英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)
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第17話
~東クロスベル街道~
街道にロイド達が出ると、バス停に停まっていたバスの扉が閉まった。
「しまった……!」
その様子を見たロイドが声を上げた時、バスは目的地へと去って行った。
「行っちゃったわね………」
「おいおい、そりゃないぜ。導力バスっていうのはどのくらい出ているんだ?」
ランディはエリィと共に溜息を吐いた後、ロイドに尋ねた。
「う、うーん………そこそこ数はあるはずだけど。」
ロイドが考え込んでいたその時、バス停に書かれてある時刻表に気付いたティオはバス停に近づいて言った。
「時刻表によると………次の便は2時間後みたいですね。」
「そ、そんなに………?」
「一日に数本しか走ってないって事かよ………」
ティオの話を聞いたエリィとランディは驚いた。
「………困ったな。今日中に病院くらいまでは回っておきたいんだけど。かといって他の場所を先に回るってのもなぁ…………」
「そうね………捜査方針を立てたばかりだし。」
そして疲れた表情のロイドの言葉にエリィも疲れた表情で頷いた。
「………――――だったら歩いて行けばいいのでは?」
一方時刻表を見つめて考え込んでいたティオはある事を提案し
「へっ………」
「ティオちゃん………?」
「おいおい……マジかよ?」
提案を聞いたロイド達は驚いた。
「地図で確認する限り、ここからアルモリカ村まで歩いて1時間半くらいの距離かと。次のバスで行った場合、待ち時間も考えたら2時間半はかかるはずです。歩いた方が効率的ではないでしょうか………?」
「なるほど………計算ではそうなるわね。たしかアルモリカ村の前には田園風景が広がる石畳の道が通っているはずだし………ハイキングがてら行ってみるのも気分がいいかもしれないわね。」
ティオの説明を聞いたエリィは頷いて答えた。
(おいおい、お嬢さんたち、あんなこと言ってるぞ………?)
(どう考えても街道を歩いたことが無いって雰囲気だよな………)
一方ランディとロイドは呆れた表情で小声で会話をしていた。
「どうしたの、2人とも?」
「い、いや~………えっと、街道には魔獣もいるけど2人とも大丈夫か?」
「うーん………それを言われると。でも、今までにもジオフロントに何度か潜っているわけだし。」
「それにわたしは魔導杖のテストをする必要もあります。多少の実戦でしたらむしろ望むところですが………(というか”影の国”で長い道のりを歩きながら悪魔達と戦ってきましたから、あの時と比べれば格段に楽でしょうし。)」
(まあ、”影の国”での戦いを潜り抜けた今のティオなら、問題ないな。)
ロイドに尋ねられたエリィは考え込んだ後答え、ティオは”影の国”での探索や戦いを思い出しながら静かに頷き、ラグタスは納得した様子で頷いていた。
「うーん………―――わかった。そこまで言うなら歩こうか。」
2人の答えを聞いたロイドは考え込んだ後、頷いた。
「ええ、そうしましょう。………ふふ、ちょっとだけ楽しみね。こんな事ならお弁当でも作ってくれば良かったかしら。」
「…………確かに。まあ、お昼前には村に到着できるはずですからランチは向こうで頂ければいいかと。」
ロイドの答えを聞いたエリィとティオは楽しそうな様子で会話をし
(………2人がへばったら俺達でフォローしよう。)
(へいへい。了解。)
その様子を見ていたロイドはランディに小声で提案し、ランディは頷いた。その後ロイド達は時折襲い掛かって来る魔獣達を倒しながら先を進み、分岐点がある場所まで到着した。
「分岐点か………確か、アルモリカはここから北に向かうんだよな?」
「ああ、左に折れて北上すればいいはずだぜ。」
分岐点に到着したロイドはランディと相談し
「フウ………これは………思った以上に大変だったわね。」
「エリィさん、大丈夫ですか?」
エリィは疲れた表情で溜息を吐いた後呟き、ティオはロイド達のように平気な様子でエリィを心配した。
「魔獣も徘徊してたし、さすがに疲れたみたいだな?」
「やれやれ。ちょっと休んでいくかよ?」
エリィの様子を見たロイドとランディは提案し
「私は………何とか大丈夫だと思うけど。ティオちゃんの方はどう?」
提案を聞いたエリィは疲れを見せながら答え、ティオに視線を向け
「問題ありません。私はそんなに疲れていませんので。」
視線を向けられたティオは静かに頷いて答えた。
「そ、そう。」
「それにしても意外と体力あるな、ティオ。」
ティオの答えを聞いたエリィは戸惑った様子で意外そうにしている様子のロイドと共にティオを見つめ
「まあ、これでも自分の体力にはそれなりに自信がありますので。」
見つめられたティオは澄ました顔で答えた。
「ま、いざとなったらお兄さんが負ぶってってやるよ。それとも肩車してやろうか?」
「遠慮しておきます。というか、歩くのがきつくなったらラグタスに頼みます。(ラグタスの毛皮にモフモフするのは気持ちいいですし………)」
そしてランディの提案を聞いたティオはジト目でランディを見つめて言った。
「ハハ、まあ確かにあの白熊の大将ならティオすけぐらい肩に担いで歩きそうだな。」
(ティオが言っているのは多分、それだけの意味じゃないよ?クク……ラグタスの毛触りは中々のもんだからねぇ。)
(おー、確かに言われてみれば、見事な毛皮だよな。)
ティオの答えを聞いたランディは苦笑し、エルンストは口元に笑みを浮かべてランディに念話を送った。
