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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第39話

~カレイジャス・ブリッジ~



「何者!?一体いつの間にカレイジャスに――――」

「な―――――」

「ほえっ!?何でレグラムの石像と同じ姿や容姿をしているの!?」

「ば、馬鹿な……その容姿と姿は……!」

「まさか貴女は”槍の聖女”リアンヌ・サンドロッド卿なのですか!?」

女性騎士の登場に驚いたサラ教官は武器を構え、女性騎士の容姿や姿を見たラウラは絶句し、ミリアムとユーシス、セドリック皇太子は信じられない表情をし

「”結社”の”蛇の使徒”の第七柱にして、”結社最強”の使い手――――”鋼の聖女”アリアンロード!何でアンタがここにいるのよ!?」

「”結社”の”蛇の使徒”だと!?」

「ええっ!?あ、あのクロチルダさんと同じ”結社”の……!?」

「それ以前に貴女は本物”槍の聖女”なのだろうか……?」

女性騎士を信じられない表情で見つめるセリーヌの言葉を聞いたトヴァルとエリオットは驚き、ガイウスは目を丸くしてリアンヌを見つめた。



「―――自己紹介が遅れましたね。メンフィル大使リウイ・マーシルン並びにその妻イリーナ・マーシルンの護衛騎士リアンヌ・ルーハンス・サンドロッド。それが”今の私”です。私がかつて”獅子戦役”で後に”獅子心皇帝”と称えられた者と共に戦場を駆けた者と同一人物であるのかどうかですが……―――答えは”是”です。」

女性騎士―――リアンヌはリィン達を見回して自己紹介をし

「ええっ!?じゃ、じゃあ貴女が本物の”槍の聖女”……!」

リアンヌの自己紹介を聞いたエマは驚きの表情でリアンヌを見つめた。

「馬鹿な……250年前の人物が何故まだ生きているのだ!?」

「もしかして異世界にいると言われている”神格者”と同じような存在だからでしょうか……?」

「しかもエレボニアの伝説の英雄が何故メンフィルに……」

「それに……何故貴女程の方が”結社”に属していたのですか!?」

ユーシスは驚きの表情で声をあげ、セレーネは戸惑いの表情で推測し、エリスは呆けた表情でリアンヌを見つめ、ラウラは厳しい表情でリアンヌを見つめて尋ねた。



「……―――それを貴女方に話す義理はありません。どうしても私の話を聞きたければ、”特務支援課”のように相応の”力”を示して見せなさい。」

「……ッ!」

「何て闘気だ……!老師と同じ……いや老師ですらも比べものにならないくらいだ……!」

「フフッ、さすがは伝説の”英雄”って所かな……!?」

「……その口ぶりだと”特務支援課”は貴女に勝ったの?」

全身から溢れ出る程の闘気を纏ったリアンヌに視線を向けられたラウラは息を呑み、リィンは驚き、アンゼリカは厳しい表情をし、フィーはリアンヌを警戒しながら尋ねた。



「ええ。彼らは私の兜を破壊した所か、私に膝をつかせました。」

「ええっ!?」

「ロ、ロイドさん達が”槍の聖女”である貴女に膝をつかせたというのですか!?」

「”特務支援課”……信じられない程実力をつけたみたいね……!」

「確か”特務支援課”はリィン君達よりちょっと上くらいの実力だって話だけど……」

「……彼らはリィン君達とも比べ物にならないくらいの修羅場を潜ってきたようだね……」

リアンヌの話を聞いたアリサとエマは驚き、サラ教官は真剣な表情で呟き、不安そうな表情をしているトワの言葉にジョルジュは重々しい様子を纏って答え

「―――ちなみにその中には貴方方の血縁者――――エリゼ・シュバルツァーも入っていますよ。」

「何だって!?エ、エリゼが!?」

「ね、姉様があの”槍の聖女”に勝利するなんて……」

「一体エリゼお姉様はクロスベルでどれ程の厳しい戦いを潜り抜けたのでしょう……?」

「少なくてもお前らよりはとんでもない修羅場を潜っていると思うぜ……」

リアンヌの答えを聞いたリィンは驚き、エリスは呆け、セレーネの言葉にモニターに映っているトヴァルは複雑そうな表情で答えた。

「――――お初にお目にかかりますわ、リアンヌ様。かつて”メンフィルの守護神”と称えられ、そしてリフィア皇女殿下の祖母であるシルフィア様の生まれ変わりである貴女に会えて光栄ですわ。」

