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メモリーバンク

作者:風雅 迅
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プロローグ

「想い出」とは何なのか。
それは、時に人を傷つけ、時に人を慰める。
しかしそれは何故なのだろう。
「想い出」と言っても、それは過去に起こった事実でしかない。
その事実だけが人を傷つけ、慰めるとは本当に不思議なことだ。

また、人の記憶------「想い出」------とは非常に不確かだ。
人は、過去に起こったことを完全に記憶しておくことはできない。
つまり、人の中には常に偽物の「想い出」と本物の「想い出」が同時に存在するのだ。
しかし、人は自分でその「想い出」が本物か偽物か見分けることはできない。
過去を確実に振り返るのは「不可能であった」のだから。

そして、人は「想い出」を忘れたいと思い、忘れたくないと思う。
嫌な「想い出」は忘れ、良い「想い出」は忘れたくない。
誠に自分勝手なことだが、誰もがこの気持ちを理解出来るだろう。

嫌な「想い出」は忘れたい、良い「想い出」は忘れたくない。
それならどうするか------。

簡単だ。
忘れたいならば記憶を選択し消去すれば良い。
忘れたくないのなら記憶を切り取り大切に保存しておけばいい。

今日の科学技術は大きな進歩を遂げた。

「想い出」の操作------。
具体的に言うとこうだ。

生まれたばかりの赤ん坊には「メモリア」と呼ばれるリング状の機械が首に取り付けられる。
取り付けられた「メモリア」は、脳と同期され、その人の身の回りのことを全て保存する。

同期したということは、「メモリア」に保存された記憶と脳の記憶はイコール、片方に変化が起こればもう片方も同じように変化する。

つまり、「メモリア」のデータを消去すれば自分の脳からも記憶は失われる。また「メモリア」からデータが失われない限り、記憶は消えず正確に残るのだ。

その一つ一つの「メモリア」を統率し全人類の記憶を管理するのが、人々が生み出した、人々の「想い出」を操る
システム。
それが------。


------【メモリーバンク】------


これにより記憶は、自由に操れるようになった。
嫌な事は忘れれて、楽しかった事は忘れずに覚えていれる。なんて素晴らしいのだろう。

しかし、機械では操れない僕の意思が問うのだ。「これでいいのか?」と。 
 

 
後書き
これは、本物の想い出を求める少年少女の物語。




------2017年4月1日連載開始------




あなたは自分の「想い出」を信じきれますか------。





 
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