Three Roses
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第二話 幼きよき日々その十
「これはいいことだ」
「うむ、ロートリンゲン家の方をお迎えするとはな」
「マイラ様にとてよいことだ」
「無論我等にとってもな」
こう口々に言うのだった。
「ではあの方が我等の旗印だな」
「そうだ、近頃新教の諸侯も増えているが」
「やはり旧教であるべきだ」
「それが正しい信仰だ」
こう言うのだった。
「教会とのこともある」
「旧教の教会は守られるべきだ」
「そして我々の権益もな」
「旧教にまつわる」
「民もそう望んでいる」
彼等の領地の民達もというのだ。
「あの者達も旧教だ」
「やはり民にも新教が増えているが」
「民達の言葉は無視出来ない」
「ないがしろにし過ぎたら一揆だ」
それが起こってしまうというのだ。
「何百年か前はそれで大きなことになったという」
「民のことも考えねばな」
「だからこのご婚姻はいいことだ」
「旧教の復権にもなる」
「是非共成功して欲しい」
「ロートリンゲン家の方をこの国にお迎えするのだ」
こう口々に言う、だが。
ここでだ、こうしたことを言う者もいた。
「しかしあの家はだ」
「ロートリンゲン家はか」
「あの家はか」
「そうだ、縁戚を結んだ家がだ」
彼等も言うのだった。
「力を貸してくれる」
「我等も負けないぞ」
「新教が何だ」
「正義は我等にあるのだ」
こう言うのだった、だが。
王はその彼等の言葉を聞いてだ、大公を含めた腹心の者達に言った。
「これは予想通りだ」
「はい、そうですね」
「旧教の貴族達が活気付くのは」
「そのことは」
「活気付くのはいい」
それ自体はだ、王は構わないとした。
しかしだ、ここでこうも言うのだった。
「だが。彼等の中でな」
「はい、謀反をですね」
「それを企む者にはですね」
「気をつける」
「そうされますか」
「ロートリンゲン家はそうしたことはしない家だが」
裏から謀反を起こさせる、そうした陰謀を行うことはというのだ。
「しかしだ」
「はい、それでもですね」
「愚かなことを企む者がいる」
「そのことがあるから」
「だからですね」
「そうした者達が出れば」
「すぐに捕らえるのだ」
そうしろというのだ。
「いいな」
「はい、わかりました」
「その様にします」
「そうした輩が出れば」
「その時は」
「すぐに捕まえてだ」
謀反を企む貴族がいればというのだ。
「断罪するのだ、必要とあればな」
「はい、粛清ですね」
「それを行いますか」
「そうされますか」
「あまりしたくはないが」
粛清、即ち処刑はというのだ。王は死刑は好んでいない。だがそれでもだった。
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