異世界にて、地球兵器で戦えり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十二話 各国の状況2
地球世界では日本とアカツキ帝国との首脳会談が異世界で始まるとされて注目が集まった。その中に帝国の現政権と、それに反発する反勢力がアカツキ帝国と日本と接触して連携する動きがあると知られて更に各国の注目が増す事になった。
ーーー。
「インペリアルアカツキと日本が首脳会談。つまり、いよいよ特地……いや、ファルマート大陸による情勢は最終局面を迎えたという事か」
アメリカ合衆国大統領の言葉を聞いて、ホワイトハウスに集まっている首脳陣達は頷いた。
「現時点で日本側より提示されています情報で分析するならば、インペリアルアカツキと日本は、これ以上のファルマート大陸の混乱を良しとしないと判断したのでしょう」
「帝国は現皇帝の暴走により、混乱の極みに達しているとの情報も入っています。」
アメリカ合衆国高級将校達は冷静に分析して、大統領に話した。
「これまで情勢の見極めに徹していた日本と、ファルマート大陸に深く介入をすることを拒んだインペリアルアカツキが、ここに来て急に方針を極端までに変える事は、帝国の暴走は予想を超えていたと言う事か。しかし、ここまでインペリアルアカツキに日本を相手にボロボロに負けてまだ降伏しないとは、予想を超える無能だな。ハリウッド映画に出る三流の悪役以下だ」
ディレルは、帝国の現皇帝のゾルザルをそう称した。そもそもアカツキ帝国など帝国を簡単に粉砕できる武力を要している事は理解しているなら直ぐに和平交渉の席にでもつけば、そこまで酷い条約を結ばされる事もなく、国土も疲弊の極みに達する事もなかったはずなのに、それを認めないゾルザルを現実が見えない馬鹿というのがディレルが感じたゾルザルの印象であった。
「全くです大統領。その無能な暴君の影響で我々の予想より帝国の降伏は早まると思います。帝国が降伏すればファルマート大陸での戦争は終結します。その後にインペリアルアカツキとの連携をどの国より早く確立する事が鍵ですな」
「その通りだ補佐官。現時点で特地の移動手段が可能なのは、日本に現れたギンザのゲートだけだ。故に我々の武力オプションは機能出来ない。特地の利益を多く得るには日本政府の仲介を得てアカツキ帝国との交渉によって左右される。」
「お任せください大統領。帝国は未だしも、インペリアルアカツキは日本と類似点の多い国です。日本と同じ価値観を持つ国との交渉は、コリアンやチャイナと比べれば簡単です。我々にお任せください」
「期待しているよ」
こうしてアメリカは、特地の利益を得るために着々とアカツキ帝国と日本に対する連携を強化する方針を定める。ファルマート大陸の戦後に、ファルマート大陸の利権を他国よりも多く取るために、大国である中国やロシアを警戒しながら準備を進めていく。
ーーー。
ロシアではジェガノフ大統領は、アカツキ帝国と日本の首脳会談の話は既に届いており、アカツキ帝国と日本は特地に対して大きく行動する事が理解できた。だが、それでもロシアの対応に変わりはなかった。ある程度の日本に対する干渉は強めるが、日本の同行を探るだけで深い入りはしない方針に変わりはなかった。
「どうしてですか!?資源輸出国でない日本が特地の資源を手に入れれば、我が国の優位を覆す程に広がる可能性が高いのですよ!」
ロシアは広大な土地と資源を保有している。その国内存在する莫大な資源を餌に、ロシアは強引なまでの資源外交が可能であった。現代の生活のアキレス腱ともいうべき資源をロシアは大量に保有しており、そのためロシアは、日本が特地の資源で資源輸出国となってロシアの発言力低下を恐れているのだ。
「確かに日本の技術力ならば特地に眠る手つかずの希少資源を大量に有効活用する事ができる。だが、それは一体何年後だ?」
そもそも地球と特地との技術格差は歴然だ。地球世界からすれば特地は、アカツキ帝国を除けば中世時代の技術力しかない。そして、地球世界との経済パートナーとなるには日本は特地で開発をしなければいけない。地球世界が満足しうる顧客を獲得するのに日本は一から特地の人間を支援しなければいけない。
