非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
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第18話『部長VS.副部長』
前書き
この物語初の戦闘シーン。
FT小説の経験を生かし、分かりやすいながらも、臨場感のあるものを書いていきたいです。
上手に仕上がるかは分かりません。
あと、投稿遅れて申し訳ありません。
「どっちが勝つかな?」
「やっぱ部長じゃね?」
「いやでも副部長も強いし」
「わかんねぇな…」
非常にマズい。俺のせいで引き起こされた事態だ。俺が収拾をつけなければならない。
なぜか先輩方が楽しんでいるのだが、当然そんな状況ではない。
「チビはすっこんでろよ!」
「あんたは威張り過ぎなのよ!」
ただ、この部長と副部長をどうやって止めればいいと言うのだ。
恐らくこの2人の言う戦闘は魔術。よってまだ使うことのできない俺に、この喧嘩を止める術はない。どうしたら・・・。
「実力でわからせてやんよ!」
部長はそう言うと、手から黒い電気を発した。今はまだ静電気の様に見えるが、アレには木をなぎ倒す程の威力はあるのは知っている。アレが部長の能力、“夜雷”なのか。
「その言葉、そのまま返すわ!」
対する副部長は、なんとどこからともなく太刀を取り出した。大きさは普通くらいなんだろうが、副部長が小さいせいで相対的に大きく見えてしまう。こんなこと、絶対に口には出せないが。
……あっ!
そういえば能力の属性にも種類がある、って部長が言ってたな!
え~と・・・物理属性、だったか? 武器を強化したり何やらしたりする属性は。副部長のはそれなのかもしれない。
「お前と闘うのは久しぶりだな」
「そうね。半年ぶりくらいかしら」
戦闘を始めるかと思いきや、語り始める2人。
どうやら、以前にも互いに手合わせをしたことがあるようだ。
「あん時にお前が負けて以来、部室に来なくなったもんな。いい加減、拗ねるのも飽きただろ?」
ん!? 副部長が部室に来ない理由ってそれ!? 部長に負けて拗ねてただけ!?
「なっ…! いきなり何言うのよ?!」
「事実じゃん」
うわぁ、部長が完全に悪い顔してるよ。戦闘の前に、精神的にダメージを与えているようだ。
「はぁ~。そんなお前が、ずっと部活をやっている俺に勝てると? 笑わせんなよ。まぁお前があれ以来、ずっと特訓してたとかなら話は別だが──」
ガキィン!
甲高い音が響く。まさに一瞬の出来事だった。
見ると、副部長が太刀を部長に降り下ろし、それを部長は雷の拳で受け止めていた。
・・・それ、受け止められるんだ。
「それ以上言うと、あんたの頭叩き斬るわよ」
「話を途中で止めんな…よ!」
ドゴォォォォォン!!
「「うわっ!!?」」
急な爆音と衝撃に、俺らはたまらず耳を塞ぎ縮こまる。砂煙が空を舞った。
今のは部長の魔術だろうか。一瞬、黒い閃光が見えた気がした。
・・・! てことは副部長が危ない?!
「…ふぅ。やっぱ一発じゃ無理か」
「その位読めるわよ」
・・・良かった。どうやら部長と距離を置き、回避したようだ。危ない危ない…。
にしても、この2人はガチだ。手加減している様子が一切感じられない。まさか、死んだりしないよな?
「じゃあこいつは避けれるか?!」
「っ!」
すると部長が今度は黒い雷を小さく凝縮し、マシンガンの様に撃ち始めた。狙いは雑だが、逆に言えばどこに逃げても当たってしまう。砂塵を散らしながら、それらは副部長へと襲いかかる。
いや、さすがに避けれないでしょコレは!? しかも威力も高そうだし!
「甘いわ!」
「「あ!」」
副部長の行動に、俺たちは驚いた。
なんと表情一つ変えないまま、太刀を持っていない左手から焔を放って、部長の攻撃を凪ぎ払ったのだ。
「能力、“灼刃”か。懐かしいな」
未だに攻撃を続けながら、そう呟く部長。
“灼”ってことは火ってことか? つまり副部長の能力は火の剣、といった感じか。
「チキンプレイも大概にしなさい! こっちから行くわよ!」
なんと部長の無数の攻撃の中、副部長が駆け出した。全ての攻撃を、体に纏った焔で防ぎながら。
「もらった!」
「ちっ!」
ドォォン!!
鈍い音が響いた。
見ると、振り下ろされた副部長の刀は地面に突き刺さっている。間一髪で部長が避けたようだ。つまり、
「隙あり!」
その隙は副部長にとって致命的。刀が地面に固定された彼女に、部長は雷の拳を向ける。だが・・・
「やらせないよ!!」
副部長は避けることをせず、太刀を手放すと同時に焔の拳を部長へと勢いよく放った。
ガシィィ!!
