英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第41話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「ええっ!?ミ、ミルモ達だけでトリスタの防衛部隊を相手にするなんて無茶ですよ!?」
パントの説明を聞いたアリサは驚いた後心配そうな表情で指摘したが
「いいや、むしろ戦力過剰と言ってもおかしくないくらいだ。”古神”が一柱、”魔神”が三柱もいる事に加えて”精霊王女”と最上位精霊がいるからね。”魔神”一柱だけでも一国を滅ぼせるのに、それを遥かに上回る戦力があるから何の心配もない。」
「確か皆さんはガレリア要塞の”特別実習”の際にエヴリーヌ殿とベルフェゴール殿――――”魔神”の”力の一端”をその目にしたはずですわよね?」
「あ……………」
パントの話の後に問いかけたシグルーンの言葉を聞いたリィンはガレリア要塞の”特別実習”の時に近代兵器の軍団を圧倒していたベルフェゴールとエヴリーヌの姿を思い出した。
「そ、それに……ノルド高原ではリザイラさんやミルモさんは精霊の方々と一緒に貴族連合軍を圧倒していましわよね……?」
「ああ……エヴリーヌのように矢で飛行艇を撃ち落した事にも驚いたが、リザイラは魔術で全てを薙ぎ払っていたな……」
ノルド高原での出来事を思い出したセレーネの言葉にガイウスは静かな表情で頷き
「勿論その戦いの際は私も”協力者”として彼女達と共に貴族連合軍と戦う所存です。」
「私もトリスタの防衛部隊と戦いますわ。ペガサスを駆って戦う私にとってはむしろ屋外での戦いや大規模な戦闘の方が本領ですし。」
「無論提案者である私も君達の”協力者”としてトリスタの防衛部隊と戦うつもりだ。」
「パント様がそちらでの戦いを希望するのであれば、私もパント様達と共にトリスタの防衛部隊を相手にしますわ。」
「”鋼の聖女”達までも相手にしなければならないなんて、トリスタを防衛している貴族連合軍はもはや”哀れ”としか言いようがないわね。数は圧倒的に貴族連合軍が上でしょうけど、”質”が圧倒的に違うからベルフェゴール達と”鋼の聖女”達による”虐殺戦”になるでしょうね。」
リアンヌ達の申し出を聞いたセリーヌは呆れた表情で呟いた後目を細めた。
「ぎゃ、”虐殺戦”…………」
「ま、ガレリア要塞やノルド高原で見たあの圧倒的な戦いの事を考えたらそうなるだろうね。」
セリーヌの言葉を聞いたエリオットは信じられない表情をし、フィーは静かな表情で呟き
「ちょ、ちょっと待ってください!まさかパント卿達はトリスタの防衛部隊の命を奪うつもりなんですか!?」
ある事に気付いたリィンは血相を変えて尋ねた。
「ああ。さすがに相手は”軍”だから殺さないように手加減していたら、私達が逆に殺されるからね。”本気”で彼らを”殲滅”するつもりで戦うつもりだ。」
「そ、そんな……!」
「……ッ……!他に方法はないのですか!?幾ら敵とは言え多くの命を奪ってまで士官学院を……トリスタを奪還するなんて方法、俺達を含めた士官学院のみんなやトリスタの人々は誰も望んでいません!」
パントの答えを聞いたトワは悲痛そうな表情をし、リィンは真剣な表情で声を上げた。
「他に方法があるとすれば、トリスタの防衛部隊が帝都防衛の為に帝都方面へと後退して、トリスタ周辺の守備が薄くなる日を待って、その時に奪還する事だが……―――それでは”戦争回避条約”によって設けられた猶予期間を守れず、エレボニアが滅びる可能性が高くなってしまうよ?そうなれば、君達のクラスメイト―――”C”の身柄をクロスベルからエレボニアに引き渡してもらう事も叶わなくなり、彼は最悪クロスベルによって”処刑”されるかもしれない。しかも貴族連合によって誘拐されたかもしれない士官学院の君達の教官や友人、そして彼らの親族は貴族連合を傀儡にするつもりでいる”D∴G教団”司祭ヨアヒム・ギュンターの”モルモット”として”人体実験”をされる可能性もあり得る。そんなリスクを背負ってまでトリスタ周辺の守備が薄くなる日を待ち続けるつもりかい?君達も知っての通りクロスベル帝国が建国されたから、戦争回避条約によって設けられた猶予期間は既に10日を切っているのだよ?」
