英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第45話
巨大なオートマタ達を排除したロイド達が次のフロアに入ると、そこは狭い通路となっており、通路の途中には扉があり、そこから音楽が流れ、その事に気付いたロイド達は警戒しながら扉をそっと開けて、部屋を覗いた。
~ジオフロントB区画~
「さ~てと。今日も荒稼ぎするかね~。」
部屋の中には複数の端末の前にソバカス少年が座っており、端末の操作をしていた。
「まずはラインフォルト社の新型鉄道車両のスペック………それからヴェルヌ社の高級スポーツ車のスペック………へえ、ZCFでは新しい型の定期飛行船を開発してんのか………オーバルギアの開発といいあそこも相当飛ばしてるよなぁ。……けどメンフィルやラギール商会のアナログ主義には腹立つぜ、クソッ!おかげで情報が全然入んないんじゃねえか!メンフィルの情報だったら、間違いなく高値で売れるっていうのによ………」
(あれって……)
(どうやら”銀”ではないみたいだけど……)
(なんだぁ、あのガキは?)
端末を操作しているソバカス少年を見ていたロイド達は戸惑い
(……やっぱり……)
ティオは呆れた表情で溜息を吐いた。
「しっかし、”銀”の旦那も銀耀石の結晶とは気前がいいよな。このサイズだと、1万ミラくらいにはなるんじゃないかね~。へへっ、明日あたりに”ナインヴァリ”で換金するかね。ギヨームのオッサンの所で新型のパーツも買っておきたいし。ハハ、それにしても旦那も無駄なことするよな~。あんなメールを送ったところでここまで辿り着けるワケないじゃん。このヨナ様の足取りを追えるヤツなんてゼムリア大陸どころか異世界捜してもいないっつーの!」
「―――それはどうかな?」
ソバカス少年が笑いながら言ったその時、ロイドの声が聞こえてき、ロイド達はソバカス少年に近づき
「なっ……!?」
ロイドの声に気付き、近づいて来るロイド達を見た少年は驚いた。
「どうやら君が………”ハッカー”みたいだな。」
「おいおい………まだ本当にガキじゃねえか。」
「な、なんだアンタら…………!………ま、まさか”銀”の旦那が言ってた『特務支援課』かよ……!?」
ロイド達に見つめられた少年は戸惑った後、ある事に気付いて驚きの表情で見つめた。
「ああ、その通りだ。」
「どうやら”銀”とは本当に面識があるみたいね……」
「い、いや、あり得るもんか!この天才ヨナ様の足跡を追ってここまで辿り着けるなんて……」
ロイド達を見つめて少年が混乱していたその時
「……相変わらずですね。ヨナ・セイクリッド。」
ティオが呆れた様子で少年――ヨナに声をかけた。
「ティオ・プラトー!?ど、どうしてここに……!?」
「それはこちらの台詞です。財団を出奔したあなたがどうしてこんなところに……?」
驚きに表情で自分を見つめるヨナをティオはジト目で見つめて尋ねた。
「ティオ、知り合いなのか?」
「エプスタイン財団の同じ研究所にいた事があります。もっとも専門が違ったのでそれほど親交はありませんでしたが。」
「くそっ、そうか……アンタならあのモードを使えばボクの痕跡を追えるハズだよな……ああもう、わかってたらもっと念入りに仕掛けたのにっ!」
「詰が甘いですね、ヨナ。そんな事だから、悪戯をして財団に大損害を与えるんです。」
「う、うっせーな。」
悔しそうにしているヨナをティオはジト目で見つめながら言った。
「なんだぁ、その大損害ってのは?」
「彼は幼少から、財団の研究所でシステムエンジニアとしての英才教育を受けていたのですが………悪戯がひどく、ある時、研究成果の一つを台無しにして大損害を出してしまったんです。そして、それを怒られるのが嫌で出奔してしまったらしく………」
「な、なんだそりゃ……」
「ふう………どんな理由かと思えば。」
「やれやれ……見たまんまのガキってことか。」
ティオの話を聞いたロイド達は呆れ
「失敗したからと言って、逃げるなんて弱虫だね~。」
「………職人としての風上にもおけませんね。」
「そうですね。失敗を経験してこそ、失敗の経験を元に職人としての腕があがりますのに。」
