英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第79話
ルーファス達と戦ったフロアを超えるとルーファスの言葉通りある人物がリィン達を待ち構え、リィン達の存在に気付くと声を掛けた。
~ジュライロッジ~
「クク……ようやく来たか。」
ある人物――――クロウはリィン達を見つめて不敵な笑みを浮かべていた。
「あ…………」
「クロウ……ッ!」
クロウの姿を確認したエリオットは目を丸くし、リィンは声を上げて仲間達と共にクロウに近づいた。
「久しぶりだな。最後に会ったのは…………ユミルの時か。どいつもこいつも少し見ない内に一丁前の顔になりやがって。メンフィルの助っ人の力を借りて更にメンフィルにお膳立てされた仮初めの修羅場を潜り抜けた割には随分と成長したようだな?」
「ああ……おかげさまでな。だが………祖国を……エレボニアを存続させる為にも僕達はなりふり構っていられなかったのさ。」
「確かにシグルーン中将を始めとしたメンフィルや多くの人々の力添えによるものだが、それでも我らは共にあり、強くなる事でこの場に辿り着けた。これもまた巡り会わせだろう。」
「わたしも一応、自分のケリは付けられたし。少しは成長、できたかな。」
クロウの言葉に対し、マキアスやラウラ、フィーはそれぞれ静かな表情で答えた。
「やれやれ……………それにしても、まさかエリス嬢ちゃんまでこの場に来るとは思わなかったぜ。せっかくメンフィルに助けてもらったのに、何でわざわざ自分から修羅場に足を踏み入れたんだよ?」
「私がこの場にいるのは姫様の友人として力になる為に……そして兄様の妹として、兄様の背中を護る為にも、今こうして兄様達と共にいるのです。」
クロウに視線を向けられたエリスは決意の表情で答えた。
「ったく、またリィンかよ……エリゼ嬢ちゃんのように幾ら兄の為とは言え、こんな所までついて来る妹なんざ、世界中どこを探してもいねぇっつーの。」
「多分、エリゼとエリスは世界一のブラコンだろうね~。」
「フフ、お二人のその言葉は私達にとっては褒め言葉ですね。」
「エ、エリゼお姉様……というかミリアムさんもそこでどうしてクロウさんに同意するんですか……」
疲れた表情でため息を吐いたクロウの言葉に続くように呟いたミリアムの言葉を聞いて微笑んで同意するエリゼに冷や汗をかいたセレーネは疲れた表情でミリアムに指摘した。
「プリネ達も以前会った時と比べると更に成長したみてぇだな。エヴリーヌはともかく、まさかお前らまで結社の”執行者”もそうだが、領邦軍の連中を殺しまくるとは思わなかったぜ。」
「私もお父様達と同じメンフィル皇族。”敵を殺す覚悟”ができていない程、私は甘くありません。」
「あたしもです。プリネさん―――マスターを守る為にあたしは既に多くの敵を殺しています。それがマスターの”パートナードラゴン”であるあたしの役目ですから。」
「くふっ♪というかエヴリーヌ達の世界では”敵を殺す”のが常識だよ♪こっちの世界の考えが甘すぎるだけだよ♪」
クロウの評価にプリネとツーヤがそれぞれ静かな表情で答えた後、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべて答えてその場にいる多くの者達に冷や汗をかかせ
「そんな殺伐とした世界の常識を俺達の世界に押し付けるなっつーの。」
クロウは呆れた表情で指摘した。
「……貴様は俺達を成長したと言っているが、そう言う貴様は成長どころか、随分と落ちぶれたものだな。まさか薬物にまで手を出す程落ちぶれるとは思わなかったぞ。」
するとその時ユーシスは真剣な表情でクロウを見つめた。
「俺だって好きでここまで落ちぶれた訳じゃねえっつーの。メンフィルという異世界の”部外者”共が俺達の事情に介入しなかったら、俺はこんな所にいなかった。」
ユーシスの言葉に疲れた表情で答えたクロウはシグルーン達を睨み
「よくもそのような戯言をぬけぬけと言えますわよね。」
「やれやれ……お前もルーファス・アルバレア同様責任転嫁か。」
「ユミルはメンフィル帝国領。自国の領土を襲撃され、黙っていない等常識で考えれば絶対にありえないよ。」
「アルバレア公爵が雇った”北の猟兵”達によるユミル襲撃があった時点でいずれメンフィル帝国がエレボニアの内戦に介入する事は予測できたはずです。それを怠った貴方がそんな事を言える権利はありませんよ。」
