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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第54話

ウルスラ病院に到着したロイド達は受付でヨアヒムに会えるようにアポイントを取ってから、ヨアヒムがいる部屋に向かって入った。



~ウルスラ病院・研究棟~



「―――失礼します。」

「はは……ようこそ。よく訪ねてきてくれたね。」

自分に近づいてきたロイド達にヨアヒムは残念そうな表情で声をかけた。

「えっと………突然お邪魔してすみません。」

「何だかご趣味の邪魔をしてしまったようで………」

「いや~、午後のこの時間はノーブルカルプを釣り上げる絶好の時間帯なんだけど………でも、来客ならば仕方ない。君達を逆恨みする気なんてこれっぽっちもないさ、うん。」

(なんだが思いっきり恨まれてるような気が………)

(筋金入りの釣りバカみてぇだな………)

(クスクス、エステルでも仕事をサボってまで釣りはしないから、釣りバカの点についてはエステルより上ね。)

ロイドとエリィの言葉に答えたヨアヒムの言葉を聞いたティオとランディは呆れ、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。



「まあ、軽いイヤミはこのくらいにして………今日は一体どうしたんだい?てっきりキーア君を連れて相談に来たと思ったんだが。」

「いえ、実は別件なんです。その………相変わらずキーアの記憶は戻っていないんですけど。」

「ふむ、そうか………個人的には一度、検査入院をしてもらった方がいいと思うが。」

「その、本人にもそれとなく勧めているんですが、その気になれないみたいで………すみません。問題を先送りにしていますね。」

「まあ焦らずにゆっくりと考えるといい。それで、別件というのは?僕の専門に関わる話かい?」

「ええ、まさにそうなんです。―――こちらの薬をご覧になっていただけますか?」

ヨアヒムに自分達の来訪の理由を訊ねられたロイドは頷いた後、蒼い錠剤を見せた。

「ほう………?………これは………なんだこの蒼色は………着色料にしては様子が………」

錠剤を見たヨアヒムは眉を顰めた後、真剣な表情で考え込んでいた。

「この錠剤は、とある人物が持っていた物なんですが………俺達は、違法性のある薬物ではないかと睨んでいます。」

「……なるほど。詳しい話を聞かせてもらおうじゃないか。」

そしてロイド達はヨアヒムに進められてソファーに座ってヨアヒムと対面して事情を話した。



「なるほど………そんな事になっているのか。……………………」

「それで、ヨアヒム先生。この蒼い錠剤について何かご存知ではありませんか?どこかで開発された新薬とか………」

「………残念ながら見た事のないタイプの薬だ。僕は専門柄、各国の製薬会社と付き合いがあってね。開発された新薬のサンプルは大抵回してもらっているんだが………こんな色の錠剤は見た事がない。」

「そ、そうですか……」

ヨハヒムの話を聞き、何の手掛かりも手に入らなかった事を残念に思ったロイドは肩を落とした。

「しかも聞く限りにおいて効能についても尋常ではない。筋力、集中力、反射神経、そして判断力と直感力……それら全てを高めるというのは………」

「その、まだマフィアたちがこの薬を服用していたかどうかは確かではないんですが……」

「実際、確認できてんのはあの鉱員だけだしなぁ。」

(多分だけど、市長の第一秘書も服用しているでしょうね……)

「…………イアン先生から聞いた話もまだ噂の域を出ていませんね。」

「ふむ、いずれにせよ、得体の知れない薬物であるのは確かのようだな。―――分かった。3錠ほどあずからせてもらうよ。早速、成分調査をしてみよう。」

「ありがとうございます。その………成分を突き止めるのにどのくらいかかりそうですか?」

「薬の現物もあるし、症状などの手掛かりもある。今日中には、主成分くらいは突き止められるとは思うが……逆にそれで突き止められなければ結構、長引くかもしれないな。」

「そうですか………」

ヨアヒムの説明を聞き、成分調査が難航する可能性もある事にロイドは疲れた表情で頷いた。



「まあ、明日の午後くらいに通信で連絡させてもらうよ。それで構わないかな?」

「それで結構です。どうかよろしくお願いします。」

「ふふ、これで一安心ね。そういえば、副作用や中毒症状の可能性はどうなんでしょうか?」

「ふむ、それも調べてみないと何とも言えないんだが………念のため、その鉱員の関係者には何かあったらこちらに相談するよう伝えておいてもらえるかな?他の服用者が見つかったら同じ手配をしておいて欲しい。」

