英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第117話
ケビンさん………!リースさんってば!
しっかり………してください………!
~幻影城~
「ん………」
「あ………」
誰かが自分達を呼ぶ声を聞いたケビンとリースは気づいて、起き上がった。
「あれ………」
「ここは………」
起き上がったケビンとリースは自分達が倒れていた場所を見て戸惑い
「ふう………何もなくてよかった。お二人とも戦いが終わるといきなり気絶したんです。」
ナユタは安堵の溜息を吐いて答えた。
「気絶………!?」
「そ、そんな………」
ナユタの説明を聞いたケビンは驚き、リースは信じられない表情をした。すると
おそらく………”彼女”が築いた領域に精神だけ招かれたのしでしょう。
聞き覚えのある声が聞こえて来た後、セレストが現れた。
「始祖様………」
「セレストさん………」
「………つい先ほど、私の力が完全に戻りました。ケビン殿………いったい何があったのですか?」
「あ………」
「………ええ、実は………」
セレストの問いかけにケビンはルフィナとの別れと、”影の国”を支配していた”聖痕”が完全に消滅したことを説明した。
「……そうだったのか………」
「とても………強い方ですね。」
説明を聞き終えたユリアは重々しく頷き、クローゼは辛そうな表情で呟いた。
「彼女とは直接、話す機会は遂にありませんでしたが………せめて一度だけでもお会いしておきたかったですね。………しかしそうなるとあまり時間はないかもしれませんね。」
「へ………」
「どういうことですか………?」
セレストの呟きを聞いたケビンとリースは戸惑い、仲間達と共にセレストを見つめた。
「”聖痕”が消えた以上、主を失った”影の国”は再び不安定な状態へと戻るでしょう。この”幻影城”もじきに、実体を保てずに消滅するはず………おそらく”庭園”以外の”星層”も同じだと思います。」
「あ、あんですって~!?」
そしてセレストの説明を聞いたエステルは驚き
「あら、エステルったらなにをそんなに驚いているの?そんなの、仕組みを考えたら十分にあり得る話じゃない。」
レンは余裕の笑みを浮かべてエステルに説明した。
「そ、そんなこと言われても………って、あんたも気づいてたんなら言ってよ!?」
レンの説明を聞いたエステルは疲れた表情で溜息を吐いた後、レンをジト目で睨み
「では、急いでアルセイユで脱出した方が良さそうですね。」
ヨシュアは真剣な表情で脱出した。
「いえ、それには及びません。今ならここで”天上門”を開きましょう。」
「え………」
「”天上門”って………聖典の?」
そしてセレストの提案を聞いたリースは驚き、ケビンは戸惑った様子で尋ねた。
「ええ…………たしか”煉獄門”と対になる現世と天界を結ぶ門、でしたか。ちょうど、それを模したものが、この場所の奥に用意されています。どうやら”影の王”と同化していた彼女が用意してくれたようですね。」
「あ………」
「姉様が………」
自分の疑問に答えたセレストの話を聞いたケビンはリースと共に微笑みを浮かべ
「ふむ、なるほどね。」
「それを通れば元の世界に戻れる訳か。」
オリビエとミュラーはそれぞれ納得した様子で頷き
「………待ってくれ。時間軸の違う者達もそれぞれの時間軸へと戻れるのか?」
ある事に気づいたヴァイスはセレストを見つめて尋ね
「ええ、問題ありません。それぞれの方達が望む世界に戻れます。」
尋ねられたセレストは頷いた。
「ね、ねえ………だったら母様もメンフィルに行けるの………?」
「………………」
そしてセオビットは不安げな表情でセレストに尋ね、シルフィエッタは静かな表情でセレストを見つめ
「はい。”それぞれが望む場所”に帰れます。」
「あ………母様……!」
「………ルリエンよ………私に慈悲をありがとうございます………」
セレストの答えを聞いたセオビットは嬉しそうな表情をしてシルフィエッタに視線を向け、シルフィエッタは嬉しそうな表情で祈り
「フフ………私は勿論、アドルさんの傍を望みますから、元の世界に戻ったらよろしくお願いします。」
「ハハ………わかったよ。」
エレナは微笑みを浮かべてアドルを見つめ、見つめられたアドルは苦笑した。
「さて………では早速、”天上門”を開いてみましょう。」
