真田十勇士
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巻ノ四十七 瀬戸内その十一
「そして御前さん達も送っているってことだ」
「そういうことだな」
「この前まで瀬戸内も物騒だった」
船頭は幸村にこうした話もした。
「海賊があちこちに隠れていた」
「そなた達も元はだったな」
「ああ、海賊だった」
実際にそうだったとだ、船頭もそのことを認めた。
「とはいっても罪のない奴は殺してないがな」
「積荷を程々に貰ってか」
「関所でも銭を貰うな」
「海でそれを貰う」
「それをしてたんだよ」
そうした海賊だったというのだ。
「わし等はな」
「そうだったのだな」
「それが毛利家に入ってな」
「水軍として働いていたか」
「そうしていた、そしてな」
「今はだな」
「わし等は毛利家に入り多くの海賊がそれぞれの大名家に入りな」
そうしてというのだ。
「もう海賊もいなくなった」
「従わぬ者達は討伐されたな」
「そうなった」
「それでも瀬戸内も落ち着いたか」
「もう海賊もいないさ」
「天下が泰平になり、だな」
「うむ、ここも落ち着いた」
この瀬戸内の海もというのだ。
「そうなったな」
「よいことだな」
「わし等も海賊をやるより今の方がずっといい」
「天下は泰平の方がよい」
「こうして海も普通二行き来出来るからな」
「そういうことだな」
「じゃあその穏やかになった海を進むからな」
そうするというのだ。
「怖いのは荒れる波だけだ」
「海賊はいないか」
「そうさ、若し来ても」
その海賊達が来てもというのだ。
「わし等がいる、安心せよ」
「拙者達も戦うが」
その時はと言った幸村だった。
「そうするが」
「ははは、客人を戦わせる奴がいるか」
船頭は幸村に笑ってこう返した。
「その時はわし等に任せろ」
「そう言うか」
「そしてそうやる」
言うだけでなく、というのだ。
「わかったな」
「では、か」
「ああ、任せろ」
また言うのだった、そうした話をしている中でも幸村は海を見ていた。その青く澄んでいる海を。
その海に海豚を見てだ、十勇士達は言った。
「おお、あれが海豚か」
「そうじゃな」
「魚とはまた違うな」
「うむ」
こうそれぞれ言うのだった。
「あれが海の生きものか」
「鮫はもう見たが」
「海豚はああか」
「ああした姿をしておるか」
「さて、鯨はおるか」
こうした言葉も出た。
「鯨は観られるか」
「ここに出るか」
「ははは、鯨はな」
船乗りの一人が彼等に応えた。
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