拳と拳がぶつかり合った。
しかしただの拳ではなく、“魔術のぶつかり合い”だったので、衝撃波がこちらまで伝わってきた。
たまらず腕で顔を覆いながら、風圧を肌でひしひしと感じる。
「暁君」
「?」
そんな中、俺は暁君に声を掛けた。
それはある共感を得るために・・・
「こういうのって、カッコいいよね!」
俺は率直に思ったことを口にした。
普段はアニメだのマンガだのでしか見られなかった、こういう戦闘シーン。昔はよくカッコいいと思って憧れていた気がする。
でも今こうして目の前で見ることができ、さらに自分もできるとわかった。非現実的ながらも、こうして舞台の上に立てている。
そう思うと、俺の顔は自然と満ち足りた表情になった。
「・・・あぁ」
彼は少し遅れてそう言った。たぶん、肯定的な意味で。
「ひひっ」
「な、何だよ、気持ち悪い」
「え、酷くない!?」
*
戦闘開始から10分は経ったが、未だに戦況は変わらない。
そんな一幕、互いに距離をとって睨み合っている。
「そんなに離れてちゃ不利だぜ?」
部長がそんな挑発をした。
確かに副部長との距離は5mほど離れている。
部長の主属性が雷なのに対し、副部長は刀。つまり部長は遠距離、副部長は近距離が得意といえる。
ということは、今の状況は副部長が完全に不利なのである。
「甘く見ないで」
そう副部長は微かに笑みを浮かべながら言った。その堂々とした態度は、自信に満ち溢れているようにしか見えない。
ゆっくりと、副部長は刀を上に振り上げた。まるで、今から"その場所で"斬りかかると言わんばかりに。
「何をする気だろう?」
「さぁな」
その様子を見た俺は暁君に問いかけるも、彼にも副部長の行動はよくわからないようだった。
「さて、何が来るんだ?」
「私のとっておきよ!」
副部長はそう言うと刀に焔を纏わせ始めた。そんなこともできるのか。しかし、それだけじゃ部長との距離を埋めるには至らない。
だが、副部長の狙いは違うところにあった。
「喰らえ、"紅蓮斬"!」
「何っ!?」
副部長の刀が空を斬る。その瞬間、なんとそこから焔の衝撃波が発生し、部長に襲いかかる。
さっきまでと打って変わった遠距離攻撃に、部長は不意をつかれて為す術なくそれを喰らってしまった。
「熱っ!」
焔の中に閉じ込められた部長。悲鳴に似た絶叫が聴こえるけども、焔が消えることはなかった。いやいや、普通にヤバくないか?!
「ほらほら。さっき私に言ったこと謝れば、止めてあげないこともないわよ?」
「誰が謝るか、暴力女!」
「…燃え尽きろ!」
副部長はさらに焔を加える。
相変わらず副部長と部長の口喧嘩が酷いのだが、言ってることが現実になりそうだから恐ろしい。
「どうなってんだろ…」
俺はそう零した。
副部長が続けて刀を降り払い、その先で部長が燃え盛る。だから部長の周りは焔で包まれ、よく様子がわからないのだ。
雷じゃ炎は消せない。このままだと部長が黒焦げになって、本当にマズイのではと思った次の瞬間、突如として舞い上がった砂塵にその焔は鎮火される。
「ふぅ、危ねぇ危ねぇ」
砂煙の中から首を鳴らしながら出てきた部長。
副部長はその様子を見て、驚きの表情を隠せない。
「…何で抜け出せたのよ」
副部長は語気を強くして訊いた。悔しさが顔に滲み出ている。
「俺の雷で地面を抉って砂煙を起こした。それだけだ」
当たり前だ、と言わんばかりの様子の部長。
あの危機的状況下において、よくそんな方法を思いついたなと、俺は感心した。
「じゃあ今度はこっちの番だ。さっきの分をやり返さねぇとな!」
「あの構えは!」
部長がとったその構えに俺は思わず声を上げる。
あの構えは、以前俺に初めて“夜雷”を見せたあの時の、つまりは指鉄砲の構えだ。
しかしあの技は対人では威力が高すぎると思う。まともに喰らえば焦げてしまうのではないか? 非常に危険だ。
「出たわね。でも対策はバッチリ用意してるわ」
「じゃあ見せてみろ! 弾けろ、冥雷砲《めいらいほう》!」
撃った! 黒い閃光が一直線に副部長を狙う。
てか躊躇う様子も見せなかったけど、まさか本気の威力!?
副部長は一切動かないんだけど、大丈夫なのか…?
