| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ四十四 上田への帰参その九

「直江殿にそう言ってもらえるまでは」
「ご自身はそう思われているだけです」
「では」
「はい、だからこそです」
「それがしと敵味方になった時は」
「思う存分戦いたいと思いまする」
「左様ですか」
「その時はです」
 是非にと言うのだった。
「恨むことなく」
「お互いに全ての力と才を使い」
「戦いましょうぞ」
「その時は」
「それがし若し真田殿と戦えれば」
 さらに言う兼続だった。
「そのことを誇りにします」
「そう言って頂けるとは」
 幸村は兼続の言葉をここまで聞いてだ、そのうえで。
 感銘を込めてだ、こうも言った。
「それがし余計にです」
「精進されますか」
「文武において」
「それがしもです」
 兼続もと言うのだった。
「精進しますので」
「直江殿も」
「そして全力であたります」
「では」
「卑怯未練なぞなく」
「武士として」
「戦いましょうぞ」
 微笑んでの言葉だった。
「その時は」
「はい、しかし」
「しかしとは」
「これから天下は泰平になりますな」
「全体としてはですな」
「そうなりますな」
「統一はです」
 秀吉によるそれはというのだ。
「やはりです」
「決まっていますな」
「九州の後は」
「東ですな」
「関東、奥羽もです」
 その二つ、即ち東国もというのだ。
「統一されまする」
「関白様の下」
「そしてです」
「天下は泰平にですな」
「なります」
「ですな、戦の世はこれで」
「終わりましょう」
 このことは間違いないというのだ。
「そしてです」
「はい、必ず」
「この国は落ち着きます、しかし」
「それでもですな」
「完全な泰平にはです」
 それが訪れる為にはというのだ。
「まだ戦があります」
「そうですな」
 幸村も兼続のその言葉に頷く。
「九州でも東国でも」
「それで天下は統一されますな、しかし」
 ここでだ、幸村は。
 その目を光らせてだ、こう言ったのだった。
「問題はその後も」
「天下がですな」
「固まればいいですが」
「固まらぬうちにですな」
「関白様がご健在ならばいいですが」
 そうであればというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