「承知しました。」

「やれやれ………どれだけ出回ってる事やら。街てそれっぽい噂もチラホラ聞いたくらいだし。」

「ま、そこの所はダドリーおじさん達”捜査一課”が纏めた資料があるから大丈夫じゃないかしら?」

「さすがにルバーチェに連絡するのは無理そうですが………本当に構成員が服用していたら副作用などが心配ですね。」

「うーん、確かに………」

「…………………」

ロイド達がそれぞれ話し合っている中ヨアヒムは目を伏せて黙り込んでいた。



「………先生?」

「やはり副作用の危険が?」

ヨアヒムの様子が気になったロイドとエリィはそれぞれヨアヒムに声をかけた。

「ああ、いや………そうじゃないんだ。ふと、前に聞いた噂を思い出してしまってね………」

「前に聞いた噂………」

「どんな噂ッスか?」

「ハハ、参ったな。改めて説明するほどの話でもないと思うんだが………―――数年前、製薬業界の方面で奇妙な噂が流れた事があったんだ。とある狂信的な宗教団体が不思議な薬を造りだしたとね。」

「!!……………」

「きょ、狂信的な宗教団体………?

「七耀教会の異端的な一派……ということでしょうか?」

ヨアヒムの口から出た話にレンが血相を変えて厳しい表情をしている中、レンの様子に気づいていないロイドとエリィは戸惑いの表情をしていた。



「いやいや、そんな生易しい連中じゃなかったらしいよ。何でも女神(エイドス)の存在を否定し、悪魔を崇拝する……そんな教団だったらしい。」

「あ、悪魔を崇拝………!?」

「なんかいきなり胡散臭い話になったな………」

「…………………………………」

ヨアヒムの説明を聞いたロイドは驚き、ランディは目を細め、ティオは呆けて黙り込んでいた。

「はは、確かに僕も突拍子もない話だと思ったが。ただ、その薬の効能というのがちょっと気になってね………―――何でも悪魔の力を借りる事で人間の潜在能力を開花させ、運すら呼び込むものだったらしい。」

「そ、それって………!」

「今回の薬物の症状と同じ………」

「………………」

「あの………ヨアヒム先生………その薬の名前は………何か聞いていませんか……?」

ヨアヒムの話を聞いたエリィとロイドが血相を変えている中レンは複雑そうな表情で黙り込み、辛そうな表情で黙り込んでいたティオは表情を真剣に変えて尋ね

「ああ、何だったかな……そうそう、思い出した。”真なる叡智(グノーシス)”――――そんな風に噂されていたかな。」

「……………っ……………」

(やっぱり………)

ヨアヒムの答えを聞くと表情を青褪めさせ、レンは目を伏せた。



「”真なる叡智(グノーシス)”………」

「な、何だかとても思わせぶりな名前ですね………」

「まあ、余りに荒唐無稽だからすぐに消えた噂話だったけどね。ただ、去年リベールの異変で奇妙な組織が暗躍していたという噂話もあっただろう?今更ながら気になってね。」

(エステル達が言っていた”結社”のことか………)

(悪魔崇拝の教団………何か関係があるのかしら?)

ヨアヒムの疑問を聞いたロイドとエリィはそれぞれ考え込んでいた。

「―――いずれにせよ、蒼い錠剤の正体を突き止めるため、同業者には当たってみるつもりだ。ついでに、その噂についても何か続報がないか確かめてみるよ。」

「お、お願いします。」

「悪魔の力を借りる薬ねぇ………」

「うふふ、悪魔があるのだから逆に天使の力を借りる薬とかはないのかしらねぇ?