シャマーラ達もそれぞれ呆れていた。
「ク、クソ……言いたい放題言いやがって……ティオ・プラトー!財団に告げ口したりすんなよ!?したらアンタの恥ずかしい秘密を導力ネットにばらまいてやるからな!」
ロイド達の会話を聞いて悔しそうな表情をしたヨナはティオを睨んで言ったが
「どうぞご勝手に。別に、知られて恥ずかしい秘密なんてありませんし………あったとしても、あなたに掴まれるような隙は見せませんし。ネットにばらまかれたとしてもすぐに対処できるでしょうから。」
「く、くう~!」
余裕の笑みを浮かべて呟いたティオの言葉を聞き、悔しそうに唸った。
「ふふっ……」
「はは、ティオすけの方が完全に役者が上みたいだな。」
「それで……ヨナと言ったな?君はどうしてここにいる?一体、何をしているんだ?」
「っせえな、アンタにそんなことを話す義理は―――」
ロイドに尋ねられたヨナは舌打ちをした後つまらなさそうな表情で答えを拒否しかけたが
「答えなさい、ヨナ。この場所にたどり着かれた時点でゲームはあなたの負けです。」
「ぐっ……わかったよ。ボクはな、今このクロスベルで”情報屋”をやってるんだ。」
ティオに睨まれて唸った後答えた。
「情報屋……?」
「おいおい……ガキには似合わねぇ言葉だな。」
「ハッ、今時の情報屋は年齢なんか関係ないつーの。このクロスベルにはとにかくいろんな情報が集まって来る。両帝国、共和国、リベール、レミフェリア、レマンからアルテリアまで……それに加えて、色んな会社や国際企業の支社なんかも多いしな。そういった所の情報が導力ネットを通じて流れるんだよ。まだセキュリティ意識も低いから美味しい情報を喰い放題ってわけさ。」
「そ、それって……」
「どう考えても違法じゃないのか?」
ヨナの説明を聞いたエリィとロイドは表情を厳しくした。
「いえ、まだ試行段階なので取り締まる法律はありませんね。いずれ法制化は時間の問題かと思いますが……」
「ま、このクロスベルはそこらへんも甘そうだしね~。財団のラボも飽き飽きしてたらからここで”情報屋”を開いたってわけ。へへ、お得意様もかなりいるし、ガッポリ儲けさせてもらってるぜ。」
「やれやれ……世の中舐めてやがんな。」
「……舐めていたぶん、その内しっぺ返しが来ると思います。」
ヨナの話を聞いたランディとエリナは呆れて溜息を吐いた。
「しかし、わたしがクロスベル警察に出向してたのは知らなかったみたいですし……少々、情報屋として甘いのでは?」
「うぐっ……仕方ないだろ!ボクだってクロスベルの事を全部は把握してねーんだし!”仔猫”の相手だってあるから色々と忙しいんだよ!」
そして口元に笑みを浮かべたティオに見つめられたヨナは唸った後説明した。
「”仔猫”……?」
「こ、こっちのことだっつーの。……って、まさか……アンタが”仔猫”じゃないよな?いつ、クロスベルに来たんだよ?」
「質問の意味がわかりませんが………わたしがクロスベルに来たのは2ヵ月ほど前のことですね。」
「だよな……ハッキングのクセも違うし。」
「?」
「話はよくわからないが……そろそろ答えてもらおう。”銀”とはどういう関係だ?」
「!………………………」
ロイドに尋ねられたヨナは驚いた後、黙ってロイドを見つめ
「あのメールを送ったのが君なのは確かなんだろう?なぜ、あんなものを送った?」
「フン、まあいいだろう。……ほらよ、受け取りな。」
椅子から立ち上がってロイド達に近づき、ロイドに銀色のカードを渡した。そしてロイドはカードに書かれてある文を読んだ。
今こそ門は開かれた。いざ”星の塔”に挑み、我が望みを受け取るがよい。
「これは……!」
「”銀”からの伝言……!?」
「”銀”の旦那からの依頼でね。アンタらにメールを送ってここに辿り着いたらそのカードを渡せって言われていたんだ。……まさか、本当に辿り着くとは思わなかったけど。」
カードの文を読んで驚いているロイド達にヨナは説明した。
「フン、なるほどな。そんじゃお前、”銀”ってのに何度も会ったことがあんのか?」
「ああ、お得意様の一人だぜ。たまにここに直接来ては色々情報を買ってくれるんだ。ま、こんな変な依頼を引き受けたのは初めてだけどな。」
