FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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最悪の覚醒
前書き
今週のFAIRYTAILでミラの命を救ったのはブランディッシュだったけど、この小説では違う人物が彼女を助けそうな気がする。
それもアルバレス側で出てくるオリキャラがね。
しかもこのキャラ、名前も設定もほとんど決定しているという人物。それも初期からずっと出したいなぁと思っていたりします。
ちゃんとそこまでいけるかなぁ・・・シリルで遊びすぎて忘れたりしないかなぁ・・・
シリル「俺で遊ばなければいいじゃん!!」
それは無理な話だ。
シリルside
「さぁ、フェイス発動の時間だ。これでお前たちの力は失われた」
指を鳴らし、絶望の宣言をするノーラン。その声に思わずこの場にいる魔導士たちが表情を歪める。しかし、一番後ろにいる茶色の猫が、あることに気付いた。
「あれ~?僕まだ飛べるよ~?」
翼を出して宙に浮いていたセシリー。しかし、彼女はまだその翼を出したまま飛んでいるのであった。
「マジだ」
「本当だ、まだ魔法使えんぞ」
セシリーの言葉を受けてラクサスさんとカミューニさんが手に魔力を込めていると、確かに二人の手にそれぞれの魔力が溜まっている。俺も一緒に右手を見てみると、水がそれをすぐに覆い隠した。
「ウェンディとシャルルがやってくれたんだ!!」
「すごいよ二人とも~!!」
魔導パルス爆弾フェイス、それをウェンディとシャルルが止めてくれたとわかった瞬間、セシリーと手を取り小さく踊る。その様子をラクサスさんと見えてないはずのカミューニさんがニヤニヤと見ていたので、慌てて手を引っ込める。
「今何してたか教えろよ」
「OK」
「「やめてください!!」」
やっぱりカミューニさんは見えていなかったらしく、ラクサスさんにわざわざ後で教えるように言っていた。ラクサスさんとか言うと間違いなく話を盛るだろうから、絶対しゃべらせちゃダメだ。
「ウソだろ・・・フェイス計画が失敗したというのか?」
歓喜している俺たちとは正反対に、口に手を当て歯痒そうな顔をしているノーラン。彼はまさかフェイスが破壊されるとは思ってなかったらしく、明らかに動揺しているのが見てとれる。
「見たか!!これでお前たちの企みも終わりだ!!」
胸を張って得意気にノーランを指さす。後ろからお前が威張るなって言われているけど、別にいいじゃん。だって嬉しいんだから。
「誰がフェイスを止めたか・・・わかるか?」
すると、突然顔をうつ向かせながらノーランが妙な質問をしてくる。
「ウェンディだけど?」
「シャルルも一緒だよ~」
そこまで応えた後、あることに考え付いた。まさかこいつ・・・ウェンディたちに仕返しでもしようと考えてるのか?こいつの今までの行動からすると、十分ありえるぞ!?
「ウェンディたちには手を出させないぞ!!」
「そうだそうだ~!!」
「お前ら・・・一回落ち着け」
「ウェンディに仕返しするってことは、その前に俺らやられることになんぞ」
バッと手を広げて通せんぼのようなことをしている俺とセシリーを見て、ラクサスさんとカミューニさんは頭を抱えていた。そっか、こいつを倒せばすべて解決するのか。すっかり忘れてたよ。
「そうか・・・あの二人が・・・」
空を見上げ、しばらく固まっているノーラン。彼はそう呟くと、ニヤッと笑みを浮かべる。
「なんだ?」
「来るのか?」
彼のその不敵な笑みを見て戦闘態勢に入るラクサスさん。彼の動きを感じ取ったカミューニさんも、遅れながらも迎撃の姿勢になる。
「クックックッ、可哀想にな、シリル、セシリー」
「「??」」
急に笑い出したかと思えば、そんなことを言い出したノーラン。彼が何を言っているのかわからない俺とセシリーは、首を傾げていることしかできない。
「俺は聖十大魔道にいた時、フェイスについて色々調べていたんだ。もちろん元議長をうちに加入させたのも俺さ」
急に昔、BIG3と呼ばれる由縁となった聖十大魔道時代の話を語り始める。でも、こいつが聖十にいたのは、やっぱりこうした目的があったからだったのか。カミューニさんもそうだったみたいだし、意外と目的のために聖十になろうとする人は多いのかな?