ドゴォォォン
とうとう部長の攻撃が副部長に命中してしまった。
結局、対策だとか言ってた副部長が何かをした様子は見えなかった。
「なんだ、呆気ねぇな」
つまらなそうに呟く部長。
見据える先はまたしても砂煙に覆われていて、副部長の安否はわからない。
だけどその瞬間、明らかに部長は油断していた。
「──もらった!」
「がはぁっ!?」
いつの間にか副部長は部長の後ろに回り込んでいた。
そしてそこからの不意打ちには、さすがに部長も反応できない。
部長よりも一回りも二回りも小さい身体の、どこにそんな力があるのか。副部長の焔を纏った斬撃によって、部長は勢い良く吹っ飛ばされ、為す術なく地面に転がる。
ここにきて強烈な一撃だ。だが今の一撃は、刀で"斬った"というよりは"殴った"に近い。その証拠に、吹っ飛ばされた後の部長には火傷こそあったが、切り傷がなかった。副部長の配慮と言うべきか。
とりあえず俺は一安心した。
魔術の戦闘ってこんなに苛烈なの? ヒヤヒヤするなぁ…。
「お前…今の当たってただろ…?」
「アンタっていっつもその技使うじゃん。弾道くらいもう見切れるっての。寸前で避けるのなんて楽勝よ」
部長の問いに副部長はさも当然のように答えた。
当たったように見せかけて、砂煙を目くらましに即座に接近したという訳か。随分と人間離れした動きだが、魔術ならそれも可能になるのだろうか?
それにしても対策って、ただ避けるだけだったんだ。こう言っちゃなんだが…しょぼいな。
「この野郎っ!」
「ふっ!」
すると部長が脚に雷を纏わせ、副部長に蹴りかかった。真正面から放たれたそれを、副部長は避けることなく刀を使ってそれを受け止める。
だが、部長の攻撃は終わらない。
「おらおらおらおら!」
「うっ…!」
今度は雷の拳での連打。手を抜いていないように見えるのが恐ろしい。
だがそれでも、副部長は何とか捌き切っている。
その後も部長と副部長の格闘が続いたが、お互いに一進一退の攻防が続き・・・
そしてついに、この決闘に終止符が打たれようとしていた。
「はぁ…じゃあそろそろ終わらせっか」
「あら、ようやく負けを認めるの?」
息を切らしながらそう言う部長に、副部長は皮肉を込めて返す。
さっきから攻撃に徹していた部長は、防御に徹していた副部長よりも大幅に疲れている。確かに早く終わらせないと、副部長にボコボコにされるのがオチだろう。
「お前の見たことのない技…見せてやるよ」
「わざわざ教えてくれるなんて、随分と自信があるのね。でもアンタの技は、私の動体視力と反射神経の前では無力なのよ。諦めなさい」
「そいつはどうかな」
部長は不敵な笑みを浮かべた。しかしピクリとも動こうとはしない。
だがそれも当然だ。
なぜなら、"その状態で"決着をつけたのだから。
「…っ!」
突然副部長が膝から崩れ落ちる。
その顔は苦痛で歪んでいたが、それよりも驚きを隠せないようだった。
正直、俺も今の一瞬で何が起こったかは理解できない。だって部長は一歩も動いていないのだから。
それでも、部長の仕業というのだけはわかった。
「あんた…何を…」
副部長が言葉をつまらせながらそう部長に訊く。どことなく苦しそうだ。
すると部長は快く答える。
「痺れただろ? ちょいと地面に電流を流したんだよ」
ここで俺は全ての合点がいった。
つまりあの一瞬に部長は電流を地面に流した。それを足から受けた副部長は、電流を体内に流してしまい、痺れてしまったといったところか。
それにしても、地面に電気を流すなんて無茶苦茶だ。魔術だから可能なのだろうか。なんでもありだな。
「嘘でしょ…」
「嘘じゃねぇさ。ただ次はもう少し大きな電流を流してやるけど」
部長の顔は笑顔から真顔へと変化した。威圧が凄く、俺は恐怖すら覚えた。
まず言ってることが恐ろしい。ただでさえさっきの電流が身体が痺れて動けないほどの強さなのに、それ以上の電流を体内に流すとなると、身体の色んな機能が痺れて停止してしまうだろう。
普段の部長ならそんな酷いことはしないはずだが、今の様子ならやりかねない気がした。
それを察した副部長は両手を上げる。
「…降参。私の負けよ」
副部長は若干涙目になって訴えていた。
しかし部長の表情は変わらず、淡々と副部長を見据えていた。
そして一歩、一歩と副部長へと歩み寄り始める。まだ痺れがとれないのか、それとも怯えているのか、副部長はその場から逃げることができない。