「!!」
「そ、それは…………」
「……ッ……!」
パントの指摘にリィンは目を見開き、アルフィン皇女は辛そうな表情をし、サラ教官は唇を噛みしめ、仲間達はそれぞれ複雑そうな表情や辛そうな表情で黙り込んだ。
「ザクセン山道でエイリーク皇女殿下が君達に向けて言った忠告……その時が今という事だ。」
ザクセン山道でエイリークの忠告を聞いたリィン達はそれぞれエイリークの忠告を思い出していた。
ですが”戦争”に関わる限り、いずれ自分達の身や大切な存在を守る為、そして目的を果たす為に”敵を殺す必要がある事”が訪れる可能性がある事を頭の片隅に留めて置いて下さい。
「……”戦争に関わる限り、いずれ自分達の身や大切な存在を守る為、そして目的を果たす為に”敵を殺す必要がある”、か。確かに今そうしなければ、私達は大切な存在を失ってしまうかもしれないな……」
「そ、そんな………!他にも方法がきっとあるはずです!」
重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの言葉を聞いたアリサは悲痛そうな表情をし
「パント卿……正規軍に頼る方法を除けば、本当にその”方法”しかないのですか……!?」
「お兄様……」
「兄様……」
悲痛そうな表情でパントに問いかけるリィンをセレーネとエリスは心配そうな表情で見つめた。
「残念ながらそれ以外はない。それとリィン君、正直こんな事は言いたくなかったのだが……―――エリゼは自分にとって大切な存在――――エリス君を取り戻す為に多くの近衛兵達を葬って自らの手を血で染めた。エリゼは”大切な存在を守る為に人を殺す覚悟”ができたというのに、エリゼの兄である君がエリゼと同じ”覚悟”を持つ事を必死に抗っている事に自分は情けないと思わないのかい?しかも君は訓練兵とはいえ、”軍人”だ。訓練兵をしていた時に賊の討伐等も参加していただろうから、既に人を殺した経験はあるのに”今更”敵を殺す事に躊躇を持つのは軍人―――いや、君と共に賊の討伐を行った君の同期の者達に対して何も思わないのかい?」
「……ッ!!」
「姉様……兄様……」
パントの指摘にリィンは辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせ、そんなリィンをエリスは辛そうな表情で見つめ
「リィンさんの件同様、皆さんもですわよ。プリネ姫達は内戦終結を目指す皆さんにとって必ず障害になるであろう貴族連合の”裏の協力者”を皆さんの為にも討伐したのです。プリネ姫達の”仲間として”、エリゼやプリネ姫達と同じ”覚悟”を持つ事を抗っている事にエリゼ達に対して申し訳ないと思わないのですか?それに皆さんの”好敵手”と言ってもおかしくない相手である”特務支援課”の方々は悲願を叶える為に”結社”に属する者達や大統領側に力を貸している猟兵達が殺害される事を受け入れました。彼らが悲願を叶える為に障害となる敵が”殺される”事を覚悟し、受け入れたというのに、貴方方はその覚悟ができない事について何も思わないのですか?」
「…………………」
自分達を見回して言ったシグルーンの指摘にアリサ達は何も答えられず、それぞれ辛そうな表情で黙り込んでいた。
「皆さん…………」
リィン達の様子を辛そうな表情で見つめていたセドリック皇太子は目を伏せて黙り込んだ後やがて決意の表情になって、口を開いた。
「……エレボニア皇太子、セドリック・ライゼ・アルノールとして皆さん――――”トールズ士官学院”に”勅命”があります。」
「え……」
「セ、セドリック……?一体何を……?」
セドリック皇太子の言葉を聞いたリィンが呆けている中、アルフィン皇女は困惑の表情でセドリック皇太子を見つめた。
「パント卿が仰った”トールズ士官学院”の方々によってトリスタやトールズ士官学院を奪還する方法を取り、トリスタを……そしてトールズ士官学院を奪還してください。なお、トリスタやトールズ士官学院の防衛についている貴族連合軍の兵士達は殺して構いません。これはエレボニア皇太子―――セドリック・ライゼ・アルノールとしての”勅命”です!」
するとその時セドリック皇太子はその場にいる誰もが予想していなかった行動に出た!
