世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
ディケイド ~親切な世界とその裏~
「海東の世界~海東の世界~~どんなのかな~~~?」
「楽しいのか?」
「いつだって世界に降り立った時は楽しいもんさ」
そうだろ?と聞きながら蒔風がユウスケに振り返る。
いまユウスケ、蒔風、夏海の三人はこの世界の様子を見て回っていた。
士はこの世界に着いたときに振られた役割が「サラリーマン」だったため、その会社に出勤していった。
「それにしてもこんな田舎に会社なんかあんのか?」
「さぁ?」
そう、ここは田舎だ。
見渡すばかりの田んぼが広がっている
あっち見ても田んぼ、こっち見ても田んぼ。
今通りすがったのだって、きっと田んぼに違いない。
「そんなことないだろ」
「やっぱり?でも・・・田んぼしかねぇ」
「だなぁ・・・こんな穏やかな世界で海東さんは何やったんだろ」
「それをこれから調べに行くんじゃないですか。ほら、いきますよ!」
そういって夏海が二人を引き連れていく。
その道々には看板が多く掛けられておりそのすべてに
「指名手配犯 海東大樹」「極悪ライダー、ディエンド・海東」
などと言った指名手配書がこれでもかと貼り付けられていた。
「まぁ・・・泥棒だからなぁ・・・」
「いきますよ!蒔風さん!!」
「へ~い」
そして三人がたどり着いたのは警察署だ。
海東がなにかやったのなら、それを聞くならここが一番適しているだろう。
「にしても大概におかしな世界だな。ここも」
「そうか?けっこーいい世界だと思うぞ?」
と蒔風とユウスケが言うのも訳がある。
ここまで歩いてくるまでの事だ。
いちいち説明すると長いので簡単に言おう。
皆親切すぎるのだ。
ユウスケの腹が鳴ると、通りすがりの少年が自分の弁当をくれたり
三人が警察署までの道を聞くと、そこまでおぶって行ってくれたり
今もただ話を聞きに来ただけだというのに、まるで国賓が来たかのようなおもてなしだ。
「で、みなさん。一体どのような御用件で?」
警察官が屈託のない笑顔で聞いてきた。
ちなみに警察署と言っても申し訳ない程度の交番があるだけだ。
三人はそこの外にある天幕の下にいる。
周りでは何人かのお年寄りがお茶をすすっていた。
夏海達が海東大樹について聞くと、警察官も、周りにいた住人も一斉に驚き、海東大樹の名をささやき始めたのだ。
「海東!?」「海東大樹だって!?」「あいつのことなのか!?」
「こ、こりゃあ大変だ・・・・ちょっと、お待ちください!!」
そう言って警官が自転車に乗ってどこかに走り去っていってしまった。
どうやらお偉いさんに報告に行ったようだ。
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「で?その警官がなんだって?」
「だから、お偉いさんが俺らに会いたいから来てくれって言ったんだよ。ほんとに聞いてたのか?お前は」
「ふ、問題ない。大体わかった。その話、オレも付いていこう」
日が落ちて写真館に帰った三人は士に今日あったことを話した。
士も今日はおかしな日だったらしく、出社すると社長が来たかのようなおもてなし、セールスに出るとバカ売れだったそうだ。
「ああ、それと、この世界にも怪人がいたな」
さらりととんでもないことを言う士。
それにユウスケが驚いた。
「な・・・それで、どうしたんだ!?」
「もちろん、圧勝さ。オレを誰だと思っている」
「この世界については?」
「さあな。明日そのお偉いさんとやらに聞けばいい」
そして次の日
田園風景の只中にドン!と建っている高層ビル。
そこのプールに士たちは案内されていた。
「なんで話を聞くのにプールなんだ!!」
「落ち付け士。落ち着くんだ」
「待て蒔風。お前は本当に冷静なのか?」
「オレか?いたって冷静だ。冷静すぎるほどにな」
「だったらなんで海パン一丁なのか説明してくれないか」
「そこにプールがあるからさ!!!」
「あっ!!蒔風さん!!」
蒔風がプールに飛び込み、ザバザバと泳いでいく。
それと同時に、プールから一人の男が上がってきた。
「申し訳ございません、このような格好で」
そして男が着替えてから、士達を改めて案内した。
屋敷の中のような内装のホールでテーブルを囲んで士達が話をする。
