で共に戦った人達です。……久しぶりですね、セオビットさん、エヴリーヌさん。」
「え………!?」
「エ、エヴリーヌにセオビット!?まさかメンフィル帝国の客将、”魔弓将”エヴリーヌとメンフィル帝国の将の一人―――”紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”セオビットか!?」
そして尋ねられたティオは頷いた後金髪の女性―――リウイの側室の一人、シルフィエッタ・ルアシアの連れ子にして、リベールでの戦いから”紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”の異名で呼ばれ始めている女性―――セオビット・ルアシアと銀髪の少女―――メンフィル帝国の客将であり”魔弓将”の異名を持つ魔神の少女―――エヴリーヌに会釈をし、エリィは驚き、エヴリーヌの名を聞いたロイドは驚きの表情でエヴリーヌとセオビットを見つめた。
「くふっ♪自己紹介は必要ないみたいだね。」
「そのようね。」
「クスクスクス……”影の国”を知っているという事はレンの今の身分もティオかエステル達から知らされているみたいね。どうせならレンの異名も教えておくわ。レンの異名は”殲滅天使”よ♪セオビットお姉様とエヴリーヌお姉様とレンを合わせて、”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”とか呼ばれ始めているわ♪」
ロイドの様子を見たエヴリーヌは不敵な笑みを浮かべ、セオビットは頷き、レンは口元に笑みを浮かべて言った。
「”殲滅天使”に”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”……物騒な呼び名だな、オイ。」
一方レンの言葉を聞いたランディは疲れた表情で溜息を吐いた。
「えへへ、お久しぶりです!」
「……ユイドラの戦いの際は加勢していただき、ありがとうございます。」
そしてシャマーラは無邪気な笑顔をエヴリーヌ達に向け、エリナは会釈をした。
「ふふっ………礼を言いたいのは私の方よ。あの戦いのお蔭で父様と出会えて、幸せな生活を過ごしているのだからね。」
「エヴリーヌはあの戦いで一杯遊べたからお互い様だよ、キャハッ♪」
2人に見つめられたセオビットとエヴリーヌは口元に笑みを浮かべて言った。
「それで皆さんは何の用でミシェラムに行くのですか?」
「うふふ……そんなの勿論、”競売会”に決まっているじゃない♪」
そしてセティに尋ねられたレンは懐から金の薔薇のカードを取り出して不敵な笑みを浮かべて言った。
「なっ!?」
「ええっ!?」
「というかまだ持っていたのかよ……」
「一体どこでそんなに手に入れたんですか……」
レンの話を聞いたロイドとエリィは驚き、ランディはレンが持つカードを見て溜息を吐き、ティオは呆れた表情でカードを見つめて突込み
「ヒ・ミ・ツよ♪それじゃあ、レン達はお先に♪」
ティオの突込みに小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンはエヴリーヌとセオビットと一緒に水上バスに乗船した。
「………まさかカーリアンさんの他にメンフィル帝国の将が2人もクロスベルに来ているなんて…………」
「……しかもよりにもよってあの2人が来るなんて……クロスベルに血の雨が降らなければいいけど……」
レン達が去った後ロイドは真剣な表情で考え込み、エリィは表情を青褪めさせながら考え込んでいた。
「血の雨って……そんなに物騒なのか?あの2人。」
一方エリィの言葉が気になったランディは尋ね
「ああ………”魔弓将”と”紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”がメンフィル軍の将の中でも最も好戦的で残虐的な性格だと言われているんだ。何でも話によればあの2人は戦闘時、殺す事を楽しんでいるらしい。」
ランディの疑問にロイドは真剣な表情で答えた。
「あんな可愛い顔をしてか……?とても信じられねぇな……」
ロイドの答えを聞いたランディは不思議そうな表情で答えかけたその時
「――事実ですよ。”影の国”であの人達がレンさんと一緒に戦っている所を見ましたけど、3人共殺し方が残虐で、滅した悪魔達の数を遊び感覚で競ったりしていましたから。」
「………そういえば……ユイドラで共に戦った時、エヴリーヌさん達、敵である魔族達を笑いながら殺していましたね……」
ティオが静かな表情で答え、ある事を思い出したセティが重々しい様子を纏わせて答えた。
「マジか……………そりゃ確かにヤベェな………」
「一体クロスベルに何をしに来たんだろう……?」
ティオの話を聞いたランディは目を細め、ロイドは真剣な表情で考え込んでいた。するとそん時水上バスの汽笛が鳴り、汽笛を聞いたロイド達は水上バスに乗り込み、そして水上バスは出航した。その後水上バスがミシェラムに向かっている最中キリカやエレボニア貴族と自己紹介をしたレクターと話をしたロイド達は3人で仲良く会話をしているレン達に近づいた。
「あら、どうしたのかしら、お兄さん達。」
「………ちょっとだけ話を聞きたくてね。メンフィル帝国の将を2人も連れて”競売会”に何しに行くんだい?」
「うふふ………クロスベルに来て色々と調べた時にたまたま興味がでてきてね。で、どうせならお姉様達と一緒に見に行こうと思って行くのよ♪」
真剣な表情のロイドに尋ねられたレンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「”お姉様”……?」