するとその時シグルーンがリアンヌに会釈をして、リィン達にとって驚愕の事実を口にした。



「貴女がリフィアの親衛隊の副長を務めている者ですか。”影の国”の際、リフィアから貴女と貴女の番いの事は聞いています。いつも我が孫娘のお世話をして頂き、ありがとうございます。」

「そんな……お世話だなんて……私達は殿下に仕える騎士として当然の事をしているまでですし、殿下には返し切れぬ恩があるのですから、お世話をして頂いているのはむしろ私達の方ですわ。」

「――お初にお目にかかります、リアンヌ様。私の名はパント・リグレ。かつて主君を闇の王へと仕立てあげようとした愚か者――――ケルヴァン・ソリードの息子です。」

「パント様……」

リアンヌに自己紹介をするパントをルイーズは心配そうな表情で見つめた。



「あのケルヴァンの……?あの男に子がいた事にも信じられない思いですが、とてもあの男の息子には見えませんが……」

パントの自己紹介を聞いたリアンヌは不思議そうな表情でパントを見つめ

「幸い私は母似でしたので。ケルヴァンをよく知るリウイ陛下達ですらも私がケルヴァンの息子と知ると、最初は何かの間違いではないかと仰っていたくらいです。」

「そうですか……ケルヴァンの息子である貴方にも色々と複雑な事情がおありでしょうが、今この場に陛下達が信頼する”将”であるシグルーン中将と共にいるという事はリウイ陛下達も貴方の事を”戦友”として認め、信頼している証拠。貴方を信頼する理由として十分です。」

「………勿体ないお言葉です。」

リアンヌの答えを聞いたパントは頭を下げて会釈をした。



「何ですって!?」

「”槍の聖女”がリフィア殿下の祖母だって!?」

「一体どうなっているの~!?」

リアンヌ達の会話が途切れるとサラ教官とマキアスは信じられない表情で声をあげ、ミリアムは混乱した様子で声を上げ

「な――――シルフィア様だって!?」

「兄様……?」

「リィンさんはその方の事をご存知なのですか?」

驚いている様子のリィンに気付いたエリスは不思議そうな表情をし、アルフィン皇女は尋ねた。



「はい。――――メンフィルの初代近衛騎士団団長シルフィア・ルーハンス。”メンフィルの守護神”と称えられたリウイ陛下の側室の一人にして現メンフィル皇帝であるシルヴァン皇帝陛下の産みの母親で、今でもメンフィルに伝えられ続けている伝説の聖騎士です……!」

「何だとっ!?」

「げ、現メンフィル皇帝のお母さん!?」

リィンの説明を聞いたユーシスとエリオットは驚き

「先程シグルーン中将閣下が貴女をそのシルフィア殿という名の騎士の生まれ変わりと仰っていたが……まさかプリネやエステル殿と同じ……」

「――はい。一身上の都合にて今まで”結社”に属していましたが、今の私はリウイ陛下とイリーナ様を生涯守り抜くと誓った護衛騎士です。」

「”獅子戦役”でかのドライケルス帝と共に活躍したあの”槍の聖女”が今はリウイ陛下とイリーナ皇妃の護衛騎士…………」

「め、滅茶苦茶だ……!」

ラウラの疑問に答えたリアンヌの話を聞いたアルフィン皇女は呆け、マキアスは疲れた表情をした。



「―――話を戻しましょう。私は陛下達への忠誠の証として”盟主”並びに”蛇の使徒”全員の居場所を教え、陛下達と共に”盟主”を討ち取りました。」

「じゃあ”結社”の”盟主”はあんたや”英雄王”達に殺されたのか!?」

リアンヌの説明を聞いたトヴァルは信じられない表情で尋ねた。

「はい。余談ですがメンフィルは残りの”蛇の使徒”暗殺に向けて動き出し、現時点で既に私を除けば3名の”蛇の使徒”の死亡が確認されています。」

「何ですって!?」

「ま、まさか姉さんも暗殺されたのですか!?」

リアンヌの話を聞いたサラ教官は血相を変え、エマは表情を青褪めさせて尋ねた。

「いえ、”蒼の深淵”の消息は現在不明です。ただ”盟主”を失い、半数の”蛇の使徒”が暗殺された中彼女だけ生き残っても”結社”を立ち直す事は不可能と言っても過言ではありませんので”結社”に戻って来るとは思えませんが……」

