普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
156 ハロウィーン
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
ハロウィーン当日の〝妖精の呪文〟の授業。ペアを組む事になって──やはりと云うべきか、ほぼ自動的にネビルと組む事になった。……後ろの上段にはアニーとハーマイオニーのペアが座っている。
「良いですか? 〝びゅーん、ひょい〟と杖を振り、〝ウィンガーディアム・レビオーサ〟と唱えます。この様に──“浮遊せよ(ウィンガーディアム・レビオーサ)”」
一瞬だけ後ろに座っているアニーとハーマイオニーとアイコンタクトを取って、〝さぁ〟と今にも促しているフリットウィック先生の指示通り、配られた羽に──〝予習済み〟の〝浮遊呪文〟掛ける。
「「「“浮遊せよ(ウィンガーディアム・レビオーサ)”」」」
教室に三つの羽根が舞う。……アニーとハーマイオニーは先程の俺のアイコンタクトの意味を理解してくれていたらしく、タイミングを合わせてくれたようだ。
皆一斉に杖を振っているが、上手く配られた羽根に対して一発で正確に〝浮遊呪文〟を掛けられたのアニー、ハーマイオニー、俺だけ。
「素晴らしいっ! 皆、見てください──ポッター、ウィーズリー、グレンジャーの三人が見事に羽根を浮かせました!」
甲高い声を上げながら、フリットウィック先生は喜色満面の笑み俺達三人を称賛してくれる。ハーマイオニーは頬を少しだけ朱に染める。
……日々の〝魔法の訓練〟が実を結んだのだから、ハーマイオニーからしたらその喜びも一入か。……俺もアニーやハーマイオニーが魔法を成功させると誉めるが、それとはまた少し違うのかもしれない。
「凄いよ、ロン! ……あ、もちろんアニーとハーマイオニーもだけど…。……僕なんかとは大違いだ…」
隣にペアとして座っているネビルはしょんぼりしながら俺を称賛する。
「〝ウィンガーディアム・レビオーサ〟──ほらね?」
「ネビルは発音は良いけど、杖の振り方がちょっとよろしくないみたいだな。フリットウィック先生みたいに、こうやって──〝びゅーん、ひょい〟っとな感じで杖を振らなきゃ」
「こう?」
「そうだ、大体いい感じ。そのままいってみようか」
「うん──んんっ! ……〝ウィンガーディアム・レビオーサ〟──やっぱりダメだ」
ネビルは発音と──特に杖の振り方を〝グリーンゾーン〟まで改善させるが、ネビルの羽根は云とも寸とも言わない。……ちょっと動いたら、それは〝ネビルが杖を振った時に起きた風圧でした〟となオチ。
(発音も振り方も悪くない──だとするなら後は精神的な何かか…? ……だったら少しばかり試してみるか──)
――“錯乱せよ(コンファンド)”
「あれ…? 今…」
〝錯乱呪文〟を無言でネビルに撃ち込み、〝自分は〝浮遊呪文〟を成功させた〟というイメージを一瞬だけネビルに植え付けた。
……ほんの一瞬とは云え、さすがのネビルも某かの違和を感じたらしく──やはりと云うべきか、頭上でクエスチョン・マークを踊らせる。
「……ネビル、もう一回やってみないか? 多分今のネビルならきっと出来るから」
「うん。ロンの言う通り、出来そうだ。……やってみるよ──“浮遊せよ(ウィンガーディアム・レビオーサ)”」
ネビルは〝びゅーん、ひょい〟と俺やアニー、ハーマイオニー──フリットウィック先生の様に杖を振って〝浮遊呪文〟を配られた羽根へと掛ける。
……すると今度は風圧なんかじゃなく、完璧に羽根を浮かせてみせた。
「やったよ! ロン!」
「良かったな、ネビル」
はしゃぐネビルを宥めるかのようにハイタッチを交わす。……俺の予想通り魔法の成功可否には〝成功のイメージ〟──言い換えれば〝自信〟もまた必要なようである。
「おお! 今度はロングボトムが成功させました!」
