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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第56話

~特務支援課~



「あ………」

「……………………」

支援課のビルの端末があるフロアに降りたロイドは素早い指捌きで端末を操作しているレンに近づいた。

「………ひょっとして導力ネットワークから車両の情報を探しているのか?」

「ええ、そうよ。今から1時間以内に港湾区の南東に停車していた可能性のある車両について………クロスベルの全ネット端末にアクセスをかけて検索しているの。IBCのメイン端末とソバカス君のデータベースも利用させてもらおうかしら。」

「………君は………一体何者なんだ?異世界から来たただの好奇心旺盛な子供………ってだけじゃないみたいだな?」

レンの話を聞いたロイドは考え込んだ後、真剣な表情でレンを見つめて尋ね

「うふふ………確かにレンは異世界に住んでいるけど………生まれはこちらの世界よ。あの工房にいたのは”パテル=マテル”を直してくれる優秀な技術者に”パテル=マテル”の壊れた部分を直してもらう為………飽きもせずレン達に戦いを仕掛けた愚かな軍神(マーズテリア)軍との戦いで、レン達を守る為に両足を壊してしまってね。”パテル=マテル”のデータにあの工房の人があったから、お姉様と一緒に”お願い”しに行って、頼らせてもらっているのよ。」

「ま、軍神(マーズテリア)軍………?それに”パテル=マテル”って………」

レンの話を聞いたロイドは戸惑った後、レンを見つめ続けていた。

「うふふ、わからなくてもいいわ。このクロスベルにおいてレンはただの観察者にすぎない。”仔猫(キティ)”という名前の、ね。」

「………やっぱりか。」

そして口元に笑みを浮かべて呟いた言葉を聞いたロイドは納得した様子で頷いた。

「うふふ、昨日の追いかけっこはスリルがあってドキドキしちゃった。ソバカス君も結構やるけどティオも相当みたいね?ふふっ、ちょっと面白い裏ワザを使われた気もするけど。」

「そこまでわかるのか………」

レンの話を聞いたロイドが驚いたその時、扉が開く音がし、エリィ達が入って来た。

「ただいま、ロイド。言われた通り戻ってきたけど………あら………?」

「レンさん………?」

「たしか………人形工房で出会った娘だったか?」

「ああ………ちょっと事情があってさ。」

レンの存在に首を傾げているエリィ達にロイドは溜息を吐いて言い、そしてエリィ達はロイドに近づいた。

「―――見つけた。”ライムス運送会社”の運搬車が30分前に駐車しているみたいね。次の運搬先はベルガード門………運搬車の通信番号は………うん、これでいいみたいね。」

するとその時、端末を操作したレンは目的の情報を見つけてメモに番号をかいて、ロイドに渡して言った。



「この通信番号に連絡を入れてみて。多分、あの子の行方がわかるはずよ。」

「………お見事。」

「あの………どうなってるの?」

「さっきから何やってんのか完璧に付いていけねぇんだが………」

レンの行動にロイドは苦笑し、エリィとランディは戸惑い

「―――なるほど。やはりレンさんが”仔猫(キティ)”なんですね。」

ティオは納得した様子でレンを見つめて言った。

「ええっ!?」

「おいおい………マジでどうなってるんだよ!?」

一方ティオの言葉を聞いたエリィとランディはティオを見つめた。

「うふふ、ティオも昨日は遊んでくれてありがとう。でも今は、それは後回しにした方がいいんじゃないかしら?」

「……まあ、確かに。」

「よし………さっそく連絡してみよう。」

ロイドは受け取った連絡番号に通信をした。

「もしもし!どちらさま!?」

すると慌てた様子の青年の声が聞こえて来た。

「あ………えっと、クロスベル警察、特務支援課の者ですが………」

「!!よ、よかった!ギルドか警察あたりに連絡しようと思ってたんだ!でもオレ、どっちの番号も知らなくてそれで親父に連絡して………っ!」

「お、落ち着いてください。慌てているみたいですけど………いったい何があったんですか?」

「そ、それが………お、お、男の子がどこかに行っちゃったんだ!」

「え………」

「いまオレ、西クロスベル街道の途中で停車してるんだけど………!物音がすると思って荷台を確かめたら小さい男の子がいて………!なんか忍び込んだらしくてこのままベルガード門に行くのもアレだし、会社に相談しようとしたんだけど………!そしたら通信してる間にその子、どっかに行っちゃってさ!!」