「行き場を失った姉さんは今後どうするのかしら……?」

「………………」

リアンヌの説明を聞いたエマとセリーヌはそれぞれ複雑そうな表情をしていた。



「それで”結社”の崩壊をわざわざわたし達に伝える為にこの場に現れたの?」

「いえ。貴方方―――”紅き翼”の”協力者”としてこの場に現れました。」

フィーの質問にリアンヌはリィン達にとって信じられない答えを口にした!


「へ……」

「わ、私達の”協力者”としてこの場に現れたって……!」

「ま、まさかパント卿達のようにサンドロッド卿が我々に力を貸してくださるのですか……!?」

リアンヌの答えを聞いたマキアスは呆け、アリサと共に信じられない表情をしたラウラはリアンヌに問いかけた。

「ええ。陛下達からもお許しは頂いていますので、以後私もシグルーン中将達同様”戦争回避条約”の猶予期間が切れるか、もしくは内戦を終結させてヨアヒム・ギュンターを討ち取るまでは貴方方と共に戦いますので、私の事も貴方方の”戦力”として数えて頂いて構いません。」

「………………………」

「ふええええええええ~~っ!?あ、あの”槍の聖女”がわたし達の”協力者”~~~!?」

「フフッ、あの伝説の”槍の聖女”の加入なんて、普通なら諸手を挙げて喜びたい所だけど……」

「話が突然過ぎて戸惑ってしまうな……」

「それにあの”槍の聖女”が僕達に協力してくれるなんて夢みたいな話だけど、”今の彼女”の事を知ったら、色々と警戒してしまうよね……」

「貴様、一体何の為に俺達に協力をするのだ?」

リアンヌが自分達の陣営に加入するという驚愕の事実にリィンは口をパクパクさせ、トワは驚き、アンゼリカは口元に笑みを浮かべながらリアンヌを警戒し、ガイウスは困惑の表情をし、ジョルジュは複雑そうな表情をし、ユーシスは厳しい表情でリアンヌを睨んで問いかけた。



「理由は三つあります。一つは内戦を引き起こした”蒼の深淵”のかつての身内として責任を取る為に貴方方に助力する事にしたのです。」

「フン、責任に感じているんだったら最初からアンタ直属の配下――――”鉄機隊”をエレボニアの内戦に関わらせるんじゃないわよ。」

「セ、セリーヌ。」

リアンヌの説明を聞いて鼻を鳴らしてリアンヌを睨みつけるセリーヌの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。

