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Three Roses

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第二話 幼きよき日々その四

「またなのね」
「マリー様とマリア様ですね」
「そう、そしてね」
「セーラ公女も」
「また三人で一緒にいるわ」
 こう司教の服を着て傍に立っている初老の男に言うのだった。
「薔薇を見ながら」
「左様ですね」
「何が面白いのかしら」
 黒服の少女は目を顰めさせてこうも言った。
「一体」
「お花ばかり観て」
「お花を観るのはいいわ、けれどね」
「学問の方がですね」
「いいわ」
「その通りです、マイラ様」
 司教はここで少女の名を呼んだ、見れば彼もまた書を開いている。
「学問はです」
「常にすべきですね」
「そうです、時間があればです」
「書を開き」
「学ぶべきです」
「そして学べば」
「マイラ様の糧となります」
 他ならぬ彼女の、というのだ。
「ですから」
「わかっています、こうして」
「決してです」
 司教は強い声でだ、マイラにこうも言った。
「学問は怠ってはなりません、そして」
「信仰もですね」
「正しくです」
「信仰しなくてはいけませんね」
「そうです、間違っても新教なぞは」 
 司教は眉をだ、これ以上はないまでに顰めさせて言った。
「信じてはいけません」
「はい、私もそう思います」
 マイラはここでは毅然とした声になって司教に返した。
「グレゴリー司教の仰る通りです」
「よいですか、学問をし」
「そして正しい信仰を持つ」
「この二つを守っていればです」
「私にも光が届きますね」
「そうです」
 その通りとだ、司教はマイラに断言した。
「マイラ様は何があろうともです」
「学問、旧教への信仰」
「その二つを守り」
「一途であったなら」
「私にも光が来ますね」
「世間はマイラ様を見ていますか」
「いえ」
 マイラは司教の今の問いには首を横に振った、そのうえでの言葉だった。
「側室の子とです」
「軽んじられるばかりですね」
「所詮私は側室の子です」
「それは違います」
 俯こうとするマイラにだ、司教はその動作を止める様にして言った。
「断じて」
「しかし私は」
「マイラ様のお父上は王であります」
 このことだった、司教がここでマイラに言うことは。
「紛れもなく」
「だからですか」
「そうです、王家の血を引かれ」
 そしてというのだ。
「王位の継承権も持っておられます」
「だからですか」
「そうです、マイラ様は王女であられます」
 側室の子、その逃れられない事実があろうともというのだ。
「そのことは誰も否定できません」
「王女であるが故に」
「はい、誇りを持たれ」
「学問と信仰もですね」
「続けられて下さい」
「それにより私の道が開けるのですね」
「学問と信仰は光です」
 まさにという言葉だった。
「光は人を導くものです」
「そして王女であるということが」
「必ずマイラ様を導いて下さいます、実際にです」
 司教はマイラにさらに話した、今度話したことはというと。 
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