そしてルフィナは転移して、片手を空間に向かってかざした。すると空間は光と共に巨大な神々しく光輝く門が現れ、門に続いている光の階段が現れ、そして門は音を立てて開いた。
「あ………」
「現世への………出口。」
現れた門を見たエステルとリースは驚き
「各自、取り込まれた時にいた場所の近くに戻れるかと思います。飛行船などに乗っている方は船内のどこかに現れるでしょう。取り込まれた場所ではなく、新たな場所に帰る事を望む方達は先程説明したようにそれぞれが望む場所へと帰してくれます。」
「そっか………」
セレストの説明を聞いたケビンは頷き
「………お別れみたいね。」
「ええ………そうですね。」
エステルとクローゼは寂しそうな表情で呟き
「え、え………もうですかっ!?」
「な、何だか………全然実感が無いっていうか………」
ティータは慌て、アネラスは戸惑い
「はは、最後に祝宴を上げるヒマすらないとはね………だが本来………別れとはそういうものか。」
「ふふ…………そうかもしれないわね。」
オリビエは静かな表情で呟き、オリビエの言葉にシェラザードが頷いた。
「それと………時間軸の関係で最初はナユタさんとノイさん…………次はアドルさんとフィーナさん、エレナさん……その次にヴァイスさんとリセルさん……以上の方達が先に元の世界に帰る事をお願いします。」
「………僕達が最初か。ノイ。」
「うん。」
そしてセレストの説明を聞いたナユタは静かな表情で頷いた後、ノイと共に前に出て、仲間達を見回した。
「みなさん………今までお世話になりました!こんなにも多くの人達と協力する事は初めての体験であると同時に……とても楽しかったです!」
「初対面の私達に他の仲間の人達と同じように接してくれて、とても嬉しかったの!」
そして仲間達を見回したナユタとノイはそれぞれ笑顔になり
「こちらこそ2人には随分世話になったわ。」
「………お二人ともお元気で。」
「こっちこそナユタ君達の冒険の話を聞けて、とても楽しかったわ!元気でね、2人とも!」
ケビンとリース、エステルは笑顔でナユタとノイを見つめ
「は~………ノイちゃんともこれでお別れか~……もっと、ノイちゃんの可愛さを堪能したかったのに、残念だよ………」
アネラスは溜息を吐いた後、残念そうな表情でノイを見つめ
「もう、勘弁してほしいの………」
見つめられたノイは身体を震わせ
「ハハ………そうだ。ティオちゃん。僕とノイにそれぞれ”みっしぃ”のストラップをくれて、ありがとう。一生大切にするよ。」
ナユタは苦笑した後、アルセイユに乗船する前にティオからもらった”みっしぃ”のストラップを見せて言った。
「フフ、そのストラップは後98個持っていますので………”みっしぃ”がそんなに昔から生きていた事を教えてくれたお礼としてはむしろ安いぐらいです。それと可能であれば”みっしぃ”の可愛さをナユタさん達の時代に広め、歴史に残す活動をお願いします………!」
そしてティオは静かな笑みを浮かべて答えた後、真剣な表情で2人を見つめ
「アハハ………」
「あんな変な動物のどこがいいの………」
見つめられたナユタは苦笑し、ノイは溜息を吐いた。
「アハハ………そういえば、ナユタ君。恋人は結局どっちにするか、ちゃんと決めたの~?」
一方エステルは苦笑した後、からかうような表情でナユタに尋ね
「う”………」
尋ねられたナユタは表情を引き攣らせ
「ハア~………やっぱり!まだ決めていなかったのね!?………まあいいの。帰ったらクレハ様やシグナ達に今回の事を全部話すつもりだから、それで勘弁してあげるの。」
ノイは呆れた様子で溜息を吐いた後、笑顔でナユタを見つめて言った。
「ノ、ノイ………”全部”って事はもしかして……」
そしてノイの言葉を聞いたナユタは冷や汗をかいてノイを見つめ
「勿論、私達の”試練”で助けに来てくれた”想念”のクレハ様の言葉や行動も”全て”話すの。」
見つめられたノイは笑顔で答えた。
「や、やっぱり…………うう………クレハ達がどんな反応をするのか、かなり怖いよ……」
ノイの話を聞いたナユタは溜息を吐き、頭を抱えた。
「悩むのなら、帰ってからにするの、ナユタ!それに私はナユタの”相棒”なんだから、悩みはいつでも聞いてあげるの。」
「………そうだね、ノイ。……それじゃあみなさん、さようなら!」
「みんな元気でなの!」
そしてナユタとノイはケビン達に笑顔を見せた後、門の中へと入って行った。
