ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第8話 イッセー、懐かしき庭へ!虹の実を捕獲せよ! 後編
side:小猫
こんにちは、塔城小猫です。たまにはフルネームで自己紹介しました。私達は現在虹の実を捕獲するために『庭』と呼ばれる場所に向かっています。
「うは~!見ろよ小猫ちゃん、アーシア!十夢が虹の実捕獲を祈願して『金色イクラ』を100㎏もくれたぞ!」
「わあ、キラキラ光って綺麗です!」
先輩達が食べているのは金色イクラという何でもストライプサーモンという魚から少量しかとれない貴重な食材だそうです、そんなものをポンッとくれた十夢さんには今度何かお礼がしたいです。
「私も頂きます、はむ…」
…美味しい!魚が好きな私からすればこれは絶品だった、普通のイクラより濃厚でプチプチッとした歯ごたえからトロッと中の旨味があふれてくる!たまりません!
「はむはむ…あの先輩、一ついいですか?」
「何だ?」
「一つ気がかりなんですけど、トロルコングが真っ先に虹の実を食べちゃうってことはないんですか?」
もしその虹の実が既にトロルコングに食べられていたら行く意味がなくなってしまう、私はそれが心配だった。
「トロルコングは動物の肉しか食べないんだ、虹の実の香りに誘われて寄ってくる動物が目的なんだろう」
なるほど、だから虹の実のなる樹を住処にしてるんですね。
「でもそんな怖いゴリラさんがいたら動物さん達も近づかないんじゃ…」
「近づく動物は後を絶ちませんよ」
アーシアさんの疑問にヨハネスさんが答える…って凄い姿勢で運転してますね。
「反射神経に近い…野球でバックネットにファールボールが飛んだ際、客は必ず避けようとするでしょう?『網がある』と理解しているのに反射的に避けてしまう。つまり虹の実の匂いを嗅いだ動物は反射的に『食べたい』という食欲に支配されてしまうんです。例え猛獣に襲われても虹の実を食べるのを止めない動物も多いですからね」
理性を忘れてしまうほど美味しい木の実…一体どんな物なのでしょうか?
「皆さん、見えてきましたよ、目的地である『庭』が---」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「なんて大きな壁…」
私達は車を降りてまず目にしたのがとてつもなく大きな壁に囲まれた設計物でした。どれぐらいの高さがあるんだろう?それにビオトープって書かれてますがこれが『庭』という事でしょうか。
「「ご馳走様です、イッセー様!」」
「止めろよその挨拶、何も奢っちゃいないだろう」
入り口らしき場所に立っていた二人の男性がイッセー先輩に謎の挨拶をする。
「ビオトープガーデン…?」
「人工的に作られた動植物の生息区間のことです、限りなく自然に近い状態で動物達を放し飼いにしています」
「IGOはこのビオトープ内でグルメ動物の生態調査等を行っているんだ」
「そうなんですか」
アーシアさんの疑問にヨハネスさんと先輩が答える、ここはIGOが作った人工の猛獣が放し飼いにされている場所なんですね。
「じゃあゲートを開けてくれないか?」
「それが…」
ドドドドンッ!!ドドドドドンッ!!
「はわわ!?」
「ぐッ、この音は!?」
突然雷のような轟く音が響き私とアーシアさんは耳を塞ぐ、今の音は?
「研究所の監視塔からの連絡ですでに一頭のトロルコングがゲート裏に…」
「待ち構えているのか!?」
えッ、もうすでにそのトロルコングが待ち構えているんですか?じゃあ今のはそのトロルコングが中から門を叩いた音じゃ…
ドォンッ!!
また大きな音が鳴り響き何事かと思い振り返ると、先輩が自分の胸を叩いていた。
「先輩、ビックリしたじゃないですか!」
「『ドラミング』、ゴリラ特有の威嚇のポーズ、さっきの爆音はトロルコングが胸を叩いて威嚇した音だ。庭の王者が俺に入るなと忠告したんだ」
ドラミング…確かによくゴリラが胸を叩いてるのをテレビなどで見た事がありますが、こんな分厚いコンクリートの壁を越えてここまで響いたってことですか?
「かまわん、ゲートを開けてくれ」
「ここ『第8ビオトープ』ではゲートから5㎞圏内に捕獲レベル5以上の猛獣がいる場合ゲートを開ける事はできません」
「…なるほど、ならゲートの5㎞圏内にトロルコングがいなければいいんだろう?」
先輩はそう言って壁に近づいていきました。
「ゴリラはドラミングの他に何かを投げたり近くのものを壊したりするというが…今度は俺が威嚇する番だ」
先輩は左腕に赤龍帝の籠手を出して、力を溜めていく、まさか先輩…
「ドライグ、三段階でいくぞ」
『任せろ』
『Boost!Boost!Boost!』
先輩の戦闘力が見る見る内に上がっていき凄まじい力を感じる。
「3連釘パンチッ!!!」
ドドドドドンッ!!
