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真田十勇士

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巻ノ四十六 婚礼その五

「この前まで想像も出来なかったがのう」
「しかし御主達は家を持ちそれぞれ石高も増えた」
 幸村はその彼等に言った。
「その分も頑張らねばな」
「ですな、家を持ちです」
「石高も多く頂きました」
「それならですな」
「余計に頑張らねば」
「そういうことじゃ、拙者も石高を増やしてもらった」
 他ならぬ幸村もである。
「有り難いことじゃ」
「はい、しかしです」
「殿は大殿から言われた増やす分を半分にされましたが」
「またどうして」
「その様にされたのでしょうか」
「多くはいらぬと思ったからじゃ」
 それ故にとだ、幸村は十勇士達にすぐに答えた。
「だからじゃ」
「それで、なのですか」
「その分を我等に回して頂いた」
「そうされたのですか」
「そうじゃ、あそこまで貰うよりはな」
 それよりもというのだ。
「御主達の石高が増えた方がよいと思ってな」
「有り難きこと」
「そこまでして頂けるとは」
「殿のお心痛み入ります」
「まことに」
 十勇士達は深い感銘を受けて自分達の主に頭を下げた、彼等はあらためて幸村の器を知りその心に感じ入ったのだ。
 そのうえでこの日も彼等は修行に政にと励んだ、だがこうした日々はすぐに終わることとなった。
 幸村は信之と共に城に呼ばれてだ、昌幸に告げられた。
「関白様がいよいよな」
「兵を起こされるのですな」
「うむ」
 昌幸は信之の問いにすぐに答えた。
「そうされるとのことじゃ」
「西国に向けて」
「そうなる、そしてな」
「我等もですか」
「わしはここに残るが」
 この上田にというのだ。
「御主達はそれぞれ出てもらうことになった」
「西国まで、ですか」
「とはいっても兵を率いてではない」 
「ではどの様に」
「源三郎は関白様のお傍にいよとな」
「関白様ご自身にですか」
「言われた、そして源次郎はじゃ」
 幸村はというと。
「九州に行くのじゃ」
「そうしてですな」
「うむ、あの地を探りな」
 そのうえでというのだ。
「忍として働けとのことじゃ」
「そうですか、さすれば」
「それぞれ主な家臣達を連れてまずは大坂に行くがいい」
 昌幸は二人の息子に告げた。
「わかったな」
「はい、それでは」
「今すぐに用意をします」
「九州の戦は急に進んでおる」 
 昌幸は二人にこのことも話した。
「島津家の勢いは日の出じゃ」
「大友、龍造寺を破りですな」
 幸村が父に問うた。
「このまま九州を」
「既に大友、龍造寺は滅亡を待つばかり」
「共に戦に敗れ」
 その島津家にだ。
「そうなっていますな」
「だからな」
「早いうちにですか」
「兵を進めねばならん」
「だからですか」
「御主達はな」
 二人共というのだ。 
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