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英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
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第120話

~幻影城~



「これで残るは俺達の世界の者達だけか………ならば………」

「………まずは我々から行かせてもらうとしようか。」

「へ………!?」

リウイ達が門の中へ入った後に提案したリシャールの言葉を聞いたエステルは仲間達と共に光の階段の前に移動した2人を見つめた。

「このままずっといても名残惜しくなるばかりだからな。」

「ならば年長者たる我々が口火を切らせてもらおうと思ってね。」

「ジンさん………リシャール大佐………」

「……感謝しますわ。お二人とも………そういう気遣いにはホンマ、助けていただきました。」

ジンとリシャールの言葉を聞いたエステルは2人を見つめ、ケビンは静かに頷いた。

「はは、なんの。私の方こそ………過去の経緯にもかかわらず、暖かく受け入れてくれて感謝する。………おかげで、大切なものをこの手で掴むことが出来たようだ。」

「リシャールさん………」

「こちらこそ……色々とお世話になりました。」

「また、お仕事を通じてお会いする機会もあるでしょう。その時はよろしくお願いしますね。」

リシャールの言葉を聞いたアネラスは微笑み、ヨシュアは軽く頭を下げ、クローゼは微笑みながら言い

「もったいないお言葉………ご用命の際は何時でも声をお掛けください。」

クローゼの言葉にリシャールは静かに頷いた後、クローゼを見つめた。

「俺の方はまあ………みんなと会えて嬉しかったぜ。こんな風に会える機会なんて滅多にあるもんじゃないしな。」

「ふふ………そうね。」

「あんたにはもう少し………稽古に付き合って欲しかったぜ。」

ジンの言葉を聞いたシェラザードは微笑み、アガットは口元に笑みを浮かべてジンを見つめた。

「はは、また暇が出来たらリベールに遊びに来るさ。それと………よかったらカルバードにもみんなで遊びに来てくれ。キリカ共々、歓迎させてもらうからよ。」

「うん………!そのうち行かせてもらうね!」

「ボクとしてはいつでも遊びに行きたいんだがねぇ。」

「………お前は宿題を全部片付けるまでは許さん。」

「はは、オレたちなんかは任務で行くことも多いですやろ。」

「………その時はよろしくお願いします。」

ジンの言葉を聞いたエステルは頷き、オリビエはいつもの調子で呟き、それを聞いたミュラーは顔に青筋を立て、ケビンとリースは口元に笑みを浮かべながらジンを見つめた。

「ああ、歓迎するぜ。………そんじゃ大佐。行くとしましょうか。」

「まったく………君まで大佐呼ばわりか。だがまあ、君達にならそう呼ばれるのも悪くないか。」

そしてジンとリシャールは光の階段を登って、門の中へと入って行った。



「フフ…………お次はボクたちかな。」

「え………」

ジン達が門の中へ入った後呟いたオリビエの言葉にエステルが驚いたその時、オリビエとミュラーは光の階段の前に移動した。

「あまり長く居すぎると帰りたくなくなるからね。お先に失礼させてもらうよ。」

「オリヴァルト皇子………」

「………なんだか本当に唐突すぎて戸惑いますね。」

オリビエの話を聞いたケビンとヨシュアは苦笑し

「ああっ、ヨシュア君にそんな風に言ってもらえるとは!このまま一緒に連れて帰りたいくらいだよっ!」

ヨシュアの言葉を聞いたオリビエはいつものように酔いしれった様子で言った。

「だ~から!そういうのは止めいっ!」

「はあ………とんでもない皇子様だなぁ。」

そしてオリビエをエステルはジト目で睨み、ジョゼットは溜息を吐いた。

「………オリビエ。」

その時、ミュラーは真剣な表情でオリビエを見つめ

「…………はは………何というかこんな機会が再びあるとは思ってもいなかったものでね。ガラにもなく………少し胸に迫ってるみたいだ。」

見つめられたオリビエは寂しげな笑みを浮かべて言った。

「あ………」

「………オリビエ………」

オリビエの様子を見たエステルは心配そうな表情で苦笑しているシェラザードと共にオリビエを見つめた。

「………シェラ君、あの話、本気で考えていて欲しい。自分でも図々しい話だとは思うんだが………そのくらいの楽しみを抱いて過ごすくらいは構わないだろう?」

その時、オリビエは真面目な表情でシェラザードを見つめて言い

「まったく………あんたっていう人は………まあいいわ、しばらくの間、返事は保留にしてあげる。だから………せいぜい頑張りなさいよ!」

「フッ、勿論さ。」

見つめられたシェラザードは溜息を吐いた後苦笑し、激励の言葉を送った。

「せ、先輩………?」

「な、なんかやたらと意味深なんですけど………」

「は~、いつの間に。」

オリビエとシェラザードの会話を聞いたアネラスは戸惑い、エステルは顔を赤らめ、ケビンは感心した様子で呟いた。

「自分の方は……こいつ共々お世話になった。剣の方も、皆のおかげで更なる道が拓けたようだ。感謝する。」

「ヘッ、あんたみたいな凄腕に先に行かれちまったら追いつくのも一苦労だぜ。」

「こちらこそ………色々と助けていただきました。またお会いできる機会を楽しみにさせていただきます。」

ミュラーの言葉を聞いたアガットは口元に笑みを浮かべ、ユリアは微笑みながらミュラーを見つめた。

「………ああ、こちらこそ。ただ帝国の方は、これから色々と騒がしくなるだろう。しばらくの間は、旅行なども控えた方が無難かもしれない。」

「そこまで………」

「………どうかお気をつけて。」

ミュラーの話を聞いたユリアは真剣な表情をし、クローゼは応援の言葉を送った。

「フッ、このお調子者が上手く立ち回ってくれれば最悪の事態は避けられましょう。………そうだな、こいつが女神達から愛想を尽かされないよう皆で祈っていてくれると助かる。」

「……………」

そしてミュラーの言葉を聞いた仲間達全員は黙ってエステルに視線を向け

「へ?今の言葉を聞いて何であたしを見るのよ??」

視線を向けられたエステルは首を傾げて尋ねた。

「いや、だって………実際君は空の女神(エイドス)の末裔で”神”であるサティアさんをその身に宿しているし……」

「おまけにエステルちゃんの棒の中には本物の女神がいるしな。」

(………この私を付属物扱いですって………!)

