英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第76話
~ジュライロッジ~
「ええっ!?」
「それじゃあオズボーン宰相はゼムリア大陸どころか異世界も支配して身分制度を廃止するつもりだったのですか!?」
ユーシスの話を聞いたアリサとセレーネはそれぞれ驚き
「……ありえません。そのような事、絶対に不可能です。」
「……ゼムリア大陸はともかく神々が現存し、”魔神”や”神格者”等世界中に多くの超越者や人間と比べると遥かに様々な能力が高い多くの異種族達がいるディル・リフィーナ全土を支配する等、妄言の類としか思えないな。」
「まさに”夢物語”ね。」
「そのような無謀な事、”結社”でも実行しないぞ。」
「もはや呆れを通り越して感心に値しますね。」
エリゼとパント、セリーヌ、レーヴェとリアンヌはそれぞれ呆れた表情で呟いた。
「フッ、オズボーン宰相閣下のお考えこそが腐敗した貴族達によって衰えていくエレボニアを繁栄に導き、年々落ち気味になっていたエレボニア皇家の権威を取り戻せる。エレボニア皇家に仕えし帝国貴族として……そして祖国を愛する民の一人として、私はオズボーン宰相閣下に忠誠を誓った。」
「!!………兄上……」
「ちょ、ちょっと待ってください!それだとおかしくありませんか!?今の話を信じるのならばもしオズボーン宰相閣下の目的が達成できれば、ルーファスさんの実家―――”アルバレア公爵家”も取り潰されてルーファスさんも”平民”になるんですよ!?なのにどうしてオズボーン宰相閣下に……」
ルーファスの答えを聞いたユーシスは目を見開いた後辛そうな表情で肩を落とし、マキアスは信じられない表情で尋ねた。
「私は真に祖国を想う帝国貴族として、貴族こそがエレボニア皇家にとって邪魔な存在でエレボニアを衰退させる害悪で、排除すべきだと思っている。現に”四大名門”を始めとした多くの帝国貴族達は不敬にもユーゲント皇帝陛下を始めとしたエレボニア皇家に弓を引き、内戦を引き起こした。」
「その内戦を引き起こした貴族連合の”総参謀”を務めていたくせに、よくそんな事が言えるよね~。」
「あれは内戦後の正規軍、領邦軍の被害を最小限に抑える為にカイエン公の信頼を得て、”総参謀”を務めていたのだ。―――”激動の時代”に備えてね。最もメンフィルの予想外の介入の速さによって、もはや不可能となってしまったがね。まさか父の独断とはいえ辺境を襲撃しただけであんな短期間で戦争に踏み切るとは、計算外だった。プリネ姫達の留学やメンフィルの皇族達の一部がオリヴァルト殿下と親しい件を考えると、もう少し猶予はあると思ったのだがね。」
「………………」
「ひ、酷い……!」
「それがルーファス卿の”本音”なのですね……!」
「やはり貴方はメンフィルに裁かれて当然の存在でしたね……」
ミリアムの疑問に対して答えたルーファスの話を聞いたエリスは複雑そうな表情をし、アリサやセレーネ、エリゼは怒りの表情でルーファスを見つめ
「兄上………」
「だったらどうして誘拐したエリスをすぐに解放してメンフィルに返還しなかったのですか!?メンフィルがエレボニアとの戦争を決めるまでにエレボニアに対して最も求めていた事はエリスの返還です!すぐにエリスを解放して俺達シュバルツァー家の元に――――メンフィルに返還すれば、メンフィルもエレボニアとの戦争を考え直してくれたかもしれなかったのに、どうしてそれをしなかったのですか!?」
「リィン…………」
ユーシスは辛そうな表情をし、怒りの表情でルーファスに問いかけるリィンをガイウスは静かな表情で見つめていた。
「君達には申し訳ないと思ったが、エリス嬢を返還した所でメンフィルの怒りが収まるとはとても思えなくてね。彼女をこちらで”保護”している限り、メンフィルも早まった事はしないと思っていたのだよ。その証拠に彼女には陛下達同様最高級の待遇で過ごしてもらった。」
「家族と離れ離れにして、軟禁している時点で最高級の待遇じゃないよ……!」
「ふざけないで下さい!兄様達と離れ離れにされた日々は私にとって最悪の日々でした!」