「―――エヴリーヌさんとセオビットさんの事です。レンさんはそちらの2人とプリネ姫の事を”お姉様”と呼んでいるんです。それよりレンさん。何のために2人と一緒に”競売会”に行くのですか?」
レンの言葉に首を傾げているロイドに説明をしたティオは真剣な表情で尋ねると
「ただの純粋な好奇心よ?………警察が決して手を出すことができなかったあの競売会にお兄さん達が”何をする”のか。お兄さん達なら、何か面白い事を仕出かしてくれると思うしね♪もし、その時がくれば一緒に混ぜてもらおうと思ってエヴリーヌお姉様と大使館にいたセオビットお姉様を呼んでわざわざこちらに来てもらったのよ?感謝してね♪」
「せっかく、エヴリーヌ達が来たんだから、面白い事をちゃんと起こしてよね?キャハッ♪」
「ふふっ………面白い戦を期待しているわよ♪」
レンは小悪魔な笑みを浮かべて凶悪な笑みを浮かべているエヴりーヌやセオビットと共にロイド達を見つめた。
「なっ………!?」
「要するにわたし達がルバーチェと揉め事を起こすと思って、それに参加する為に来たんですか……」
「とんでもない嬢ちゃん達だな……まさに2つ名通り、”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”ってか。」
レン達の話を聞いたエリィは驚き、ティオはジト目でレン達を見つめ、ランディは溜息を吐いた後目を細めてレン達を見つめた。
「………俺達はルバーチェと戦う為に行くんじゃない。どんなパーティーなのか見に行くだけだ。それにまだ、”競売会”に潜入するかどうかはわからない。」
ロイドは真剣な表情でレン達を睨んで言った。
「クスクス。どうなるかは着いてからのお楽しみね♪お兄さん達には昨日の件もあるし、ピンチになったら助けてあげるから、一杯”面白い事”を起こしてね♪」
そして口元に笑みを浮かべたレンが言ったその時、水上バスは保養地―――”ミシェラム”に到着した。その後レン達と別れたロイド達は会場の様子を見に行く為に、”ハルトマン議長邸”に向かった。
~ミシェラム・ハルトマン議長邸~
「あれがハルトマン議長邸………すごいな……屋敷というより城みたいだ。」
「ユイドラの領主の館より大きい気がするんだけど……」
「貴女の気のせいではありませんよ、シャマーラ。」
「ええ…………あれほどの館を維持できるなんて、一体どれほどの財力を持っているのでしょうね……?」
ハルトマン議長邸を見たロイドは驚き、シャマーラとエリナ、セティはそれぞれ議長邸を見つめていた。
「まあ、クロスベルでは昔からの名士の家系だから………あの屋敷も、百年近く前、帝国の統治時代の総督邸として建てられたものだと聞いているわ。」
「それにしたってデカすぎだろ。帝国の大貴族じゃねえんだから。」
エリィの説明を聞いたランディは溜息を吐いた。
「あんな場所を使って開かれるという”競売会”………相当、大規模なものみたいですね。」
「ああ―――あれは……!」
そしてティオの言葉にロイドが頷きかけたその時、マフィア達とガルシアが入口から現れ、それを見たロイド達は物陰に隠れた。
「―――警備の手筈は例年通りだ。だが、今年は”黒月”や”ラギール商会”どもが仕掛けてくる可能性も考えられる。招待カードを持ったヤツ以外は誰であろうと通すんじゃねえぞ。」
「承知しました!」
「若頭の方はどうされます?」
「俺は屋敷内部の警戒に当たる。何しろ神出鬼没なヤツだ。警戒しすぎる事はねえだろう。………そういえば、出品物は全部搬入されたのか?」
「ええ、今朝方。例の人形が最後みたいですね。」
「今回の目玉の一つか……どれだけの値がつくことやら。まあいい、開場まであと数時間だ。くれぐれも気を抜くんじゃねえぞ………!」
「はい……!」
「お疲れ様です!」
マフィア達に指示をしたガルシアは屋敷の中へ入って行った。
「―――出やがったか。あのオッサンも早速、中に詰めているらしいな。」
「たしかガルシアという元猟兵の若頭さんでしたね。」
「パーティの開場はたしか夜の7時から………もう警備を始めるみたいね。」
一方その様子を物陰に隠れて見ていたランディ達はそれぞれロイドに言った。
「ああ………それだけ警戒してるんだろう。………しかし参ったな。いくら招待カードがあっても簡単には中に入れなさそうだ。」
「ルバーチェと戦ったりして、あたし達の顔も知られているしね~。」
「……私達だとわかれば、面倒事が起こるのは間違いなしですね。」
そしてロイドの言葉にシャマーラとエリナは頷き
「何か手立てを講じる必要がありますね………」
セティは考え込んでいた。
「…………………とりあえずいったんここから離れよう。ここで連中に見つかったら元も子もなくなりそうだ。」
「そうね。」
ロイドの提案にエリィは頷き、仲間達と共に去りはじめたその時
ミツケテ
何かの声がロイドの頭に響いてきた。
「え………(………今のは………空耳………それとも…………)」
頭に響いた声に気付いたロイドは振り向いて議長邸を見つめ続けていた。
「………ロイドさん?」
「どうしたの?」
「いや……―――ゴメン、気のせいだったみたいだ。」
ティオとエリィに尋ねられたロイドは考え込んだ後、申し訳なさそうな表情で言った。
「???」
「よくわからないけど早く行こう~。」
「………………………………」
ロイドの言葉にエリィは首を傾げ、シャマーラは提案し、セティは黙って考え込んでいた。
その後ロイド達は競売会に入るかどうかの相談をする為にホテルに空き部屋がないか聞く為に、ホテルに向かった……………
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