エステルの疑問にヨシュアとケビンが答え、ケビンの言葉を聞いたエステルの棒の中にいるフェミリンスは顔に青筋を立てた。

「だ~か~ら~!あたしは”神”じゃないって言ってるでしょ!それにそういう事はケビンさん達の専門でしょ!?」

「クスクス………」

「はは、確かに女神に祈るんはオレらの専売特許やな。」

「空の女神(エイドス)の末裔たるエステルさんのお言葉をせっかく頂きましたので、幾らでも祈らせて頂きます。」

そしてエステルは溜息を吐いた後叫び、その様子をティータは微笑みながら見守り、ケビンとリースは口元に笑みを浮かべた後オリビエ達に視線を向けた。

「やれやれ………ほんと、信用がないねぇ。でも好きなこほど虐めたくなるとも言うしね。まったくミュラーったら照れ屋さんなんだからっ♪」

一方会話を聞いていたオリビエは溜息を吐いた後、すぐにいつもの酔いしれった様子に戻ってミュラーを見つめたが

「………首根っこを引きずって門まで連れていってやろうか?」

「いえ、自分の足で歩かせていただきます。」

ミュラーの言葉を聞いて冷や汗をかいて、大人しくなった。

「………それではみんな。いつの日か、また会おう!」

そしてオリビエとミュラーはケビン達に背を向けて光の階段を登り、門の中へと入って行った。



「ふふ、まったく………最後まで平気なふりをして。」

オリビエ達が門の中へ入るとシェラザードは苦笑しながらアネラスと共に光の階段の前に来た。

「シェラ姉………アネラスさん………」

「エステルちゃん………もう、お別れだね。」

「………ま、他の人達はその気になれば会えるとして。エステル、ヨシュア、ミント。気を付けて旅を続けなさいよ。

自分達を見つめるエステルにアネラスは寂しげな笑みを浮かべて語り、シェラザードは真剣な表情でエステル達を見つめた。

「………うん、わかってる。」

「手紙……欠かさず出させてもらいますから。」

「シェラお姉さん達の返事、期待して待ってるね!」

そしてシェラザードの言葉にエステル達はそれぞれ頷き

「ふふ、こっちの返事がなかなか届けられない以上、たまにでいいわよ。でも、最近は導力通信のネットワークも整備されているらしいし………いざとなったら通信で王都支部に連絡してきなさいよ?」

「うん………そうさせてもらうね!」

「そちらこそ………何かあったら通信でいつでも連絡してください。」

「ミント達、いつでも駆けつけるよ!」

シェラザードの次の言葉にそれぞれ力強く頷いた。

「それとティオちゃん。せっかくこうやって知り合ったんだから貴女の妹弟子として親しくしてもらってもいいかしら?」

「ハア………というか年上の方に妹弟子と言われても正直、困るんですが………でも、シェラザードさんと親しくなる事には特に支障はありません。……これからはペテレーネさんの弟子同士よろしくお願いします。………と言っても、私がシェラザードさんに教えられる事なんてないですが。」

「フフ、そんな事は全然気にしていないわよ。」

シェラザードに話しかけられたティオは戸惑った様子で答えた後静かな笑みを浮かべて答え、答えを聞いたシェラザードは苦笑した。

「は~、でも残念だなぁ。エステルちゃんやミントちゃんもだけど、ティータちゃんやティオちゃん達とも会えなくなっちゃうなんて……そうだ、リースさんとも!」

「わ、私もですか……?」

一方残念そうな表情で語った後真剣な表情で言ったアネラスの言葉を聞いたリースは戸惑い

「そうですよ!せっかく仲良くなれたと思ってたのに……またリベールに来たら絶対一緒に遊びましょうね!美味しいアイスクリーム屋、紹介しちゃいますから!」

「………それなら是非にでも。何でしたら戻り次第、最優先でお付き合いしますし、アイスクリームの代金はケビンが出してくれるので、よろしくお願いします。」

「あのなぁ………」

アネラスの答えを聞いたリースは微笑み、ケビンは脱力した。

「ふふ………まあ、ティータちゃんはアガット先輩がいない時にでも可愛がりに行っちゃうとして………」

「ふええっ!?」

「コラ………なに不穏なこと口走ってやがる。」

そしてアネラスは笑顔でティータを見つめ、見つめられたティータは恥ずかしそうな笑顔で慌て、アガットは呆れた後アネラスを睨み

「あはは、まあまあ。………ティオちゃんも今度会えたら、また一杯ぎゅって抱き締めさせてね♪」

睨まれたアネラスは微笑んだ後、ティオに視線を向け

「あれだけ抱き締めておいてまだ足りないんですか………というか、もう絶対にお断りです。もし、また同じことをしたその時はラグタスに首根っこを掴んで投げてもらいますので、その時はお覚悟を。」