ルーファスの話を聞いたエリオットは不安そうな表情で反論し、エリスは怒りの表情で反論し
「やれやれ……まさかここまで愚かだったとはな。」
「―――ルーファス・アルバレア。もし内戦終結までメンフィルがエレボニアとの戦争を踏み切らなかった際はユミル襲撃やエリス嬢誘拐など貴族連合が犯した数々の愚行によって燃え上がったメンフィルの怒りの焔をどのようにして収めるつもりだったのだ?」
レーヴェは呆れた表情をし、パントは厳しい表情でルーファスを見つめて問いかけた。
「当然猟兵達にユミル襲撃を指示した父の身柄をメンフィルに引き渡す事もそうだがエリス嬢誘拐を指示した”蒼の深淵”やカイエン公、誘拐を実行した”黒兎”の身柄もメンフィルに引き渡し、アルバレア公爵家が納めているクロイツェン州のおよそ半分の領地の統治権をメンフィルに贈与する事で収めるつもりだった。勿論”被害者”であるエリス嬢自身やシュバルツァー卿達に対しても賠償や謝罪をするつもりだったし、後はアルフィン殿下とリィン君を婚約を提案し、二人が将来結ばれる事も和解の理由にするつもりだった。特に最も迷惑をかけた被害者であるエリス嬢に対しては公爵家ができる最大限の賠償としてバリアハートのアルバレア公爵家が所有していた城館の所有権を贈与するつもりだった。無論城館を管理する使用人達の給与はアルバレア公爵家が支払うという形でな。」
パントの問いかけに対し、ルーファスはリィン達にとって驚愕の事実を口にした!
「……ッ!」
「という事はアンタは最初からヴィータ達を切り捨てて、メンフィルへの”生贄”にするつもりだったのね……」
「それに実の父親であるアルバレア公も見捨てるつもりだったのですか……」
「愚かな…………リウイ陛下達はそのような甘い償いで怒りの矛先を収める程甘くはありませんよ。」
(どの道わたしはメンフィルによって殺されていたのですね……)
(アルティナさん…………)
(幾ら戦争を阻止する為とは言え、こんな幼い娘まで巻き込むのは間違っているわ……!)
ルーファスの口から語られた驚愕の事実を聞いたユーシスは唇を噛みしめ、セリーヌは目を細めてルーファスを睨み、セレーネはユーシスに視線を向けた後真剣な表情でルーファスを見つめ、リアンヌは呆れた表情をし、複雑そうな表情をしているアルティナの念話を聞いたメサイアは心配そうな表情をし、エーデルは怒りの表情をし
「!!」
「ええっ!?ど、どうしてメンフィルとの和解の為にリィンとアルフィン殿下を結婚させる事まで考えていたのですか!?」
一方リィンは目を見開き、エリオットは驚きの表情で尋ねた。
「”夏至祭”の件を考えるとメンフィルは次期メンフィル皇帝たるリフィア皇女殿下の専属侍女長であるエリゼ嬢を眷顧している事はわかっていた。そしてエリゼ嬢は兄君であるリィン君ととても親しい仲だ。そのリィン君にリフィア皇女殿下にメンフィルの怒りを収めてくれるようにとりなしてくれとエリゼ嬢に頼むように嘆願すれば、メンフィルとの和解は可能だ。アルフィン皇女殿下はエリス嬢の件と父の暴走によるユミル襲撃の件に対するリィン君への賠償であると同時にメンフィルに対する”詫び”の意味もある。アルフィン皇女殿下は君達も知っての通り皇位継承権をお持ちだ。エレボニアの皇位継承権を持つ者を手に入れる事はメンフィルにとっても”利”にはなるだろうし、メンフィルが眷顧しているエリゼ嬢の家柄の”箔”も上げる事もできるしね。それにリィン君は自身が”尊き血”を引いていない事を随分と気にしていたようだからね。エレボニアが用意できる最高の”尊き血”を引いておられる皇女殿下を娶れば、彼も自身に流れている血の事を気にしなくなるだろうし、今まで自分を育ててくれたシュバルツァー卿達への恩返しにもなるだろうしね。」
「………………!」
「そ、それって……!」
「メンフィルがエレボニアに要求した”戦争回避条約の救済条約”に秘められているメンフィルの目的とほとんど同じじゃないか!?」
「なるほどね~。確かにそれなら可能性はあったかもしれないね~。」
ルーファスの口から語られた驚愕の事実を聞いたエリゼは膨大な殺気を纏ってルーファスを睨み、セレーネとマキアスは信じられない表情をし、ミリアムは真剣な表情でルーファスを見つめ