「!”鉄機隊”で思い出したけど……アンタ、自分直属の部下達の”鉄機隊”の連中はどうするつもりなのよ?」

「彼女達に”鉄機隊”の解散を伝えた所、それでも私に仕えたいとの申し出があったので、彼女達は今後は私の部下として私と共に陛下達をお守りして頂きます。」

「!という事はあの”神速”とやらを含めた”鉄機隊”に所属している騎士達もメンフィルに……!」

「本当に一体どこまで戦力過剰にすれば気がすむの、メンフィルは。」

サラ教官の問いかけに答えたリアンヌの話を聞いたラウラは目を見開き、フィーはジト目になった。



「……”鋼の聖女”。リィン達に力を貸す理由は三つあるって言ってたよな?残り二つの理由は何なんだ?」

「あ…………」

トヴァルの疑問を聞いたセレーネは呆けた表情でリアンヌを見つめ

「……二つ目の理由はかつては”主”と仰いだ方への”最後の義理”を果たす為にその”主”の子孫に協力する”Ⅶ組”に力を貸す事に決めたのです。」

「サンドロッド卿の”主の子孫”という事は……!」

「――――ドライケルス大帝の子孫であるわたくし達”アルノール家”の事ですわね。」

リアンヌの説明を聞いたエリスは目を見開いてセドリック皇太子とアルフィン皇女を見つめ、アルフィン皇女は複雑そうな表情で答えた。



「その……サンドロッド卿。一つ聞きたい事があります。」

「何でしょうか。」

「セ、セドリック……?」

セドリック皇太子のリアンヌへの質問を聞いたアルフィン皇女は戸惑いの表情をした。

「……伝承では貴女は”獅子戦役”が終結し、ドライケルス大帝の即位後謎の死を遂げたと伝えられています。貴女は何故自分の死を偽装したのですか?」

「………………」

「あ……」

「サンドロッド卿の死について様々な仮説がありますが……何故貴女は未だ存命であるにも関わらず、死亡した事になっているのでしょうか?」

セドリック皇太子の疑問にリアンヌが黙り込んでいる中、エリスは不安そうな表情でリアンヌを見つめ、ラウラは真剣な表情でリアンヌを見つめて尋ねた。



「……権力は時に人を変える……―――それが答えです。」

「え…………」

「”権力は時に人を変える”……一体どういう意味なのですか?」

「意味不明だし。」

リアンヌの答えにセドリック皇太子が呆けている中、セレーネは不思議そうな表情をし、フィーはジト目でリアンヌを見つめた。

「―――話を続けます。最後の理由ですが……最後の理由は約4ヶ月程前に貴方方”Ⅶ組”に我が城に巣食う魔物達を私の代わりに滅して頂いたという”恩”がありましたので、その”恩”を返す為です。」

「や、”槍の聖女”の城に巣食う魔物達を約4ヶ月前に僕達が退治した……?」

「あ!もしかして”特別実習”でのローエングリン城の事を言っているんじゃないの!?」

リアンヌの説明にマキアスが戸惑っている中、心当たりがあるミリアムは声を上げた。



「約4ヶ月前の”特別実習”というと……レグラムでの”特別実習”の事だな。」

「あ…………」

「ローエングリン城で起こった”異変”の件をあんた達が解決した件ね。」

ガイウスの言葉を聞いたリィンは呆け、サラ教官は静かな表情で呟き

「……ちょっと待て。あの件を知っているという事はまさか、あの時どこかで俺達の事を見ていたのか!?」

ある事に気付いたユーシスは驚きの表情でリアンヌを見つめて尋ねた。



「ええ。あの時もその女は高見の見物をしてあんた達の様子を見守っていたわよ。」

「セリーヌ……貴女も人の事は言えないでしょう………というかサンドロッド卿がいた事を知っていたのならば、どうして私に教えてくれないのよ……」

セリーヌの答えを聞いたリィン達が冷や汗をかいて脱力している中、エマは疲れた表情で指摘した。

「フフ……―――それにしても”第三の風”として内戦終結の為に動いている”紅き翼”の中心人物が”灰の騎神”の”起動者(ライザー)”とは、運命の悪戯と言っても過言ではありませんね。」

「へ…………」

「あの……それは一体どういう意味なのでしょうか?」

自分を見つめて苦笑するリアンヌの言葉を聞いたリィンが呆けている中、エリスは不思議そうな表情で尋ねた。



「かつて”獅子戦役”の際、ドライケルスは”灰の騎神”の”起動者”として”灰の騎神”を駆って、”緋き絶望”を駆る偽帝オルトロスを討ち、”緋き絶望”を封印したのです。」

「ええっ!?」

「じゃ、じゃあヴァリマールの前の”起動者”はドライケルス大帝だったのですか!?」

「し、しかもドライケルス大帝がヴァリマールを駆ってユーゲント陛下が仰っていた”緋き絶望”を駆る偽帝オルトロスを討ったなんて……!」

「フフ、トマス教官が知れば目の色を変えるだろうね。」

「ハハ、トマス教官は”獅子戦役”について熱く語る人だからね。」

「というか確かトマス教官は”槍の聖女”のファンだから、その女を見たら間違いなく目の色を変えるんじゃないかしら?」

リアンヌの口から語られた驚愕の事実にセドリック皇太子とアルフィン皇女は驚き、トワは信じられない表情をし、静かな笑みを浮かべるアンゼリカの言葉を聞いたジョルジュは苦笑し、サラ教官は疲れた表情でリアンヌを見つめて呟いた。