夏海、ユウスケ、士、いまだに水着の蒔風、そして先ほどの男だ。
「では、あなた達は海東大樹とともに様々な世界を旅しているということですか」
「別に・・・仲良くってわけじゃないけどな」
「オレはこないだ参加したよー」
「舜。服は着ないのか?」
「海東はいろんな世界でお宝を手に入れ回ってるらしいけどな」
「所詮ただのコソ泥だ。オレたちの周りをウロチョロしてる、な」
「舜?なんで服着ないんだ?」
「コソ泥ですか・・・あいつらしい」
「それで、海東さんは一体この世界でなにをしたんですか?」
「あれ?なんでみんなおかしく思わないの?服着てないんだよ?」
「あいつは、この社会を壊そうとしたんです。いわば、反逆です」
「なるほど。大体わかった」
「あいつ?そう言えばさっきからなんか親しげっすね?」
「おかしいな?オレは間違ったこと言ってないよね?」
「あ、申し遅れました。私はエリア管理委員会次官、海東純一です」
「海東?」
「ということは・・・・」
「はい。大樹は、私の弟です」
「な、なんだってーーー!?」
「舜。ちょっとこっち来い・・・・(テメェいい加減服着ろって言ってんだろうが!!!)」
「(ユウスケさん!?やめてくださいよぅ!!そんな重り縛り付けられたらいくらオレでも・・・ギャーーーーー!!!!)」
ドボン!!!
「ゴボガボボボボボボボ・・・・・・」
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士達がビルから出る。
そこからは士も単独行動するようだ。
「お前らは写真館に戻ってろ・・・蒔風はどうした?」
「し~らね」
「私も知りません」
三人が蒔風の所在を考えるが、彼なら一人でも大丈夫だろう、という結論に達し放置した。
その蒔風はと言うと・・・・
(こ~こな~~んかクサイんだよなぁ・・・・)
さっきのビルの中に潜伏していた。
天井のライトの裏や、起伏の所為で死角になってる場所、単純に天井裏などをつたってビル内を見て回っていた。
(あの男・・・純一ってったっけ?あの笑顔・・・キモチワルイ笑顔だ)
そして今、彼が後をつけているのはその海東純一本人の背中だ。
彼が「エリア管理委員会長官」と書かれた扉の前に立ち、厳かにノックし、部屋に入る。
蒔風もうまくその部屋の天井裏に入り込み、様子をうかがう。
デスクの椅子に座っているのは頭を刈り上げ、眼鏡をかけた白いスーツの男だ。
その男の前に純一が立ち、報告する。
「そうか・・・海東大樹が戻ったか」
「はい」
「それで?この世界にいる他のライダーはどうした?」
「仮面ライダーランス、ラルク共にいまだ逃亡中です」
「ふむ・・・はやく捕らえ、プログラムに掛けなければな」
「私にお任せください。あのディケイドの一行は大樹や、他のライダーとも接触しています。彼らの仲間を捕らえれば、まとめて引きずり出せるはずです」
そう言って純一が懐からバックルを取り出した。
「A」をモチーフにしたライダー、グレイブのものだ。
(あいつもライダー?だがあの男はライダーを追っているはず・・・「プログラム」ってのも気になるな・・・)
「では任せよう。それにしても、海東大樹に仲間とはな」
「本人は否定していますが、おそらくはそうかと」
「・・・・その一行、注意が必要だな。ところで」
「なんでしょう。」
「招かれていない客を、私は好まない。知っているな?」
「ええ。もうすでに」
ドンッ!!
天井裏が小規模ながら爆発する。
しかしそこから落ちてきた瓦礫の中にはなにもいなかった。
「捕まえろ」
「はい。変身」
《open up》
純一がグレイブに変身する。
蒔風が逃げた方向はわかっていた。
「まっさか、ばれるとは思わなかったぜ・・・・」
蒔風がいるのはこのビルの屋上だ。
さっきの爆発の直前に逃げたため、所々煤けているが、怪我はなかった。
「で、まっさかこんなに早く追いつかれるとも思ってなかったわ」
蒔風の背後に音もなく現れたのはグレイブだ。
その剣の切っ先を蒔風に向け、宣告した。
「もう逃げられませんよ。ライダーでもないあなたが、ここから逃げる術はありません」
そこの言葉に蒔風が思考の後に答えた。
「・・・・どうかな!?ここからでも逃げる方法はいくつか考えつくけど?」
「では、見せてもらいましょう」
バッ、ブォン!!