「……………………」

そしてヨアヒムの説明を聞いたロイドは軽く頭を下げ、ランディは目を細め、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、ティオは表情を青褪めさせて黙り込んでいた。その後ヨアヒムの部屋を退出したロイド達はクロスベル市に戻る為に病院の前にあるバス停に向かった。



~夕方・ウルスラ病院~



「さてと、もう夕方だしバスでとっとと帰るとすっか。」

「そうだな………」

「ふふ、こういう時にやっぱりバスは有難いわね。」

「バスがなかったら、帰りがとても面倒だものね。」

「……………………」

バス停の近くまで来た仲間達がそれぞれ雑談している中ティオは黙り込んでいた。



「ティオ………?」

「なんだティオすけ。さっきから妙に静かだな?」

「………別にそんな事は。」

ロイドとランディの疑問にティオが答えたその時

「ティオちゃん………!?夕陽でわかりにくいけど………あなた、顔が真っ青よ!?」

表情を青褪めさせているティオの状態に気付いたエリィが血相を変えて指摘した。

「えっ!?」

「……問題ありません。少し気分が優れないだけで………」

「おいおい。問題ないじゃねーだろ。とにかくどこか休めるところでも―――」

そしてランディが目を細めて指摘したその時

「……あ………」

ティオは声をあげた後、地面に崩れ落ちた。

「ティオ!」

「た、大変………!」

「……………………(トラウマを思い出したみたいね……)」

地面に崩れ落ちたティオを見たロイドとエリィは血相を変え、レンは疲れた表情で黙ってティオを見つめていた。

「すぐに医者か看護師を呼んでくる!」

「ああ……頼む!」

その後ロイド達はランディが呼んできた医者に気絶して倒れたティオを診断してもらった後セシルの好意でセシルの部屋のベッドでティオを寝かせた。



~夜~



「ふふ………良かったわね、ただの貧血で。しばらくしたらすぐに目を覚ますと思うわ。」

「そっか……」

「よ、よかった……」

「ああ………どうなる事かと思ったぜ。」

「…………………」

セシルの話を聞いたロイド達は安堵の溜息が吐いている中レンは目を伏せて黙り込んでいた。

「でも、ごめんなさい。私のベッドを使わせて。ちょうど病棟の方に空いている個室がなくて………」

「いや、助かったよ……ここの方がティオも落ち着けるかもしれないし………」

「セシルさん、ありがとうございます。」

「ふふ、気にしないで。今夜は私は夜勤があるし、何だったらこのまま朝まで寝てもらっても構わないから。それじゃ、私は失礼するわね。」

「あ、うん……お疲れ様。」

「あざーす!お疲れ様でした!」

そしてセシルは部屋を出て行った。



「………ティオ………もう少し早く気付けば………」

「考えてみれば、ヨアヒム先生の話を聞いている最中くらいから様子がおかしかったものね………それも確か……」

「悪魔を崇拝する連中が造ったっていう薬の話か………」

「今までの経緯を思い返したらどう考えても何か関係があるのでしょうね。」

「―――いいですよ。何を聞いてくれても………」

セシルが去った後ロイド達がそれぞれ考え込んだその時ティオが目を覚ました。

「ティオ……起きたのか。」

「よかった……」

「ったく………心配かけやがって。」

「うふふ、自己管理はしっかりしているティオがレン達に心配をかけるなんて珍しいわね。」

目を覚ましたティオを見たロイド達が安堵の表情をしたその時、ティオが起き上がった。



「あまり……気を遣わないで下さい。薬物捜査に携わる人間として皆さんは聞く必要がある………わたしの知っている情報を。」

「………あのな、ティオ。俺達がティオの気の進まない話をわざわざ聞こうとすると思うのか?」

「え……」

ロイドの言葉を聞いたティオは呆け

「もちろん捜査も大事だけどそれとこれとは話が全く別よ。私達にとって、あなたは同じ仕事に携わる同僚だけど……それ以前に、何よりも代えがたい仲間だと思っている。」

「……ぁ……………」

「他人には秘めておきたいそいつならではの事情はあるさ。ま、俺の過去についてはちょいとばかりバレちまったが………ティオすけ、お前がそれを知られたくねぇってんなら……俺らは全力でお前に協力するさ………」