「…………やっぱりそうだったのですか……」

「リィン?あんまり驚いていないようだけど、もしかして心当たりがあるの?」

一方冷静な様子でいるリィンが呟いた言葉を聞いたアリサは不思議そうな表情でリィンに訊ねた。

「ああ……”精霊窟”を訪れた際に俺が見たドライケルス大帝の”記憶”と思われる光景……それが俺だけに視えた理由が俺がドライケルス大帝と同じヴァリマールの”起動者”だからという答えだったら、俺にしか見えなかった理由に辻褄が合うんだ。」

「あ………」

「………………ええ。恐らくアンタの推測は的を得ていると思うわ。」

リィンの答えを聞いたエマは複雑そうな表情をし、セリーヌは静かな表情で答えた。



「ええっ!?じゃあセリーヌは”精霊窟”でリィンしか記憶が見えなかった理由も最初からわかっていたの!?」

「全く……その秘密主義をいい加減止めてくれよな。」

セリーヌの答えを聞いたエリオットは驚き、マキアスは疲れた表情で呟いた。

「しかし……ヴァリマールの前の”起動者”がドライケルス帝である事は絶対に外に漏らさないように気を付けるべきだろうな。」

「ええ……もしその件がエレボニア中に知れ渡れば、リィンさんかアルフィン皇女をエレボニアの皇帝に担ぎ出す者達が内戦を引き起こすかもしれませんしね……」

一方パントとルイーズはそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。



「え…………」

「ええっ!?ど、どうしてヴァリマールの前の”起動者”がドライケルス大帝だった事がエレボニア中に知れ渡れば、リィンとアルフィン殿下を担ぎ出す人達が現れて内戦がまた起こる可能性があるんですか!?」

二人の会話を聞いたアルフィン皇女は呆け、アリサは信じられない表情で尋ねた。

「リィンさんが駆る”騎神”はかつて”獅子戦役”を終結させ、伝説と化したドライケルス皇帝が駆った”騎神”。内戦を引き起こしてしまったユーゲント皇帝を始めとしたエレボニア皇家に対して不満や怒りを抱いている者達にとっては、エレボニアの”伝説の英雄”―――ドライケルス皇帝と同じ”騎神”の操縦者であるリィンさんはドライケルス皇帝の後継者と言ってもおかしくありませんし、そのリィンさんに嫁ぐドライケルス皇帝の子孫であるアルフィン皇女はこれ以上ない”大義名分”になるのですわ。」

「しかも君達も知っての通り、内戦終結後はヴァリマールで活躍したリィン君や彼に嫁ぐアルフィン皇女の事や、二人の結婚によって得るエレボニアの”利益”がエレボニア中に知れ渡る事になるからね。加えてシュバルツァー家はエレボニア皇家とは縁ある家。現エレボニア皇家に対して反乱を起こす”大義名分”としての条件は揃い過ぎていると言ってもおかしくないだろう。」

「…………この内戦によって民達のエレボニア皇家である”アルノール家”に対する不満や怒りの声があるのは僕も自分の耳で聞きました……パント卿達が危惧している事が起こる可能性は十分に考えられるでしょうね……」

「「「………………」」」

「リィンお兄様……エリスお姉様……アルフィン皇女……」

シグルーンとパントの推測を聞いたセドリック皇太子は重々しい様子を纏って呟き、それぞれ複雑そうな表情や辛そうな表情で黙り込んでいるリィンやエリス、そしてアルフィン皇女をセレーネは心配そうな表情で見つめ、仲間達は様々な思いを抱えてリィン達を見つめていた。