「……ッ!ルーファス卿!幾ら戦争を阻止する為とは言え、内戦の時のように姫様を再び利用する事に不敬だと思わなかったのですか……!?それに姫様のお気持ちを完全に無視しているではありませんか……!」
エリスは怒りの表情でルーファスを見つめて問いかけた。
「フフ、利用とは人聞きの悪い。アルフィン皇女殿下は”夏至祭”の件を切っ掛けにリィン君に好意をお持ちになられているのだから、私はアルフィン皇女殿下の幸せを願う者として……アルフィン皇女殿下を利用した償いとして……そしてアルフィン皇女殿下の幸せの為にもリィン君と殿下のご結婚を提案するつもりだったのだよ?」
「例え内戦が終結するまでにメンフィルとの戦争が勃発しなくてもアルフィン皇女はリィンへの気持ちを利用されていたようね……―――しかも祖国の信頼していた家臣達に。」
「ひ、酷い………!」
「兄上!幾らアルフィン殿下がリィンに好意を持っているからと言って、メンフィルとの戦争勃発に関わっていた兄上がそのような傲岸不遜な事を提案する資格はありません!」
「……それ以前にエリゼにリフィア殿下へのとりなしを頼むリィンがルーファスさんの嘆願を断るという可能性は考えなかったのですか?」
ルーファスの答えを聞いたセリーヌは重々しい様子を纏って呟いた後目を細め、アリサとユーシスは怒りの表情でルーファスを見つめ、ガイウスは心配そうな表情でリィンに視線を向けた後真剣な表情でルーファスに尋ねた。
「その点に関しては心配していなかった。”内戦後に拘束されるクロウ君の為”にも彼は断らなかっただろうしね。」
「な、”内戦後に拘束されるクロウの為”って……!」
「まさか……クロウの罪の軽減等を盾にして、俺にエリゼへの説得を頼むつもりだったのですか!?」
予想外の話を聞いたエリオットは信じられない表情をし、リィンは厳しい表情で問いかけた。
「……さすがに無罪放免は無理だが、リィン君が望む可能な限りの希望に応えるつもりだった。―――例えばクロウ君が卒業するまでの間だけは彼をトールズ士官学院に通わせる事なら可能だ。」
「―――なるほど。メンフィルとの戦争を回避する為ならばユーゲント皇帝を始めとしたエレボニア皇族達もそうだが、帝国政府もエレボニア帝国全土でテロ活動を行っていたテロリストのリーダーをそのような常識的に考えてありえない甘い処遇にする事にも同意しただろうな。」
「そ、それは………」
「オレ達が目指した”かけがえのない毎日”を取り戻す事……その中には当然クロウがいる事も入っているな……」
「兄様……」
ルーファスの話を聞いたパントは真剣な表情で推測し、マキアスとガイウスは複雑そうな表情をし、エリスは心配そうな表情でリィンを見つめ
「貴方という人は……!」
「どこまでリィンを利用すれば気がすむのよ!?」
「貴方といい、オズボーン宰相といい、お兄様を何だと思っているのですか……!」
「さすがはオジサンがボク達の”筆頭”にしただけあって、オジサン並みにえげつない事を考えていたんだね~。」
「兄上…………」
エリゼとアリサ、セレーネは怒りの表情でルーファスを睨み、ミリアムは疲れた表情でルーファスを見つめ、ユーシスは辛そうな表情で肩を落とした。
「…………貴方が”鉄血宰相”に加担し、メンフィルとの外交問題を放置していた理由はわかりました。―――ではなぜ貴方はヨアヒム・ギュンターに加担しているのですか?彼の計画が成就すればエレボニアは破滅の道を歩む事になるのですよ。エレボニアの未来を案じるのならばヨアヒム・ギュンターは貴方にとっても討つべき存在ですよ。」
するとその時厳しい表情で黙って見守っていたリアンヌがルーファスを見つめて静かな表情で問いかけた。
「フッ…………………私は別にあの司祭の軍門に降った訳ではない。私の目的の為にあの司祭に従ったふりをしているだけの事。」
「え…………」
「も、”目的”……?」
「既に死んだ状況で、一体何を目的としているのだい?」
リアンヌの問いかけに答えたルーファスの話を聞いたエリスとアリサは呆け、パントは真剣な表情で尋ねた。
