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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第26話

マインツに到着したロイド達は町長に話を聞く為に町長の家に向かったが、町長は他の客達と応対していたので、町の人々から情報を収集してから再び町長の家に向かった。すると町長の家の扉が開いた。



~鉱山町マインツ~



「それじゃあ町長!よろしくご検討くださいよ!」

「また明日、お伺いに参りますからねぇ!」

男達の声が町長の家から聞こえた後、町長の家からなんとルバーチェの構成員であるマフィア達が出て来た。

「クク………あと一押しってところだな。」

「ああ、これで何とかボーナスが手に入りそうだ。」

マフィア達は会話をした後町の出入り口に向かい、物陰に隠れていたロイド達は去っていくマフィア達に視線を向けた。

「今のが話に出ていた”ルバーチェ”ですか?」

「ああ………」

セティに尋ねられたランディは真剣な表情で頷き

「………………………」

ロイドは真剣な表情で去って行くマフィア達を見つめ

「ルファディエルさんとロイドの推理通り………”ルバーチェ”の手下が現れたわね………」

「…………これで今回の事件の犯人が完全に決まったようなものですね。」

マフィア達を見つめて呟いたエリィの言葉にティオは静かに頷いた。

「ああ………後は奴らが魔獣を操っている所を抑えるだけだ………え?」

ティオの言葉に頷いたロイドはある事――――マフィア達が出入り口に止めてある運搬車に乗り込み、去って行く様子を見て驚いた。

「あの運搬車………連中のものだったのか。」

「道理で帝国製の最新車両を持っているはずだわ……」

(……恐らくあの運搬車の中に魔獣がいるのでしょうね……逃走を防ぐ為に車も破壊した方がよさそうね……)

去っていく運搬車を見たロイドは呟き、エリィは疲れた表情で溜息を吐き、ルファディエルは考え込んでいた。

「それにしてもさすがルファディエル姐さんだな~………マジで姐さんの読み通り、今日現れたじゃねえか。」

一方ランディは感心した様子で呟き

「ああ…………とりあえず町長から話を聞かせてもらおう。マフィアが何をしに来たのか気になるしな。」

ロイドは頷いた後、提案した。そしてロイド達は町長の家に入った。



「―――また来たのかね。」

「え…………」

家に入った瞬間、聞こえて来た声にロイドは呆けた。

「すぐには決められないと言っただろう?今日のところはお引き取り――――おや?」

「あら、先程の方達じゃないみたいですよ?」

自分達の登場に驚いている町長夫妻にロイド達は近づいて行った。

「お、おお………これは失礼。」

「その………失礼します。」

「お取込みのところにお邪魔して申し訳ありません。」

「あ、ああ………それは別に構わんが。その……君達は?」

「――――クロスベル警察、特務支援課に所属する者です。こちらで起きた魔獣被害について話を聞かせて頂きたいのですが………」

そしてロイド達は町長夫妻に自分達が来訪した理由を説明した。



「なるほど………街の警察の方じゃったか。てっきり遊撃士協会の新人が訪ねてきたのかと思ったよ。」

「………その、よく言われます。それで………町の方々にも色々と話を聞かせてもらったんですが。タチの悪い被害が続いているそうですね………?」

町長の言葉を聞いたロイドは苦笑した後真剣な表情で尋ねた。

「ああ………今までに3回ほど被害に遭っている。どれも夜の事で最初は人的被害も無かったが………先日、ついにケガ人が出てね。軽傷だったのが幸いだけど、徐々に被害が大きくなっているの。」

「それで町のみんなも、すっかり恐がって………」

「そうですか……」

「その、警備隊がパトロールに来ている間は何も起こらなかったんですね?」

町長夫妻の話を聞いたロイドは頷き、エリィは尋ねた。

「ああ、その通りなんだ。どうやら狼どもは相当ズル賢いようでね………しかし、警備隊も警備隊だ!何も解決できていないのに突然我々を見捨てるとは………!君達もそう思わないかね!?」

「ええ………確かに。(色々あるみたいだけど………)」

憤る町長に言われたロイドは申し訳なさそうな様子で頷き

(偉い人達に言われたからって、守るべき人達を見捨てるなんて、あたし達からしたら考えられないことだよね。)

(ええ………何故、そこまでして自らの地位を高めたいのか理解できませんね。)