「フッ………さすがにティオが本気で嫌がっているのなら、我もティオの為にティオが今言った事を実行させてもらうからな。ほどほどにしておくのだぞ。」

視線を向けられたティオは呆れた後ジト目でアネラスを見つめ、ラグタスは静かな笑みを浮かべながらアネラスを見つめた。

「やれやれ………それじゃあ行きますか。みんな、お疲れ様。」

アネラス達の会話を苦笑しながら聞いていたシェラザードはケビン達にウインクをし

「ええ………姐さんたちも!」

「お二人とも………本当にお疲れ様でした。」

ケビンとクローゼの別れの言葉を聞いた後、アネラスと共に光の階段を登り、門の中へと入って行った。



「さてと………次は俺たちが行くか。」

「そ、そーですね。」

シェラザード達を見送ったアガットとティータは光の階段の前に来た。

「ティータ………」

「………お別れだね。」

「やっぱり、ちょっと寂しいね………」

光の階段の前に来たティータをエステル、ヨシュア、ミントはそれぞれ寂しそうな笑みを浮かべて見つめ

「えへへ………お姉ちゃん………お兄ちゃん……ミントちゃん。それから………ティオちゃんも。」

「ティータさん………」

「元の世界に帰ったら、連絡し合おうね!普通とは違う出会いで出会ったけど………わたし、ティオちゃんも大切な友達だと思っているよ!」

「……………ありがとうございます。私も………同年代の友人がこんな形でできるとは思ってもいませんでした。これからは友人同士として、よろしくお願いします。」

ティータに微笑まれたティオは静かに頷いた後、微笑みを浮かべてティオを見つめ

「えへへ………うん!」

「ふふっ………」

「はは……………」

ティオの返事を聞いたティータは嬉しそうに頷き、その様子をエステルとヨシュアは微笑ましそうに見守っていた。

「………シェラザードじゃねえがお前らの方も気を付けろよ。特にエステルとミント。もうベテランなんだからよく考えて行動するんだぜ。」

一方アガットは優しい微笑みを浮かべてエステル達を見つめ

「はいはい。わかってますってば。アガットの方こそティータのお母さんとあんまりケンカしないのよ?」

「うん、そうだね!でないとティータちゃん、哀しむよ~?」

アガットの言葉を聞いたエステルは溜息を吐いた後、ミントと共にからかいの言葉を言った。

「あ、あれは向こうが一方的に突っかかってくるだけだってーの!今度の件だってどんな難癖付けてくるか………」

2人のからかいの言葉を聞いたアガットは慌てた後、表情を顰め

「………あ、あはは………」

「はは、たしかにエリカさんなら問答無用で締め上げてきそうですな。」

ティータとケビンは苦笑していた。

「まったく………笑いごとじゃねえっての。それはそうと………おい、不良神父。」

「へ………オレ?」

「……最初会ったときは妙にうさんくせぇヤツかと思ったが今回は根性見せてくれたじゃねぇか。上出来だぜ。」

「…………………………」

そしてアガットの言葉を聞いたケビンは驚きの表情で口をパクパクさせて黙り込んだ。

「ん、なんだよ?」

「いや、まさか………アガットさんからそんな風に誉められるとは思ってなかったわ。一体どんな風の吹き回しなんです?」

「はは………深い意味はねえよ。お互い道の途中、気張ろうぜってだけの話だ。」

「そっか………おおきに。」

「ふふ………」

「はあ、やっぱり男同士ってどこか不器用よねぇ。」

「ほっとけ。」

アガットとケビンの会話を聞いていたリースとエステルは微笑み、エステルの言葉を聞いたアガットは呟いた後ティータに視線を向け

「よし………それじゃあ行くか。」

「はいっ。」

ティータと共に光の階段を登り、門の中へと入って行った。



「………ユリアさん。そろそろ行きましょうか。」

「………承知しました。」

「ピューイ!」

アガット達を見送った後クローゼとユリアは光の階段の前に来て、ジークは一鳴きした後2人の上を飛び回りながらユリアの肩に止まった。

「クローゼ………」

「クローゼさん………」

「また………しばらく会えなくなっちゃうね。」

「ええ………ですがこのような形でエステルさん達と再会できたこと………女神達に感謝したい気持ちで一杯です。」

ヨシュア達に見つめられたクローゼは優しい微笑みを浮かべて答え

「………僕達もだよ。」

