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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第30話

~アルカンシェル~



「まったくイリアさんったら………いきなり抱き付いたりして、ロイドさんとルファディエルさんに失礼じゃないですか。」

リーシャは呆れた後、イリアを睨んで注意し

「まあまあ、固い事言いっ子なし。それに弟君はお姉さんに抱き付かれてちょっとは嬉しかったでしょ?」

「フフ、私が抱きしめた時とどっちが良かったかしら?」

注意されたイリアは悪びれもない様子で答えた後、口元に笑みを浮かべて、からかうような表情をして微笑んでいるルファディエルと共にロイドを見つめ

「はは………」

見つめられたロイドは冷や汗をかきながら苦笑し

「……………………」

(セシルさんに続いて………しかもルファディエルさんにもやっぱり抱き付かれた事があるのね………)

ティオとエリィは蔑みの視線でロイドを見つめ

(あはは。なんかお父さんにちょっと似ている人だね~。)

(……否定はできませんね。まさか将来、父様のように多くの女性と関係を持つのでしょうか……?)

(フフ、そうかもしれませんね。)

シャマーラは興味ありげな表情でロイドを見つめ、エリナは呆れた表情で溜息を吐いた後ジト目でロイドを見つめ、2人の言葉を聞いたセティは苦笑し

(これがヒエラルキー………弟至上主義というやつか!この弟貴族っ!弟ブルジョアジーがっ!)

ランディは悔しそうな表情でロイドを睨んでいた。



「そ、それでその………脅迫状の件なんですけど。」

仲間達の様子に冷や汗をかいたロイドは疲れた表情でイリアに尋ねた。

「ああ、そうだったわね。弟君の頼みなら仕方ない。ちゃんと手紙は持って来たわ。はい、これ。」

尋ねられたイリアは手紙をロイドに手渡した。

「ど、どうも。(頼まれたのはこっちだけど………)えっと………」

イリアに渡された手紙を受け取ったロイドは手紙の内容を読んだ。



新作ノ公演ヲ中止セヨ。サモナクバ炎ノ舞姫ニ悲劇ガ訪レルダロウ――――”銀”



「これは………」

「新作の公演を中止せよ………さもなくば炎の舞姫に悲劇が訪れるだろう―――”銀”。」

「確かに脅迫文っぽいな。」

手紙の内容を知ったエリィ達は表情を厳しくし

「脅迫状というよりただの嫌がらせじゃない?言っちゃあなんだけどこの程度の脅し文句なんか珍しくもないんだし。」

「………そうなんですか?」

イリアは平気そうな様子で答え、イリアの話を聞いたロイドは劇団長に尋ねた。

「まあ、ウチもそれなりに儲けさせてもらってるからねぇ。やっかみ半分、面白半分で脅しめいた手紙はそこそこ届くよ。ただ、今回ばかりはちょっと気になることがあってねぇ………」

