英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)
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第46話
~月の僧院~
「ふう、やっと着いたか。しかし、前に来た時と比べるとやたらと薄暗い感じだな………」
「ええ………前に来た時はこんなモヤは出てなかったのに。」
「うふふ、少し見ない内にいかにも”出そうな雰囲気”になっているわね?」
件の遺跡に到着したロイドは遺跡から感じる気配に驚き、エリィは身体を震わせ、レンは興味ありげな表情で遺跡を見つめていた。
「で、この遺跡の中に幽霊が出るってわけだな?」
「ええ………幽霊というか得体の知れない魔獣ですけど。ティオちゃん………何か感じる?」
ランディに尋ねられたノエルは頷いた後ティオに尋ねた。
「………………………何か不思議な波動のようなものを感じます。ただの空気振動……?………それとも霊的なもの………?」
「不思議な波動………?」
ティオの答えを聞いたノエルは不思議そうな表情をした。
「ええ、前に来た時には感じなかったんですけど……どうやら屋上に見えている鐘のあたりから感じられます。」
ティオの言葉を聞いたロイド達は遺跡の屋上にある鐘を見つめた。
「そういえば………この遺跡も、星見の塔みたいに屋上に鐘楼があるみたいね………」
「ああ、そうみたいだな。クロスベルの中央広場にあるのと同じような鐘みたいだけど………」
「ふむ………なんか関係あんのかねぇ。」
「まあ、少なくても偶然同じ鐘があるって事ではないでしょうね。」
「……………………………今回は、一通り内部を探索するのが目的ですが………とりあえずの目標地点としてあの鐘楼まで行ってみませんか?ティオちゃんの言ってたことも確認してみたいですし。」
「ああ、異存はないよ。それじゃあ……さっそく中に入るとしようか。」
ノエルの提案に頷いたロイドは仲間達を促した。
「ふう………わかったわ。」
「了解です。」
「そんじゃま、幽霊ってのにご対面といますかね。」
「うふふ、リアルホラーハウス巡りの始まりね♪」
その後ロイド達は遺跡の中に入り、礼拝堂らしき場所に到着した。
「ここは………」
「ど、どうやら礼拝堂みたいだけど………」
「………古い記録によると中世の僧院跡みたいですね。―――”月の僧院”。あの”星見の塔”や古戦場の奥にある城砦と同時代のものらしいですけど。」
「ということは………500年くらい前の遺跡ね。激しい戦乱の時代でもあった頃だけど………」
ノエルの説明を聞いたエリィが考え込んだその時、鐘の音が聞こえ始めた!
「こ、これは………」
「鐘の音……!?」
「………!来ます………!」
鐘の音に驚いているロイド達に何かに気付いたティオは警告した。するとロイド達の目の前に人の顔の姿をした得体のしれない魔獣達が現れた!
