突然背中から
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第五章
「格好いいですよね」
「強くて威厳があって」
「どんな姿でも立派で」
「一番素晴らしい生きものだと思います」
「ううん、その虎なんですけれどね」
ラハルは二人の酒が入っていることもあり熱くなって語る話をここまで聞いてからそのうえでその虎のことを話した。
「虎は狩りの時は後ろから狙ってきますよ」
「だからあのお面ですか?」
「頭の後ろに付けるんですか」
「はい、そうした獣なんですけれど」
「いや、正面から戦ってもですよ」
「虎は最強ですよ」
二人は真実を話すラハルにだ、すぐに返した。
「もう最強で」
「最高の生きものですよ」
「あんな生きもの他にはです」
「いないですよ」
「それこそ」
「無敵じゃないですか」
「確かに強いですけれどそうした生きものですよ」
獲物を後ろから忍び寄って襲うというのだ。
「ですからそうしたお面が出来たんですよ」
「けれど正面から戦っても」
「最強ですよね」
「虎ですから」
「虎は無敵ですよね」
「確かにこの辺りでも一番強いですね」
この辺りの生きもの達の中でもとだ、ラハルもそのことを認めはした。
しかしだ、それでもというのだった。
「ですがそうした狩り方なんで」
「そのことはですか」
「覚えていて欲しいってことですか」
「そうなんですけれど」
「いやいや、それでもです」
「虎はやっぱり最高ですよ」
二人の考えは変わらない、あくまで。
「無敵の虎です」
「それも誇り高い」
こう言って引かない二人だった、話自体は平行線でも和やかで虎のこと以外にも色々と話せてそちらは普通の話が出来てだ。
楽しい時間を過ごせた、だがその日本人のカップルと別れて店を出た後で。
ジェームスは首を傾げさせてだ、こうラハルに言った。
「あれがだね」
「はい、日本人の虎好きの人達です」
「西の方のだね」
「どう思わますか?」
「同じ虎を見ても」
首を傾げさせ続けつつだ、彼は言うのだった。
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