「大陸中のすべての魔力を消し去る兵器であるフェイス。あれは常人のパワーでは破壊することができない。並の魔導士の力ではな」
「!!」
評議院が保有していた兵器であるフェイス。そりゃあ簡単に破壊できたらはっきり言ってそれは兵器とは言わない。でも、そんな分かりきっていることを、なぜ彼は今さら言ったのであろうか。
「俺が調べた情報によれば、フェイスの破壊に必要な力は、MPF換算で軽く一万を越える」
MPF・・・通称魔力測定器は、大魔闘演武の三日目の競技パートで、俺とエルザさんが伏魔殿を完全制圧した際に執り行われた競技だ。その際の最高記録はカナさんだったのだが、その記録は測定不能ということで9999ということになっている。
「わかるか?お前たちのギルドの三大魔法である妖精の輝き。あれを使ってようやく破壊することができるかどうかという代物なんだ」
楽しそうな表情を浮かべてフェイスを破壊するために必要な力について語り出した悪魔。でも、それが一体何なのだろうか?いまだにわからないぞ?
「まだわからねぇのか?バカな野郎だ」
「なんだと!?」
「「落ち着け」」
人をバカにしたノーランに飛びかかろうとすると、ラクサスさんとカミューニさんに頭を捕まれ止められる。
「止めないでくださいよふt・・・」
攻撃を邪魔されたことで二人の方を振り返る。すると、なぜか彼らの表情があからさまに暗くなっているのに気付き、言葉を飲み込む。
「後ろの二人は察しがよくて助かるぜ。シリルと猫は、いまだにわかってねぇみたいだが」
なんで彼らがそんな顔をしているのか考えていると、ノーランがそういう。俺とセシリーは顔を見合せ、目をパチクリさせている。
「MPFで一万以上の数値・・・つまり・・・
ウェンディとシャルル程度じゃ、フェイスの破壊なんかできねぇんだよ」
「「あ・・・」」
彼のその言葉ようやく気づく。確かに考えてみると変だ。MPFでは確かにジュラさんでも8000越え。つまり俺たちのパワーでは到底破壊することなど不可能。でも、実際にはフェイス発動時間を過ぎても魔力はなくなっていない。色々と未解決事項が多すぎて、頭の成立が追い付かないよ。
「力で破壊することができないなら、フェイスを止める方法はただ一つ。自律崩壊魔法陣を使い、フェイスを爆発させることしかない」
自律崩壊魔法陣・・・魔法陣を書き込むことにより、その対象を自ら消滅させることができる魔法陣。でも、そんなもの・・・ウェンディもシャルルも発動のさせ方を知らないんじゃ・・・
「シャルルの予知だよ~!!」
「え?」
「シャルルがきっと、予知能力でその魔法陣の作り方を知ったんだ~!!」
セシリーのその説明を聞いてそんな気がしてくる。シャルルの能力があれば、それを知ることができるかもしれない。それができれば、ウェンディたちでもフェイスを破壊できる。
「そんなにすげぇのか?シャルルって」
「俺も使ったとこを見たことはねぇが・・・そんな話は聞いた気がするぜ」
シャルルの予知能力についてほとんど知らないカミューニさんたちはそんな話をしている。
「自律崩壊魔法陣が組み込まれれば、フェイスは自爆する。つまりだ・・・周囲にいるものも助からないんだよ」
「え・・・」
彼が何を言っているのか、一瞬頭がついていかなくなる。
「フェイスは大気中のエーテルナノを吸収する。そんな状態で自律崩壊魔法陣を発動させれば、とてつもない規模の爆発が起きる。人間なんかあっという間に消し飛ぶほどの爆発がな」
それを聞いた瞬間、頭の中にある最悪の事態が浮かんでくる。その時の俺の表情はきっと焦りの色が見えていたのだろう。こちらを見ながら、ノーランの口角がつり上がる。
「フェイスを止めた。それは、その二人の命と引き換えにしたと言うことだ」
「う・・・ウソだ!!」
信じられない・・・信じたくない言葉に声を荒らげる。
「ウェンディたちが俺たちを置いて死んだりするもんか!!」
「そうだそうだ~!!」
ずっと一緒にいた俺とセシリーは、彼女たちがそんなことをするわけないと思いそう言う。
「別に信じるも信じないもお前次第だ。まぁ、信じてた方が裏切られた時の顔が見ものだけどな」
舌なめずりしながらニヤニヤと俺たちの方を見ているノーラン。俺は思わず他の仲間たちにも意見を求める。
「ウェンディが死ぬわけないですよね!?」