「”蒼の騎神”を駆る当時の貴方はカイエン公―――貴族連合にとって重要な人物でした。貴方が貴族連合に幽閉されているエリス・シュバルツァーをメンフィルに返還するようにカイエン公達に取りなすか、貴方自身の手で彼女をメンフィルに返還すればメンフィルが介入して来なかった可能性もありました。メンフィルの介入は貴方にも責任があります。」
「うふふ、要するにバンダナのお兄さんがそこまで落ちぶれたのも、お兄さん自身の自業自得って事よ♪」
クロウの言葉を聞いたシグルーンとレーヴェは呆れ、パントとルイーズ、そしてリアンヌはそれぞれ真剣な表情で、レンは小悪魔な笑みを浮かべて指摘した。
「言ってくれるぜ………で?何でお前までリィン達と一緒にいるんだよ、ヴィータ。」
「……私はリィン君やエリス――――シュバルツァー家に対して自分の罪を償う為に……そして貴方を導いた”魔女”として貴方を”D∴G教団”と手を切らせる為に彼らと共にいるのよ。」
クロウに視線を向けられたクロチルダは静かな表情で答え
「おいおい……少し見ない内に随分と殊勝な性格になったな。お前に一体何があってリィン達の味方をするようになったのかは気にはなるが……今は外の状況同様そんな事は”どうでもいい。”」
クロチルダの答えを聞いて目を丸くしていたクロウはリィン達にとって信じられない言葉を口にした。
「クロウ……………」
「ど、”どうでもいい”って……!」
「あんた……今、外がどんな状況なのかわかっていて言っているの!?」
クロウの答えを聞いたクロチルダは辛そうな表情をし、エリオットは信じられない表情をし、サラ教官は厳しい表情で問いかけた。
「ああ、ヨアヒムの野郎が仕向けた貴族連合の残党や悪魔共がリベールとエレボニアの国境付近とジュライで暴れているんだろう?」
「わかっているのなら、どうしてそんな事が言えるのよ!?」
「クロウの故郷――――ジュライ特区も襲撃されているんだぞ……?なのにどうして、未だヨアヒムに力を貸しているんだ?」
クロウの言葉を聞いたアリサは厳しい表情で、ガイウスは真剣な表情で問いかけ
「……………………」
二人の言葉に対し、クロウは何も語らず黙り込んでいた。
「クロウ!お前がカイエン公――――貴族連合によって誘拐されたエーデル先輩達の為に仕方なくヨアヒムに力を貸していた事はわかっている!」
「貴族連合に誘拐された士官学院の人達や貴族の方々も全員見つけました!クロウさんがヨアヒム・ギュンターに力を貸す理由はなくなりました……!」
「クロウ、貴方はまだ”戻って来られる領域”にいるわ!今ならまだ間に合うから、ヨアヒム―――”D∴G教団”と手を切りなさい!貴方を縛る鎖もなくなった以上、ヨアヒムを裏切っても大丈夫よ……!」
リィンやエマ、クロチルダはそれぞれクロウを説得する為にクロウを見つめて呼びかけたが
「ハッ……お前ら、勘違いをしていないか?」
クロウは鼻を鳴らし、意味ありげな笑みを浮かべてリィン達を見つめた。
「へ…………」
「か、勘違い……ですか?」
「まさかヨアヒム・ギュンターに力を貸している理由が他にもあるのですか?」
クロウの答えを聞いたマキアスは呆け、セレーネは戸惑い、シャロンは真剣な表情で尋ねた。
「ああ…………一つはエリゼ嬢ちゃんと”殲滅天使”から受けた”借り”を返す為だ。」
「ええっ!?」
「二人から受けた”借り”とは一体何の事を言っているんだ?」
「ミシェラムの時の事をまだ根に持っていたのですか…………」
「うふふ、レンは心当たりが一杯ありすぎて、一体どの時の事を言っているのかわからないわ♪」
「そうだよね~。夏至祭とかの件も含めてクロウは”殲滅天使”に何度も煮え湯を呑まされているよね~。」
「レ、レンさん……」
「こんな時くらいは真面目に答えなさいよ……」
「後君もいい加減空気を読んで発言する事を覚えてくれ……」
クロウの答えを聞いたエリオットは驚き、ガイウスはエリゼとレンへと視線を向け、心当たりがあるエリゼは呆れた表情をし、小悪魔な笑みを浮かべているレンの言葉を聞いたツーヤは脱力し、レンの言葉に同意したミリアムの答えを聞いたマキアスはプリネと共に呆れた表情で指摘した。
「……”一つは”と言ったな。他にもまだ理由があるのか?」
「ハッ、当然だろ。――――リィン。それが何なのか、お前ならわかるだろう?」
レーヴェの問いかけに鼻を鳴らして答えたクロウはリィンに視線を向け
「!まさか……”パンダグリュエル”での”約束”――――”騎神”同士による決着を守る為にヨアヒムに手を貸したのか!?」
クロウが言いたい事をすぐに理解したリィンは血相を変えて声を上げ
「クク…………――――わかっているじゃねぇか。」
リィンの答えを聞いたクロウは不敵な笑みを浮かべて全身に膨大な瘴気を纏い始めた!
