FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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潰せばいい
前書き
次の特装版の販売延期になっちゃったんですね・・・
今週のFAIRYTAIL扉への上に何か書いてあるなぁ、くらいにしか思ってなかったら、よく読んでみるとそう書かれてたから軽くショックです。
まぁ、ナツvs.メイビスは書きようがないから、気にしないといえば気にしませんが・・・
第三者side
キンッ
剣と悪魔の腕がぶつかり合い、金属音が周囲に響く。両手に剣を持ったサラシと袴姿の緋色の女性は、次々に手を繰り出すが仮面を被った女性の悪魔にすべてを弾かれてしまう。
「ハァッ!!」
「くっ!!」
敵の攻めるタイミングとリズムを読み取り、一瞬の隙をついて切り裂こうと腕を振るうキョウカ。エルザはそれを上空へと高くジャンプし回避する。
「ハァッ!!」
宙に浮いたエルザ。キョウカはそんな彼女にすぐさま攻撃を仕掛けるが、あっさりと剣で回避される。
(強い・・・!!)
攻めきることができずに奥歯を噛むエルザ。彼女は戦っている鉄柱の上に足をつけると、キョウカは敵に己の武器を構えて突進する。
キンッ
迫ってきた相手の手を剣で×を作り防ぐ。二人の力は拮抗しており、つば競った状態になっていた。
「もう一度聞く!!お前たちの目的はなんだ!?ゼレフの元に帰るとは、どういう意味だ!!」
「我らはゼレフに作られし者。創造主にまみえるため、ゼレフの意志を遂行し、ゼレフのために戦う」
エルザの問いに嬉々として答えるキョウカ。それを聞いたエルザは、大きな声を張り上げる。
「お前らの思い通りにはならん!!私の仲間が、フェイスを止めに向かっているはずだ!!」
「思い通りにならん?それは此方のセリフだ」
「何?」
現在エルザの予想通り、起動したフェイスのもとにウェンディとシャルルが向かっている。しかし、キョウカはそれに対し何も慌てた様子はなく、むしろ笑みを見せている。
(こいつ・・・すでに手を打っているのか?)
彼女の表情からそう推測する。頭を悩ませている相手を見て、キョウカは自身の腕に力を入れていく。
「余計なことを考えている余裕はないぞ」
「ぐっ!!」
意識がキョウカから別のところへと移ってしまったエルザ。それにより彼女の腕に押し込まれ、状況が一気に傾き始めていた。
一方こちらは、フェイスを止めに向かっているウェンディとシャルル。遠く離れたドクゼリ渓谷を目指す彼女たちだったが、ずっと全速力で飛んでいるシャルルにかなり疲労の色が見え始めていた。
「シャルル、頑張って!!」
「大丈夫!!まだまた飛べる!!」
ウェンディが声をかけると、シャルルは速度を落とさず先を急ぐ。その間にも、フェイス発動のリミットは刻々と迫ってきていた。
「なんだ?シルバーがどうしたって?」
そう言ったのは氷の造形魔導士グレイ。彼は目の前にいる骸骨のお面を被った悪魔、キースの言葉が気になっているようだった。
「わけわかんねぇこと言ってないで、かかってこい!!てめぇはここで足止めだ!!」
自分の問いに答えようとしないキースに殴りかかるグレイ。しかし、その攻撃は直撃したはずなのに、全く手応えを感じることができないでいた。
「ジュビアみてぇな野郎だな」
そう言いもう一度攻撃を試みるグレイ。しかし、その一打もやはり効果がないように感じる。
「どういうつもりだ!?まともに戦え!!」
「うぬを倒すには我よりふさわしい相手がいる」
「言葉で混乱させる作戦か。悪魔ってのは、口が達者らしい!!」
グレイは攻めてこないキースに苛立ちつつも何度も何度も攻撃を繰り返す。
「好きなように思うがよい」
(まるで手応えがねぇ)
どのような攻撃をしても、キースの体をすり抜けてしまい全くダメージを与えられない。水の体を持つジュビアと戦っている時のような、そんな感覚にグレイは襲われていた。
「うぬの力は侮り難い。しばしこの場に留まっておこう」
「足止めされてたのは俺の方か!!」
なぜ攻めてこないのかようやく理解できたグレイは、キースとは反対の方向に駆け出す。しかし、彼が向かった先に、後ろにいるはずのキースが現れる。
「チッ!!」