「私を含めた多くの者達の運命を弄んだ忌々しき”零の御子”への復讐――――それが私の目的だ。」
「ぜ、”零の御子”って確か……!?」
「……”クロイス家”が”幻の至宝”の代わりに生み出したホムンクルス―――――”零の至宝”ね。」
「何故キーアさんに復讐をするのですか!?確か話によるとキーアさんはまだ10歳くらいの子供だとの事ではありませんか!」
驚愕の事実を知ったマキアスは信じられない表情をし、セリーヌは目を細め、リィンは真剣な表情で尋ねた。
「”何故”……だと?―――逆に聞くが君達はクロスベル―――いや、自分と親しい者達を守りたいという理由の為だけに私を含めた多くの貴族連合に所属していた者達の命を本来のゼムリアの歴史では存在しなかった異世界の大国――――メンフィルによって奪われる因果へと操作し、挙句の果てにはメンフィルとクロスベルによってエレボニアの領地を削り取られ、エレボニアを衰退の道へと歩ませるように仕向けた愚か者を何とも思っていないのか?」
「そ、それは………」
「まあ~、”本来の運命”では殺されなかったはずの君達にとっては腹の立つ話だろうね~。」
「兄上……」
「という事はルーファスさんはキーアさんに復讐する為にヨアヒムに協力していたのか……」
静かな怒りを纏っているルーファスの話を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、ミリアムは疲れた表情で呟き、ユーシスは辛そうな表情でルーファスを見つめ、ガイウスは真剣な表情でルーファスを見つめ
「―――お前も奴等同様”本来の運命”では”英雄王”はゼムリア大陸には存在せず、この内戦では殺されなかっただろうから、”零の至宝”に復讐をする為に加担しているのか?」
「クク……見損なうなよ?この俺がそんな下らない理由であんなガキ相手に怒ると思っているのか?むしろあんな”アツい”戦いをした”英雄王”とやり合わせた事に感謝しているくらいだぜ?」
レーヴェに視線を向けられたマクバーンは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「リィン君、君も私達同様”零の御子”の所業を許せないと思わないのかい?彼女の因果操作がなければ、シュバルツァー家は帝国貴族のままで、クロウ君との”約束”を守れたのだよ?」
「………………」
「エリゼ嬢、君もだ。君も”本来の運命”ならばリフィア皇女の専属侍女長という重荷を背負い、リフィア皇女の行動に翻弄される事なく、貴族の子女として平穏に暮らしていけたのだよ?ましてや多くの兵士達の―――人の命を奪うという事をする必要も無かったのだよ?」
「………………」
「お兄様……」
「姉様……」
ルーファスの問いかけに対して、それぞれ目を伏せて黙り込んでいるリィンとエリゼをセレーネとエリスは心配そうな表情で見つめていた。
「―――言いたい事はそれだけですか。」
「何……?」
そして目を見開いたリィンの言葉を聞いたルーファスは眉を顰め
「世界中の多くの人々の運命を改変したキーアさんの真意はどうあれ……その改変によって救われた人々もいますし、本来出会えるはずの無かった人々との”絆”を結んだ人々もいます。俺もその一人。本来出会う事がなかったベルフェゴール達やセレーネとの出会い、そしてリウイ陛下を始めとしたメンフィルの人々との”絆”を結んだ事は俺にとっても大切な出来事です。」
「―――当然私もリフィア殿下の専属侍女長という大任を務める事になった事は”誇り”に思っています。確かにリフィア殿下の破天荒な行動には苦労はさせられますが、リフィア殿下の専属侍女長になった事を後悔した事は一度もありませんし、戦いの最中で多くの敵―――”人”を殺した事も後悔していません。」
「お兄様……」
(うふふ、こんな時でもさりげなく私達の好感度を上げたわね♪)
(ふふふ、さすがはご主人様ですね。)
(というか”本来の運命”以上に”女殺し”になっているのではないでしょうか。)
(ア、アハハ……た、確かにそれは言えてますわね。)
(”本来の運命”だと、リィン君はどのくらいの数の女の子達に想いを寄せられていたのでしょうね?)