「!あの”風”は……!」
「”魔人化”をするつもりか……!」
「やめなさい、クロウ―――――ッ!」
クロウに纏う瘴気を見たガイウスは目を見開き、パントは厳しい表情をし、クロチルダは声を上げた。
「オオォォォォオオオ――――――――ッ!!」
そしてクロウは”魔人化”し、オルディーネの姿へと変化した!
「なああああああああっ!?」
「馬鹿な!?あの姿は!」
「”蒼の騎神”―――オルディーネ……!」
「そ、そんな……まさか”魔人化”でここまで”騎神”を再現するなんて……!?」
「感じる”力”もオルディーネと同等―――いえ、それ以上よ……!」
「少なくても”魔人化”に適正があったヴァルド・ヴァレスよりは確実に上ですね。」
「下手をすれば”魔神”にも迫るかもしれませんね……」
「ええ……”魔神”同様”神”の名を冠する存在だけはあるという事ですわね。」
オルディーネへと変身したクロウの姿を見たマキアスとユーシス、フィーは驚き、エマとセリーヌは信じられない表情で声をあげ、リアンヌは真剣な表情で推測し、ルイーズの言葉にシグルーンは厳しい表情で頷いた。するとその時オルディーネは短い詠唱をして、自分の左右に今まで戦った悪魔とは比べものにならない大型の悪魔を召喚した!
「あ、悪魔の召喚まで……!」
「それも今まで戦った悪魔とは”格”が違うわよ!?」
「ええ。恐らく七耀教会の”聖典”に記されている悪魔の中でも相当高位の悪魔ですわ……!」
悪魔達を見たエリスは信じられない表情をし、サラ教官とシャロンは厳しい表情をし
「あの悪魔達は……!」
「あれ?なんかどっかで見た事があるんだけど。」
「一体は”影の国”のグランセル城地下で戦った”暴虐”のロストフルムです!」
「もう一体はロストフルムと共に煉獄を守る七十七の悪魔―――”深淵”のアスタルテね。うふふ、まさかバンダナのお兄さんがその2体を召喚できる程の術者だなんて、正直驚いたわ。」
悪魔達に見覚えがあるプリネは目を見開き、エヴリーヌは首を傾げ、ツーヤは真剣な表情で声をあげ、レンは静かな表情で呟いた後不敵な笑みを浮かべた。
「”暴虐のロストフルム”に”深淵のアスタルテ”ですって!?」
「そ、そんな……どちらも七十七の悪魔達の中でも最高位の悪魔達ですよ……!?あれ程の高位の悪魔達を召喚すれば、術者であるクロウさんも無事ではすみませんよ……!?」
「幾ら”グノーシス”で霊力を飛躍的に強化しているとは言っても、私達のような魔術を修める者として訓練した術者でもないクロウがあのような高位の存在を顕現をすれば必ず反動があるわ……!二柱の顕現は間違いなく命を削る行為よ!」
悪魔達の正体を知ったセリーヌとエマは血相を変え、クロチルダは厳しい表情で声を上げた。
「何ですって!?」
「い、命を削る行為って……!」
「クロウさん!すぐにその悪魔達を送還してください!魔術も修めていないクロウさんがそのような高位の存在を顕現し続ければ、顕現が長ければ長い程クロウさんの寿命が削り取られ続けますよ!?」
エマとクロチルダの話を聞いたサラ教官は声をあげ、アリサは信じられない表情をし、プリネは真剣な表情でクロウに警告をした。
「ハッ、上等だ!後の事なんてどうでもいい!俺達の事情も知らずに首を突っ込んで状況を滅茶苦茶にした”殲滅天使”達―――”部外者”共から何度も受けた”借り”を返せず、挙句の果てには男同士が交わした大切な”約束”すら守れねぇのなら、死んだ方がマシだ!」