尋ねられた劇団長は答えた後言葉を濁した。

「気になる事………?」

「………差出人の名前ですね?」

劇団長の言葉を聞いたティオは不思議そうな表情をし、セティは真剣な表情で尋ねた。

「ああ、そうなんだ。今まで送られてきた脅迫文は無記名が殆どだったんだが………」

「それが今回は”銀”という思わせぶりな名前が書かれていて………ただのイタズラとは思えない感じがするんです………」

「う~ん………気のせいだと思うんけどねぇ。」

「ふむ………皆さん、”銀”という名前に何か心当たりはないんですか?」

劇団長達の話を聞いたロイドは考え込んだ後尋ねた。

「まったくもって無いわね。そもそも人の名前なの、それ?」

「何かの暗号とかそんな感じはしますけど………」

「うーん、ウチの新作のタイトルに『銀』という言葉は入っているが………そのくらいだねぇ、心当たりは。」

「そうですか………」

ロイドの疑問にそれぞれ首を傾げながら答えたイリア達の話を聞いたエリィは頷き

「では………それ以外の心当たりはありませんか?失礼かと思いますが、最近、誰かの恨みを買うような事があったりしたとか。」

ロイドは再び質問をした。

「そ、それは………」

「うーん、まさかねぇ。」

するとリーシャは目を逸らし、劇団長は考え込んだ。

「あら………?あなたたち、誰かに恨まれる心当たりなんてあるの?」

2人の様子に気付いたイリアが尋ねたその時、2人は脱力し

「あ、あのねぇ………」

「私達ではなくて………イリアさんの話ですよ。ほら、つい先日、例の会長さんのことを………」

劇団長は呆れ、リーシャはある事を言った。

「ああ、あのハゲオヤジの事か。あまりにどうでもいいからすっかり忘れてたわ。」

リーシャの話を聞いて答えたイリアの話を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいた。

「そのハゲオヤジというのは………?」

そしてティオがイリアに尋ね

「ああ、マルコーニっていう脂ぎったハゲオヤジのことよ。”ルバーチェ商会”っていうゴロツキどもを使ってるっていう。」

「え………!?」

「ルバーチェ商会………!」

「その名前が出るかよ………」

「…………………」

尋ねられて答えたイリアの説明を聞き、ロイド、エリィ、ランディは表情を厳しくし、ルファディエルは黙って考え込んだ。



「なに、どうしたの?」

「い、いえ………最近よく聞く名前なので。それでその………ルバーチェ商会の会長とはどういう経緯で?」

「よく接待かなんかでウチに客を連れてくるのよ。いつも貴賓席を使っているから相当、羽振りはいいんでしょうけど、舞台とかには全然興味ないみたいね。あたしの事も、演技とか全然見ないで身体ばっかりイヤらしい目で見てたし。」

「イ、イリアさん………」

「よく気付くねぇ、そんな事。」

そしてロイドの質問に答えたイリアの話を聞いたリーシャは疲れた表情をし、劇団長は半分呆れながら感心していた。

「舞台の最中は、観客席も含めてあたしの世界だから当然でしょ。で、この前そのハゲオヤジがあたしに言い寄ってきたわけよ。帝都のオペラハウスへの進出をバックアップしてやろうとか恩着せがましいことを言いながら。」

「へえ、そんな予定があるんスか?」

イリアの説明を聞いたランディは意外そうな表情で尋ねたが

「うーん、エレボニアからだけではなく、共和国方面やメンフィル領方面からも要請があるんだよ。期間限定でいいから特別主演をやってくれないかってね。そういえば、この前リベールの王立競技場(グランアリーナ)からもオファーがあったな。」

劇団長は考え込みながらランディの質問を否定した。

「やはり凄い人気なんですね………でも、どうしてそれをルバーチェの会長がバックアップするという話に?」

「どうやら帝都方面に強力なコネを持っているらしくてね。まあ、彼らの噂を聞いている限り、遠慮したい類のコネだと思うが………」

「………ルバーチェはどちらかというとエレボニアと繋がりの深いマフィアです。帝都の暗黒街とのコネクションもそれなりにあるのかもしれません。」

「そ、そうなんですか……」

劇団長の話に頷くように説明したエリィの説明を聞いたリーシャは真剣な表情で呟いた。

「それで結局、そのハゲオヤジをどうしたんですか………?」

「もちろん、丁重にお断りしたわ。2度と迫って来る気が起こらないよう、ビンタもかましてあげたけど。」

「ええっ!?」

「マ、マフィアのボスにそんなことを………?」

「……度胸のある方ですね………」

ティオの質問に笑顔で答えたイリアの話を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情をし、エリナは感心した様子でイリアを見つめた。

「そうなんです………私も気を失いそうになって。」

「私も気絶しそうになったよ。ただまあ、向こうもイリア君の身体を触ってくるなど無謀な――――いや無礼だったからね。周りの取り成しもあってその場は何とか収まったが………」

「向こうがその時の屈辱を忘れていない可能性はある……そういう事ッスか。」

「………確かに脅迫文を出す動機にはなりそうですね。」

リーシャの言葉に同意した後説明した劇団長の話を聞いたランディとティオは納得した様子で頷き

「………―――事情は大体わかりました。まずは幾つか手掛かりを当たってみようと思います。イリアさん、この脅迫状はお預かりしてもいいですか?」

ロイドは考え込んだ後イリアに尋ねた。

「ええ、構わないわ。ふふっ………少し目つきが変わったわね。」

「え………」

「あたしたちが舞台(ステージ)に上がる時と同じような目………いいわ、あなたたちなら良い仕事をしてくれそうだし。リーシャの心配を取り除くためにもこの件、全てお任せしておくわ。」