「ここに”銀”が……」
「どういう人物なのですか?」
ロイドが文を注目している中、エリナはヨナに尋ねた。
「いや、いつも黒衣をまとって仮面を着けてるから知らねーし。何でも、カルバードの東方人街の伝説の殺し屋なんだろ?カッケーよな、クールだ!」
「クールって……」
「やれやれ……恐いもの知らずの小僧だぜ。」
「相手は暗殺者なのに、よくそんなのんきでいられますね……」
そして嬉しそうな表情で言ったヨナを見たロイドは呆け、ランディとセティは呆れた。
「でも、”銀”が私達を誘っているのは確かみたいね。何か話したいことがあるような文面だけど……」
「ああ、そうみたいだぜ?何の用事か知らないけどアンタたちを試したいんだとさ。」
「くっ……」
「へっ、ずいぶんとふざけた犯罪者じゃねえか。」
ヨナの話を聞いたロイドは唸り、ランディは口元に笑みを浮かべ
「でも、この”星の塔”というところって、どこなんだろう??」
シャマーラは文のある部分を読んで首を傾げた。
「”星の塔”………どこかで聞いたことがあるような。」
「もしかして………クロスベルの郊外にある”星見の塔”のことかしら。」
そして考え込んでいるロイドにある事に気付いたエリィは言った。
「あ……ウルスラ間道の途中にあるあの中世の塔のことか。」
「おいおい、あんな所まで俺らを呼び出そうってのか?」
「でも、他に手掛かりはないわ。ここは行ってみるしかないんじゃないかしら……?」
「―――ああ、俺も賛成だ。準備をしたらすぐにでも南口から出るとして……」
エリィの提案に頷いたロイドは仲間達と共にヨナに視線を向け
「……問題はこの小僧をどうするかってことだな。」
目を細めたランディが呟いた。
「な、なんだよ……もうボクに用はないだろ?」
「あのな……このジオフロントはクロスベル市の施設だ。どう考えても不法占拠だろ?」
自分達に見つめられて戸惑っているヨナにロイドは真剣な表情で言った。
「ふ、ふん………使われていない場所を有効活用して何が悪いってんだ。それに、ジオフロントを勝手に利用しちゃいけませんって法律は無いはずだぜ!?」
「そういうのを屁理屈って言うんだ。」
「それに、こんな場所で暮らしていたら危ないでしょう?魔獣だって徘徊しているし、食生活にも問題がありそうだし……」
「……ですね。宅配ピザの箱ばっかりですし。というか、まさかここまで運んでもらっているんですか?」
ロイドと共に注意したエリィの言葉を聞いた後、ある事に気付いたティオは仲間達と共に机に置かれてあるピザが入った箱や積み重なったビザの箱を見て言った後、疑問に思った事を口にした。
「んなわけねーじゃん。ゲートを出たあたりまでいつも届けてもらってるんだ。それに、このすぐ先に出口近くに通じている排気ダクトがあるからな。そっちを使えば安全に出れるってわけさ♪」
「ダメだコイツ……引きこもる気満々じゃねえか。」
そしてヨナの説明を聞いたランディは呆れて溜息を吐いた。
「はあ、こっちも忙しいからこの場は見逃すけど……あんまり悪さしたり、やり過ぎたりするんじゃないぞ?恨みを買って危ない目にあったりするかもしれないんだし。」
「そうね……それが心配だわ。」
「ハッ、そんなヘマするかよ。ま、アンタらも欲しい情報があったら来なよ。ただし、ボクは高いぜ?安月給の新米警察官なんかに払えるとは思えないけどな~。」
「こいつ………」
得意げに語るヨナをロイドは睨み
(フーンだ。いざとなったらチキさんに頼めば、情報ぐらい手に入れられるんだから!)
(まったくです。)
シャマーラとエリナは不愉快そうな表情をした。
「まあまあ、ロイドさん。いざとなれば、わたしがここにハッキングして必要な情報を貰えば済みますし。」
一方ティオはロイドを宥めながら話し
「おい!?」
ティオの話を聞いたヨナは声を上げてティオを睨んだ。
その後支援要請などを終えて、準備を終えたロイド達はウルスラ間道にある森の奥に建っている”星見の塔”に向かった………
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