「シャルルたちは大丈夫だよね~!?」
カミューニさんの服を引っ張りながらそう言うと、彼はそっと俺の頭に手を置き、撫でてくる。
「俺も大丈夫だと思いてぇ。ただ、奴の言葉がウソを言っているようには聞こえねぇ」
「もしかしたら・・・その時は覚悟はしとけよ」
優しい声で、諭すようにそう言った二人の青年。彼らも信じられないような顔をしているが、もしかしたらといったような顔にも見える。
「ウソだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
絶対に信じたくない彼らの言葉に、俺は耳を塞いで絶叫し、その場に崩れ落ちた。
第三者side
耳を塞ぎ、泣き叫ぶ水色の髪をした少年は、二人の青年の前に膝をついている。それを見ている緑の髪をした悪魔は、込み上げる笑いを懸命に押さえていた。
(折れたな、こいつの心)
大切なもの・・・それも生まれた時からずっと一緒で、互いに愛し合った恋人同士・・・それほどのものを失ったとなれば、誰だって心が折れてしまうものである。
(フェイスを破壊されたのは誤算だったが、これはこれでいいか)
ノーランの見解通り、確かにウェンディとシャルルはフェイスを破壊できず、自律崩壊魔法陣を起動させた。その際彼女たちは、シリルやセシリーといった仲間たちにすべてを託し、死を覚悟していた。だが、実は間一髪のところでドランバルトが瞬間移動で彼女たちを救出し、なんとか生還していたのだ。
ただ、その事をこの場にいるものたちが知る術などない。
「ウソだ・・・ウェンディとシャルルが・・・」
「そんなのイヤだよ~・・・」
ウェンディたちが死んだものだと思っているシリルとセシリーは、目をこすりあふれでる涙を拭う。そんな彼らをラクサスとカミューニはそっと抱き締め、落ち着かせようとしていた。
(もうこいつは無理だな、使い物にならんだろう)
とてもとても戦えるような状況ではない少年を見下すようにしているノーラン。その様子を、二人を抱き締める男たちは鋭い目付きで睨んでいた。
「なんだ?その目は」
四人を見下ろしながらそう言うノーランに、カミューニはセシリーをラクサスに預けると、壁に手をつきながら彼の方へと向き合う。
「勘違いするなよ、俺たちはその子たちを殺してないぜ?奴等が勝手に命を捨てた。それだけのことだろう?」
「てめぇ・・・」
ノーランの言い分に怒りを覚えたカミューニは、右手を前に出すと彼の方へと手のひらを向ける。そこに強い怒りを込めた魔力を溜めると、一気に放出した。
ドガアアアアア
凄まじい勢いで打ち放たれた一撃。しかしそれは、ノーランを直撃することなく、彼の真横を通りすぎていった。
「外れてんぞ、カミューニさん」
「チッ」
ノーランの策によって目を潰されたカミューニは、声と気配で相手の位置を探るしか方法がない。魔導士ならば、魔力で位置を探るのも一つの手だが、あいにくノーランにはそれが出来ない。彼の使う力は、呪力なのだから。
「本当はシリルで実験の続きをするつもりだったが・・・今となってはそれも出来ないな」
「どういうこった?」
いまだに涙を流し続けているシリルを抱えたまま、ラクサスはノーランの問いに訝しげな顔をしてみせる。
「もともとこの実験をするのには誰でもよかった。ただ、シリルの魔力の力と強い想い、それがあればもしかしたらいい線までいけるかと思ったんだが・・・」
そこまで言うと、彼は自分の方を見向きもせず、雷竜の胸に顔を埋めている水竜に視線を落とす。
「心の砕け散ったシリルは、はっきり言って面白くない。それに、これから行う実験にだって耐えられるとは思えん」
そう説明した彼は、半身を黒く変色させ、目の白と黒の部分を入れ換えていく。
「お前ら四人とも、もういらない。消えろ」
「「っ・・・」
彼らに向けられたその手のひらに、次第に呪力が集められていく。やがてその手には、大きな呪力の球体が出来上がっていた。
「ラクサス!!そいつら連れてここから離れろ!!」
「お前はどうすんだ!!」
「なんとかすっから、早く――――」
このままでは全滅する。そう感じ取ったカミューニは友である大柄な青年にそう指示する。だが・・・
「散れ」
彼らが撤退するよりも早く、ノーランの手から呪法が放たれた。
シリルside
なんでウェンディたちが死ななきゃいけなかったんだ?