(フフ、私も貴方同様貴方に出会えてよかったと思っているわよ、リィン……)
エリゼと共に答えたリィンの答えを聞いたセレーネは嬉しそうな表情をし、ベルフェゴールとリザイラがリィンに感心している中、ジト目で呟いたアルティナの念話を聞いたメサイアとエーデルはそれぞれ苦笑し、アイドスは微笑ましそうにリィンを見守っていた。
「ですが確かにルーファスさんの言う通り、キーアさんの因果操作によって本来失われる事がなかった多くの命が失われる事になり、クロウやルーファスさんを含めた多くの人々の人生が狂わされました。だけどそれは決してキーアさんだけのせいではありません。そのような事になってしまった原因を作ったルーファスさん達も責任の一端を背負っている……―――違いますか!?」
「貴族連合の”総参謀”であった事で貴族連合内ではカイエン公に次ぐ権力を持っていた貴方ならばカイエン公達に内密でメンフィルがエレボニアとの戦争を踏み切るまでの間に求めていたエリス返還を含めた要求の実行をできたはずです。―――エレボニアが衰退し、貴族連合軍から多くの犠牲者を出してしまった事で責められるべき人物は自らの野望の為に先程挙げた事を実行しなかったルーファス卿―――いえ、ルーファス・アルバレア。貴方もカイエン公やオズボーン宰相同様その一人であり、エレボニアを混迷と衰退の道へと導いた”逆賊”です!」
「…………ッ……!」
「クク、中々的をついた事を言ってくれるじゃねぇか。」
リィンとエリゼの正論に反論できないルーファスは表情を歪め、マクバーンは不敵な笑みを浮かべてリィンを見つめた。
「―――二人の言う通りです、兄上。エレボニアの衰退もメンフィルとの戦争によって出てしまった多くの犠牲者達や兄上がメンフィルに処刑された事も、元をたどればメンフィル帝国から猶予を貰っていた上その実行が可能な立場でいたにも関わらずメンフィルの要求を呑まなかった兄上も責任の一端を担っています。兄上が言っている事はただの責任転嫁です。」
「ユーシス…………」
静かな表情で自分を見つめて指摘したユーシスをルーファスは驚きの表情で見つめて黙り込んだ後騎士剣を構え、それを見たリィン達はそれぞれ血相を変えて武器を構えた。
「問答は終わりだ……――――ユーシス。私の信念を否定するのならばそれを超える信念を私に示してみるがいい……!」
「はい……!―――来るがいい、アルバレア号!!」
「私も手伝うわ、リィン君!」
ルーファスの言葉に頷いたユーシスはアルバレア号を召喚し、自分から出てきたエーデルやリィン達と共にルーファスと対峙し
「……”鋼の聖女”。」
「わかっています。―――貴方の相手は私と”剣帝”です、”劫炎”のマクバーン。」
レーヴェに視線を向けられたリアンヌはレーヴェと共にマクバーンと対峙した。
「クク、そう言えばレーヴェはともかくアンタと直にやり合うのはこれが初めてだな……別にアンタとレーヴェでも十分だが……―――リィン・シュバルツァー。とっとと”女神”とやらを呼んでもらおうか。」
二人を不敵な笑みを浮かべて見つめていたマクバーンはリィンに視線を向けて驚愕の要求をした!
「ええっ!?」
「そ、それって……」
「アイドス様の事ですわよね……?」
「確かあの時はエステルさん達やエイドスさんの加勢があった状況で敗北したが……」
マクバーンの要求にアリサは驚き、エリオットとセレーネは信じられない表情をし、ガイウスは戸惑いの表情でマクバーンを見つめ
「………………オーロックス峡谷でアイドス達に敗北し、今はサンドロッド卿とレオンハルト少佐も相手にしなければならない状況であるにも関わらずアイドスとも戦うつもりか。」
少しの間黙り込んでいたリィンは真剣な表情でマクバーンを見つめて問いかけた。
「―――そのまさかだ。加減していたとはいえこの俺を軽々とあしらったあの女神と”鋼”とレーヴェ相手なら、この俺を殺った”英雄王”との時以上に俺を”アツく”させてくれるだろうからな!」
リィンの問いかけに対し、マクバーンは不敵な笑みを浮かべて答えた後”力”を解放し、”火焔魔人”へと変化した!