「えへへ………手紙、また書くから。」

「ミントもママと一緒に手紙を書くね!」

「ふふ、期待しないで待っていますね。それと………ジョゼットさん。」

ヨシュア達の言葉を聞き微笑んだクローゼはジョゼットに視線を向け

「え………ボ、ボク?」

視線を向けられたジョゼットは戸惑いながらクローゼを見つめた。

「今回、一緒に過ごせてとても楽しかったです。また機会があったらお喋りしませんか?」

「え、えっとその…………うん、いいよ。共通の話題もあるし趣味も近いみたいだし………仕事でちょくちょくグランセルには寄るしね。」

「ふふ………楽しみにしてますね。」

「むむむ………」

クローゼとジョゼットの会話を聞いたエステルは唸り

「フフン、悔しかったらあんたもお菓子作りとか手芸やあんたの娘を見習ってせめて料理でもやってみれば~?もっとも不器用そうだからハードル高いだろうけど。」

エステルの様子を見たジョゼットは得意げな笑みを浮かべて言った。

「くっ………言い返せない。まさかミントがあんなに料理が上手くなるなんて、想定外よ………ますますミントに女としての差を付けられたわ………」

「えっと………元気出して、ママ!ママにはママの魅力があるよ!」

「ふふ、まあまあ。」

ジョゼットの言葉を聞いたエステルは悔しそうな様子で呟き、ミントはエステルに励ましの言葉を送り、クローゼは苦笑しながらエステル達を見つめていた。そしてクローゼはユリアと共にセレストを見つめた。

「あの………始祖様………」

「ふふ………私のことならどうか気にしないで下さい。私は『影』………本物のセレストの記憶を持つ仮想人格にすぎません。」

「それでも………始祖様には、お祖母さまに一度会って頂きたかったです。私はまだまだ未熟で………始祖様をがっかりさせてしまったのではないかと……」

「ふふ………そういう所は、昔の私と本当にそっくりですね。」

不安そうな表情で語るクローゼにセレストは優しい微笑みを浮かべて言った。

「………え……………」

「多分、あなたのお祖母様も同じように思っているでしょう。大丈夫、迷いながらも自分の道を進んでいきなさい。翼は必ず………大きく羽ばたきますから。」

「………あ………はい………ありがとうございます!」

そしてセレストの話を聞いたクローゼは呆けた後、笑顔で頷いた。

「ふふ………そろそろ参りましょうか。……………そうだ、ケビン殿。お互い帰還したら少々、混乱した事態になっているかもしれない。何かあったらどうかよろしくお願いする。」

一方クローゼとセレストの会話を聞いていたユリアは会話が終わるとクローゼに帰る事を促し、ケビンに軽く頭を下げて言い

「ええ、わかりました。オレらの方も封聖省と連絡を取って今後の対応を考えますわ。」

ユリアの言葉にケビンは頷いて答えた。

「ふふ、それでは皆さん………いつまでもお元気で!」

「ピューイ!」

そしてクローゼはケビン達に微笑んだ後ユリアとジークと共に門の中へ入って行った。



「さてと………そろそろボクも行こうかな。」

「……私もご一緒します。ラグタス、戻って下さい。」

クローゼ達を見送ったジョゼットとラグタスを自分の身体に戻したティオは光の階段の前に来た。

「ジョゼット………」

「えっと、その………」

光の階段の前に来たジョゼットにヨシュアは微笑み、エステルは目を逸らして考え込んだが

「あー、別に無理して何か言わなくてもいいよ。アンタからの湿っぽい挨拶なんて聞きたくないし。」

ジョゼットは口元に笑みを浮かべてエステルを見つめて言った。

「あ、あんですって~!?」

そしてジョゼットの言葉を聞いたエステルはジョゼットを睨んだ。

「まったく、ヨシュアと上手くいってなさそうだったら遠慮なく連れていくのにさ………そうだヨシュア。このままボクと一緒にあの門をくぐって帰らない?ひょっとしたら同じ場所に戻れるかもしれないし。」

「あ、あんたねぇ………」

ジョゼットの言葉を聞いたエステルはジト目でジョゼットを睨み

「えっと、その。2人とも落ち着いて………」

ヨシュアは苦笑しながら諌めようとしたが

「「ヨシュアは黙ってて!」」

「………ハイ………」

エステルとジョゼットに同時に睨まれると共に叫ばれ、肩を落として頷いた。

(ヨ、ヨシュア君………)

(………なんて不器用な……)

(将来、尻に敷かれる事が確定ですね………)