先輩が放った一撃が分厚いコンクリートの壁を陥没させる、それどころか更に衝撃が奥に突き刺さっていく、そしてあっという間に関通させてしまった。
「信じられない…あんな分厚い壁に穴を開けちゃうなんて…」
戦車の駒を持つ私でも容易にあの壁は壊せない、でも先輩は難なく突破してしまった、これが先輩の力の一つなんでしょうか。
「ほら、小猫ちゃんにアーシア、突っ立ってないで行くぞ」
「あ、はい…」
「待ってください~」
私とアーシアさんは先輩の後を追ってビオトープ内に入っていった。
「…警備員が困惑してる内に…」
「クポー」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
「ま、待ってください、先輩!」
「はう~」
私とアーシアさんは急いで先輩の元に向かう、でもどうして先輩はこんなに急いでいるんだろうか?
「小猫ちゃん、アーシア、雲行きが怪しい。一雨降るかもしれん、虹の実の樹は背が高いから雷が落ちたら大変だ、なるべく急ごう」
空を見上げると確かに雲行きが怪しくなっていた、これは急いで虹の実を目指した方がよさそうですね。
「さて…そこの岩陰にいる奴、出てきたらどうだ?」
「ッ!?」
先輩が突然後ろにある岩陰にそう言うと岩陰から昨日の女性が現れた。
「ど、どうして分かったの?」
「匂いだよ、匂い。アンタ今までに結構な食材に触れてきただろ、その匂いがした」
「嘘でしょ、あらかじめ匂いは消してきたのに、これが美食屋イッセーの嗅覚…凄すぎるわ!」
「クポー!」
そういえば先輩は警察犬よりも嗅覚が優れているんでしたね、私も分からなかったのに凄いです。
「アンタは確かティナだっけ?一般人の立ち入りは禁止されているんだがどうしてここに?まさかつけてきたのか?」
「こんな美味しさてんこ盛りのニュースを聞いちゃグルメキャスターとしての誇りが騒いだのよ!」
「大した勇気だな、なら一緒に行くか?」
「え、いいの?」
「思い立ったが吉日、その日以降はすべて凶日ってな、まあ命の保証は出来ないがいいか?」
「勿論よ、グルメキャスターとしてそういった覚悟は出来てるわ!」
ニュースの為にこんな危険な所に来るなんてキャスターって凄い仕事なんですね、その根性は尊敬できます。
私達はティナさんを連れて虹の実の元に向かうことになりました。
「先輩、この葉っぱお肉みたいな模様があります」
「こっちにはバナナみたいなきゅうりがあります~」
「それはベーコンの葉でそっちのはバナナきゅうりね。それをベーコンの葉でまいて食べると美味しいわよ」
「流石グルメキャスター、食材に詳しいじゃないか」
「流石ですね…って先輩もう食べてるじゃないですか!?」
見た事もない食材を見つけた私達はティナさんに色々教えてもらいました。先輩はもう既に食べてますが…
「あ、そうだイッセー、虹の実とベーコンの葉って合いそうじゃない?」
「お、美味そうだなソレ♡」
先輩が小さな崖を滑り降りてる時でした、突然先輩の足元の地面が沈んで大きな穴が開きました。
「ぐおッ!(落とし穴!?)」
「せ、先輩!?」
「ゴガァァァァァッ!!!」
上から猛獣の咆哮が聞こえ見上げると腕が四本生えた巨大なゴリラが大きな岩を先輩の落ちた落とし穴に目がけて投げているのが見えました。あれがトロルコング!?
