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Three Roses

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第五話 ローtリンゲン家その三

「私は結婚するのではなく」
「ええ、そうね」
「縁組ですね」 
 マリアとセーラも応える。
「北の王国の王子を」
「養子に迎えられますね」
「まだ結婚していないのに」
 それでもと言うのだった。
「養子とは」
「確かにです」
 セーラが言って来た。
「こうしたお話はこれまで」
「ありませんでしたね」
「聞いたことがありません」 
 セーラにしてもというのだ。
「どうにも、ですが」
「それでもですか」
「はい、このお話です」
「よいお話ですね」
「北の王国とも我が国は常に衝突してきました」
 このことをだ、セーラは暗い顔でマリーだけでなくマリアに話した。三人はこの時は王宮の薔薇の園にいた。薔薇達はこの日も咲き誇っている、それぞれの色で。
 その薔薇、特に自身が先王から貰った黄色の薔薇達を観ながらだった。セーラは話していった。
「しかしです」
「若しあの国の王子を私が養子とし」
「その後王家を継がれれば」
「我が国と北の国は同じ王を戴きますね」
「それは即ちです」
 二つの国が同じ王を戴く、まさにそのことはというのだ。
「これまでいがみ合ってきた二つの国が一つになる」
「そういうことになりますね」
「そうです」
 こうマリーに答えた。
「ですからこのことは」
「叔父上の素晴らしい政策ですね」
「そうです、もう両国はいがみ合うことはなくなり」
「しかも」
「それどころか同じ国になります」
「やはり大きいですね」
 マリーも言うのだった。
「そう思いますと」
「やはり戦いはなりません」 
 セーラも言う、むしろ女であるが故に男である大公よりも戦を忌みそのうえでマリーとマリアに言うのだった。
「それよりもです」
「養子を迎え」
「はい、そして」
「婚姻ね」 
 今度はマリアが言った。
「私達の様に」
「そうなります」
「そうね、ただ」
 マリアは自分達のことは受け入れて理解した、だが。
 マリーを見てだ、そしていぶかしんだ声で言うのだった。
「けれど」
「マリー様ですね」
「マリーはどうしてなのかしら」
 こう言うのだった、自分達と常に共にいてきて今もそうである彼女を見ながら。
「婚姻とはならなかったのかしら」
「やはりです」
「どうしてもなのね」
「はい、島国や半島は私達がそれぞれ婚姻を結び」
「そしてよね」
「他にも王家同士で婚姻が結ばれますが」
 それでもというのだ。
「マリー様は先王のご嫡女です」
「だからですか」
「こう申し上げてはマイラ様に失礼ですが」
 自然と小声になっての言葉だった、このことは。だがセーラはあえてマリーに対してこう言うのだった。 
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