「イリアさん………」

イリアの言葉を聞いたリーシャは嬉しそうな様子でイリアを見つめ

「―――引き受けました。」

「ご期待に沿えるよう、尽力させていただきます。」

ロイドは頷き、エリィは会釈をした。その後ロイド達は玄関でリーシャに見送られようとしていた。



「イリアさんも納得してくれたし、相談して本当に良かったです!」

「はは………これからですよ。どうやら一筋縄ではいかなくなりそうですし。」

笑顔のリーシャに言われたロイドは苦笑した後、真剣な表情で答えた。

「そ、そうですよね………そういえば………あの、どうかそんな丁寧に話さないで頂けませんか………?」

「え……」

「その、私まだ新米ですし………ロイドさんやエリィさんよりもちょっと年下だと思いますし……そんな丁寧に話しかけられると何だか申し訳なくって。」

「そ、そうですか?それじゃあ―――ちょっと砕けさせてもらうよ。」

「は、はい!どうもありがとうございます!」

ロイドの言葉にリーシャが嬉しそうな表情で頷いたその時

「リーシャ?ミーティングを始めるわよ。」

「はい、イリアさん!」

イリアの声が聞こえ、リーシャは返事をした。

「それでは皆さん………失礼します。何かわかったら遠慮なく劇場にいらっしゃってください。」

そしてリーシャは頭を軽く下げた後、去って行った。

「さすがに忙しそうだな………」

「ええ………今も小走りでしたし、一秒でも時間が惜しい事がわかりますね。」

「ま、公演まで数百回は稽古を重ねるらしいからな。脅迫文を気に懸けている時間がもったいないのも頷けるぜ。」

リーシャが去った後呟いたロイドとセティの言葉にランディが答え

「数百回!?そんなに練習しているんだ!?」

「なるほど………納得です。」

ランディの話を聞いたシャマーラは驚き、ティオは静かな表情で呟き

「ふふ、新作の成功のためにも何とか解決できるといいわね。」

「はい。それに私達も彼女達が無事な姿で劇をするところが見てみたいです。」

エリィは微笑み、エリナもエリィの言葉に頷いた。その後ルファディエルはロイドの身体に戻り、ロイド達はアルカンシェルを出た。



「さて………どうするんだ?今のところ手掛かりは”ルバーチェ”くらいだが。」

「一応”銀”という名前も手掛かりになりそうですが………」

「……そうだな。」

アルカンシェルを出た後、それぞれの顔を見回して言ったランディとティオの言葉を聞いたロイドは考え込み

「―――なあ、みんな。”ルバーチェ商会”を一度、訪ねてみないか?」

意外な事をエリィ達に提案した。

「えっ………!?」

「マジか………!?」

「別に、警察の捜査として普通の事情聴衆をするだけさ。脅迫文を出したのがルバーチェの会長かどうかはまだわからないけれど………面倒を避けてるだけじゃ真実にはたどりつけないと思う。」

自分の提案に驚いているエリィ達にロイドは説明し

「………なるほど。」

「………一理ありますね。」

エリナとセティはそれぞれ真剣な表情で頷いた。

「それに、いい機会だと思うんだ。あれだけの事をしても捕まらず大手を振って歩いている連中……どんな実態なのかを掴めるきっかけになるかもしれない。」

「へっ………なるほどな。」

(フフ…………成長したわね、ロイド。)

ロイドの話を聞いたランディは頷き、ルファディエルは微笑んでいた。一方エリィはその場で考え込み

「えっと、やっぱり心配か?何だったら俺とランディだけでも………」

エリィの様子に気付いたロイドは提案したが

「ロイドさん………?」

「女だからってあたし達を仲間外れをする気………?」

ティオとシャマーラが責めるような視線でロイドを見つめた。

「い、いや!別にそういう意味じゃなくて。」

2人に見つめられたロイドは慌てて言い訳をした。

「ううん………別に心配はしていないわ。そうね、訪ねるだけであればそれほど危険ではないと思う。この街のマフィアというのが本当はどういう存在なのか………知るにはいい機会でしょうしね。」

「あ、ああ………?」

「なんだよ、お嬢。随分と思わせぶりだな?」

「ふふっ、気のせいよ。脅迫文に関しても瓢箪(ひょうたん)から駒ということがあるかもしれないし………早速、訪ねてみましょう。」

「ああ……!」

そしてエリィの言葉にロイドは力強く頷き

「データベースの情報によると………”ルバーチェ商会”のビルはそこの裏通りの途中から路地の奥に入った先にありますね。」

ティオが目的地の場所を説明した。

「ヘッ、あの怪しげな一角か。連中の姿を見かけると思ったらマフィアの本拠地だったわけだな。」

一方ティオの話を聞いたランディは納得した様子で言った。



その後ロイド達は”ルバーチェ商会”を訪ねる為に裏通りにある”ルバーチェ商会”のビルに向かった………


 
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