「………次は僕達だね、フィーナ、エレナ。」
「ええ………」
「はい………」
ナユタ達が門の中へ入って行くと、次にアドル、フィーナ、エレナが光の階段の前に行き、ケビン達を見回した。
「みんな………今までありがとう。」
「みなさんが普通に接してくれて、とても幸せでした………この思い出は一生忘れません。」
「私はお二人と比べるとみなさんと接した時間は短かったですが………とても良い思い出になりました!ありがとうございました!」
そしてアドル達はそれぞれ微笑みを浮かべてケビン達を見つめ
「………こちらこそ今までありがとうございました。特にアドルさんにはケビンが倒れている間、エステルさんと一緒に私のサポートをしてくれて色々お世話になりました………本当にありがとうございました。」
「オレからも礼を言わして下さい。本当にありがとうございました。」
「………お礼を言いたいのはこちらの方さ。今回の件のお蔭で新たな”冒険”ができたよ。今回の事はいつか未来の僕が書き残したという冒険日誌に書いておくね。」
リースとケビンにお礼を言われたアドルは微笑みを浮かべて答え
「え………じゃあ、あたし達の事も”赤毛の冒険家の冒険日誌”に載るんだ!」
「えっと………大丈夫なのかな………?」
「はわわっ!?あのあの………勿論、わたしの事も書いてくれるんですよね!?」
「歴史が変わった瞬間ですね………」
アドルの話を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ティータは慌てた後期待が籠った目でアドル達を見つめ、ティオは静かに呟いた。
「………そういえば、エステルさん。今後のアドルさんの冒険で出会う女性全員の名前を教えてくれてありがとうございます。これでアドルさんの被害に会う人達を少しでも減らせます。」
「アハハ。そんな事、お安い御用よ!」
「フフ………よろしくお願いしますね、エレナさん。」
そしてエレナはエステルに微笑み、微笑まれたエステルも微笑みで返し、フィーナはエレナに微笑みながら言った。
「被害って…………僕は今まで出会った女性に酷い事なんてしていないのに………」
一方エレナ達の会話を聞いていたアドルは溜息を吐いたが
「「アドルさん??」」
「う”………」
フィーナとエレナに威圧感のある笑顔を向けられ、一歩下がった。
「フフ………そういえばフィーナさん。フィーナさんのお腹に宿る子供の名前は決められたのですか?」
その様子を微笑みながら見ていたティナは尋ね
「はい。いつか生まれて来る娘にとてもいい名前をアドルさんが考えてくれましたので。」
尋ねられたフィーナは幸せそうな表情で自分のお腹をさすり、微笑みながら答えた。
「へ~………ねえねえ。どんな名前にしたの??」
「「………………」」
そして興味深そうな様子のエステルに尋ねられたアドルとフィーナは互いの顔を見て微笑んだ後、ケビン達に振り返り
「私のお腹の中にいる娘………その娘の名前は……」
「フィーナのようにみんなに愛と優しさを分け与える優しい娘になるように、古い言葉で”慈愛”の意味が込められた名前……その名前は……」
それぞれ静かな微笑みを浮かべて話し始め
「「エイドス。」」
ケビン達に微笑みながら答えた。
「へ………」
「…………え………………」
2人の言葉を聞いたケビンとリースは呆け、周囲の仲間達も固まり
「それじゃあみんな、元気で!」
「さようなら、みなさん!」
「みなさんにイースの加護を!」
「ちょっ、待っ………!」
そしてアドル、エレナ、フィーナはそれぞれ微笑んだ後我に返り、慌てた様子で呼び止めようとするケビンの言葉を背に受けながら階段を走り、門の中へと入って行った。
「行っちゃった……………」
アドル達を見送ったエステルは我に返った後、呆けた声を出し
「………ケビン。フィーナさんが身籠っている赤ちゃんってまさか………」
「いやいやいや!いくらなんでも、それはさすがにありえんやろ………!?」
リースは信じられない表情でケビンに尋ね、尋ねられたケビンは混乱しながら否定した。
「!……………フフ………どうやらリースさんの推測通りのようです。」
するとその時、目を見開いて驚いた表情をし、目を閉じて考え込んだセレストは閉じていた目を開いて微笑んで呟き
「始祖様………!?」
「え………」