フリットウィック先生は一瞬だけ俺を見ると、ぱちくり、とウインクしてみせる。……多分、俺がネビルにちょっとした細工を施したのがバレたのだろう。
………。
……。
…。
シェーマスが羽根を爆発させたりしたので、恙無く──とはいかなかったが、そこそこスムーズに〝妖精の呪文〟の授業も終わり、いざネビルやアニーと教室から退室しようとした時──
―ミスター・ウィーズリーは残って下さい。少々訊きたい事があります―
そうフリットウィック先生から教室に残るよう言い渡された俺は、〝妖精の呪文〟の教室に残っていた。
……アニーやネビル、ハーマイオニーを無為に待たせる訳にもいかないので、三人には先に行ってもらっている。
「待たせましたな」
「いいえ、全く待っていませんよフリットウィック先生」
フリットウィック先生は二つのソーサーとソーサーに乗せたカップを浮かせながらやって来て、机の上にお菓子を広げる。
「……ところで一体俺に何の用ですか?」
カップに注がれていた紅茶に一口だけ口を付け、時間が有り余っていると云うわけでもないので──そう早速ながらフリットウィック先生に話の先を促す。
……尤も、フリットウィック先生に呼ばれた理由は、大体予想出来ているが…。
「私は見ていました…」
フリットウィック先生は言葉を選ぶように語り始める。
「ミスター・ロングボトムは貴方が何かした途端、呪文を成功させました。……私はそれが気になったのです」
「……大した事はしてませんよ。ただちょっと、一瞬だけネビルに〝錯乱〟してもらって、〝どうせ成功しない〟と云うマイナスのイメージを緩和させただけです」
やはりフリットウィック先生から聞かれたのはネビルへの〝仕掛け〟だったので、俺はネビルにやった事を素直に白状する。
「……ネビルは〝杖の振り方〟と〝発音〟が出来ていたのに成功しなかたったのは、ネビル自身が自信を持てていなかったからだと考えました」
「なんと、まぁ…。……聊か強引とは云え、他の生徒を教え導こうとする精神性は素晴らしいと思いますよ?」
「呪文を成功させたのはネビルです。……俺がやったのは〝ちょっとした後押し〟です」
「……ではこうしましょう。ミスター・ウィーズリー、もう既に〝無言呪文〟も使えると云う手腕に対して20点を与えましょう」
「ど、どうも」
「その紅茶を飲んだら行ってよろしい」
望外の加点を小さく喜びながら紅茶を飲んで退室した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
Q.ハーマイオニーとの諍いが起きていないのでトロールの行動が未確定です。グリフィンドールへの加点もなくなります。トロールの行動を固定させるにはどうすればいいでしょう?
「A.俺が〝舞台装置〟になる」
<GUU…>
夕食に向かう途中、アニーとハーマイオニーに一言だけ断り〝見聞色〟で──〝ばかでかい〟気配であるトロールの位置を割り出し、そのデカブツが一番通る可能性が高いルート上のトイレにて、トロールと対峙していた。
「まぁ、どう〝ヤる〟かが問題なんだけどな」
情け容赦無用なら〝死の呪文る〟だけで一発KOなのだが、今もなおクィレルに寄生しているであろう〝お辞儀さん(ヴォルデモート)〟に俺の魔法の手腕がバレるのは〝ウマく〟ない。……その内来るであろう教師からも良い目で見られないだろう。
……頭の中で〝殺害〟から〝無力化〟へと思考を移行させる。
――“麻痺せよ(ステューピファイ)”
<GU…?>
牽制程度に無言で撃ち込んだ〝失神呪文〟だがトロールには蛙の面に小便だったらしく、俺の〝失神呪文〟はトロール表皮に当たった瞬間、あっけなく弾かれる。
「……こんなんじゃ効かないか。……しかも〝麻痺〟じゃだめだな──っと」
――“護れ(プロテゴ)”
〝麻痺呪文〟は上級生が習う呪文だった事を思い出しながら、トロールから振り下ろされた棍棒を〝盾の呪文〟で防ぐ。……ほぼ無意識な防御だったが幸運な事が起きた。