「ま、ティオはレンが信用している数少ない”仲間”の一人なのだから、そのくらいの事は協力してあげるわ。」

「エリィさん……ランディさん………レンさん………」

エリィとランディ、レンの自分を気遣う言葉を聞くと涙ぐみ

「………そういう事だ。でも、もしティオが俺達に話したいんだったら……話すことで少しでも気持ちを軽くできるんだったら……だったらその重荷はぜひ受け持たせて欲しい。」

「…………ロイドさん………………………」

さらにロイドの言葉を聞くと涙を流して黙り込んだ。



「ふふ………よくそんなに恥ずかしい台詞を言えますね。ロイドさんだけでなく、エリィさんもランディさんも……それにレンさんも………皆さん、ロイドさんに影響されてるんじゃないですか?」

そして涙をぬぐって気を取り直した後苦笑し、ジト目でエリィとランディ、レンを見回した。

「ハハ、そうかもな。」

「うーん、確かに否定はできないわね。」

「うふふ、レンの場合はロイドお兄さんだけでなくエステルの影響もあると思うけどね。」

「否定してくれよ………」

ティオの言葉を聞いて笑っている3人の答えを聞いたロイドは溜息を吐き

「………ふふ………」

4人の様子を見たティオは微笑んだ後、ベッドに座り直し話し始めた。



「ロイドさんには前に少し話しましたが……わたしは5歳の頃、両親と離れ離れになりました。とある狂信的な宗教団体に拉致されることによって………」

「!?」

「あ………」

「………そいつは………」

「………………」

「その教団の真の教義や目的は今でもわからないそうですが………ただ彼らは、女神(エイドス)を否定し、悪魔を崇拝することで何かを得ようとしていました。わたしを含めた他の子供たちは………その”供物(くもつ)”だったんだと思います。」

「供物………」

ティオの話を聞いていたロイドは真剣な表情で呟いた。

「供物といっても生贄とかじゃありません………そんな目に遭った子もいたのかもしれませんが………その教団は、幾つかの拠点(ロッジ)を持ちロッジごとに様々な方法での”儀式”を試みていたようでした。そしてわたしが連れて行かれたロッジで行われていたのは………”儀式”という名の人体実験でした。」

「じ、人体実験………!?」

「ひょっとして、お前の感応力のことか……?」

(そう……そしてレンやユウナの”能力”も………)

ティオの口から出た信じ難い話に仲間達が血相を変えている中、レンは目を伏せて黙り込んでいた。



「………はい。薬物を投与され………全身にセンサーを付けられ………考え付く限りのやり方で五感を高める試みが行われました。さらには強制的な暗示と精神的な負荷をかけることで霊感のようなものまで高められ………3年間……それが毎日のように続きました。」

「………あ………」

「……そ、そんな………」

「「………………………」」

「それでもわたしは………幸運な方だったのかもしれません。わたし以外の子は………全員が耐えきれませんでした。一人、また一人と周りから子供がいなくなって………ついに一人になった頃、わたしは手に入れていました………分厚い岩壁の向こうで他の子達が上げた最後の悲鳴を聞き取れるくらいの感応力を……」

「……っ………!!」

「ティオ………ちゃん………」

「………確かに……ティオの方はまだ幸運な方ね…………」

「………外道どもが………」

ティオの説明を聞いたロイドは唇をかみしめ、エリィは悲痛そうな表情をし、レンは疲れた表情で呟き、ランディは静かな怒りを抱いて呟いた。



「……………………―――そんな時でした。わたしのいたロッジにロイドさんのお兄さんが………ガイさんが乗り込んできたのは。」

「あ……」

「ガイさんを含めたチームは教団の信者たちを無力化しながらロッジを制圧していきました。抵抗は激しく、制圧された途端、自決する者がほとんどだったそうです。そうした屍を踏み越えながら”儀式の間”にたどり着いて……ガイさんは、ただ一人の生き残った子供を発見しました。」