その様子を見たケビン、リース、ティオは呆れていた。

「ふん、でもまあ………楽しかったことだけは認めてあげるよ。」

「それはこっちの台詞よ。仕事、忙しそうだけどあんま無理すんじゃないわよ?遊撃士(あたしたち)と同じで身体が資本なんだろうから。」

「ふふん、そっちこそ。怪我でもしてヨシュアの足を引っ張らないようにね。」

「はあ………(仲が悪いのに妙に気が合うんだよな………)」

そしてジョゼットとエステルの会話を聞いていたヨシュアは溜息を吐いた後、苦笑した。

「皆さん…………今まで本当にお世話になりました。私が皆さんと行動するようになっていた当初、足を引っ張っていた私に責める言葉を一切かけなく、逆に気を使って頂き………とても助かりました。」

「な~に、水臭い事言っているのよ!ティオちゃんも大切な仲間なんだから、当然でしょ?」

「それに君や君が契約している人達に助けられる事も何度もあったから、お互い様だよ。」

ジョゼットの会話が終わるとティオは軽く頭を下げて挨拶をし、ティオの言葉を聞いたエステルとヨシュアは微笑んだ。

「……お役に立てたのなら幸いです。それに私もみなさんと一緒に探索や修練をしたお蔭で結果的に体力が大幅につきました。………数ヵ月後の仕事では体力を使う機会もあると聞いていましすから、今回の件は私にとっても良い経験になりました………ありがとうございます。」