……どうやら俺が張った〝盾の呪文〟は、トロールからしたら思った以上に堅かったようでトロールはノックバックする。……トロールでも引き摺りながらでしか歩けないほど重い棍棒である。そのノックバックは大きく──俺はその隙を見逃さなかった。
――“武器よ去れ(エクスペリアームス)”
「……そもそもの話、別に動きを止めるだけで良いよな──“変化せよ(フェラベルト)”」
<GUUUUUU…!>
〝武装解除〟で近くまで飛んで来たトロールの棍棒を三回杖で叩き、その大きさに見合った網に変化させ──それを射出。……その巨体に対して米粒みたいに小さい頭は俺の予想を裏切らず、トロールは網から脱け出せない。
「今の内か──“掘れ(デイフォディオ)”」
絡まる網から脱出しようともがきにもがくトロールを尻目に、トロールを囲む様に旋回しながら、トロールの足元の強度を〝掘削〟の呪文で脆くさせていく。
……そして頃合いを見計らい…
「ラスト──“沈め(デプリモ)”」
範囲をトロールの周囲に指定して──ずどーん、と落とす。
――「ウィーズリー」
トロールをタイルの海へと落とした瞬間、誰か──マクゴナガル先生から声を掛けられる。
……地面を〝掘削〟しているところから見られていたのは気付いていたが、マクゴナガル先生を始めとした観客が随分と集まってきていた。
「どうかしましたか、マクゴナガル先生?」
「まぁ、〝どうかしましたか〟じぁありませんよ。……全く、言いたい事は色々有りますが──よく生きていてくれました。一年生がトロールを──それも単独で無力化するなど前代未聞です」
「ええ、前代未聞ですな。……だがしかし吾輩はウィーズリーに1つ問いたい。……ウィーズリーはどうしてこんな所に? 吾輩の記憶が正しいのなら、お前はパーティーに居なかった」
始まるマクゴナガル先生のお小言。……そこで後からやって来たスネイプ先生が、俺とマクゴナガル先生との会話に介入してくる。
スネイプ先生の足に怪我を発見しておくのも忘れない。
「……お腹を下していました──このトイレが最寄りだったんです」
――“開心”
――“閉心”
「ほう」
俺の取ってつけた様な──実際に今しがた思い付いた釈明をさすがに訝しんだのか、スネイプ先生は俺の目を見て──あろうことか〝開心術〟を使ってくる。
……それは宛ら〝娘の近くに居るお前が気に食わん〟と云う──〝オヤジ〟の様相を呈していた。
しかし俺は俺で、そうそう過去──これまでの軌跡を見せてやる訳にもいかないので、〝閉心術〟でスネイプ先生からの〝開心術〟を防ぐ。
……更にスネイプ先生の目が細まった気がしたのは気のせいと云う事に。
――「これセブルス、そう詰め寄らんでもいいじゃろう」
「ですが校長」
そこで更なる介入者が──ダンブルドア校長が現れた。
「ダンブルドア校長」
「取り敢えずは礼からかの。ミスター・ウィーズリー、よくぞトロールを無力化してくれた。……その勇気と、トロールを捕縛する手腕に対して30点」
視界の端には、恐らく監督生として居たのであろうガッツポーズしたパーシーの姿が。
――“開心”
――“閉心”
「ほう、その年で儂に心の裏を悟らせぬとは、恐ろしき才能じゃ」
「いや、止めて欲しいんですけど」
「ほっほ、年寄りのちょっとしたお茶目じゃよ」
ダンブルドアからの開心術が止まる。
……その後二つ三つダンブルドア校長と話して、俺は〝トロールからは逃げられなくて戦うしかなかった〟──と云う方向に持っていったので、減点なんかはされなかった。その日はお咎め無しで返される事になる。
グリフィンドール寮への帰路、パーシーからは叱られながらも誉められ──寮でもまたしっちゃかめっちゃかにされたのは良い思い出。
……ちなみにアニーとハーマイオニーは全く俺の心配なんかせず、ご馳走をパクついていたので──信頼してくれているのは判ってはいたが、軽くチョップしておいた。
SIDE END
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