「なっ!?」
「ど、どうして僕達にそんな”勅命”をするんですか……!?」
セドリック皇太子の”勅命”を聞いたマキアスは驚き、エリオットは信じられない表情で尋ね
「エレボニアの存亡や”教団”によって出る被害と”逆賊”である貴族連合軍の兵士達の生死を比べれば、どちらを優先すべきかは明白です。エレボニアの皇族として……そしてエレボニアの”皇”である父上の跡を継ぐ者として、エレボニアが滅亡する可能性を高め、更にはエレボニアの民達が”D∴G教団”によって人体実験をされるかもしれない可能性を見過ごす事はできません。…………貴族連合軍の兵士達を殺すように”勅命”した僕の事は幾らでも恨んで構いませんので、貴族連合軍の兵士達を殺してでもトリスタを奪還してください。トリスタを奪還する事ができれば、ヘイムダルの奪還も可能となりますので、帝都であるヘイムダルを奪還する事ができれば”戦争回避条約”の猶予期間以内に内戦を終結させられます。」
「殿下…………」
「殿下はトリスタを奪還する為に貴族連合軍の兵士達を殺す事に迷っている私達の背中を押す為にそのような”勅命”をされたのですね……」
「………………」
セドリック皇太子の説明を聞いたユーシスとラウラは辛そうな表情でセドリック皇太子を見つめ、サラ教官は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「セドリック……だったら、わたくしも――――」
「ううん、アルフィンは”勅命”をしないで。」
「え………ど、どうして!?」
セドリック皇太子と共にリィン達に”勅命”をするつもりでいたアルフィン皇女はセドリック皇太子に制され、信じられない表情で尋ねた。
「アルフィンはいずれ”エレボニア皇族”じゃなくなるから、そんな”勅命”をさせる訳にはいかない。」
「それは……!確かにそうですが今のわたくしはエレボニア皇族!ですから当然エレボニア滅亡を防ぐ為に貴方と同じ”勅命”をする”義務”が―――」
セドリック皇太子の話を聞いたアルフィン皇女は反論をしたが
「…………アルフィンはエレボニアにとって”恩人”で”英雄”のリィンさんに嫁ぐんだから、アルフィン自身にリィンさんに対してそんな残酷な”勅命”をさせる訳にはいかないよ。」
「セドリック…………」
「殿下…………」
セドリック皇太子の説明を聞くとリィンと共に辛そうな表情で黙り込んだ。
「兄様……」
するとその時エリスがリィンの片手を自分の両手で優しく包み込んだ。
「エリス?」
「兄様……姉様が私の為に多くの近衛兵達をその手にかけた話やシグルーン様達から”戦争”の話を聞き、それからずっと考えて答えを出しました。――――内戦を終結をさせる為には時には非情な決断が必要だと。私も姉様や兄様と共に自分の手を血で汚す覚悟はできています。クロウさんや士官学院、そして留学中にお世話になったエレボニアの人々の為にも迷わないで下さい……!」
「エリス……」
「エリスお姉様…………」
エリスの言葉を聞いたリィンはセレーネと共にそれぞれエリスを辛そうな表情で見つめた後決意の表情になって仲間達と目線を合わせて頷き、そしてセドリック皇太子を見つめて言った。
「セドリック皇太子殿下……殿下の”勅命”、”トールズ士官学院”一同、未熟な身ではありますが受けさせて頂きます。」
「今までお世話になった恩も返す意味で、絶対にトリスタを奪還してみせます……!」
「……はい。その代わりになるかどうかわかりませんが必ずクロウさんの身柄をクロスベルから引き渡してもらい、僕達皇族の権限で”処刑”の判決は出ないようにしますのでどうかよろしくお願いします。」
リィンとトワの言葉にセドリック皇太子は静かな表情で頷いた。
こうして、リィン達Ⅶ組によってトリスタの奪還作戦が正式に行われることになった。詳しい作戦の段取りは発案者であるパントと士官学院の事を一番よく知るトワによって行われ……その結果まず街道に展開している防衛部隊を撃破してトリスタに駐屯している部隊を引きつける事になり……防衛部隊を撃破する役割はリィン自身の申し出によってヴァリマールを主体に行われる事になった。
そしてトリスタに駐屯している部隊を引きつけた後ベルフェゴール達が陽動兼駐屯している部隊の殲滅をする事になり、リィン達は三班に分かれてトリスタ並びに士官学院に駐屯している部隊の殲滅を行う事になった。