「……」
「ひっ!」
遂に部長が副部長の目の前に立つ。普段の態度と一変して、見た目相応にビビってる副部長は見てて小気味よいものがあるが、今はそれよりも何をしでかすのかわからない部長を止める方が先決だろう。
「ぶちょ──」
しかし俺の言葉が発される前に、部長は動いた。
「お前はまだ俺には勝てねぇんだよ」
「あぅ!」
そう言って、部長は副部長にデコピンをかました。
俺らは拍子抜けする。あんなに怖い表情をしていた部長が、いつの間にか太陽の様に明るい笑みを浮かべていたのだ。
それを見ながら、おでこを押さえ、涙目になっている副部長。
対照的なこの2人を見てわかること・・・それは部長が勝利したということだ。
*
決着がついたあの決闘から数時間。魔術部メンバーは揃って広間で夕食を食べていた。
あの後、部長と副部長が疲れ果ててそれぞれ寝込んでしまったので、練習も何もなくなってしまった。先輩方は喜んでいたけど。
つか結局、あの戦闘は意味がなかったじゃん。
「部長たち、大丈夫かな?」
「さぁな」
俺の問いに暁君は素っ気なく返した。最近ようやく暁君の俺に対しての敬語が抜けたのだが、相変わらずクールだなと思う。
「あんま心配すんなよ三浦」
「そうそう。あの人たちは昔は結構闘いまくってたから」
「俺らも慣れっこだな」
「うんうん」
先輩方もそんなに深くは考えてはいないようだった。でも心配くらいはした方が良いんじゃないかな?
「んじゃ俺らもう寝っから」
「銭湯は自由に使って良いらしいぞ」
「また明日な」
「頑張れよ、新入り達」
そう口々に言った先輩方は部屋へと戻っていった。終始ニコニコしてたなぁ。
「俺は寝るぞ、三浦」
「え、風呂は?」
「1日くらい平気だろ。明日入るし」
いやそれはちょっと不潔じゃないか? まぁ本人がそれで良いなら・・・。
俺は入るとしよう。
*
皆が寝静まっている頃、俺は風呂を済ませ部屋へと戻ってきた。こっそりと襖を開けて見ると、先輩方や暁君は普通に寝ている。
あ、俺の分の布団敷いてある。ありがとうございます。
抜き足差し足忍び足で自分の布団の所に行くと、横目で隅っこで寝ている部長を確認できた。
部長のおかげで、今日はとても面白いものを見れた。俺は心の中で「お疲れ様でした」と言い、いよいよ寝ようとする。が、
「あ…」
急に喉が渇いてきてしまった。かなりタイミングが悪い。
仕方ない、自販で何か買ってこよう。
「よいしょ」
周りを起こさぬようコッソリと部屋を出る俺。
確か自販って銭湯の前にあったっけか。よし。
俺は廊下を歩み出した。ただ1つ問題がある。
『怖い』
俺は怪談などには弱くはないが強くもない。
だから、寂れた灯りしかないこの廊下はかなりの不気味さがあって、普通に怖い。山の中の旅館ってのもポイントである。
あれ、俺さっきこの廊下を気にせず通ったよな。よく通ったな、俺。
気づけば、曲がり角に行き着いた。
「うわ…不気味…」
こういう時の曲がり角は非常に怖い。
もし、何がとは言わないが出たらどうしよう。俺はそういうの信じないタイプじゃないから・・・。
ビビってるせいか、そろりそろりと歩く俺。傍から見たら、きっと滑稽な歩き方をしていることだろう。
さぁ、ついにその曲がり角を曲がって・・・
「きゃっ!!?」
「うわあぁぁぁ!!?」
俺は絶叫した。当たり前だ。あんな中で誰かが出てくるなんて、予想できたはずがない。
だが、すぐに落ち着くことができた。なぜなら・・・
「あれ、戸部さん!?」
「…! 三浦君!?」
なんと戸部さんがそこには居たのだ。
後書き
砂煙って便利ですね(真顔)
そして結局そこそこグダってました(泣)
まぁ愚痴ってても仕方ないですよね。
今回から、技に名前を付けるようにしました。ただカッコいい言葉の寄せ集めです。この名前も募集したいです! 次の戦闘はいつになるか分かりませんが…ハハ…。
急いで書いたのでちょいとグダグダな結果になりました。ので、脳内補正をして頂けると幸いです。
俺の作品はアレです。見る人の創造力を活性化させるような物です(←後付け理由)。頑張って下さい。
そして、最後に忘れていたかのように優菜ちゃん登場。あ、忘れてはいません、覚えてます。ただ出すタイミングが無かっただけです(言い訳)。
ではまた次回で。
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