バレンタイン爆弾
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1部分:第一章
第一章
バレンタイン爆弾
間も無くバレンタインである。それは八条大学でも同じだ。
医学部の五回生萩原宇大はだ。こう皆から言われていた。
「御前去年もだったよな」
「彼女から貰ってたよな」
「今野紗江ちゃんに」
「ああ、ただな」
貰えることは嬉しいがだとだ。宇大はここでだ。
顔を曇らせて周りに述べた。今彼等は教室で講義を待っている。その休み時間にそれぞれの机に座ってそのうえで間も無く来るバレンタインのことを話していたのだ。
その中でだ。彼は言った。
「あの娘のチョコレートってなあ」
「まずいか?」
「そうなのか?」
「いや、美味いんだよ」
このことについてははっきりと答えるのだった。
「味はな。ただしな」
「ただし?」
「可愛い彼女から美味いチョコレート貰ってもか」
「まだそこにあるのかよ」
「あるから今言うんだよ」
曇った顔での返事だった。そしてだ。
宇大はだ。こう友人達に言ったのだった。
「あの娘って医者の娘だろ」
「ああ、俺達と同じ医学部の六回生」
「医学部のマスコットだけれどな」
「医者の娘だからな」
それでだとだ。彼は言うのだった。
「チョコレートの形がなあ」
「チョコレートの形が問題か」
「それなんだな」
「去年のチョコレートなんか凄かったんだよ」
強張った顔で言う宇大だった。
「ハート型のチョコレート作ってくるっていったら何作ってきたと思う?」
「ハート型ならあれだろ」
「なあ、あのトランプのハートのマークだよな」
「それしかないだろ」
「女の子らしくていいじゃないかよ」
「違うよ。ハートはハートでもな」
どうかとだ。彼は言うのだった。
「リアルハートだったんだよ」
「げっ、まさか心臓か!?」
「あの心臓の形のチョコレートとかか!?」
「そんなドン引きもの作ってきたのかよ」
「いや、そっちのハートじゃない」
そうではないというのだった。
「俺もてっきりあの娘が医者の娘さんだからまさかって思ったさ」
「けれどそれじゃないのかよ」
「心臓じゃないのかよ」
「じゃあどういうハートなんだよ」
「北斗の拳のあれだよ」
宇大は曇りきった顔で述べた。
「いただろ。デブデブでな。ケンシロウに爆発させられた」
「ああ、あれか」
「ひでぶっ、って言って死んだあれか」
「あれのチョコレートってどんなんだよ」
「あいつの胸像のだよ」
それのチョコレートだというのだ。
「いや、凄いぜ。あんなのの胸像のチョコレートなんてな」
「まあ普通はないものだな」
「っていうか常人の考えつくものじゃねえな」
「医者の娘関係ねえだろ」
「医者の娘らしくカロリーは計算して作られてたんだよ」
例えチョコレートであってもだ。そうだったというのだ。
「けれどそれでもな」
「それでもか」
「チョコレートのデザインがか」
「恐ろしい体験だったぜ」
ハートの胸像のチョコ、それを食べるという体験はというのだ。
「その前は動物って言って鮫だったしな。それもシュモクザメな」
「ああ、あのトンカチみたいな頭の鮫な」
「あれ人食い鮫じゃねえかよ」
「そうだよ、その人食い鮫のチョコレートだったんだよ。リアルな、な」
尚且つだ。造詣はリアルだったというのだ。
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