「んなっ!?ま、まさか…………!」
セレストの言葉を聞いたクローゼは驚き、リースは呆け、ケビンは信じられない表情でセレストを見つめた。
「アドルさん達が門の中へと入った瞬間…………私にナユタさんやアドルさん達の歴史が情報として入ってきました。」
「へ!?ナユタ君も関係しているの!?」
そしてセレストの話を聞いたエステルは驚いてセレストを見つめた。
「………時間があまりありませんので、簡潔な説明だけします。まずフィーナさんは……ナユタさんとクレハという方の子孫です。」
「え!…………じゃあ、ナユタ君はクレハちゃんって娘を選んだんだ!」
「そして……フィーナさんが身籠っている子供は………後に人々からこう称えられています。”空の女神”と。」
「う、嘘やろ………!?」
「アドルさんとフィーナさんが空の女神のご両親…………そしてナユタさんが空の女神の先祖………………」
「はわわっ!じゃあわたし達、空の女神様のお父さんとお母さんと………えとえと………凄い昔のお祖父ちゃんと一緒に冒険したんだ………」
「ゼムリア大陸にとって驚くべき事実ですね………空の女神が人間と神の間から生まれていたなんて………」
セレストの説明を聞いたケビンは口をパクパクさせ、リースは信じられない表情をし、ティータは慌て、ティオは驚きの表情で呟いた。
「………始祖様。それで空の女神はどうなったのですか………?」
一方驚いた後、気を取り直したクローゼはセレストに尋ね
「………役割を果たした空の女神は最後は自分が愛した人々と同じ”人”としての人生に生き………愛する伴侶と子供に見守られながら幸せにその生涯を閉じた………という情報です。」
「「…………………」」
そしてセレストの説明を聞いたケビンとリースは驚きの表情で固まり
「ふむ………空の女神が結婚していた上、子孫も残していたとは…………しかし女神に愛された幸せな男は何者で女神の子孫はその後どうなったんだろうね?」
「!!セレストさん、できたら教えてもらってもいいですか?」
「…………お願いします。」
真剣な表情で呟いたオリビエの言葉に我に返った後、真剣な表情でセレストを見つめて尋ねた。
「わかりました………空の女神の伴侶となった方は………アドルさんとエレナさんの子孫で………そして空の女神と共に混迷に満ちた世界を平和に導いた事から人々からこう称されています………”光”と。」
「んなっ!?」
「え!?」
セレストのさらなる説明を聞いたケビンとリースは驚いた後ある人物に視線を向け
「う、嘘でしょう………!?」
「エステルや父さんが……空の女神の末裔………!」
シェラザードとヨシュアは信じられない表情でケビン達と共にある人物――――驚きの表情で固まっているエステルに視線を向けた。
「…………………」
視線を向けられたエステルは口をパクパクさせて固まり
「ほ、本当にエステルさんが空の女神の末裔なのですか、始祖様………!?」
クローゼは驚きの表情でセレストに尋ね
「ええ………先程私が得た情報では空の女神の子は”ブライト”性を名乗り、子孫を残しているとあります…………」
尋ねられたセレストは真剣な表情で頷いて答えた。
「………しかし、もし本当にエステルさんが神の末裔なら私やリウイ様達のように相応の力が受け継がれていると思うのですが………」
「………確かにな。神の力を受け継いでいるのなら、相当の力を持っているはずだが……俺達には感じられん。」
一方考え込んでいたエクリアは考え込んだ後疑問に思った事を呟き、エクリアの疑問にリウイが頷いた。
「………私が先程得た情報には空の女神の子供は母の………神の力を受け継ぐ事はできず、普通の人間として生きたようですね……そして……空の女神自身、自分の力が受け継がれていない事に安心していたようです。」
「……強すぎる力は時に本人が望まなくても災いとなる。”神殺し”として生きる俺のようにな…………」
「……………きっと、空の女神は大切な子供には普通に生きて欲しかったんだと思うわ………」
エクリアの疑問に答えたセレストの答えを聞いたセリカは真剣な表情で呟き、サティアは静かな表情で語った。
「あ、あはは………驚く事ばかりで、もう何が何やらだけど………まさかナユタ君やアドルさん達があたしや父さんのご先祖様だなんて………ご先祖様達と一緒に戦った事やご先祖様が”赤毛の冒険家の冒険日誌”の主人公だと知ったら、父さん、どう思うかな~?」