「……ま、外部に漏れたらの話であたし達が誰にも漏らさなかったらそんな事は起こらないわよ。」

「ああ。俺も今聞いた事はオリヴァルト殿下と子爵閣下以外には絶対に漏らさない。お前達も信頼できる人物達以外に漏らすなんて事は絶対にするなよ。」

サラ教官の言葉に頷いたトヴァルはリィン達に忠告し

「はい……!」

リィンは仲間達を代表して力強く頷いた。

「じゃあまた何か気になる情報が入ったら連絡する。サラ、しっかりと見守ってやるんだぜ。」

「ええ、あんたもせいぜいくたばらないよう気を付けなさいよ。”紅耀石(カーネリア)の君”と再会できる日のためにもね♪」

「ぐっ……茶化すなっての。そんなんじゃねえって言ったろ。じゃあな、お前さん達。また連絡するぜ。」

サラ教官のからかいの言葉に唸ったトヴァルはリィン達の健闘を祈りながら通信を切ってモニターから姿を消した。



「あらら、逃げられちゃったか。」

「今のって……」

「何か色っぽい話?」

「えっと……トヴァルさんの良い方とか?」

「ふふっ、詳しくはとある小説をチェックね。」

女性陣に尋ねられたサラ教官は得意げな笑みを浮かべ

「(うーん……トヴァルさんも災難だな。)―――それじゃあ……え、えっと……改めてよろしくお願いします、サンドロッド卿。」

その様子を苦笑しながら見守っていたリィンは冷や汗をかきながらリアンヌを見つめた。



「ええ、こちらこそよろしくお願いします。それと私は世間では既に死亡した身ですから、上流階級に接するような接し方をする必要はありませんので気軽に接して貰って構いませんよ。」

「ハ、ハア……」

「そ、そうは言っても……なあ?」

「相手はエレボニアの伝説の英雄だものね……」

リアンヌの答えを聞いたリィンが戸惑っている中、マキアスとエリオットはそれぞれ冷や汗をかき

「フフ、まさかあの”槍の聖女”がオレ達の”協力者”になるなんて……これも風と女神による導きだろうな。」

「あの自称”ただの新妻”の導きとか冗談抜きで嫌だし。」

「全くだな。」

「ア、アハハ……」

静かな笑みを浮かべるガイウスの言葉にそれぞれ呆れた表情で答えたフィーとユーシスの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいて苦笑していた。



「うふふ、サンドロッド卿がそう仰るのでしたら時間がある時に遠慮なく”獅子戦役”当時の事等を聞かせて頂きますわね♪」

「ひ、姫様!?」

「ア、アルフィン……興味があるのはわかるけど、お願いだからちょっとは遠慮してよ……」

微笑みながらリアンヌを見つめるアルフィン皇女の言葉を聞いたエリスが慌てている中、セドリック皇太子は疲れた表情をした。

「―――ラウラ・S・アルゼイド。貴女さえよろしければ、時間がある時に私が直々に鍛えても構いませんが、どうされますか?」

「え…………その、サンドロッド卿。サンドロッド卿の申し出は私にとって光栄な事なのですが、何故私如きの為にそこまでして頂けるのでしょうか?」

リアンヌの突然の申し出に一瞬呆けたラウラは驚きの表情でリアンヌに尋ね

「もしかしてラウラさんがかつてサンドロッド卿が率いた”鉄騎隊”の副長の子孫だからでしょうか?」

セレーネは推測を口にしてリアンヌに尋ねた。



「いえ、デュバリィが彼女を一方的に敵視して迷惑をかけたとの事ですから、その”詫び”代わりです。」

「そ、そう言えば初めて対峙した時もラウラの事を”アルゼイドの娘”と言ってやたらと敵対視していたわよね……?」

「え、ええ。今思えばもしかしたらラウラさんが自分の”主”であるサンドロッド卿のかつての右腕的存在の子孫だから、嫉妬していたかもしれませんね。」

リアンヌの話を聞いてある事を思い出したアリサとエマはそれぞれ冷や汗をかき

「別に私はあの件について気にしていないのですが……――――サンドロッド卿の申し出、ありがたく受けさせて頂きます。未熟者ではありますが、サンドロッド卿の期待に応えられるように精進するつもりです……!」

ラウラは困った表情でリアンヌを見つめた後頭を下げた。



こうして……エレボニアの”伝説の英雄”にして”メンフィルの守護神”という新たな心強い”協力者”を得たリィン達は内戦終結に向けて、活動を再開した………… 
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