「クロウ…………」
「命を削ってまで、クロウはリィンとの約束を守って、エリゼ達――――”部外者”に一矢を報いたいのか……」
「で、ですがエリゼお姉様達が”部外者”というのは間違っていると思うのですが……」
「うん……貴族連合がメンフィル領であるユミルやメンフィルの貴族のリィン達を巻き込んだ時点でメンフィルは”部外者”じゃないよね。」、
プリネの警告を無視したクロウの話を聞いたエリオットは辛そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って呟き、セレーネとミリアムは複雑そうな表情でクロウを見つめ
「メンフィルの介入によって貴族連合が大損害を受けた事で”蒼の深淵”に貴族連合と手を切らされて不本意でありながらも内戦から手を引いた事……更にクロスベルでは大統領側に不本意な戦いを強いられた挙句”蒼の騎神”を失い、自身は虜囚の身になり、シュバルツァーとの”約束”を守る事ができなくなってしまった事……―――それらの”理不尽な出来事”によって奴は追い詰められ、あのような状況になったのであろうな……」
「哀れな……………………」
「…………クロウ…………」
レーヴェの推測を聞いたリアンヌは憐みの目でクロウを見つめ、クロチルダは辛そうな表情で肩を落とした。
「………………エリゼ、レン姫。」
一方目を伏せて黙り込んでいたリィンはエリゼとレンに視線を向け
「―――はい。」
「リィンお兄さんの言いたい事はわかっているわ。ヴァリマールとヴァイスリッター、パテル=マテルで魔人化した”C”と二柱の悪魔達とそれぞれとの一騎打ちをして欲しいのでしょう?」
エリゼは静かな表情でリィンを見つめ、レンは真剣な表情でリィンに問いかけた。
「はい。……本来ならクロウの命に関わる事なのですから、みんなで協力してクロウが召喚した悪魔達を早急に撃破し、クロウを無力化するべきでしょう。―――ですがそれをしてしまえば、俺達は”本当の意味”でクロウとの決着をつけられないのです。クロウに対してそんな事をする義理は二人にはない事は理解していますが、お願いします……!」
「リィン……」
「兄様………」
エリゼとレンを見つめて頭を下げるリィンをエリスとアリサは辛そうな表情で見つめた。
「―――頭を上げて下さい、兄様。クロウさんがあんな事になってしまった責任の一端は私にもあります。それに今の私は兄様達――――”Ⅶ組”の”協力者”です。兄様の妹として……”Ⅶ組”の”協力者”として……そしてクロウさんを救う為にも全身全霊で兄様達の力になります……!来て―――”白の神機”ヴァイスリッター!!」
「正直な所レンはみんなで協力してさっさと終わらせるべきだと思うけど、今のレンはリィンお兄さん達の”協力者”。”協力者”としての義務を果たす為にリィンお兄さんの希望に沿った戦いをしてあげるわ。来て――――パテル=マテル!!」
そしてリィンの嘆願にそれぞれ応えたエリゼとレンは心強き相棒の名を呼び
「来い―――”灰の騎神”ヴァリマール!!」
リィンも続くように心強き相棒の名を呼んだ!」
「「応―――――ッ!!」」
「――――――!」
三人の呼びかけに応えたヴァリマール達はそれぞれ起動し始め、飛行してリィン達の元へと向かい始めた!