「イッセーさん!?」
「イッセー!?」
アーシアさんとティナさんの悲痛の叫びが聞こえ、私は先輩を助けに行こうとしましたがすぐ傍に降り立ったトロルコングを見て恐怖で動けなくなりました。
あ、私ここで死ぬんだ……
そしてトロルコングは大きな口を開けて私を食べようと……
「ノッキング!!」
した瞬間先輩が現れて何か道具を出してトロルコングの肩に当てました、するとトロルコングは痙攣したかのように地面に倒れてしまいました。
「うわッ、唾液つけられちまった!」
…私、助かったの?自分が生き残った事を実感して安心したら体が動くようになりました。
「小猫ちゃん、大丈夫か?」
「先輩…先輩ッ!」
私は泣きながら先輩に抱き着きました、だって先輩がやられちゃったと思って…食べられそうになって…怖くなって先輩にしがみ付きました。
「よしよし、もう大丈夫だ」
先輩の温かい手が私の頭を優しく撫でてくれる、これだけでさっきまで感じてた死の恐怖が薄れていきます。でもトロルコングの唾液でベタベタです…
「先輩、トロルコングは…」
「大丈夫だ、ノッキングしたからな」
「ノッキング?」
私は聞きなれない言葉に首をかしげました。
「ノッキングっていうのは小さい針などを動物の運動神経に突き刺して麻痺させる捕獲技術の事だ、因みに今使ったのはノッキングガンっていう専用の道具だ」
「じゃあトロルコングは生きてるんですか?やっつけたほうがいいんじゃないですか?」
「ん、別に殺す意味はないだろ。俺達の目的はあくまで虹の実だからな」
アーシアさん達が駆け寄ってくる中、私は先輩の言った言葉の意味が分からなかった。明らかに殺されかけたのにどうして先輩はノッキングだけですませたのだろうか…私は倒れているトロルコングを見ながらそう思った。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
雨が降る庭を進んでいると何か甘い匂いがしてきました。これって…
「先輩、もしかしてこの匂いは…」
「ああ、虹の実は近いぞ」
これが虹の実の匂い…なんて芳醇な甘い香りでしょうか…理性が無くなってしまうのも頷けます。
「トロルコングもやっつけたしこれで虹の実ゲットね!」
「あいつは群れの一番下っ端だよ、俺に唾液をつけた意味もそこにある」
群れ…まさかあんなのがまだまだいるってことですか?
「トロルコングはチンパンジー並みに頭がいいからな、落とし穴や待ち伏せは普通にやるさ。だがそういった奴が一番怖いのは小細工を止めた時だ」
先輩が見た先には何十頭というトロルコングがいました……あ、また走馬燈が見えてきました…
「さて…群れのボスはどこだ?」
「「「ゴアアアアアッ!!!」」」
先輩が何かを探すように辺りを見てますがトロルコング達はお構いなしにと飛びかかってきました。
「アーシア、ティナ!死ぬ気で俺に掴まれ!小猫ちゃん、いけるか?」
「はい、さっきは不覚をとりましたが今度は負けません!」
トロルコングの攻撃をかわして私と先輩は群れの中に突っ込んでいきました。
「やぁぁぁッ!!」
「ノッキング!!」
一頭のトロルコングの腕を掴み振り回して他のトロルコングにぶつけました、先輩はアーシアさん達を守りながらノッキングで二頭のトロルコングを麻痺させていました。
「先輩、ノッキングじゃ倒せませんよ!赤龍帝の籠手じゃないと!」
「そんな事をしたら殺しちまうだろ、トロルコングの肉は筋っぽくて食えたもんじゃないからな」
「えッ…」
「俺は『食う』目的以外で命は奪わねえ。食わないなら殺さないし殺したなら食う、それが俺のルールだ」
「………」
……言葉が出なかった、私は危険な猛獣はやっつけたほうが楽だと思った、でも先輩は違った。命を目的を達成する為に奪うんじゃない、食べるという生物の原点にしてシンプルな答えを守っていた。例え殺されかけても目的が違うなら命は奪わない…それが兵藤一誠という人間なんだ。
「イッセーさん…」
「決して無駄な殺生はしない…これもまた美食屋イッセーのひとつなのね」
アーシアさんもティナさんも先輩の言葉に美食屋イッセーの本質を見ていた。
「しかしこれはキリがないな、このままじゃノッキングガンの針が持たないぞ」
トロルコングの攻撃をかわした先輩の左腕を別のトロルコングが掴んだ。
「イッセーさん!?」
「ぐッ、正当防衛だ、悪く思うなよ」
先輩は赤龍帝の籠手を出して力を溜める、すると先輩を掴んでいたトロルコングが怯えたように手を放した。
「放した…?つまり俺の左腕に恐怖を感じたのか…そうか!雨のおかげで下っ端の匂いが落ちてきたんだ、これなら威嚇が通じるぞ!」
