タクチータ
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第三章
「だからな」
「ああ、その時からですか」
「つまり十八年前からずっとですか」
「お金貯めてたんですか」
「というか貯めさせられてたんですか」
「そうだ、あと結婚したらだ」
ジダンは生徒達にこうも言った。
「かみさんには逆らうな」
「そこ絶対ですか」
「逆らったら駄目ですか」
「そうだ、かみさんの尻には敷かれろ」
人生の重要なことも話した。
「いいな」
「奥さん四人までもててもですか」
「四人の尻に敷かれてですか」
「それでやっていけっていうんですか」
「そうだ、とはいっても大抵一人だからな」
妻の数はというのだ。
「金の関係でな」
「奥さん養わないといけないですからね」
「四人も養える人ってそれだけで凄いですからね」
「それで奥さんの言うことには従え」
「そうしないといけないですね」
「そうだ、あとかみさんと喧嘩しても負けるからな」
こんなことも言う始末だった。
「ライオンや豹を相手にすると思え」
「女は弱いっていいますけれど」
「違うんですね」
「違う」
一言での返事だった。
「そこも知っておいて覚えておけよ」
「はい、わかりました」
「そうしていきます」
「結婚したら大変ってことですね」
「子供のこともあって」
「そういうことだ、覚悟しておくことだ」
まだ結婚のことを知らない生徒達に人生のことも教えたのだった。そうしたことを話してそのうえであった。
ジダンは娘の嫁入りの準備を妻と共に勧めていた、というよりかは妻の言うことに従って動いていた。それでだった。
この日はタクチータを売っている服屋に行った、妻に連れられて。妻のタハミーネは太った身体で夫にこう言っていた。
「いい?ファランギースの服はね」
「タクチータだな」
「あの娘私の血を受け継いで奇麗だから」
自分の自慢もするのだった。
「いいのを買わないとね」
「ああ、確かにあいつは二十年前の御前そっくりだな」
こう返したジダンだった。妻に連れられ店に向かいながら。
「全く、二十年の間に太ったな」
「悪い?」
「詐欺だろ」
その妻を見て言う。
「体重は倍になっただろ」
「そのお陰で体力がついたわ」
「俺は顔もスタイルも気に入ってたんだぞ」
「結婚して家事をするのならね」
「体力がないと駄目か」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「太らないと駄目なのよ」
「太り過ぎはよくないぞ」
「適度ならいいでしょ」
「適度か?全く、二十年で変わるものだ」
「太るのがそんなに悪いの」
「わしは不満だ」
「そう言うあなたも髪の毛薄くなったわよ」
二十年前と比べてとだ、タハミーネは夫に言った。
「結構ね」
「髪の毛のことは言うな」
「気にしてるから」
「これが気にならない男がいるか」
若しくは開き直っているかだ。
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