それに、銀座に現れた門じたいが未だにどのような現象で現れた事も解析できておらず、そんな超常現象で開いた異世界の門が何時消えるかもわからないのだ。下手に門に介入してあちらに派遣した人間を失うほうがマイナスだと判断しているのだ。このような決断をジェガノフ大統領が決定したのも、アカツキ帝国の存在があるからだ。
(国連よる国際管理が出来たとしても、アカツキ帝国にとって地球世界との関係が不都合と思ってしまえば、門を破壊するだけでこちらとの関係を断ち切る事など簡単なのだからな)
アカツキ帝国の価値観は日本との類似点が多いとの報告が入っているが、だからといって国家利益を無視してまでお人よしの訳がない。アカツキ帝国という地球世界の大国に匹敵する国家が特地に存在している事で、特地にたいする対応でジェガノフ大統領は慎重になっていたのだ。
「アカツキ帝国との関係を第一とする方針に変わりはない。逆にアカツキ帝国が地球との関係が不都合と判断しないように対応しろ。アメリカやEUと連携して対策を考えるように通達。そして我々と同じ資源輸出国や反日が常識化している中国と韓国に対する牽制も忘れるな」
ジェガノフ大統領は外交官達にそう通達する。ロシア政府としては特地の門が邪魔だが、ロシア企業の中には新たなビジネスチャンスが訪れたと判断して、特地に関する関心度は高かった。アメリカや中国のように深く介入する事はなく、二国と違って一歩下がった所で対応するような方針であった。
ーーー。
首脳会談を終えて一安心した日本政府であったが、この後の対応についての対策を考えなければいけなかった。
「何とか一通りの特地に対する取り決めをアカツキ帝国と行えた事はよかった。そして帝国講和派が、我々に対して冷静に分析している事を理解している事も喜ばしい」
首脳会談を終えて、アカツキ帝国と特地の交渉がスムーズに終えて一安心した本位首相。しかし、この後の事について考えなければいけないと思うと憂鬱で仕方なかった。
「ですが首相。今回の急遽決まった会談に出席した事に対して共産党を含めた各政党から批判の声が上がっています」
首相補佐官の白百合が、本位に対して説明する。それを聞いて本位は呆れた表情でため息を吐く。本来なら随分先になる筈の予定であったアカツキ帝国との首脳会談を他の予定を飛ばしてまで実行したのもファルマート大陸の帝国抑止力の崩壊が早まり、帝国の外圧で黙っていた各国が一気に戦争を始めるのも時間の問題であった為に、アカツキ帝国は早めにファルマート大陸での問題を片付けたかったのだ。
それを理解している本位も、このまま特地が戦国時代のように覇権を争いを始めたら、特地の利益を得るどころか、下手に介入して紛争に参加する羽目になり、逆に特地より撤退する事にもなりかねないのだ。特地の紛争を未然に防げなかった事に対して特地の利益を欲している各国から非難を浴びて、これぞとばかりに各政党も攻撃する魂胆が分かりきっているだけに、今回の首脳会談を本位は受諾した。
「全く嫌になるな。何もしなくても批判。行動しても批判。明確なビジョンを持って抗議するならまだ理解できるが、ろくな内容も考えないで批判するものだから呆れるばかりだ」
「仕方ありません。これも彼らの数少ない攻撃材料の一つですので、軽く聞き流すのが一番です。」
「そうだな。国内だけでなく、相も変わらずお隣はいつものように熱狂的だ。」
隣国に対するデモもお決まりのようであるため、今さら気にも留めない本位である。だが、そんな中で今回の首脳会談である男に対して本位の目に留まった。
「しかし、あの自衛官なかなかやるな」
「ええ、その通りです。第一陣の外交官も、彼のお蔭で助かったと言っています。」
「最初はあのレポートの内容を見た時はふざけているのかと思ったが、なかなかどうして馬鹿に出来るものではないな」
「異世界の国家で、まだ日本人が誰も接触していないで、あれ程の対策を思いつくのですから驚きです。」
「伊丹耀司二等陸尉。まだまだアカツキ帝国については不明な点も多いし、特地の現地住民に対する対応に対しても分からない事だらけだ。伊丹君には是非とも次も特地で重要な会議があれば同席してもらい、対策書を作製してもらいたいな」
本人が聞けば「そんな~!!」と、ム○クの叫びのような表情で叫ぶだろうが、そんなのは本位達には関係がなかった。伊丹耀司の要望が通るのは、まだまだ先になりそうである。
ページ上へ戻る