そして固まっていたエステルは苦笑し
「うふふ。自分が神の末裔である事ではなく、先祖と一緒に戦った事の方に驚いているんだ、エステルは。」
「お、お姉ちゃん………何とも思わないの………?空の女神様がお姉ちゃんのご先祖様だって事………」
エステルの言葉を聞いたレンは口元に笑みを浮かべ、ティータは驚きの表情でエステルに尋ねたが
「う~ん………確かにかなり驚いたけど、よく考えたら神の末裔だったらエクリアさんやリウイ達だってそうじゃない。それにあたし自身”神”の力を持っている訳じゃないし。その事を考えたら、そんなに大した事じゃないと思うのよね~。」
エステルは考え込んだ後、エクリア達を見回し、苦笑しながら答え
「エステル………そういう問題じゃないと思うんだけど………」
「神の子孫である事を大した事に思わないなんて、お前ぐらいだぞ…………」
「ハハ……旦那以上の器の持ち主だな………」
答えを聞いたヨシュアとアガットは呆れ、ジンは苦笑しながらエステルを見つめ
「わあ………神様の子孫だって知っても、大した事ないって思うなんて、ママ、凄い!」
「なんと大きな器の持ち主よ!さすがは余の友!」
「フフ………さすがはエステルさんですね。」
ミントははしゃぎ、リフィアは高々と胸を張り、プリネは微笑み
「いやいやいやいや!?オレ達からしたらとんでもない事実やねんから、そんなあっさり流さんといてくれへんか………!?」
「空の女神を崇める七耀教会(私達)からすれば、エステルさんは祀られてもおかしくない存在なんですよ………?」
ケビンは慌てた様子で突っ込み、リースは真剣な表情でエステルを見つめて言ったが
「あたしは空の女神じゃないから祀られたり崇められたりしても困るわよ~。………それにセレストさんの話だと空の女神は自分の子供に普通の人として生きて欲しかったんでしょ?崇めている神様が望んでいるんだから、ケビンさん達もそんなに気にする必要はないと思うけど。」
「……それに付け加えて言えば、もしお前達―――七耀教会が空の女神の血を引くエステルや”剣聖”を七耀教会にとって、特別な存在等にしてしまえばお前達が崇める女神の意志に反する事になるな。」
「う…………」
「それは…………」
エステルとリウイの話を聞いた2人は反論が見つからず、黙り込んだ後、考え込み
「ハア………まあ、エステルちゃんには色々と世話になったしな…………わかったわ。空の女神の真実については報告しないでおくわ………第一、ちゃんとした証拠もないから、信じてもらえへんやろうしな……………」
「………皆さん、空の女神の真実については決して誰にも漏らさないようにお願いします。」
ケビンは溜息を吐いた後苦笑しながらエステルを見つめ、リースは真剣な表情で仲間達を見回し、リースの言葉に仲間達はそれぞれ頷いた。
「えへへ………みんな、ありがとう!」
仲間達の反応を見たエステルは嬉しそうな表情でお礼を言い
(ヨシュア。もしもの時は遠慮なく余達に頼れ。いつでも力になってやる。)
リフィアは小声でヨシュアに伝え
(うん、ありがとう。その時は遠慮なく頼らせてもらうよ。)
リフィアの言葉にヨシュアは真剣な表情で頷いた。
「フフ……さて……いい加減、俺達が行かないと現代の者達が帰れなくなるな、リセル。」
「はい、ヴァイス様。」
そして口元に笑みを浮かべたヴァイスはリセルと共に光の階段の前に来て、ケビン達全員を見回し
「短い間ではあったが………世話になった。貴方達と共に戦ったこの経験をさらなる上を目指す糧とし、俺はもっと上の地位を目指す。」
「みなさんと出会えたお蔭で、さまざまな体験や思い出が記憶できました………本当にありがとうございました。」
ヴァイスは静かな笑みを浮かべ、リセルは優しげな微笑みを浮かべて言った。
「こちらこそ、お世話になりました……………ですが、お二人にとってこれからが本当の戦いなんですよね?」
2人の言葉に頷いたケビンは真剣な表情で2人を見つめて尋ね
「ああ。ユン・ガソルに奪われたセンタクスを奪還し……その功績を元に俺はさらに上を目指す。…………リウイ王、貴方には色々と世話になった。貴方が俺に教えてくれた戦術や政治、そして覇道………今後の戦や政治の糧とさせてもらう。」
尋ねられたヴァイスは頷いた後、リウイに視線を向けた。