トリスタから士官学院の正門を目指して士官学院に突入するA班のメンバー構成はリィン、トワ、ラウラ、フィー、エリス、サラ教官。士官学院のグラウンドにある裏門から士官学院に突入するB班のメンバーはアンゼリカ、ユーシス、マキアス、ミリアム、エリオット、アルティナ。そして旧校舎から士官学院に突入するC班のメンバーはアリサ、ガイウス、セレーネ、エマ、メサイアへとそれぞれ編成し、翌日に作戦を決行する事になった。
~数時間後・バリアハート・メンフィル帝国軍・エレボニア帝国侵攻部隊総督府~
リィン達によるトリスタ奪還作戦が決まった数時間後、エレボニアに侵攻するメンフィル軍の総督府である元アルバレア公爵城館にはリアンヌと共にメンフィルに寝返った”鉄機隊”の面々も待機しており、”鉄機隊”の”筆頭隊士”であるデュバリィはリィン達の件を知るとある決意をし、デュバリィは自身が決めた決意を実行する為に同じ”鉄機隊”のメンバーである”魔弓”のエンネアと”剛毅”のアイネスと共に城館内にいるレーヴェを探して自分達の頼みをレーヴェに伝え、その頼みにレーヴェは眉を顰めながらも応じてデュバリィ達の頼み――――リウイとの面会を実行する為にリウイがいる部屋を訪れていた。
「執務中の所申し訳ございません。陛下、少々よろしいでしょうか?」
「―――入れ。」
「ハッ。失礼します。」
リウイの答えを聞いたレーヴェは部屋に入った。
「陛下、”神速”を始めとした”鉄機隊”の者達が陛下との面会を望んでおられますが……」
「何?一体何の用だ。」
予想外の人物達が自分との面会を望んでいる事を不思議に思ったリウイは眉を顰めて続きを促した。
「”神速”が陛下に嘆願したい事があるとの事です。」
「俺に嘆願したい事だと?……まさかとは思うが”結社”関連の事か?」
「いえ。”Ⅶ組”と決着をつける為に、その許可を陛下に頂きたいとの事です。」
「”Ⅶ組”と決着をつける為だと?………―――いいだろう。通せ。」
「御意。」
数分後、デュバリィ、エンネア、アイネスがリウイがいる部屋に通された。
「……本日はメンフィルに所属してまだ日の浅い私達との面会に応じて頂き、心から感謝致しますわ。」
「挨拶はいい。レオンハルトから”Ⅶ組”と決着をつける為に俺との面会を望んでいると聞いたが、一体何の為に”Ⅶ組”との決着を求める?」
「……それは――――」
そしてデュバリィはリウイの疑問に答えた。
「―――と言う訳です。どうか彼らとの決闘の許可をお願いしますわ……!」
事情を説明し終えたデュバリィはその場で頭を深く下げ
「デュバリィ…………―――陛下、我々からもお願いします……!」
「どうかデュバリィの願いを叶えてやってください……!」
デュバリィに続くようにアイネスとエンネアも頭を深く下げた。
「…………全員、頭をあげろ。一応確認しておくがシル―――いや、リアンヌはその件について承知しているのか?」
「いいえ、マスターには相談していませんし、相談するつもりもございませんわ。今回の件は”結社の鉄機隊”としての決闘なのですから。」
「なるほどな……”Ⅶ組”と直接剣を交えたデュバリィはともかく、”Ⅶ組”との面識すらないお前達は何故デュバリィと共に”Ⅶ組”との決着をつける戦いに挑む?」
デュバリィの話を聞いて少しの間考え込んだリウイはエンネアとアイネスに視線を向けて尋ねた。
「我々の”筆頭”であるデュバリィの決戦なのですから、我々はデュバリィの仲間として力を貸す事にしたのです。」
「後でマスターからお叱りや処罰を受ける事も、メンフィルからの処罰を受ける事も覚悟の上です。」
「ハア……奴の愛弟子だけあって、そういう所も奴に似ているな……」
アイネスとエンネアの決意を知ったリウイは呆れた表情で溜息を吐いた後考え込み、そしてデュバリィに尋ねた。
「……ちなみにその決闘でお前達が勝利した場合はどうするつもりだ?」
「私達が勝利したとしても、トールズ士官学院は彼らに返還しますわ。私達が求めるのは”Ⅶ組”との決着のみなのですから。」
「……―――いいだろう。後悔が残らないように、全力で奴等と戦って決着を付けて来い。」
「ええ……!―――かつて敵対していた”結社”出身で新参者である私達の嘆願に応えて頂いた事に心から感謝致しますわ。このご恩は今後の働きで返させて頂きます。―――それでは私達はこれで失礼しますわ。」
そしてデュバリィはアイネスとエンネアと共に部屋から退出した。
翌日、リィン達は”Ⅶ組”を始めとした”トールズ士官学院”の悲願であるトリスタ奪還作戦を開始した…………!
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