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Three Roses

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第三話 幸福と孤独その四

「忘れましょう」
「わかりました」
「その方がいいわね」
 セーラもマリアも頷いた。
「それでは」
「そうしましょうね」
「そうね、それとお勉強の時間が終わったから」
 マリーは二人にさらに言った。
「後はね」
「はい、後はですね」
「今日はこれからね」
「何をして過ごそうかしら」
 こう二人に言うのだった。
「遊びの時間だけれど」
「そうね、刺繍はどうかしら」
 マリアは微笑んでマリーに提案した。
「これからね」
「マリアが好きだから?」
「確かに私は好きだけれど」
 刺繍をだ、マリアはマリーの問いに否定せず返した。
「けれど」
「私達にもなのね」
「勧めたいから」
「マリア様の刺繍はとてもお奇麗ですね」
 セーラはマリアに顔を向けて言った。
「そういえば」
「ええ、刺繍は少しずつやっていくものでしょ」
「はい、一縫ずつ」
「手間がかかるけれど」
「それでもですね」
「その手間を楽しむものでもあって」
「完成した時にですね」
 セーラはマリアに対して言った。
「それがとても奇麗だから」
「そう、二人にもして欲しいの」
「私達にも奇麗な刺繍をですか」
「作って欲しいの。いいかしら」
「そうね」
 マリーはマリアの言葉を聞いてだ、まずは頷いてだった。
 そのうえでだ、こう彼女に返した。
「それじゃあ」
「一緒にしてくれるのね」
「そうしましょう、私にも刺繍を教えてね」
「私にもお願いします」
 セーラも言う。
「刺繍教えて下さい」
「わかったわ、それじゃあ」
「今からですね」
「三人で刺繍をして遊びましょう」
 マリアが教えて、というのだ。三人は実際に刺繍を楽しんだ、そしてこの時もまた三人で同じ時を過ごしたのだった。
 王はその三人を見て目を細めさせていた、だが。
 ふとだ、大公にこうしたことを言った。
「三人だけでなくな」
「マイラ様もですね」
「あの娘も入るべきだが」
「今日も学問と祈祷に没頭されています」
「そうか、今日もか」
「マリー様達と交わることなく」
「自分から線を引いているのか」
 王は眉を曇らせて言った。
「それでか」
「はい、遊びに誘われましても」
「あの娘は幼い頃からそうだった」
「そうでしたね」
「遊びをしない」
「そうした時があれば」
「学問、祈祷だ」
 この二つに没頭しているというのだ。
「常に」
「そうだな、しかしだ」
「それはですね」
「学問と祈祷はいい」
 その二つをすること自体はというのだ。 
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