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白衣の天使

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1部分:第一章


第一章

                        白衣の天使
 昔からだ。こんな言葉が世の中にある。
 看護士、昔は看護婦といった。英語にするとナースだ。
 ナイチンゲールを挙げてだ。ナースは白衣の天使だというのだ。そうした言葉が昔から世の中にはあるものだ。このことは誰もが知っていると言っていい。
 しかしだ。このことは現実かどうかは置いておいてだ。例外も存在している。
 八条総合病院に務めている横山藍はだ。決してそんなナースではなかった。彼女の患者達からの評判は。
「腕はいいよ」
「それは安心できるよ」
「性格も頼りになるし
「けれどヤンキーだからねえ」
「喋り方もね」
 要するにだ。素行に問題があるというのだ。
 如何にも煙草を咥えそうな感じでだ。胸を張って歩きだ。こう言うのである。
「何時でも特攻だよ」
 こう言ってだ。彼女はいつも堂々とだ。レディースの様に病院の中を闊歩する。そしてぶつかろうものならだ。
「邪魔だよ」
「す、すいません」
 ぎろりと睨まれだ。それこそ医師も慌てて退散する。実際に元は所謂ヤンキーでありだ。かなり迫力がある。病院の恐怖の的になっている。
 背はあまり高くなく一五六程だ。ついでに言えば胸もあまり目立たない。色白で茶色の眉を形よく整え茶色が僅かにかかった黒髪をナースらしくショートで奇麗にしている。
 顔立ちはいい。はっきりとしていて色白でしかも鼻の形は程よく高くまとまっており二重の目も奇麗で垂れ気味でも吊り上がり気味でもない。口も程い大きさで白い歯が目立つ。唇はピンクで薄めだ。
 だが、だ。全体的な雰囲気がだ。そのままだったのだ。
「如何にもよね」
「ヤンキーって感じでね」
「元っていうか現役?」
「レディースっていうか。古いけれど」
 後輩のナース達もひそひそと話す。
「顔にマスクして喧嘩上等って書いてたりとか」
「特攻服に感じ書いてね」
「鉄パイプとか木刀持ってたりとか」
「そんな人よね」
「外見はいいけれど性格がね」
「もうそのまま。通勤だって」
 彼女の通勤はどうかというと。
「皮ジャケにジーンズでナナハンだからね」
「バイクかっ飛ばしてくるナースなんて他にいないわよ」
「趣味バイクでお酒って」
「どんなナースなのよ」
 とにかくだ。そんな何処の暴走族だというナースなのだ。しかしだ。
 ナースとしての腕は確かで尚且つ怖いにしても姉御肌で面倒見もよい、しかも曲がったことが嫌いというだ。怖い性格だがそれでもだ。
 毅然としたところはあった。だから性格、素行にそうしたところがあってもだ。彼女は嫌われてはいなかった。あくまで怖がられているだけだ。
 そんな彼女はだ。今日も病院の中でだ。控え室で休憩しながらだ。こう後輩達に話していた。
「今日終わったらね」
「どうするんですか?」
「明日オフですよね、確か」
「そうだよ。まずはバイクをかっ飛ばしてね」
 笑いながら缶コーヒーを飲みながら言う藍だった。
「それで部屋に帰ったらね」
「飲むんですか?」
「そっちですか?」
「飲むよ。ビールだよ」
 かなり楽しげにだ。後輩達に話していく。
「つまみも買ってね。明日は一日飲むよ」
「ううん、何か横山さんらしいですね」
「その過ごし方って」
「そうだろ?あたし自身もそう思うよ」
 缶コーヒーの他にだ。おかきもつまみながらの言葉だった。
「いやね、やっぱりあたしにはあたしのスタイルがあるんだよ」
「バイクにビールですか」
「それですね」
「ナースはあれじゃないか」
 自分の仕事の話もするのだった。
「いつもカチコミだろ?」
「カチコミって」
「ヤンキーですか?」
「同じだよ。死ぬ人もいるし」
 病院とはそうした場所だ。その他にも色々とある。
「奇麗汚いって言ってられないだろ」
「ですね。それは確かに」
「身体も使いますし」
「それじゃあ仕事を離れたらね」
 その時はというのだ。
 
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