「…………………………」

「ガイさんに保護された時……わたしは衰弱しきっていました。そしてこの病院に連れてこられ、数ヵ月のあいだ療養して………そこから先は以前、ロイドさんに話したとおりです。」

「……そうか………」

「……ティオちゃん………」

「…………(ひょっとしたらその時レンもまだ入院していたかもしれないわね……)」

ティオの説明を聞いたロイド達は重々しい雰囲気を纏った。



「………皮肉なものですね。あれだけお世話になって感謝していた人だったのに………3年前、ガイさんが亡くなった事を聞かされた時、わたしは余り哀しくなかったんです。まるで、手に入れた力と引き換えに人間らしい感情を失ったような………そんな不思議な感慨すらありました。」

「ティオ………」

「………………………………」

「………多分わたしは聞きたかったんだと思います。眩しいくらいに前向きで力強かったあの人に……わたしのような”欠けた存在”がどう生きたらいいのかを……でも結局、その答えは聞けず、エプスタイン財団に引き取られて……そして支援課に来て、皆さんと一緒に暮らしていて………やっぱり………今でもよくわからないんです。どう、生きたらいいのか………どうして……わたしが生きているのか。」

「………ティオちゃん……!」

辛そうな表情で語るティオを見たエリィはティオに近づいて優しく抱きしめた。



「………あ………」

「いいじゃない……!わからなくったって………!そんなのは私達だってあなたと同じなんだから………!」

「……え………」

「………なぜ生きてるのか、どう生きればいいのか………そんなのがわかってる人間なんてそうそういるもんじゃないさ。俺も、エリィも、ランディも、レンも。誰だって同じさ。」

「ロイドお兄さんの言う通りね。さすがのレンでも自分がどう生きるかなんて考えた事もないわ。」

「ハハ、俺なんざ特に、自分の道を見失った口だが………それでもティオすけ。お前、真面目すぎるんだよ。そんな難しい問題を急いで解いてどうするんだ?」

「……で、でも………」

「それでも気になるなら……答えを探し続ければいい。ただ焦る必要はないし、一人で探す必要だってないんだ。俺達が一緒に探すからさ。」

「………………ぁ……………」

「もちろん私もよ………レンちゃんやランディだって課長だってキーアちゃんやツァイトさんだってみんな力になってくれるわ………あなたが、その難しい問題の答えを見つけられるのを……」

「…………………………………」

ロイド達の話を聞いたティオは今にも泣きそうな表情で黙り込んだ。



「……エリィさんもランディさんもレンさんもロイドさんに感化されたみたいに………本当に……聞いてるこちらが………恥ずかしくなってきてしまいます………どうしてそんな………」

そしてティオは嬉しそうな表情で涙を流し

「ま、それも巡り合わせだろ。支援課を選んじまった時点で俺達は同じ、誰かさんの被害者だ。」

「クスクス、支援課に関わった時点でレン達の”運の尽き”って事よ。」

「ふふっ、そうね。そういう恥ずかしい思いも分かち合ってもらわないとね。」

ランディとレン、エリィはそれぞれ笑顔で答えた。

「なんで俺が加害者になってるのかわからないけど………まあ、わかちあうってのは俺も賛成だよ。恥ずかしい思いだけじゃなく、辛い思いや、苦しい思い………それからもちろん、嬉しい思いや、楽しい思いも。それが”仲間”ってもんだろ?」

3人の言葉を聞いたロイドは苦笑した後ティオに微笑み

「………ああもう……恥ずかしくて………暑苦しくて………こんなに居たたまれないのに………でも………何だか悪くない気分です……………」

微笑まれたティオは涙を流して微笑んだ。



その後、ロイド達はティオと共にバスに乗って夜のクロスベル市へと戻った。支援課に戻って、疲れたティオを自室で早めに休ませた後………ロイド達は改めてセルゲイと話をする事にした――――


 
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