グレイブが専用剣のグレイブラウザーで蒔風の首を狙う。
蒔風がそれを身を引いて避けるが、グレイブがそのまま回転し、回し蹴りを食らわせてくる。
それを腕で受け、掌底をグレイブの腹に減り込ませ後退させる。
しかし後退したのはその威力にではなく、自ら身を引いたためだ。
「おい、なんでライダーを敵視するみたいになってんだ?この世界の仕組みはなんだ」
「教えましょうか?そのためにはまずあなたの身柄は拘束させていただきます!」
グレイブが先ほどと同じ要領でさらにコンボを繋げようとしてくる。
蒔風が避け、受け、それを知った上でさらに攻撃を仕掛けてくる。
だが・・・・
ガキッ!!
「なに!?」
蒔風が上腕でグレイブラウザーを受け止めた。
服の下からは鞘に収められたままの「天」が覗いていた。
「これは!?うぐッ!!」
蒔風がグレイブの首元を掴み、壁に叩きつける。
「答えてもらうぞ。この世界の仕組みはなんだ?」
「う、ぐ・・・この世界では・・・フォーティーン様がすべてだ」
「フォーティーン?あのおっちゃんの事か?」
「ふ。そうだ。この世界の住人は皆優しい。そうだったでしょう?それもすべてフォーティーン様のお力。逆らう者などいません」
「お前らは・・・一体何をしているんだ!?」
「人間は優しくあるべきです。それができない者は、この世界にふさわしくない」
「そうすることを強要しているのかお前らは!!!彼らの自由を!!」
「逆らう者にはプログラムを植え付ける。完璧だ。この世界は完璧であるべきなんだ!」
《MIGHTY》
「!?なに!!」
ドッズン!!
グレイブが蒔風から見えない位置でカードを剣にスラッシュさせる
そうすることでスラッシュしたカード「マイティグラビティ」が発動し、その剣撃を蒔風にぶち当てた。
重力の乗ったその一撃に、蒔風が吹き飛ばされ、フェンスを破壊し、身体が落ちていく。
「~~~~!!!力を借りる!!」
蒔風の全身に電流が走る。
その力で磁力を働かせ、ビル内の鉄骨に作用させる。
ブワン、と離れがちだった蒔風の体がビルに向かって振り子のように近づいていく。
直前で力を切り、壁を蹴り砕きビルの中に入る。
そこは何かの手術室のようで、気味が悪いほど薄暗かった。
「おや、ここに何の用かな?」
蒔風の背後から声が聞こえた。
振り返るとそこにはさっき純一と話していた男がいた。
すなわちこの世界を統べる男、フォーティーンが
「おまえ・・・ここで捕らえた人を洗脳してんのか!?」
「それでこの世界は幸せになるのだ・・・・かぁぁあああ!!!」
その全身から黒いオーラが噴き出し、一瞬だけその正体を見せる。
「ッ!!お前は!!!」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
ドォオン!!!!!
大爆発を起こり、蒔風の開けた穴がさらに広がった。
爆発の中から人間一人分の影が吹っ飛んで行ったが、誰もそれを気にも留めない。
その部屋の扉から、グレイブか飛び込んできた。
「フォーティーン様!!」
「大丈夫だ。問題ない」
フォーティーンは元の男性の姿に戻っていた。
あれだけの爆発にもかかわらず、一切の機材は傷一つ付いていない。
「機材を移して、新たに運び込まれたものにプログラムを」
「は」
グレイブが変身を解き、歩き去るフォーティーンに頭を下げた。
そして自身も任務をこなすために、ディケイドの一行の下へ向かった。
to be continued
後書き
蒔風視点からの「ディエンドの世界」です。
その代わり士とこの世界のライダーたちの共闘はなくなってしまいましたが。
アリス
「そこはどうするんです?」
・・・・動画サイトに行けばあるさ!!!
アリス
「うわこいつサイテーですね」
アリス
「次回、ディエンドのエンド」
ではまた次回
オレたちは、共に助けあい、進化する!!!
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