「なっ………!?」
「キャアアアアアッ!ぼ、亡霊………!?」
「クスクス、定番の反応ありがとう、エリィお姉さん。まあ、それはそれとして………ある意味予想していた通りの”魔物”達が現れたわね。」
突然現れた得体のしれない魔獣達を見たロイドは驚き、エリィは悲鳴を上げ、エリィの様子にレンは小悪魔な笑みを浮かべた後興味ありげな表情で魔獣達を見つめた。
「やっぱり出た………!」
「ビビッてるヒマはねえ!来るぞ!」
その後ロイド達は協力して得体のしれない魔獣達を撃破した。
「ふう………何とか終わったか………エリィ、大丈夫か?」
戦闘が終わった事を確認したロイドは仲間達と共に武器を収めた後幽霊に対して一番恐怖を抱いていたエリィを心配した。
「え、ええ、何とか………そ、そそそ、それよりも今のはっ!?」
ロイドに心配されたエリィは頷いた後先程撃破した得体のしれない魔獣達の事をすぐに思い出すと身体を震わせ
「モロに亡霊だったな………気色悪い光と一緒に消えていきやがったし……」
「というか今の魔獣―――いえ、”魔物”は”影の国”でも見かけたわよ。ロイドお兄さんも見覚えがあるわよね?」
「ああ………今の魔物は間違いなく”深淵”や虚構と化したグランセルが夜になった際に徘徊していた魔物の種族に属しているタイプだろうな………」
ランディは疲れた表情で溜息を吐き、レンに視線を向けられたロイドは”影の国”出会い、何度も戦った事がある魔物を思い出していた。
「それと………やはり上位三属性がはっきりと働いていましたね。どうやら、何らかの理由でこの遺跡は”霊的な場”になっているのかもしれません。」
「霊的な場か………」
「そういえば………さっき、屋上の鐘が鳴ってましたけど………まさか鳴らしていたのはゆうれ―――」
ティオの説明にロイドが考え込んでいる中ノエルがある推測を口にしようとしたが
「ストップ、ノエルさん!た、たぶん風で鳴っただけよ!ええ、そうに決まってるわ!」
「お嬢、必死だなぁ。」
エリィが必死の表情で制止し、その様子を見たランディは溜息を吐いた。
「気持ちはわからなくないけど………いずれにせよ、今の戦力なら何とか探索する事は出来そうだ。曹長、このまま先に進むかい?」
「ええ――――お願いします!」
そしてロイドに今後の方針を確認されたノエルは力強く頷いた。
「ううっ……行くしかないみたいね。」
「まあ、こちらの攻撃が通じるだけマジではないかと。」
「そうね。上位属性も働いているからその点も注意しながら進みましょう。」
「やれやれ………とんだホラーハウス巡りになりそうな気がしてきたぜ。」
その後ロイド達は時折現れる得体のしれない魔獣達を倒しながら探索し、さらに仕掛けを解いて礼拝堂に隠されていた隠し扉を開いて、扉の中へと入った。するとそこに地面に巨大な目が描かれ、魔法陣らしきものをいくつも描かれていた。
「こ、これは………」
「なんつーか………やたらと怪しげな場所だな。なんでこんな場所が礼拝堂の裏側にあるんだ?」
地面に描かれている魔法陣や周囲にある松明を見たノエルは驚き、ランディは溜息を吐いた後目を細めて呟いた。
「そうだな………七耀教会の遺跡にしては不気味すぎる感じだけど………」
「そ、その床に描かれた紋様は一体なんなのかしら………?目………みたいな形だけど………」
「………………(まさかここは………)」
地面に描かれている目のような紋様を見たロイドは真剣な表情で考え込み、エリィは不安そうな表情をし、レンは厳しい表情をしていた。
「……………………………」
「どうした、ティオ?」
「な、何か気付いた事でも?」
一方真剣な表情で黙って考え込んでいるティオが気になったロイドとノエルが声をかけた。
「………どうやらこの場所は何らかの”儀式の間”だった可能性が高いかもしれません。それも生贄などを奉げるような禍々しいたぐいの……」
「い、生贄………!?」
「ええ………赤黒く見える染みの跡は多分、血糊ではないかと。成分を分析してみないと正確なことはわかりませんが………」
「ゾッとしねぇ話だな………」
「でも、どうして教会の遺跡にそんなものが………」
ティオの話を聞いたロイドが考え込んだその時、再び鐘の音が聞こえて来た!
「ま、また………!?」
「クッ………今度はなんだ!?」
鐘の音が聞いたノエルは驚き、ロイドは警戒した。すると目の前の魔法陣から巨大な悪魔のような姿をした存在が現れた!
「こいつは………!?」
「あ、悪魔………!?」
「もはや”お約束”と言ってもおかしくない展開ねぇ。」
「気を付けてください……!物凄い”霊圧”を感じます………!」
悪魔の登場にノエルは驚き、ロイドは警戒し、レンは呆れた表情で呟き、ティオは仲間達に警告した。
「おいおい、俺たちゃ教会の悪魔祓い師じゃねえんだぞ………!?」
「来ます………!」
そしてロイド達は悪魔との戦闘を開始した!
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