目の前に現れたドクロ。それが道を塞ごうと杖を振るうと、グレイは急停止をかけて飛び下がる。
「「・・・」」
両者にらみ合い動かなくなったグレイとキース。その中で、グレイは彼の呟いたシルバーという単語が頭の中に残っていたのだった。
シリルside
「波動砲・・・矢の章!!」
矢を引き遠く離れた標的へと打ち出すカミューニさん。それを見たノーランは地面に手をつけ盾を作り出しなんとか攻撃を防ぐ。
「炎なら・・・どうだ!!」
身を守った後すぐに反撃へと移る悪魔は、その盾を火の玉へと変化させてカミューニさんへと投げつける。
「波動波!!」
しかし、その攻撃もカミューニさんの衝撃波に分散される。
「「うわああああああ!!」」
おかげでこちらにまで火の粉が飛んできて、ラクサスさんを除いた俺とセシリーは大慌てだ。
「おい!!弾き方考えろ!!」
「うるせぇな、当たった方が悪ぃんだよ」
雨のように降り注いでいた火の粉を避けていなかったから、ラクサスさんはビビってないのかと思っていたら、実はただ動けなかっただけらしい。彼は周りを気にしないカミューニさんのスタイルに激怒している。
「そんな弾き方なんか気にしてる余裕はねぇんだよ。ちょっと・・・黙ってろ!!」
彼はそういうと敵に手のひらを向けて衝撃波を放つ。
「炎はダメ・・・なら・・・」
カミューニさんの波動に対し、ノーランは雷を投じる。魔力の塊と呪力の雷の力は均衡しており、ぶつかり合った際に大きな音を残し大爆発を起こす。
「ラァ!!」
「!!」
周囲に煙が立ち込め視界が遮られる。しかし、劣勢のノーランは敢えて果敢に突進を決行していた。
「がっ!!」
煙がブラインドの働きをしていたため、向かってきているノーランに気付くのが遅れてしまったカミューニさん。彼は敵の拳を顔面で受けてしまった。
「もう一丁!!」
「っんなろ!!」
畳み掛けようと至近距離で腕を振るう悪魔。しかし、カミューニさんにとっては読み通りだったのか、はたまた野生の勘なのか、ギリギリで回避していた。
「次こそ・・・」
「遅い!!」
「ぐっ!!」
一番自信がある攻撃らしく、何とかして当てようと躍起になっているノーランに、カミューニさんは冷静に蹴りを入れる。その蹴りが入ったところが脛だったのだが、かなり痛みを感じる部位に入ったこともあり、たまらず膝をつけている。
「ゼレフの元に還るんじゃなかったのかぁ?」
「うっ・・・」
前に何か話したことがあるらしく、それを話題に出しながら頭を下げている悪魔の首にチョップを食らわせる。それを受けたノーランは、地面に伏せ込んでしまう。
「おっ?もう終わりか?だらしねぇなぁ」
うつ伏せになり、表情が見えないノーラン。でも、あれだけカミューニさんの攻撃を食らえば相当ダメージは蓄積しているはず・・・立ち上がることも困難に違いない。
(まさかここまでの力があったとは・・・予想外だ・・・)
ノーランは悔しいのか、片方の拳を握りしめて、フルフルと震わせている。
(魔障粒子を使うか?いや、ここで使ったらシリルもダメになるかもしれない・・・そうなるとあの実験が続行できなくなるなぁ・・・)
少し顔を上げて対峙しているカミューニさんではなく、俺の方を睨んでいるノーラン。彼のその目付きに、一瞬恐怖を感じ、体を小さくビクつかせてしまった。
(天空の巫女はフェイスを止めに行った・・・あれの実力じゃエゼルには到底敵わない。となるとこいつしか使える奴がいなくなる・・・それを手放すことだけは避けたいな・・・)
上げた顔をまた地面に伏せると、必死に思考を回らせているように見えるノーラン。それが何を考えてのことなのか、俺たちにはさっぱりわからなかった。
「そうだ・・・まだ策はある!!」
何か策が思い付いたのか、そう言ってゆっくりと立ち上がるノーラン。その目は先程まで同様、戦う意志を感じさせるものだった。
「降参する気はなし、か」
このまま戦意喪失してくれれば、この戦いに終止符を打てたと考えていたカミューニさんは、残念そうな声を発する。彼としては、かつて名前だけとはいえ、同じように扱われた仲間を倒さねばならないと言うのは、気が引けるところなのかもしれない。
「来るといい、カミューニ」
そう言って人差し指でかかってこいと挑発するノーラン。でも、あいつはそんな余裕綽々な態度でいていいのか?
