英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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3章~クロスベル創立記念祭~ 第50話
―――創立記念祭 初日―――
~行政区・市庁舎~
「―――このクロスベルが自治州として成立して70年。その70年間はまさに激動の時代と共に在りました。」
創立記念祭の初日、ヘンリーは議員やマスコミ達、そして家族であるエリィやIBCの重役達が見守っている中、演説をしていた。
「幾たびの戦乱、そして導力革命……近代化という荒波に揉まれながら今やクロスベルは、大陸有数の貿易都市、そして金融センターへと発展しつつあります。また、一昨年リベールにおいて締結された”不戦条約”の影響もあってか緊迫していた情勢も大幅に緩和されました。その一方で、急速な都市開発や人口増加に起因する問題も出始めており、新たな政策と法整備が求められています。自治州および、その周辺諸国によりよき未来をもたらすためにも………今こそ我々は、一丸となって力を合わせ、前に進む必要があるでしょう。―――ですが今はただ、70年という長く大きな節目を祝い、喜びを分かち合う事にしましょう。わずか5人間ではありますが今年は例年を遥かに超える観光客が訪れ、かつてない賑わいを見せております。かのアルカンシェルの新作を始め、多くの催しやイベントも企画されており、必ずや充実した5日間となるでしょう。―――大いなる女神達の御名の下………今ここに、クロスベル自治州創立70周年記念祭の開催を宣言します!」
創立記念祭の初日、ロイド達はヘンリーの暗殺を未然に防いだ事で休暇がもらえ、それぞれ休暇を楽しんでいた。ランディはギレゼルと共にウルスラ病院の看護婦達を連れてカジノで遊び………ティオは自室でツァイトの背にもたれかかってヨナと導力通信のゲームで遊び………セティ、シャマーラ、エリナは水那達と共に祭りに浮かれるクロスベル市内の観光をし………セルゲイはソーニャと酒場で静かに酒を飲みながら過ごし………ルファディエルはメヒーシャと共にスイーツ巡りをし………ラグタスとエルンストは市外で全力の模擬戦をし………そしてロイドはセシルと共にアルカンシェルの新作、”金の太陽、銀の月”の劇を見ていた。
~歓楽街~
「はあ~………ホンッットーに凄かった!!こりゃあ確かに熱狂的なファンがいるわけだよ!」
劇を見終わって、劇場からセシルと共に出たロイドははしゃぎながら私服姿のセシルに感想を言った。
「ふふっ、そうね。イリアも凄かったけどリーシャさんも凄く良かったわ。うーん、あのイリアがあれほど入れ込むのもわかるわね。」
「はは、そうだね。プレ公演の時よりも更に息がピッタリ合ってるみたいだな。」
セシルの言葉を聞いたロイドは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「そういえば……例の事件はあなた達が解決したのよね?この前、イリアに連絡した時にあなた達のことを凄く誉めていたわ。いずれ事件を題材にした舞台を企画して特別主演してもらいたいとか………」
「い、いやあ~。さすがにそれは冗談なんじゃ?」
セシルの話を聞いたロイドは表情を引き攣らせた後、苦笑しながら言った。
「うーん、どうかしら。彼女との付き合いは長いけど割と本気だったりするのよねぇ。ま、すぐに気が変わる事も多いから大丈夫だと思うけど。」
「そう願いたいよ………なんか、あの人に強引に迫られたら断り切れない気がするんだよなぁ。」
「ふふっ、あれでも結構、気を遣うタイプなんだけどね。そう言えば――――ルファディエルには悪いことをしてしまったかしら。チケットがもう1枚あったら一緒に誘う所だったんだけど………」
「はは、気を遣う必要ないって。俺達、アルカンシェルからは別にチケットを貰っているしさ。それに今頃ルファ姉はメヒーシャと一緒に甘い物巡りをしているんじゃない?」
「ふふ、そうね。ルファディエルは天使だから、甘い物をどれだけ食べても太らないのが凄く羨ましいわ。そういえば、ロイド達も休暇は今日までなのよね?」
ロイドの話を聞いたセシルは微笑んだ後尋ねた。
「ああ、記念祭中は警察の仕事も相当増えるしね。この前の事件のご褒美に初日だけ休暇を貰えたんだ。」
「ふふっ、お疲れ様。そうそう、今日は家でルファディエルと一緒に夕食を食べていってくれるんでしょう?お母さん達、楽しみにしていたわ。」
「うん、ご馳走になるよ。でも………夕食までまだ時間がありそうだな。えっと……祭りの様子を見物しに行こうか?」
セシルの質問を聞いたロイドは頷いた後、緊張した様子で尋ねたが
「あ………ゴメンね。私、これからちょっと待ち合わせをしちゃってて………」
「えっ………!?待ち合わせって………まさかひょっとして……新しい恋人!?」