「フッ………お前ほどの”器”を持つ者なら、いつか必ず”王者”へと這い上がれるだろう………お前が目指す”道”が叶う事………心から応援している。」
そして視線を向けられたリウイは不敵な笑みを浮かべてヴァイスを見つめた。
「フフ………君とはもっと語りたかったのにもう会えないだなんて、非常に残念だよ………」
一方オリビエは口元に笑みを浮かべた後、残念そうな表情でヴァイスを見つめた。
「ああ。オリビエとは色々と共通する部分があり、話が合ったのだがな………短い間とはいえ、楽しかった………我が友よ………」
「フフ……互いが目指す”道”を必ず叶えようじゃないか、我が生涯2人目の親友よ!」
そしてヴァイスと互いに口元に笑みを浮かべて見つめていた。
「ウィル殿、ティータさん………貴方達2人には技術面に関して非常にお世話になりました。………今までありがとうございました。」
「こちらこそ。リセルさんが知る魔導技術も中々で、色々と勉強になったよ。」
「はう~………リセルさんとは色々と話が合って、とても楽しかったのに、もう会えないだなんて残念です…………………あ、そうだ。これ、リセルさんに渡しそびれたんだ。」
一方リセルに微笑まれたウィルは頷き、ティータは残念そうな表情をした後、ある事を思い出して呟き
「?私に渡したい物とは一体………?」
ティータの言葉を聞いたリセルは首を傾げた。そしてティータはリセルに近づき
「えっと………もしよければ、これを持って行って下さい。」
「!これは………!」
「確か君達の世界の技術で”アーツ”という魔法を放つ事ができる機械………”オーブメント”と”クオーツ”だったか?」
なんとリセルに真新しいオーブメントとさまざまなクオーツを渡し、渡されたリセルは驚き、ヴァイスは驚いた表情でティータに尋ねた。
「はい。リセルさんはこれから戦争に行くんですよね?リセルさんには戦争で傷ついたり、死んで欲しくありませんから、お守り代わりです。」
「………いいのか?俺達が戦争の道具として利用する為に量産するかもしれないし……これらの技術を俺達の時代で完成してしまい、下手をすれば未来をも変えてしまう事にもなるぞ?」
そしてティータの答えを聞いたヴァイスは真剣な表情で尋ねたが
「………リセルさん達の時代ではわたし達の世界と繋がっていませんから大丈夫です。オーブメントやクオーツを創るには七耀石が必要ですから………それに………わたしと同じ機械を愛するリセルさんなら、誰かを”傷つける”為ではなく、大切なものを”守る”為に使ってくれると信じています。」
ティータは穏やかな目をして答え
「ティータさん………………ありがとうございます。このオーブメントとクオーツ………大切に扱わさせてもらいますね。」
ティータの答えを聞いたリセルは呆けた後、優しげな微笑みを浮かべてティータから受け取ったクオーツをオーブメントに装着し、そしてオーブメントを装備した後、残ったクオーツを自分の荷物入れに仕舞った。
「えっと………使い方は以前説明した事があるから大丈夫ですよね?」
「はい、問題ありません。」
「あ、後で確認してもらえばわかりますけど”機功”のクオーツもありますから、EPがなくなっても”機功”のクオーツを付けていれば導力の回復装置がなくても大丈夫ですから、安心して下さい。」
「何から何まで………本当にありがとうございます。」
そしてティータの説明を聞いたリセルは微笑んでティータを見つめた後、ヴァイスと並んでケビン達を見回し
「それでは俺達はこれで失礼する。未来の貴方達に語り継がれるような人物に俺達は必ずなってみせる。………皆、元気でな。」
「今までありがとうございました!」
笑顔で別れを告げた後、光の階段を走って登り、門の中へと入って行った。
「……………………」
「エステル?どうしたんだい。」
ヴァイス達が門の中へと入った後、考え込んでいるエステルに気づいたヨシュアは尋ね
「あ、うん………ヴァイスさんの名前、最近どっかで聞いた事があるような気が………………………あ。」
尋ねられたエステルは答えた後、さらに考え込み、そして呆けた声を出し
「ね、ねえセリカ!あなた達の試練の最後の戦いでセリカ達のかつての仲間の人達が一緒に戦ったわよね?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「その中に”想念”の力で戦艦を呼び出した人がいたと思うんだけど。」
