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Three Roses

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第四話 新王の即位その四

「ここで泣いてはですね」
「はい、なりません」
 司教もマイラに言う。
「君主であるならば」
「泣いてはならない」
「常にです」
「毅然としてですね」
「顔を上げているべきです」
 こうマイラに言うのだった。
「そしてです」
「はい、そうしてですね」
「間もなくです」
 ここで司教の声が変わった、その声はこれまでよりさらに低くそして何か囁く様な。そうした陰のある声になっていた。
「帝国から人が来られます」
「私の婚礼の為の」
「そうです」 
 まさにというのだ。
「ですから」
「それでは」
「王の崩御は悲しむべきことですが」
「私は泣くことはない」
「泣いてはならず」
 そしてというのだ。
「前に進まれるべきなのです」
「自身の婚礼に」
「そうです、幸せが待っているのですから」
「だからこそですね」
「そうです、そして伴侶となられる方も」
 肝心のその彼もというのだ。
「来られますので」
「そうですね、私の夫となられる方が」
「皇帝のご長男です」
 即ち嫡男がだ、彼女の夫となるというのだ。
「次の皇帝とも言われています」
「大陸一の権勢を持つ国の」
「法皇庁、旧教の守護者でもあられる」
 司教はマイラにこのことも話した。
「その方とです」
「私はですね」
「生涯を誓い合うのです」
「では」
「そうです、前に歩まれて下さい」
「振り向くことなく」
「そうされて下さい」
 こう言うのだった、そしてだった。
 このことを話してだ、そのうえで。
 マイラは涙を落とさず自身の婚礼そして彼女が思う国家のあり方を考えていた。例え周りに姉妹や友人がおらずとも。
 王の葬儀が行われてだった、そのうえで。
 太子が王となった、大公がこれまで通り宰相として新王を支えることなったが新王が若年であるが為に彼は摂政ともなった。そうしてそのまま政治を続けていた。
 政治は新教を国教としながらも旧教との融和を維持しそしてだった。
 王権を強化し手工業者や農民の権利を拡大していっていた。王により国力の増強政策を続けていたのである。
 マリー達はその中にいた、そして時折だった。
 弟そして従弟である新王にだ、政治について相談もされた。
「では姉上はですね」
「はい」
 毅然としてだ、マリーは玉座にいる王に答えた。
「そうすべきだと思います」
「異端審問に委ねない」
「旧教徒達は」
 決してというのだ。
「そうすべきではありません」
「では」
「旧教徒達は臣民です」
「臣民ならば」
「まずは臣民を守ることが」
「王の、国の務めですね」
「王は何だと思われますか」
 王の目を見てだ、マリーは問うた。その王に。
「どういったものとです。王はお考えですか」
「はい、王は僕です」
 王は淀みのない声でマリーに答えた。
「まさにです」
「国家のですね」
「はい、国家の第一の僕であり」
「国の為に尽くすものですね」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。 
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