「こっちこそ今までありがとうな。」

「どうかお元気で。」

静かな笑みを浮かべて語るティオにケビンとリースはそれぞれ微笑みを向け

「今度出会う場所はクロスベルだね、ティオちゃん!」

「もし、一緒に仕事をする機会があったらその時はよろしく。」

「元気でね、ティオちゃん!」

ミント、ヨシュア、エステルも続くように微笑みをティオに向け

「………はい!」

微笑みを向けられたティオは笑顔で頷いた。

「さてと………そろそろ行くよ。ヨシュア………今度はボク達の方から手紙を送るから!」

「うん、楽しみにしてる。」

「そっちの2人も色々と大変そうだけど………ま、元気でやりなよね。」

「はは、おおきに。」

「あなたと、あなた方の船に女神の祝福があらんことを………」

「あはは、ありがと!それじゃあ、またね!」

「………………」

ケビン達の別れの言葉を聞いたジョゼットは笑顔になり、ティオは軽く頭を下げ、そして2人は光の階段を登り、門の中へと入って行った。



「さて……と。あたし達も帰ろうか。みんな、ご苦労様!あたしの中に戻って!」

「うん。」

「はーい。」

ジョゼット達を見送った後契約している者達全員を戻したエステル、ヨシュア、ミントは光の階段の前に来た。

「ケビンさん、リースさん!今までありがとう!」

「お世話になりました。」

「えへへ………またこうやってみんなと冒険できて楽しかったよ!」

「こっちこそ、ありがとうな、3人共………」

「………私達の方もお世話になりました。ありがとうございました。」

エステル達に微笑まれたケビンとリースはそれぞれ微笑みを浮かべて3人を見つめたが、すぐに表情を引き締め

「……ミントちゃん。くれぐれも時空を操れるなんて事、他言したらあかんし、人前でやったり、使いまくったりしたらあかんで?」

「………時空を操る事がどれだけ世界に影響を与える事なのか………その事を決して忘れないで下さい。」

真剣な表情でミントを見つめて言った。

「……うん。忠告ありがとう、ケビンさん、リースさん。時空を操る危険性については”扉”の記憶が教えてくれたから、大丈夫だよ。」

そして2人の忠告にミントは静かに頷いて答えた。

「じゃ、別れの言葉もすんだことだし、行きましょうか。」

「うん。」

「はーい。」

エステルの言葉に頷いたヨシュアとミントはケビン達を見つめ

「じゃあな、3人共!元気でな!」

「あなた方3人に空の女神の祝福を………」

ケビンは笑顔で別れの言葉を言い、リースは静かな笑みを浮かべて祈り

「またね、2人とも!」

「お二人とも………どうかお元気で!」

「またいつか会おうね!」

エステル達はそれぞれ笑顔をケビン達に向けた後、光の階段を登り、門の中へと入って行った。すると広間全体が揺れ出した。



「そろそろ………ここも保たないでしょう。さあ………あなた方も早く。」

「ええ………」

「あれ………でも………」

セレストの忠告を聞いたケビンは頷き、リースは首を傾げた。

「なんや、どうした?」

「うん………何か忘れてるような………」

そしてケビンに尋ねられたリースが不思議そうな表情で答え、3人一緒に考え込んだその時

「お~い………!」

聞き覚えのある声を聞こえ

「あ!」

「あ………」

「あら………」

声を聞いたケビン達はある事を思い出し、声が聞こえた方向に振り向いた。

「はあっ………はあっ………はあっ………」

