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突然背中から

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第二章

「何でも買いますよ」
「日本で虎」
 その言葉を聞いてだ、ジェームスは少し微妙な顔になった。そのうえでラハルに対してこう尋ねたのだった。
「日本に虎はいないね」
「はい、今は」
「古代はどうかわからないけれど」
「熊はいますけれど」
「虎はいないね」
「あと豹もいないです」
 大型のネコ科の動物自体がというのだ。
「勿論タスマニアタイガーも」
「その生きものはもういないかもね」
 ジェームスはタスマニアタイガーについては残念な顔で答えた。
「長い間確かに見付かっていないし」
「まだいるっていう噂がありますよね」
「見たって人もいるにはいるけれどね」
 それでもというのだ。
「僕はいて欲しいけれどね」
「そうですよね、お国の人としては」
「絶滅していたらね」
 それこそというのだ。
「悲しいことだからね」
「全くですね」
「とにかく日本に虎はいないね」
「動物園にはいますがね」
「しかし野生の虎はいない」
「はい、一匹も」
「それで虎が好きなんだね」
 微妙な顔のままだ、ジェームスは言った。
「おかしな日本人だね」
「多いですよ、そうした日本の人は」
「多いんだ」
「はい、特に関西から来た人は」
「関西、大阪とか」
「そうです、そちらから来た人は」
 まさにというのだ。
「虎が好きなんですよ」
「それはどうしてかな」
「野球関係で」
「あのスポーツで」
「阪神とかいうチームが虎らしくて」
「それでなんだ」
「そうした人って凄いんですね」 
 ラハルは笑ってだ、ジェームスにその日本の西の方から来た人達のことを話した。
「虎は最強で最高の生きものって思ってますから」
「確かに強くて格の高い生きものだね」
「毛並みも奇麗で」
「「けれど最高なんだ」
「はい、そう思ってるんですよ」
「ドラゴンとかフェニックスじゃなくて」
「ドラゴンなんかよりも上だって言う人多いですよ」
 その日本人達の中にはというのだ。
「中日がどうとか言って」
「それも野球のチームかな」
「どうにもそっちは中央の方らしくて」
「地域ごとにあるみたいだね、あっちも」
「どうやら、それでなんですよ」
「虎はドラゴンよりも強い」
「巨人よりも燕よりもらしいですよ」
 こうした生きもの達よりもとだ、ラハルはさらに話した。
「鯉や星にも」
「後の三つは訳がわからないな」
「とにかく最強最高の生きものって言ってます」
「成程ね」
「ですから虎は後ろから襲うって話しても」
 その襲い方、虎にとっては狩りの仕方もというのだ。
「信じないんですよ」
「正面から襲うとか言うんだね」
「そうです、巨人相手でも正面から戦って余裕で勝つとか言ってます」
「それは無理だろうね」
 ジェームスは聖書に出て来るゴリアテを巨人と考えそのうえで答えた。 
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