「・・・?」
突然強気になったノーラン。それにはカミューニさんも、俺と一緒に見ているラクサスさんもセシリーも違和感を拭えない。明らかに何か狙いがあるのはわかるけど、それが何なのかは想像できない。
「ま、いいじゃナァイ!!どんな策でも・・・打ち破ってやるからよぉ!!」
そう言うとカミューニさんは自分に半身を向けて戦闘態勢の敵に全速力で突進する。
「波動砲・・・」
カミューニさんはノーランの手前に何かしらの罠があると判断したのか、それよりも前で高々とジャンプする。
「斬の章!!」
ノーランの頭上に来たカミューニさんは、自らの魔力で作り出した剣を振り上げ、彼の真上から一気に降り下ろす。
「無駄だ」
しかし、空中にいることは自由な動きが制限されることにも繋がる。向かってきていることはわかっているのだから、相手にも対応されやすい。
ノーランは剣を構えるカミューニさんに手のひらを向け、自分を囲うほどの巨大なシールドを作り上げる。
「・・・ざけんなよ」
それを見た瞬間、カミューニさんの目に怒りの色が見えたのを、俺たちは見逃さなかった。
ガンッ
「「「「!!?」」」」
見たこともないような速度で降り下ろされた波動の剣。それは、敵の防御魔法を一瞬で粉砕したのだった。
「そんな薄いシールドで俺の攻撃を防げると思ってんのかぁ!!」
「ぐあっ!!」
シールドを破壊した剣はそのまま敵に直撃する。さっきまで使っていた一方向を守るだけの盾だったら、今の攻撃も防げたのかもしれない。だけど、全方向を守ろうとしていたがために、薄い膜しか張れず、意味のないものになってしまったようだ。
「くそっ・・・」
倒れ込みそうになるのを懸命に堪え、すぐさま距離を取ろうと後方に飛ぶノーラン。しかし、
「見え見えだ、その動き」
「!!」
彼が下がったところには、すでにカミューニさんが回ってきていたのだ。
「っんの!!」
背後に回られていたので、下がる勢いと体を反転させる力を利用して蹴りを脇腹に打ち込もうとする。だけど、その動きも読まれており、あっさりとキャッチされてしまった。
「何か思い付いたのかとも思ったが、ただの悪あがきならやめてくんねぇかな?」
「・・・」
足をホールドしているカミューニさんの言葉に、ノーランは奥歯をグッと噛み締める。でも、彼はまだ策があると言っていたのに、さっきまでと全然変わらない・・・いや、むしろさらに押されているように見える。
「何かやってるように見えたか?」
「いえ・・・そんな感じは微塵も」
ラクサスさんも自信満々だった彼の姿を見て、カミューニさんを倒す方法があると考えていたのに、それを裏切られたからか頭に?マークを浮かべている。セシリーも首をかしげて圧倒しているカミューニさんの方を見ているし、何が何なのかさっぱりだ。
「まだやるのか?これ以上は意味ないと思うぜ?」
目付きを鋭くさせ、掴んでいた足を投げるように離したカミューニさん。それに対し、ノーランは滴る汗を拭おうと口元を擦る。
「??」
その時、彼の口角がわずかに上がったように見えた。それはまるで、罠にかかった獲物を見ているかのような、そんな笑いだった。
「カミューニさん!!」
「あ?」
手で隠れていたから、カミューニさんにはノーランが笑っていたのは見えていなかったはず。そのことを伝えようと彼を呼ぶと、ノーランはすぐさま攻撃をする。
「砕け散れ!!」
小さな小石を大きな岩へと変換させる。転がりながら向かってくるそれを、カミューニさんは手のひらサイズの魔力のボールであっさりと粉々にする。
「シリル!!後で話は聞くからちょっと待ってろ!!」
「あ・・・」
こちらに向けかけていた視線を敵へと戻し、駆けていくカミューニさん。だけど、嫌な予感がする。よくわからないけど、すごく悪いことが起きそうな気が・・・
「波動拳!!」
「ぐおっ!!」
魔力を宿した拳を、腕をクロスさせてなんとか防ぐノーラン。こちらが圧倒的に優勢・・・なのに、あの笑みはなんだったんだ?
(そう。これでいい。予想通りだよ、カミューニさん)
やられっぱなしのノーランは、カミューニさんの連打攻撃にただただやられている。それはまるで、練習用のサンドバッグのような、そんな感じに俺の目には見えた。
(この人はイラつきやすい。少しナメた戦い方をすれば、それで熱くなってくれる)
どんどんノーランを押し込んでいくカミューニさん。彼はついに、壁際まで敵を追い詰めていた。
(チャンスは一度きり。これを逃せば勝機は完全に失せる。だが、十中八九成功する。この状況なら・・・)
口元に血を流しているノーランは、ついに力尽き、膝から崩れ落ちていく。それを見たカミューニさんは、もうこれ以上の攻撃は不必要と拳を下ろした。
(今だ!!)
だがその刹那、閉じかけていたノーランの目がパッと開いた。
「!!」
それを見たカミューニさんはすぐに構えを整え直す。しかし、それよりも早く・・・
「これでも食らいな!!」
ノーランの右腕が振るわれた。
(真っ正面からぶつかり合えば、こちらに勝ちの目なんかない。だったら、こちらが有利になるように、潰してしまえばいい。奴等の戦いに関する、もっとも要の部位を!!)
1メートルもないほどの至近距離で放たれたノーランの呪法。それは、一度解いてしまった戦闘態勢に入ろうとするカミューニさんの・・・
グサッ
両目に直撃した。
「くっ!!」
「「「カミューニさん(くん、カミュ)!!」」」
目から血を流しているカミューニさん。彼は激痛に襲われたそれを押さえ、顔を歪ませる。
「形勢逆転だ、人間ども」
視界を失いその場にしゃがみこんだカミューニさん。彼を見下ろすようにノーランはその場に立ち上がる。
卑劣な策に打って出た悪魔。果たして妖精たちは勝利を掴むことができるのか!?
後書き
いかがだったでしょうか。
ついにここまで来た。この場面はかなり前からかなり構想を練ってたのでうまくできた・・・気がする。
次は久々にウェンディの登場です。
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