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仮想戦記設定集

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【2】-幻の彼女 信濃-

 
前書き
長女の次は次女では無く末っ子です 

 
―20XX年10月某日 観艦式当日 駆逐艦やまゆき甲板上―


「続けて本年度を最後に退役します航空母艦しなのです」

女性のアナウンスに甲板にいたマニア達は一斉にカメラのレンズを向け、一般人からは歓声が上がる。

巨大な彼女がやまゆきとすれ違う。

広い甲板にはF/A-18Jが並んでいる。

アナウンスにあった通り彼女は今年度を最後に退役する。

理由は簡単、予算だ。

政府は維持費が高額な空母を退役させ、現在開発中であるF-35の配備数を増やすことにした。

退役により日本から現役の空母がいなくなるが、専守防衛の日本にとっては列島自体が不沈空母の様な物なので問題無いと判断したのである。

しかし、必要とはいえない空母がなぜ、たった一隻とはいえ敗戦国である日本にあるのか。

それは1950年の朝鮮戦争勃発によりGHQの指示により時の日本政府が陸軍の代わりに警察予備隊を、海軍の代わりに海上保安庁内に海上警備隊を編成することでお茶を濁そうとしたところ、米国国務省から激しい圧力が加わり憲法改正と陸海空の各国防軍が発足した時に遡る。

当時米国国務省は、今後アジアにおいて激しさを増す冷戦で太平洋を舞台にあれ程暴れ回った日本を遊ばせて置く気は無かった。

そして、その事を一番歓迎していたのは米海軍だった。

なにせ太平洋で4年間も血で血を洗う激戦を戦った相手である。

散々痛い目にあわせられた厄介な敵だが。逆に味方に回るのなら歓迎だ。

と、考えるのは当然だろう。

そして、国防海軍が発足するやいなや米海軍は新しい味方を歓迎しプレゼントを送ってきた。

それは、ミッドウェイ海戦後建造が中断し。

その後空母に転用するも熟練工の不足による工期の遅れと数度の建造中断が原因で進水が1945年7月になってしまい。

艤装の中に終戦をむかえ戦後接収し横須賀の米海軍基地に係留したままの航空母艦『信濃』であった。

国防海軍はこれを航空母艦『しなの』として編入、米国の資金援助と技術提供の元に大規模な改装を始めた。

改装は艦首のエンクローズ化、蒸気カタパルトや舷側エレベーター、アングルドデッキの追加や機関の交換にまで及んだ。

もはやそれは改装と言うよりは作り直しと言っても良い程だった。

6年もの期間を要した改装が完了した彼女は日本政府がなんとか守り押し通した憲法九条の『戦争目的での海外派兵を禁ずる条項』によって長らく災害派遣と演習以外で国外に出る事は無かった。

しかし、1990年のイラクのクェート進攻後、米国と産油国であるサウジアラビアからの外圧により進水から45年、彼女はついに戦地へと赴くこととなった。

共にペルシャ湾入りし戦隊を組んだのが米海軍のミッドウェイだったのは運命の悪戯か。

砂漠の嵐作戦が始まると彼女から飛び立った艦載機達は『真珠湾の焼き直しだ!』と言わんばかりにイラクとクェートの空を縦横無尽に飛び回り活躍した。

その働きっぷりは彼女の随伴艦の一隻であったHMS『ユリシーズ』艦長ホーンブロワー氏曰く『彼女が味方で本当に良かったよ。もし敵だったら我々はマレー沖の悪夢をもう一度見る羽目になっただろう』と言わしめたほどだった。

そんな彼女に2月1日試練が舞い込む。

イラク空軍がこのまま嬲り殺しになるならとやけっぱちになったのか。

ペルシャ湾の空母機動部隊に特攻紛いの攻撃を加えてきたのだ。

しかも、何を勘違いしたのか彼女を米海軍の空母と思って。

頼り甲斐のある味方(主に米海軍)の援護もあり殆どが彼女を目にする前に落とされる中、蜂の一刺しかMig23から発射された対艦ミサイルエグゾセが彼女に命中するがその身は元戦艦、それも現在した戦艦の中でも最大最強の大和型である。

彼女は46センチ砲の直撃にすら耐える自慢の装甲でエグゾセを弾き返し、その様を目撃した随伴艦の乗組員達を唖然とさせた。

先のホーンブロワ―氏もその一人で一瞬唖然とした後、腹を抱えて大笑いし『見たか副長、カエル野郎(フランス人に対する蔑称)のミサイルが弾き返されたぞ。流石は大和の末妹だ』と言ったとか。

不発だったエグゾセは弾き返された後、ネズミ花火の様に海面を跳ね回り随伴艦の乗組員に冷や汗をかかせたが『ユリシーズ』の単装砲に撃破されている。

この防空戦の直後、多国籍軍総司令官ノーマン・シュワルツコフ大将宛に『しなの』艦長から一通の電文が送信されている。

それは『我ミサイルヲ被弾スルモ損害ナシ。戦闘ヲ継続ス。』という内容であった。

しかも、イラク軍の皆様もお聞きくださいと言わんばかりに暗号化もされず平文で。

それを知ったシュワルツコフ大将は部下に『今回ばかりは連中(イラク軍パイロット)に同情するよ』と、言い。

イラク空軍のとある中佐は『我々の敵は何なのだ。悪魔だとでも言うのか』と言ったとか。

敵味方を驚愕させた彼女は湾岸戦争が終結した後、祖国へ帰り、本来の役目である護国の任に戻り今日にいたるのである。

そんな彼女も後半年でお役目を解かれ。

住処を横須賀の軍港からお台場の船の科学館へと移し記念艦としての余生を送る筈であった・・・ 
 

 
後書き
国防海軍 航空母艦「しなの」※以下退役時の数値
基準排水量:64,000トン
満載排水量:72,000トン
全   長:288メートル
全   幅:39メートル
喫   水:10.3メートル
速   力:29ノット
乗   員:2,400名
兵   装:艦載機69機※ヘリコプター含む
      シースパロー短8連装発射機×3基
      76.2ミリスーパーラピッド砲×3門
      CIWS4基

大和さんの妹信濃さんになります。
沈ませない為にはお外(港外)出させなきゃいいんじゃね。
と言う事で進水を遅らせました。
エグゾセについてはロシアの超音速対艦ミサイルKh31が大和の主砲と同程度の貫通力を持っていると聞いた事があるので、だったら亜音速のエグゾセならと思いノリでいれました。 
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