「!止まって下さい。何かが上から近づいてきます……!」
一方その頃エイドス達と共に”ジュライロッジ”に突入し、リィン達の後を追っていたティオは何かの音に気付いて仲間達に忠告し
「空からの強襲……!?」
ティオの忠告を聞いたノエルは上空を警戒した。すると何かの駆動音が聞こえて来た。
「この音は一体……?」
「機械の駆動音……?」
近づいて来る音に気付いたアドルとエリィは首を傾げた。するとヴァリマール、ヴァイスリッター、パテル=マテルの三体がそれぞれ飛行している状態でエイドス達の目の前を通り過ぎて奥底へと向かった。
「なああああああああっ!?」
「な、何今の!?」
「大型の人形兵器達が奥底へと向かったようですが……」
「三体いたようだけど……その中にはレンちゃんのパテル=マテルの姿もあったよね……?」
「ああ……しかもエリゼ嬢ちゃんの”神機”もいたぞ。残りの一体は見た事がねぇ人形だったが……」
「……残りの一体はリィンが操る”灰の騎神ヴァリマール”ですね。」
通り過ぎたヴァリマール達を見たロイドとエステルは驚き、リースとミント、ランディは考え込み、ヨシュアは真剣な表情で呟いた。
「しかし何でまた、あんなとんでもない存在が三体も同時に”主”達に呼ばれたんや?」
「状況を考えるとあの三体を呼ぶほどの事態に陥っている事が考えられるわね……」
「あれ程の存在を呼ぶとなると……もしかしたら既にあの外道司祭の亡霊との決戦を始めているかもしれませんわね。」
ケビンとルフィナがそれぞれ考え込んでいる中フェミリンスは自身の推測を口にし
「!それは………」
「―――急ぎましょう!このままですと、ヨアヒム・ギュンターとの決戦に遅刻して最悪私達が到着した時にヨアヒムがリィンさん達に滅せられていて、せっかくここまで来たのに私達の出番がなくなってしまいます!」
フェミリンスの推測を聞いたロイドが真剣な表情をしたが、エイドスの発言によって仲間達と共に冷や汗をかいて脱力した。
「け、決戦に遅刻するって……そんな言葉、聞いた事もないですよ……」
「というか私達より先に進んでいる人達の心配をせずに、自分達の出番がなくなる事を心配するなんてとても女神とは思えない言動なの。」
「それに私達が駆け付けた際に決着がついていた方がその分早く問題が解決するという事だから、普通に考えたらそっちの方がいいわよね……?」
「お願いしますから、こんな時くらいは脱力するような発言をしないで下さいよ……」
「ううっ、本気でミントさんの力を借りてエイドスの夫や仲間の方達に会ってエイドスが今まで何をやらかして周りの人達にどれだけの迷惑をかけて来たのか聞きたくなってきたわ……」
エイドスの意見に脱力した少年―――ナユタ・ハーシェルとナユタの相棒の妖精―――ノイ・ステラディアはそれぞれ呆れた表情をし、ナユタの恋人である雪のような真っ白な髪を持つ少女―――クレハ・レム・オルディーンは苦笑し、エレナとフィーナはそれぞれ疲れた表情で頭を抱えた。
「アハハ……心配しなくても、ヴァリマール達が呼ばれたのはヨアヒムとの決戦じゃなくてリィン達にとっての決戦の為に呼ばれたはずだよ。」
「ヨアヒムとの決戦ではなく、”リィンさん達にとっての決戦”……ですか?」
「キーアちゃん?もしかして何か知っているのかしら?」
苦笑しながら呟いたキーアの言葉が気になったティオは不思議そうな表情をし、エリィはキーアに尋ねた。
「うん。でも未来の事はできるだけ教えちゃダメだってミントからも言われているから、これ以上は言えないけど……」
(もう既に教える必要のない未来まで教えまくっているよ、キーアちゃん……)
「フフ、既に僕達の未来をネタバレしまくっているんだから、今更だと思うんだけどねぇ?」
「ワ、ワジ君……」
「おいコラ、ワジ。そこは突っ込んだらあかんやろうが………」
キーアの答えを聞いたミントは疲れた表情で心の中で指摘し、口元に笑みを浮かべるワジの言葉を聞いたノエルは脱力し、ケビンは疲れた表情で指摘した。
「取りあえずその件は一端置いておくとしまして……エステルさん、ミントさん、出番ですよ!」
「ほえ?」
「へ?出番ってどういう事??」
エイドスに突如名指しされたミントとエステルは首を傾げ