トロルコング達が先輩から後ずさりしているのを見ていたら一頭だけ毛が白いトロルコングが目に映りました、その白いトロルコングは慌てたように身を隠すと次の瞬間強い光に襲われました。
「雷が落ちたか!虹の実に落ちたらアウトだぞ、皆、今の雷で真っ先に隠れた奴を見なかったか?そいつがボスだ」
「えっ、普通は逃げないのがボスじゃないんですか?」
「逆だ、群れのボスに必要なのは強さ以上に危機管理能力だ、危険を真っ先に感知できるのがボスの器だ」
「…なら見ました。私…あの奥にいる白いのが真っ先に隠れました」
私は奥にいる白いトロルコングを指さしました。
「シルバーバック…見つけたぜ!『頭トロル』とでも言おうか」
「凄いです、小猫さん!」
「でもどうして奴がボスだって分かったの?」
「それが、トロルコング達が先輩を恐れて攻撃してこなくなって…そしたら妙に落ち着いて周りを見れたというか…とにかく分かったんです」
「お手柄だぜ、後は奴とケリをつけるだけだ」
アーシアさん達を下ろした先輩は凄まじい殺気を放ちトロルコングを払いのけていく、そしてあっという間に頭トロルの前に立ちました。頭トロルは巨大な口を開けて先輩を威嚇しますが私達には見えました、巨大な赤いドラゴンが頭トロルの頭をゆっくりと撫でる光景が…
頭トロルは冷や汗を流し遂に目を閉じて戦意を失いました。
「なんて静かな決着なの…」
ティナさんの言う通り雨の降る音しか聞こえない中…私達とトロルコングの対決は静かに幕を下ろしました…
ーーーーーーーーー
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ーーー
「あーもう!せっかい美味しいニュースがとれたのに~!」
私達は今先輩のもう一つの家である「スイーツハウス」に来ていました。トロルコング達を屈服させた先輩は虹の実を捕獲しました、でもあくまでもトロルコングの生活を脅かさないように一つだけです。ここも先輩らしいなぁと思いました。
その光景をティナさんはビデオカメラに収めようとしましたがIGOの関係者が来てカメラは没収されてしまいました、危うくティナさんも連れていかれそうになりましたが先輩が止めてくれたので今回は見逃してもらえたそうです。虹の実は半分をIGOに渡し、その一部をもらって今から食べます。
「まあまあティナさん、今回は仕方ないですよ」
「でもね小猫ちゃん、グルメキャスターとしてあんな美味しいニュースを視聴者に届けられないなんて悔しいのよ~!」
「はわわ、よしよしです、ティナさん」
アーシアさんと二人でティナさんをあやしていると奥から先輩が出てきました…ッ!?この匂い…今まで嗅いだ甘味の中でも比べ物にならない…自然とよだれが出てくる!
「おまたせしました、ゴク、虹の実でございます。ゴク」
先輩も凄いよだれをたらしています、アーシアさんとティナさんも同様です。
「やはりそのまま…ゴク、いただくのが美味しいかと思って…ゴク」
「先輩…ゴク、何を言ってるのか…ゴク、分かりません…ジュル」
駄目だ、よだれが止まらない…それだけ体が食べたいって言ってるんだ…先輩が虹の実を取り分けていく。ああ、今すぐ口に入れたいよぅ!!
「それじゃ、全ての食材に感謝をこめて…」
「「「「いただきます!!」」」」
私はスプーンを手に取り虹の実をすくう、プリンみたいに柔らかいが重さが全然違う…
「はむ…ッ!?」
なにこれ…口の中でもう4回も味が変わった!?完熟マンゴー数百個を濃縮した糖度、そのあとに広がる酸味はレモンやキウイとは比べ物にならない!
「うおおッ甘栗みたいな香ばしさが広がっていく!」
「美味しいです、色んな味が波みたいに押し寄せてきます~!」
「これはまるで味のデパートね!」
喉を通ってもまだ味が変わってる…最後まで凄い存在感…美味しい…
「…決めた」
「えッ?」
「決まりだ、俺のフルコースの『デザート』…虹の実で決定だ!」
先輩の人生のフルコースが一つ決まったんだ!自分の事みたいに嬉しいです!
「わあ!良かったですね、イッセーさん!」
「美食屋イッセーのフルコース…それの決定に立ち会えるなんて美味しすぎるニュースだわ!」
「クルッポー!」
私達はその後心いくまで先輩のフルコース決定を祝い続けた。良かったですね、イッセー先輩!!
後書き
こんにちは小猫です。次回は久々に悪魔の話です。部長の婚約者であるライザー・フェニックスが現れて…えッ、私が欲しい!?そんな、私には先輩が…って先輩とはそういう関係じゃないし!…と、とにかく大変な事になりそうです。次回『リアス部長の婚約者 ライザー・フェニックス登場!!』でお会いしましょう、にゃん♪
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