「何て凄まじい”風”だ……!しかもこの”風”は……!」
「一体どういう事!?”英雄王”と戦った時以上の”力”を感じるわよ……!?」
マクバーンから感じる”力”にガイウスとセリーヌは驚き
「クク、教団の”叡智”とやらも捨てたもんじゃねぇな。この俺に更なる”力”を与える事ができたのだからな。」
「なっ!?それってまさか……!」
「――――”グノーシス”か。」
「チッ、相変わらず余計な事ばかりをしてくれるものだな、あの亡霊は……!」
「見損ないましたよ、”劫炎”のマクバーン。”力”を求めるあまり禁忌の薬物にまで手を出す程落ちぶれるとは。”結社”を滅ぼした私が言えた義理ではありませんが盟主も今の貴方を見れば嘆くでしょうね。」
マクバーンの話を聞いてある事を察したマキアスは血相を変え、レーヴェは目を細め、ユーシスは厳しい表情をし、リアンヌは厳しい表情でマクバーンを見つめて呟いた。
「何とでも言え。とっとと呼び出してみろよ。お前の女神と再びやり合う日も楽しみにしていたんだぜ……?」
「……ありえません。」
「サンドロッド卿達に加えて女神であられるアイドス様との戦いを望むなんて……」
マクバーンの言葉を聞いたエリゼは呆れ、エリスは信じられない表情をし
「―――だが、私達にとっては悪くない話だ。」
「幾らあんな化物が相手でも、女神のアイドスが負ける方がありえないよね~。」
パントは静かな表情で呟き、ミリアムは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「…………―――頼む、アイドス!」
そしてリィンはアイドスを召喚した!
「……………………以前私達と戦った時にあった魔剣を失ったにも関わらず、貴方は女神である私を超えられると思っているの?」
召喚されたアイドスは静かな表情でマクバーンを見つめて問いかけ
「クク、確かに魔剣を失ったのは痛かったが、今の俺にはこんな事もできるんだぜ!?」
アイドスの問いかけに対し、マクバーンは不敵な笑みを浮かべて片手から黒き焔の魔剣を顕現した!
「黒き焔の魔剣……!?」
「あ、ありえない……あの時使っていた”外の理で創られた魔剣”以上の力を感じるわよ!?」
マクバーンが持つ魔剣を見たガイウスは驚き、セリーヌは信じられない表情をした。
「恐らくあの魔剣も”グノーシス”によるものなのでしょうね。」
「”グノーシス”によって奴の”異能”が強化された事によって、アングバール以上の力を持つ魔剣を顕現できたと言う訳か……」
一方リアンヌとレーヴェは冷静な様子で推測し
「……………………」
アイドスは目を伏せて黙り込んだ後目を見開き、片手を挙げて自身の愛剣の名を叫んだ!
「――星芒より出でよ、”真実の十字架”!!」
すると異空間から”慈悲の大女神アイドス”の神剣――――”真実の十字架”が現れてアイドスの片手に収まるとアイドスは静かに剣を構えた。
「更なる戦と力を求めて死してなお、この世をさまよう哀れなる”人”よ……”オリンポスの星女神”の一柱にして”慈悲の大女神”たる私がこの場で浄化し、救済してさしあげましょう……!」
「元結社”身喰らう蛇”の蛇の使徒が第七柱”鋼”にして、”英雄王”リウイ・マーシルンと”聖皇妃”イリーナ・マーシルンの守護騎士リアンヌ・ルーハンス・サンドロッド……我が戦友達の道を阻む者を討ち滅ぼさん。いざ―――尋常に勝負!」
「カリンの為に……そして俺の生徒達の為にも貴様をこの場で討つ――――行くぞ、もう一人の”結社最強”にして執行者No.Ⅰ――――”劫炎”のマクバーン。」
そしてアイドスはリアンヌやレーヴェと共にマクバーンとの戦闘を開始し
「フフ……こちらも始めるとするか。」
「――――皆……兄上に俺―――いや俺達の信念を証明する為に……そして兄上にエレボニアの裁きを与える為に力を貸してくれ!」
「おおっ!!」
ルーファスと対峙したユーシスは仲間達に号令をかけ、ルーファスとの戦闘を開始した!
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