「このままこの遺跡の探索をしても面倒な上時間がかかって、ヨアヒムとの決戦に間に合わない恐れが出て来るかもしれませんからこの大穴を使ってショートカット―――つまり”裏技”を使います♪ですからミントさんは竜化を、エステルさんは飛行能力があるかつ大勢の人達を乗せられるカファルーさんを呼んでください♪」
エイドスは笑顔でとんでもない事を答え、その場にいる全員を再び脱力させた。
「探索が面倒だからショートカットをするって……」
「しかも”裏技”って……」
「さすがエステルさん達の先祖だけあって、わたし達では決して考える事ができない遥かに斜め上な考えかつ超マイペースですね。」
「え、えっと……ティオちゃん。もしかしてその”達”の中には僕達も入っているのかな?」
「間違いなく入っているの。」
「フフ、私達はエイドスの”先祖”だものね。」
「というか確か”リベールの異変”で現れたという古代竜はツァイトと同じエイドス様の”眷属”との事なのですから、その古代竜を呼ぶ事は考えなかったのですか?」
エイドスの言葉を聞いたアドルとノエルが表情を引き攣らせている中ジト目になったティオの言葉を聞いて冷や汗をかいているナユタの疑問にノイは疲れた表情で答え、クレハは苦笑し、エリィは冷や汗をかきながら尋ねた。
「私も一瞬それを考えたのですけどレグナートの巨体ではこの遺跡に入ってこれませんので。―――――フウ、レグナート達も少しはエステルさん達の使い魔さん達を見習ってほしいですよ。みんな、図体ばかり大きくて肝心な時に役に立たないのですから。しかもレグナートに関しては操られて多くの人々に迷惑をかけたのですから、レグナートの”飼い主”として私もリベールの人々に謝らないといけないじゃないですか……取りあえず今回の件が終わったらレグナートにはお説教とお仕置きをしなければいけませんね。」
エリィの問いかけに対して答えた後ため息を吐いて呟いたエイドスの呟きを聞いたロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「アハハハハッ!僕達にとっては伝説の存在である”眷属”をそんなぞんないな扱いをする上”古代竜”をペット扱いをするなんて、さすがは”空の女神”だよ!」
「ヘミスフィア卿……そこは感心する所ではないですよ……」
「ハア……ヘミスフィア卿に一体どういう教育をしたのか、アインと後でたっぷりと話し合う必要があるわね……」
「前々から何度も言おうと思っていましたけど、せめて少しでも遠回しな言い方が貴女にはできないのですか!?」
「つーか、ツァイトはキー坊を守る為にクロスベルに残ってちゃんと役に立っているんだから、ツァイトまで攻めるのは酷だろ……」
「アハハ……しかもさり気なくレグナートさんだけとばっちりを受ける事になっているよね。」
腹を抱えて笑っているワジにリースは疲れた表情で指摘し、ルフィナは疲れた表情で頭を抱え込み、フェミリンスとランディは疲れた表情でエイドスに指摘し、ミントは苦笑していた。
「ま、まあまあ……”眷属”たちの件を一端置いておいて、エイドスさんの案も一理はありますし……―――エステル、ミント。」
「ハア、わかっているわよ。―――カファルー!!」
「ハァァァァァ……グオオオオ―――――ッ!!」
ヨシュアに視線を向けられたエステルはため息を吐いた後カファルーを召喚し、ミントは竜化した。その後エステル達はカファルーと竜化したミントに乗り、ヴァリマール達の後を追うように大穴を降下し始めた。
エイドス達がカファルーで奥底へと向かい始めた頃、ヴァリマール達はリィン達の元へと到着し、リィンとエリゼはそれぞれヴァリマールとヴァイスリッターに乗り込み、パテル=マテルはレンの指示によってヴァリマール達と共にクロウ達と対峙した。
「勝っても負けてもこれで”本当の意味”での決着だ……―――来いや、リィン――――ッ!!」
「ああ!行くぞ、クロウ―――――ッ!!」
「ヴァイスリッター、私達も行くわよ――――ッ!」
「応――――ッ!!」
「パテル=マテル!ロストフルムはレン達が相手するわよ!」
「――――――!」
そしてヴァリマールはクロウと、ヴァイスリッターはアスタルテと、パテル=マテルはロストフルムとの一騎打ちを開始した!
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