「ふふ………」
「はは………まあ、このまま先に進もうか。」
一方ティオとランディの会話を聞いているエリィとロイドは微笑ましそうに見ていた。そしてロイド達は再び先を進み、アルモリカ村へと続く街道―――アルモリカ古道に入ってしばらく進むと休憩所らしき場所が見えて来た。
~アルモリカ古道~
「ここは………」
「休憩所みたいだな。」
休憩所に気付いたロイドとランディが呟いたその時
「きゅ、休憩所………?ハア、ハア………」
「エリィさん、後少しです。頑張って下さい。」
エリィが息を切らせながらロイド達に近づき、ティオはエリィを励ましていた。
「………エリィ、そこで少し休んで行こうか?景色も良さそうだし、一息つくには丁度よさそうだ。」
エリィの様子を見たロイドは提案し
「う、うん………そうね。」
エリィは疲れた表情で頷いた。
「そんじゃ、一休みとするかね。」
そしてロイド達は自動販売機で飲み物を買った後、休憩所に備え付けてある机に座って一息ついた。
「………いい風………ふう……やっと人心地ついた気分ね。」
「はは、お疲れ様。それにしても綺麗な田園風景だな………まるでお伽話に出てきそうな風景っていうか。」
安堵の溜息を吐いたエリィの様子を苦笑しながら見つめていたロイドは周りの景色を見回して呟き
「そういや……古い建物跡みたいなのがあちこちに点在してんだな。ちょっと珍しい風景だぜ。」
何かに気付いたランディは不思議そうな表情で呟いた。
「朽ちた中世の建物跡がそのまま残されているみたいね。確か………このあたりは昔、戦場になったという話だけど。」
「戦場、ですか?」
「ええ………エレボニアとカルバードのね。ここからすぐ近くに古戦場跡があるとも聞いたわ。」
「古戦場跡………」
「へえ、面白そうじゃねえか。せっかくだからちょっと見に行ってみるか?」
エリィの話を聞いたロイドは真剣な表情で呟き、ランディは興味ありげな表情で提案した。
「いや、それはさすがに………」
「うーん………ちょっと遠慮したいわね。」
「………ランディさん。少し空気を読んでください。」
ランディの提案を聞いたロイドは呆れ、エリィは疲れた表情をし、ティオはジト目でランディを睨んだ。
「なんだなんだ。若いモンがだらしねーな。しかし、クロスベル育ちってのはそんなに街から出ないもんなのか?普通、街道くらいはたまに出歩いたりするだろう?」
「いや………それが滅多に出ないんだよ。基本的には市内だけでも全ての物が揃っちゃうしなぁ。」
「元々貿易都市だから自治州内で自給できなくても成り立ってきたのよね………大抵の移動は鉄道か飛行船………最近は車やバスもあるから自分の足でここまで歩くのは正直、久しぶりかもしれないわ。」
「なるほどねぇ。いわゆる文明病ってやつか。その割には、ロイドはあんまり疲れてなさそうだな?」
ロイドとエリィの話を聞いて頷いたランディはある事に気付いてロイドに視線を向けた。
「俺は一応、警察学校でサバイバル訓練を受けたり、それなりの頻度でギレゼルに模擬戦をしてもらっているから………そういうランディこそ元警備隊なだけはあるみたいだな。汗一つ、かいていないみたいだし。」
「ハハッ………歩き回るのは慣れてるからな。というかこの中でティオすけが一番不思議だろ。ティオすけも俺達と同じ距離を歩いてきたのに、全然疲れている風に見えないぞ?」
「それに一緒に戦闘していて気になっていたけど、ティオちゃんだけ全然傷つかないわよね………?アーツを受けても平気だったし。」
ロイドの言葉に苦笑したランディはエリィと共にティオに視線を向け
「………私が身に着けている戦衣は特別製で、魔法耐性もありますから普通の攻撃は滅多に通しません。」
視線を向けられたティオは静かな表情で答えた。
「へ~………その戦衣も財団が開発したものなのか?」
「いえ。特殊な事情に巻き込まれた時、同じように巻き込まれたある人達に創ってもらったんです。ちなみに体力がついたのもその時です。」
「出た!ティオすけご自慢の”特殊な事情”!」
ロイドの疑問に答えたティオの話を聞いたランディはティオを茶化した。
「それも前から気になっていたんだけど………ティオちゃん、その”特殊な事情”って一体どんな事情なのかしら?」
「…………すみません。その事情はあまり人に言いふらしてはいけない事なので言えないんです。」
そしてエリィに尋ねられたティオはエリィから視線を外して申し訳なさそうな表情で答え
「なんだなんだ~?仲間の俺達にも話せないってどんな事情か凄く気になるだろうが~?人様に言えないような事でもしたのか~?」
ティオの答えを聞いたランディはティオを茶化し
「お、おい、ランディ。」
ロイドは弱冠慌てた様子でランディを諌めた。
「おっと、戻ってきたみたいだぜ。」
その時何かに気付いたランディが声を上げると、バスがクロスベル方面に向かって去って行った。
「クロスベルに戻るバスね………」
それを見たエリィは名残惜しそうな表情で呟き
「あれに乗ったら、せっかくここまで歩いた甲斐が無いってば。――――とにかく、もう一頑張りだ。多分、ここから村まではもうそんなに歩かないと思う。」
エリィの様子を見たロイドは疲れた表情え答えた後、笑顔で言った。
「ええ、そうね。」
「了解です。」
「よーし、そんじゃ行くとするか!」
その後先を進み始めたロイド達はようやく目的地、”アルモリカ村”に到着した………
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