するとギルバートが息を切らせながらケビン達の所に走って近づき

「ひ、非道いじゃないか!あんな説明だけでこの僕を置いていくなんて!」

セレストを睨んで言った。

「す、澄みません。手が離せなかったもので………でも、あの説明ではここまで辿り着けませんでしたか?」

ギルバートに睨まれたセレストは申し訳なさそうな表情で答えた後、不思議そうな表情で尋ねた。

「じ、自慢じゃないけど僕は方向オンチなんだ!天使の集団に追いかけられるわ馬の戦車に轢かれそうになるわ………そ、それよりも………この揺れはいったい何なんだ?」

尋ねられたギルバートは疲れた表情で答えた後、不安そうな表情で尋ね

「ああ、この城、もうすぐ消えてしまうんやって。向こうにあるんが元の世界に戻る出口やから兄さんも早く脱出するといいやろ。」

「!そ、そう言う事は早く言ってくれ!こうしてはいられない………僕はもう行くぞ!」

ケビンの説明を聞き、気を取り直した。

「ええ………どうぞお先に。………お疲れさまでした。」

「へ………」

そしてリースの言葉を聞いて呆け

「ま、お互い、ご苦労さんってことや。今度会った時は敵同士……あんまりオイタが過ぎて騎士団(オレら)の目に付けられんようにな。」

「は、はは………フッ、それはこちらの台詞さ。今度会った時は、より出世してパワーアップした姿をお見せしよう………その時を楽しみにしたまえ!」

ケビンの話を聞き、不敵な笑みを浮かべて答えた後、光の階段を登って門の中へと入って行った。



「はは………」

「…………ふふ………」

ギルバートを見送ったケビンとリースはそれぞれ微笑んだ。

「さあ………あなた方も早く。もってあと数分でしょう。」

「………わかりました。セレストさんは………これからどうなるんですか?」

「私は”庭園”で再び永き眠りに就くでしょう。この”影の国”が徐々に消滅するその日まで。そしてようやく………この役割から解放されます。」

ケビンに尋ねられたセレストは静かに答えた後、微笑んだ。

「そう…………ですか。本当に………お世話になりました。」

「………どうか良い夢を。」

「ふふ、ありがとう。あなた方が去ったら”方石”の機能を停止させます。2度と甦ることはありませんから好きに処分してしまってください。」

「………承知しました。しかるべき人に託すことになると思いますわ。」

「ケビン………エリカ博士に渡すつもり?」

セレストの言葉に頷いて言ったケビンの言葉を聞いたリースは意外そうな表情でケビンを見つめ

「ま、そうでもしないとあの人も収まり付かんやろ。可愛い我が子が巻き込まれてるくらいやし。」

「………そうかも。」

見つめられたケビンは疲れた表情で答え、リースは苦笑しながら頷いた。

「そんじゃあリース、オレたちも行くとするか!」

「うん………何だったら一緒に手をつないで行く?」

「へ………」

リースの提案を聞いたケビンは驚き

「………ふふ、冗談。でも、一緒に行こうね。姉様が夢見た………いつか、辿り着く場所に。」

リースは静かな笑みを浮かべて答えた。

「ああ………あらためて………よろしく頼むで、相棒!」

「うん………!」



そしてケビン達はセレストに見守られながら門の中へと入り、元の世界に帰還した。こうしてケビン達は”影の国”からの脱出を無事、成功させた……………!


 
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