シャマーラは小声でエリナに言い。エリナは静かな表情で頷き

「ところで、遊撃士協会を頼ったりはしなかったんスか?」

ランディは気になっていた事を尋ねた。

「実は、警備隊が来る前に一度ギルドに依頼してみたんだ。ただ、基本的に彼らはとても忙しいみたいでね。毎日警備をしてもらう訳にもいかず、結局は警備隊が出動したんだが…………」

「なのに今朝、警備隊がいきなり撤収してしまった……」

「ああ………弱り目に祟り目とはこの事さ。仕方ないから、ダメ元でもう一度ギルドに相談してみようと思っていたんだが………そこにあの連中が訪ねてきたんだ。」

「”ルバーチェ商会”の者ですね。」

「その………彼らは一体、どんな話をしに?」

「それがねえ………撤収した警備隊に代わって用心棒を申し出てきたんだ。いつ魔獣が来てもいいようにとね。」

「用心棒………ですか…………」

「そりゃあ………勿論、タダじゃないッスよね?」

町長の話を聞いたロイドは真剣な表情で呟き、ランディは目を細めて尋ねた。



「いや……ミラを取るつもりはないらしい。代わりに七耀石(セプチウム)の取引をその間だけ独占させて欲しいそうだ。」

「七耀石の取引権を…………確か鉱山そのものの採掘権は自治州が持っているはずですよね?」

「ああ、あまり採掘しすぎないよう、政府の決めた量を守る必要がある。七耀石には国際的な相場もあるから無茶な取引はそもそも出来ないしね。ただ、採掘した七耀石をどこに買い取ってもらうかはこの町の裁量に任されているんだ。」

「すると、彼らにとっては用心棒の手間に見合うだけのビジネスになるという訳ですね。」

町長の話を聞いたティオは頷きながら言った。

「そうは言っても、付き合いのある商人さん達もいることですしねぇ……どうしたものかと困り果てていた所なんですよ。」

「そうだったんですか…………」

困っている様子の町長の婦人を見たエリィは重々しく頷いた。

「――――町長、できればこの件、自分達に任せてもらえませんか?自分達なら、何とかできると思いますので。」

(まあ、最初から答えがわかっている状態で来たようなものだからな。)

そしてロイドは考え込んだ後町長達に提案し、ランディは口元に笑みを浮かべていた。

「ふむ……”特務支援課”といったね?警備隊でも遊撃士でもなく、街の警察に頼ってもいいのかね?」

「ええ、お任せください。早ければ明日中には全て解決できると思います。」

その後ロイド達は町長の家を出た。



「―――今の話で今回の襲撃事件の答えがルファディエルさんの推測通りと完全に証明されたわね。」

「マジでルファディエル姐さんの読み通りになっていたな………」

「ええ。ここまで来るとルファディエルさんは未来でも見れるのじゃないのかと錯覚してしまいますね。」

家を出たエリィとランディは真剣な表情で呟き、ティオは静かな表情で呟き

「ハハ………だけどあの白い狼が伝えたように、これで全ての手掛かりが揃ったと思う。一度、今回の件についてミーティングをしてみないか?」

エリィ達の言葉を聞いたロイドは苦笑した後提案し

「ええ。改めて情報の整理をする必要はあるしね。」

「そんじゃ、もう夕方だしこの町の宿で部屋を取るか?お前とルファディエル姐さんの読み通りだと、ルバーチェの奴らが動くのは今夜だろう?」

エリィは頷き、ランディは尋ねた。

「ああ、そうしよう。」

その後ロイド達は宿に部屋をとって、客室でミーティングを始めた。



「―――さて。状況の整理を始めよう。今回の一連の魔獣被害だけど………最初の警備隊の調書には幾つもの不明点があった。俺達の調査で、その不明点の幾つかが明らかになったけど………本当なら判明しているはずのある情報がまだわかっていないんだ。」

「判明しているはずの情報………?」

「一体なんなの??」

ロイドの話を聞いたセティとシャマーラは首を傾げた。

「そう、一連の調査で本来判明しているはずの情報………それは魔獣の目的、だと思う。」

「そういや………病院の被害を考えると飢えて各地を襲ったって訳じゃなさそうなんだよな。」

「ルファディエルさんの推理のお蔭でルバーチェが黒い狼を操っている事はわかったけど………肝心の目的については語らず、私達に任せたしね。」

「ああ………ここで黒い狼たちの気まぐれと判断するのは早すぎる。病院での一件を考えるればわかるほど彼らは非常に巧妙なルートを使って病棟の屋上に侵入している。そして被害者を必要以上に害することなく去って行った………」