「!!!」

「ど、どうしたの?」

青年と会話をし息を呑んだロイドの様子を見たエリィは尋ねた。

「ああ………ちょっとまずい事になった。」

そしてロイドは手短に状況を説明した。

「え…………」

「………そんな………」

「マズイな、そいつは………!」

状況を聞いたレンは呆け、ティオとランディは真剣な表情で呟いた。

「ああ、すぐに街道に出よう。………大至急、そちらに向かいます。あなたは下手に動かないでその場で待機しててください。その子が戻ってくるかもしれません。」

「よ、よろしく頼む!とにかく急いでくれ………!」

そしてロイドは通信を止めた。

「急いで西口に出よう。それとレンちゃん、君は………」

「………ついていくわ。足手まといにはならないからレンも同行させてちょうだい。」

「で、でも………」

レンの申し出を聞いたエリィは戸惑ったが

「あの子の行方を突き止めたのはレンよ。だからレンは最後まで見届ける必要がある。ふふっ………たとえどんな運命があの子に降りかかったとしても。」

「あなた………それでも”あの方達”の子供なの?」

「レンさん、何を考えているんですか?」

不敵な笑みを浮かべて語ったレンの言葉を聞き、厳しい表情でレンを睨み、ティオは真剣な表情でレンを見つめて尋ねた。

「よくわからんが妙に拘ってるみたいだな。時間が惜しい。ロイド、連れて行こうぜ。」

「ああ。―――レンちゃん。君がただの女の子じゃない事はわかったけど、無茶はしないこと。それだけは守ってくれ。」

「わかったわ。それと、レンのことは呼び捨てにしてちょうだい。何だかちょっとくすぐったくなってきたわ。」

「はは、了解だ。―――よし、それじゃあすぐにでも西口に向かおう。西クロスベル街道に出てコリン君を捜すんだ。」

「ええ………!」

「了解です………!」

「………………………」

ロイドの言葉にエリィとティオは頷き、レンは複雑そうな表情で黙り込んでいた。その後西クロスベル街道に向かったロイド達は途中に止まっている運搬車の運転手から状況を軽く聞いた後、急いでコリンを捜しながら街道を進んで行くと、子供の声が聞こえ、その方向を見ると写真通りの子供が無邪気な笑顔で蝶々を追いかけていたので、それを見て安心したロイド達は保護する為に子供―――コリンに近づいた。



~西クロスベル街道~



「はあ、あれを追ってここまで来ちゃったのか………」

「ハハ、随分と好奇心旺盛なガキンチョだな。」

「……………………」

蝶々を追いかけているコリンを見たロイドとランディは苦笑し、レンは黙り込んでいた。

「ふふ、それじゃあ保護するとしましょうか………」

そしてエリィが微笑みながら言ったその時

「あっ………!」

「あれは………!」

なんと蝶々を追っていたコリンが段差から現れた狼型の魔獣に囲まれた!

「ふえ………?」

魔獣に囲まれたコリンは首を傾げ

「まずい………!」

「クッ………間に合うか!?」

「あの数だと牽制も………!」

それを見たロイド達がそれぞれ武器を構えて表情を歪めたその時!

「………っ……!」

レンは大鎌を構えて魔獣達にすざましいスピードで詰め寄り

「なっ……!?」

「レンさん……!?」

それを見たロイドとティオは驚いた。

「はわ~っ………」

そして魔獣に囲まれたコリンが呆けていたその時!

「さがりなさいッッ!!」

大声のレンの警告が聞こえ

「邪魔よっ!!」

コリンの傍に現れたレンがクラフト―――カラミティスロウを放って、数体の魔獣を真っ二つにして絶命させた!

「…………………」

それを見たコリンが呆けたその時、レンはコリンを抱きかかえて、後ろに跳躍し、レンと交代するかのようにロイド達が駆け付けた!

「お兄さんたち、お願い………!」

「―――任せろ!」

「残りは片付けるぜ!」

そしてロイド達は狼型の魔獣との戦闘を開始し、協力し合って、若干苦戦しながらも魔獣達を倒した!



「ふう………」

「正直、危なかったぜ………」

戦闘を終えたロイドとランディは安堵の溜息を吐いた。

「そうだ………レンちゃんとコリン君は!?」

そしてある事を思い出したエリィは声をあげた後、コリンを抱きかかえているレンにロイド達と共に近づいた。

「…………………………」

「………もう、大丈夫よ。コワイ魔獣はお兄さんたちが退治してくれたから………だから、安心していいわ。」

黙り込んでいるコリンにレンが優しげな口調で言ったその時

「ふえっ………うくっ………」

「ちょ、ちょっと………」

コリンは泣きそうな表情になり、それを見たレンが戸惑ったその時

「うううううっ………うわあああああああああん!」

コリンは大声で泣き始めた!

「ど、どうして泣くのよ………もう危なくないって言ってるのに………あなたなんか………あなたなんか………本当は助けるつもりなんて………ゼンゼンなかったのに………!」

コリンの行動を見たレンは戸惑った後、辛そうな表情で叫んだ。

「………レン………」

「レンさん………」

「バカみたい………!……ほんとバカみたい………!見てるだけって決めたのに………!絶対に関わらないって決めたのに………!どうして………どうしてレンは………!」

「レンちゃん……」

「…………………………」

仲間達がそれぞれ辛そうな表情でレンを見つめる中、考え込んでいたロイドはレンの近くに歩いて膝をつき

「―――君の事情は知らない。でも、きっと君は君の大切なものを守ったんだ。他ならぬ君自身の手で。その腕に感じてるぬくもりが何よりの証拠だよ。」

優しげな口調でレンに言った。

「っ………」

「不甲斐ないけど、俺達は君の手伝いをしただけだった。でも、それでも光栄に思う。レン―――君が君の大切なものを守る手伝いができて。」

「ううっ………ああっ………うわあああああああああん!」

「ふえええええええええええん!」

そしてロイドの言葉を聞いたレンはコリンと共に大声で泣き叫んだ!



その後コリンを保護したロイド達はレンと共に支援課のビルに戻った……………
 
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