「……マウアだな。彼女がどうかしたか?」
エステルの疑問を聞いたセリカは考え込んだ後尋ね
「そのマウアさんって………何者??」
「メルキアの皇女だが………」
エステルのさらなる疑問に考え込みながら答えた。
「……………………」
「エステルさん、どうなさったのですか?」
そしてセリカの情報を聞き、口をパクパクさせているエステルにエクリアが尋ねた。
「う、うん………えっと………あたしの聞き間違いじゃなかったら、ヴァイスさん、将来王様になったのかも。」
「何?」
「ほう………?一体それはどういう事なんだい?」
エクリアの疑問に答えたエステルの答えを聞いたリウイとオリビエは驚いてエステルに視線を向け
「そのマウアさんって人が”想念”の力で戦艦を呼び出すとき、こう言ったのよね…………『我がメルキアが誇る偉大なる王――――”覇王ヴァイスハイト”』って。」
「なっ………!?」
「……………」
そしてエステルの答えを聞き、リウイは驚いて声を出し、オリビエは目を見開き、絶句していた。
「フフ………エステルさんの言う通り………ヴァイスさんは将来、多くの戦いを潜り抜けて祖国の王になったようです。………先程ヴァイスさん達が門の中へと入った後、ヴァイスさん達の歴史が情報として入ってきました。」
「うむ!余の眼は本物である証拠だな!奴ほどの”器”の持ち主が一将軍で終わる器ではないと思っていたぞ!」
セレストの情報を聞いたリフィアは胸を張って高々と言い
「あ、あのあの…………リセルさんはどうなったのですか?」
ティータは興味深そうな様子でセレストに尋ねた。
「リセルさんは皇帝となったヴァイスさんの宰相として………正妃としてヴァイスさんを一生支え続けた………と情報にあります。」
「正妃!?じゃあリセルさん、ヴァイスさんと結婚したんだ!」
「わあ………!」
そしてセレストの話を聞いたエステルとティータは嬉しそうな表情をし
「ほう……彼女が彼に対する態度や彼を見る目からして、いつかそうなるとは思っていたが………まさか正妃と宰相を同時に努めるとはね。フッ………ボク達も負けていられないな。」
「そうだな。2人を見習って俺達ももっと精進せねばな………」
オリビエとミュラーは静かな笑みを浮かべたが
「………しかし皇帝になったからには側室も当然いると思うのだが、彼は何人側室がいたんだろうね♪」
「……………」
「こ、この男は………」
オリビエはいつもの調子に戻り、ミュラーは顔に青筋を立て、エステルはジト目でオリビエを睨んだ。
「フフ………ヴァイスさんが側室として娶った方達はヴァイスさん達の活躍によってヴァイスさんの祖国――――メルキア帝国の支配下となった周辺諸国の姫君………ラナハイム王国王女フェルアノ、ザフハ部族国王女ネネカ、アンナローツェ王国女王マルギレッタ………以上の3名が彼の側室となり、他にも数人愛人がいたとの事です。………しかも彼女達は皆、ヴァイスさんを心から愛していたとの事です。」
そしてセレストは苦笑しながら答え
「さ、3人でも多いのにさらに愛人がいたの!?それじゃあリウイやセリカと全然変わらないじゃない!」
「……お前は一体、俺達をどんな目で見ているんだ………?」
「ハハ…………」
セレストの情報を聞いたエステルは驚きの表情で叫び、エステルの言葉を聞いた呆れた表情でエステルに視線を向け、セリカは苦笑し
「フフ………貴方にとっても他人事とは思えないんじゃないの?ウィル。」
「あはは………」
エリザスレインはからかうような表情でウィルに視線を向け、ウィルは冷や汗をかきながら苦笑し
「おお!さすがは我が親友!ボクも彼を見習っていつかハーレムを築かないとね♪」
「………その前にもっと見習う他の事があるだろうが、この阿呆………!」
オリビエはいつものような調子に乗った様子で呟き、それを聞いたオリビエは顔に青筋を立て、殺気を纏ってオリビエを睨んだ。
「フフ…………………最後までこんな暖かい雰囲気の中にいれるなんて、本当に幸せだったわ………できればもっとみんなの輪の中にいたかったけど………新たな未来の為にみんなとお別れしなくちゃね………」
その時優しい微笑みを浮かべたサティアが光の階段の前に来て、ケビン達を見回した…………
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