「本来見えてくるべき目的がまったく見えてこない………つまりそこに何か意味があるってわけだな?」

ロイドの説明を聞いたランディは頷いた後尋ねた。

「そういう事。こんな場合、人は大抵、一つの”枠組み”に囚われている場合が多いんだ。黒い狼たちによる各地の襲撃………そこに納得のいく目的を見出せる別の”枠組み”を考えるべきだろう。」

「別の”枠組み”………ですか。」

「難しく考える事はないよ。およそ犯罪事件と呼べるのは『犯人』『目的』『手段』『結果』があるものだけど………そのうちの幾つかが、ズレていると考えたらどうだろう?」

「え………」

「ちょ、ちょっと待って。簡単にまとめてみるから。」

そしてエリィはロイドの話をメモにまとめた。



犯人=黒い狼



目的=?



手段=狼の身体能力



結果=各地の被害



「うん、そんな所だろうな。」

「それで……こいつがどうズレてるんだ?」

「ああ……犯人をルバーチェに入れて、こうしてみたらどうだ?」

ランディに尋ねられたロイドはメモに纏めた。



犯人=ルバーチェ



目的=狼の身体能力



手段=黒い狼たち



結果=各地の被害



「これは………!」

「犯人はルバーチェで、黒い狼たちが手段で彼らの身体能力が目的になる……」

「なるほどな………後まだわかってないのが複数の狼どもを操った方法はどうなんだ?」

ロイドが纏めた答えを見たエリィは驚き、ティオは呟き、ランディは頷いた後尋ねた。

「ああ、その方法なんだけど………コントロールする方法はある人物の証言から推測できると思う。」

「ある人物の証言………?」

「………なるほど、あれだな?」

「さすがにランディは気付くか………うん、その証言者は………シズク・マクレイン………あの遊撃士アリオスの娘さんの証言だよ。」

「シズクさんの証言……」

ロイドの話を聞いたティオは仲間達と共にシズクの音に関する証言を思い出していた。

「も、もしかして………その音で魔獣を操っていたの?」

「ああ、その可能性が高いだろう。」

「………狼や犬のような獣は人には聞こえない周波数の音を聞き取ることができるそうです。それを利用した特殊な笛が昔からあるらしいですが………」

「いわゆる『犬笛』だな。今でも軍用犬なんかを犬笛で操る技術は残っているぜ。まあ、まともな正規軍よりは猟兵どもがよく使うんだが。」

「そうなのか……」

ティオの話を補足したランディの説明を聞いたロイドは意外そうな表情をした。

「………なるほど。かなり輪郭が見えてきたかも。そうなると、魔獣を連れて移動する手段が必要になるわね。………!もしかして。」

そしてエリィは考え込んだ後ある事に気付き

「ああ………さっき見かけた黒い運搬車。断定はできないけど、あれなんかまさに打ってつけじゃないか?」

ロイドが代わりに答えた。

「………これで完全に繋がりましたね。」

「ええ、やはり目的は七耀石(セプチウム)の取引の独占………いえ、むしろそれはオマケね?」

「ああ、多分ね。マフィアが今力を入れているのは対抗組織である”黒月(ヘイユエ)”と”ラギール商会”を圧倒できる戦力を手に入れる事。その為の戦力として狼たちを使うつもりだとすれば………」

「暴れるしかできない魔獣は戦力としては全く使えない………十分、コントロールできるかを実際にテストする必要がある………それが各地で起きている被害の真相だったってわけか!?」

「ああ………間違いない。そもそもルファ姉の推測通り警備隊の引き上げた直後にマフィアの手下が訪れたこと自体、不自然極まりないだろう。引き上げに関してはやはり警備司令だろうな。」