申し訳なさそうな表情で答えたセシルの話を聞き、焦りながら尋ねた。
「ううん、残念ながらあの人は忙しくてクロスベルに来れなかったわ。………これからイリアのメゾンで会う約束をしているのよ。」
「な、なんだ、ハハ………(って、焦り過ぎだろ俺………!セシル姉にはもう新しい恋人がいるってのに………)」
セシルの説明を聞いたロイドは心の中で自分を突っ込みながら苦笑していた。
「ほら、例のリーシャさんを紹介してくれるらしくって。よかったらロイドも来る?お互い顔見知りなんでしょうし。」
「い、いや、遠慮しとくよ。女性ばっかりの集まりに野郎が邪魔するのも何だしさ。(というか何となくイリアさんにいじられそうな気がするんだよな………)」
「ふふ、遠慮することないのに。まあいいわ、今日は付き合ってくれてありがとう。私も夕食には戻るつもりだからロイドもそれまでにはルファディエルと一緒に家に来てね?」
「ああ、わかったよ。」
そしてセシルはどこかに去って行った。
「………はあ、何やってんだろ、俺………もうセシル姉には新しい恋人がいるのに………」
セシルを見送ったロイドは溜息を吐いた後、複雑そうな表情で呟いた。するとその時
「あれー、ロイドさん?」
聞き覚えのある娘の声が聞こえてき、声がした方向に振り向くと私服姿のフランとノエルがロイドに近づいてきた。
「ロイドさん、こんにちは~!」
「どうもお疲れ様です。」
「あ………フランに、ノエル曹長か。2人とも私服だから一瞬、誰だかわからなかったよ。」
「あはは………まあ、たまのオフですから。」
「ふふっ、ロイドさんは普段とあんまり変わりませんね?」
「あー、普段から行動しやすい服を着ちゃってるからね。2人は姉妹でデートかい?」
フランに尋ねられたロイドは苦笑した後尋ね返した。
「えへへ、そうなんですー。」
「はあ、本当だったら妹なんかとじゃなくって彼氏と回りたいんですけど………そんなの作る暇もないしなぁ。」
ロイドの質問を聞いたフランは嬉しそうな表情で答え、ノエルは溜息を吐いた。
「お姉ちゃん、ひどいー!忙しくてたまにしか会えないから今日くらいは付き合ってくれるって言ったのにー。」
一方ノエルの言葉を聞いたフランは頬を膨らませてノエルを睨んだ。
「はいはい、わかってるって。………そういえば、ロイドさんはここで何を?誰かと待ち合わせなんですか?」
「あ、いや………さっきまで連れがいたんだけどこの後、予定が入ってらしくてさ。アテが外れてどうしようかって思っていた所なんだ。」
「「……………」」
ロイドの話を聞いた2人は冷や汗をかいた後、互いの顔を見合わせ
(お姉ちゃん、これって………)
(うん、ひょっとしてフラれちゃったのかも………さっき声をかけた時にちょっと表情が曇ってたし……)
(や、やっぱり………)
小声で会話をした後黙り込んだ。
「えっと………?(何か勘違いされているような。)」
そして2人の様子を見たロイドが不思議そうな表情で声をかけたその時
「あの~、ロイドさん。おヒマだったら、わたしたちに付き合っていただけませんか?」
「へ………」
フランが提案し、それを聞いたロイドは呆けた。
「実は、港湾区の公園でミニライブがあるらしいんです。あたしたち、これから、そちらに行くつもりなんですけど。」
「ああ、そうなのか。面白そうだけど………せっかく姉妹水入らずのところを邪魔じゃないかな?」
「いえいえ~!ロイドさんならオッケーですよ!他の男の人だったら全力で阻止してますけどっ!」
そしてロイドに確認されたフランは笑顔で答えた。
「あのね………まあいいや、そういうわけで折角だから付き合ってくださいよ。」
フランの言葉に呆れたノエルはロイドに言った後、ノエルと共にロイドの両脇に腕を組んだ。
「ちょ、ちょっと2人とも。誘ってくれるのは有難いんだけどさすがにこれはちょっと………」
腕を組まれたロイドは戸惑いながら答えたが
「まあまあ、遠慮なさらず。」
「そうそう、両手に花ってやつですよ。それじゃあ、レッツ・ゴーです!」
ノエルたちは取り合わず歩き出し
「う、うーん………(なんか誤解されてるみたいだけど………まあいいか。)」
ロイドは苦笑しながらノエルたちと共に歩き出した。
こうして―――記念祭初日はあっという間に過ぎて行った。その夜、ロイドはルファディエルと共にセシルの実家で夕食をご馳走になり………亡き兄、ガイの話などを交えながら思い出話に花を咲かせるのだった。そして翌日通常業務を始めたロイド達は普段の倍以上に来ている支援要請を片付ける為にロイド達とセティ達、そしてルファディエルの3組で手分けして要請を片付け始めた。その後エリィ達と共に支援要請を達成していたロイドのエニグマにフランからワジやヴァルド達が港湾区で喧嘩をしているという情報が入ったので、喧嘩を止める為に港湾区に向かった…………
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