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歌集「春雪花」

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 逢ふもなく

  戻りしわが身の

   侘しさに

 たとうるものも

    思い浮かばじ



 彼に会うこともなく…そのまま帰らなくてはならない…。

 陽は落ちて暮れ泥み、周囲の人々は足早に家へと帰る…。
 見上げた空には藍がかかり始め、幾つかの星が瞬き…鳥さえも巣へと戻って行く様は、なんとも言えず淋しさを連れてくる…。

 次の電車に乗ろうか…いや、その次の…。

 少しでも彼の近くにありたり…そう思っても詮ないこと…。
 会える訳もないのだから、出発を遅らせる意味もないのだ…。

 この胸に押し迫る侘しさは…どう言えばよいものか…。

 そう思いはしたが…喩えようもなく、ただただ…痛む心を抱えるだけだ…。



 恋しさに

  許されるならば

   飛びゆきて

 君を抱きて

    もはや離さじ



 恋しくて…恋しくて…ただ彼に会いたくて…。

 許されるのなら…私はこのまま彼のところへ飛んで行き、彼を抱き締めてもう…そのまま離さないでいたい…。

 そんな叶わぬ願い…切ない希望は夜の闇に落ちて…私は帰途につくのだ…。


 彼から遠く離れた地へと…帰るのだ…。




 
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