「ラクサス!!そいつら連れてここから離れろ!!」
なんでウェンディとシャルルが・・・二人が苦しみながらその選択を取らなければならなかったんだ?
「お前はどうすんだ!!」
俺たちが不甲斐ないからなのか?
「なんとかすっから、早く――――」
俺たちのために二人は・・・いや、違う。
「散れ」
こいつらがフェイスなんかを使おうとしなければ・・・
第三者side
「波動波!!」
ノーランの呪法が放たれたと同時に、カミューニは戦っている通路すべてを塞ぐほど、巨大な波動の塊を放出する。
「無駄だ」
だが、広範囲に放出したこともあり、その魔法はいとも容易く破壊されてしまう。
「な・・・」
「ヤバい!!」
迫ってくる光。しかし、それを防ごうにも、何をするのも間に合わない。絶体絶命のピンチ。その時、
ブハッ
彼らの周りに、強い風が吹き荒れた。
「うおっ!!」
「なんだこの風は!?」
「突然吹き出して・・・」
「一体どこから~!?」
その風はノーランの呪法をかき消し、敵味方すべてを勢いのままに薙ぎ倒す。四人はその風の正体がなんなのかキョロキョロしていると、一人の少年に目を止めた。
「し・・・シリル~?」
ゆっくりと顔をうつ向け立ち上がった水色の髪をした少年。その彼とずっと一緒に成長してきた茶色の猫は、彼のあまりの変貌に目を見開いていた。
水色のきれいな髪は、藍色へと変化し、顔にはドラゴンのような鱗が浮かび上がっている。しかし、それだけではない。
左腕にうっすらと浮かんでいたはずの黒い模様。それが、遠目からでもわかるほど色濃く浮き上がっているのだ。そしてそれは、体へと伸びており、シリルの頬にまで到達していた。
「なんだありゃ」
「魔力の質が・・・変わった?」
かつて一度だけ開いたことのあるドラゴンフォース。それだけでも驚きなのに、今まで感じたことのない魔力が、彼の体から発せられていた。
「まさか・・・」
大きく変わった少年の姿に呆気に取られているラクサスと、姿は見ていないが、魔力の変化に驚愕しているカミューニ。そして、彼が変貌を遂げる原因を作り出した悪魔は、いつの間にかそれを使えるようにしていた少年を見て、嬉しそうに頬笑む。
「天空の滅悪魔法!!あれを己の力で修得したのか!?」
水の滅竜魔法と天空の滅悪魔法。全くの別物である魔法が体内に取り込まれた少年は、常識では考えられないほどの歪な魔力を体内に宿していた。
「いいぞ。予定変更だ!!こいつの心を悪に染め――――」
悪魔と一体化しつつある少年を自身の仲間に取り込もうと歩み寄ったノーラン。だが・・・その腹部に、目にも止まらぬ速さでシリルの拳が突き刺さった。
「え?」
「!?」
「は!?」
口から血を吐くノーランと、一瞬の出来事に訳のわからないといった感じのセシリーとラクサス。カミューニは見えていないせいで、何があったのかわからず、ただその場に立ち尽くすことしかできていない。
「お前たちのせいだ」
憎しみににより、最悪の覚醒を遂げた小さな竜。その一撃を受けた悪魔は、その場に崩れ落ちた。
後書き
いかがだったでしょうか?
シリルの暴走状態開始です。
次はカミューニとラクサスが漢を見せてくれます。
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