「ええ、そうでしょうね…………………フフ、これでルファディエルさんが教えてくれなかった目的と魔獣を操る方法がわかったわね。」

ロイドの話に複雑そうな表情で頷いたエリィは微笑みながらロイドを見つめて言った。

「ああ、そうだな。」

「………ルファディエルさん。貴女はどの時点で全てがわかったのですか?」

エリィの言葉にロイドは頷き、ティオはロイドを見つめて尋ねた。するとその時、ルファディエルがロイドの傍に現れ

「……私が今回の件がルバーチェの仕業だと推測したのは警備隊の引き上げと司令がエレボニア派議員と繋がっていると知った時ね。まず警備隊の調査書を見た時点で背後に人間が控えていたのはわかっていたし。」

「ええっ!?」

「……………」

ルファディエルの言葉を聞いたエリィは驚き、ロイドは口をパクパクさせ

「調査書………というと被害状況ですか?」

ティオはルファディエルに尋ねた。

「ええ。3ヶ所の被害を考えると知能のない魔獣がやったとはとても思えないわ。―――特にウルスラ病院の襲撃はね。飢えた獣が気絶して動けなくなった”獲物”を見逃す訳がないでしょう?」

「確かに………操っている方法がわかったのは、やはりシズクさんの証言ですか?」

「ええ。ロイドやランディが先程説明したように犬種に入る生物達を操る道具があるのは知っていたしね。そしてそんな物を利用する目的と言えば戦闘や諜報、攪乱等………要するに軍同士が戦争をする為にある存在………そうなってくると現在クロスベルの軍規模がある組織の警備隊、ルバーチェ、黒月、ラギール商会のどれかに絞られるでしょう?」

「んで、今日知らされた警備隊の撤退やあの腰巾着の事を知って、ルバーチェの仕業だと確信したんスね。いや~、相変わらずとんでもない推理力ッスね!」

「という事はシズクさんの証言の時点でルファディエルさんの推測では既に犯人がある程度絞られていたんですね………」

ルファディエルの説明を聞いたランディは納得した様子で頷いた後嬉しそうな表情をして驚きの表情のティオと共に見つめ

「じゃ、じゃあルバーチェが黒い狼たちをを使う目的が狼たちの身体能力である事にはどこで気付いたんですか………?」

エリィは驚きの表情で尋ねた。

「あら、そんなの簡単よ。ルバーチェが関わっている事を考えると、以前の旧市街の件や現在のクロスベルの裏社会の状況を照らし合わせればすぐに気づく事だわ。」

「………お見それしました……」

「お見事ッス!それもわざわざ俺達を成長させる為に敢えて黙っているなんて………いや~、こっちに来てからとても良い上司に恵まれたな~♪俺、ルファディエル姐さんの下でなら一生ついて行くッスよ!」

「フフ………まさに2つ名通りの方ですね………」

「ハハ………相変わらず凄いな、ルファ姉は………俺も早くルファ姉に追いつけるように努力しないとな………」

ルファディエルの話を聞き終えたティオは呆けた表情でルファディエルを見つめ、ランディは笑顔で言った後嬉しそうな表情で微笑んでいるエリィと共にルファディエルを見つめ、ロイドは苦笑した。

「フフ、貴方ならいつか私を超える捜査官になれるわ。――――さてと。もう貴方達もわかっていると思うけど、今夜仕掛けてくるわ。理由は言わなくてもわかるでしょう?」

「ああ、明日になれば町長が遊撃士協会に相談する恐れがあるからな………最後の脅しは今夜を除けば、高確率でありえない………!旧市街の時は逃がしたけど………今度は逃がさない………!――――セティ、シャマーラ、エリナ。その………できれば君達にも手伝って欲しいのだけど………」

ルファディエルに言われたロイドは頷いた後、申し訳なさそうな表情でセティ達を見つめたが

「フフ、勿論私達も手伝いますよ。」

「そうだよー!今日からあたし達も支援課の一員なんだから!」

「………罪もない民達を傷つけたあげく、さらに恐喝をするような外道………天使の血を引く者として許しません。」

セティとシャマーラは微笑み、エリナは静かな怒りを纏った後、それぞれ共に戦う意志を示した。

「フフ、なら私が考えた策の具体的な内容を話しましょうか。」

セティ達の様子を見たルファディエルは微笑んだ後、ロイド達にルバーチェを捕える為の作戦の具体的な内容を説明した。



その後ロイド達はルファディエルの作戦を実行する為に、深夜に備えた………………


 
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